アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
「アトサヌプリ(硫黄山)」という山
2021年08月13日阿寒摩周国立公園管理事務所の武山です。
記録的な暑さの日が続きましたが、今回の記事もあつい話題となっています。川湯温泉の源泉である「アトサヌプリ」(=硫黄山)の調査登山に行ってきましたので、紹介させていただきます。
「アトサヌプリ」はアイヌ語で「裸の山」という意味。山から噴出される火山ガスの影響で、噴気孔の周りでは植物がほとんど生育できません。過去には硫黄採掘も行われていたことがあり、その形跡が今でも確認できます。
↑アトサヌプリの麓の森林内にこんなものが。当時の硫黄採掘時に利用していた鉄道の線路を木が取り込み、そのまま成長しここまで持ち上がったようです。年月の経過が感じられます。
ほぼ平地の森林を抜けると、一気に雰囲気が変わり、登りになります。なんだかとても高い山に来た気分...!でも実際は、写真の場所で標高200mくらいなので驚きです。↓
場所によっては、火山ガスの影響により低標高にも関わらずハイマツが生育していますが、後は岩ばかりです。でも不思議なことに、登山中、新鮮なキツネのフンやシカのフンをいくつも見かけました。彼らは一体ここへ何をしに来るのでしょうね。
↑三角点337mが今回の調査コースの頂上です。(本当の山頂には現在は登ることはできません。)
遠くに川湯温泉街と、それに続く道路が見えます。左奥にちらっと写っているのは屈斜路湖です。低い山なので、広い土地や湖を一望!...とはいきませんが、駅前や温泉街の建物、畑や牧草地が広がっているのを見下ろせます。川湯に住む人々の営みを感じられるスポットです。タイミングが合えば、釧路と網走をつなぐJR釧網本線の気動車が走るのを見られるのだとか。
この調査登山は7月初めでしたので比較的涼しかったですが、日差しを遮るものがない上、アトサヌプリ特有の白い砂からの照り返しもあり、想像以上に暑かったです。すぐにでも温泉に入りたくなりました。
ここまでアトサヌプリ登山の魅力について書かせていただきましたが、危険性についても知っておくことが大切です。アトサヌプリは活火山で、熱い火山ガスが常に噴気孔から吹き出しています。また、過去には落石事故、滑落事故など痛ましい事故も起こりました。そのため、一度は立入り禁止となりました。
ですが、現在では認定ガイド付き限定でトレッキングができるツアーが企画されており、今年度も開始に向けて調整中です。ツアーが開始されたらぜひ挑戦してみてください。ガイドさんの興味深いお話を聞きながら歩くことで、下から眺めるだけでは分からない、硫黄山の魅力をより感じることができると思います。