アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
セイヨウオオマルハナバチの憂鬱
2021年08月11日こんにちは
大雪山国立公園管理事務所の忠鉢です。
先日パークボランティアの皆さんと、赤岳と緑岳の花畑でセイヨウオオマルハナバチの防除活動を行いました。
在来種のマルハナバチ達が花から花へ蜜や花粉を集めて飛び回っていました。
今回はセイヨウオオマルハナバチは確認されませんでした。
しかしながら、今シーズンに大雪山の高山帯でセイヨウオオマルハナバチが発見された事例もあり引き続きモニタリングを行っていきます。
7/13 高根ヶ原で捕獲されたセイヨウオオマルハナバチ
人為的に本来の生息地から別の地域へ移入された生物を外来生物と言います(北海道では本州からの生物も外来生物にあたります)外来生物であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるものと指定されたものを特定外来生物といいます。
セイヨウオオマルハナバチはこの特定外来生物にあたります。
元はトマトなどの野菜の受粉をさせるのが目的でオランダやベルギーから輸入されたそうです。なぜそのセイヨウオオマルハナバチは特定外来生物に指定され、駆除対象となっているのか?
それにはこんな理由があります。
●盗蜜
在来マルハナバチに比べ中舌が短いセイヨウオオマルハナバチは
花の根元に穴を空けて蜜だけを盗む行為(盗蜜)を頻繁に行う。
花粉に触れることなく蜜だけを取られた花は受粉できず種を残せなくなります。
●在来マルハナバチへの影響
在来マルハナバチの女王を殺し、巣を乗っ取る事例が確認されています。セイヨウオオマルハナバチは増殖能力が高く、花蜜資源や営巣場所をめぐる競争力が強い為、野生化したセイヨウオオマルハナバチが在来種の生活環境を破壊するおそれがあります。
●在来種との交雑
在来マルハナバチの女王とセイヨウマルハナバチの雄と交尾することは確認されていますが、雑種が生まれることはありません。本来であれば産まれてくるはずだった在来マルハナバチは子孫を残せなくなります。
●病気の蔓延
輸入されたセイヨウオオマルハナバチから内部寄生性の「マルハナバチポリプダニ」という寄生虫が発見されたと報告があり、これらが在来種に感染していくおそれがあります。
セイヨウオオマルハナバチは増殖能力が高く、野生化することによって在来マルハナバチや、植物の種子繁殖へ悪影響を及ぼすことが懸念されています。
毎年パークボランティアと連携して、花の時期に在来マルハナバチのモニタリングをしつつ、セイヨウオオマルハナバチが高山帯に入り込まないよう監視活動をしています。
外来生物を持ち込むのは人間であり、外来生物自身には何の罪もありません。
人間の都合で勝手に連れてこられたのに、駆除されるのだから、セイヨウオオマルハナバチもたまったものではないでしょう。
しかし、在来の生態系を外来生物から守るためには、外来生物に対して正しい知識を持って人間が責任をもって外来生物を管理していかなければなりません。
セイヨウオオマルハナバチの見分け方を知りたい、防除活動に参加したいという方は下記のホームページを参照してください。