アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
なぜ?
2021年09月10日こんにちは、東川管理官事務所の渡邉です。
順調に紅葉が進む大雪山。山ではそろそろ雪がちらつきそうな寒さが漂っています。
【2021.9.8 大塚・小塚の斜面】
巡視のときは、自分の登山グッズの他に仕事で使用する道具、例えば剪定バサミ、ハンマー等、色々持って行くのですが、欠かせないのが「火ばさみ」。トイレで使用したと思われるティッシュを拾うためです。
先日、旭岳~中岳温泉を「携帯トイレ普及キャンペーン」で歩いたとき、岩陰で11個ものトイレ痕のティッシュを拾いました。過去最多。
尋常じゃない数で、とてもショックでした。
ティッシュを放置していった人たちも、本来は美しい大雪山の大自然を満喫するために来たのでしょう。
足下に咲く可憐な高山植物や、野生動物が逞しく生きる姿に癒やされ、大雪山の大いなる懐に抱かれ、たくさん深呼吸をして、活力を得たことでしょう。
それなのに、なぜ、自分のお尻を拭いた汚いティッシュを、放置していけるのでしょう?
高山植物の上に残された無惨なティッシュを見て、何を感じるのでしょう?
いずれ溶けるか、風で飛ばされて散り散りになるから大丈夫、と思うのでしょうか?
汚いティッシュなんて持って帰りたくない、と思うのでしょうか?
携帯トイレを持っていなかったのでしょうか?
置いていったティッシュを誰かが拾っているなんて想像もしないのでしょう。
ティッシュは100%が紙で製造されているのではなく、プラスチックを含んで作られているのがほとんどなので、自然界に捨ててもプラスチックは溶けきらず目に見えない大きさのマイクロ・プラスチックとなって残ります。それを野生動物が何かの植物と一緒に口に入れて、消化しきれず胃に残ってしまう可能性は少なくないでしょう。
次に、携帯トイレを持ってきて、携帯トイレで用を足し、それを山に置いていく人・・・。ここまで用意したのに、どうして・・・?
想像より臭かったのでしょうか?重かったのでしょうか?ザックがいっぱいだったのでしょうか?下山して捨てる場所がわからないと思ったのでしょうか?
体の生理現象を我慢する必要はありませんが、用を足したティッシュや使用済みの携帯トイレを残置すること、これら登山者の行動心理は、どんなに想像力を膨らませても、神聖な大雪山を前に、寛容できる行為ではなく、こんなにも尊い自然の中に、人間の汚物を残していけるってどうしてできるのだろう??と本当に不思議でなりません。
私たちのように毎日のように山に行く場合、携帯トイレ代もかかりますし、そのたびに携帯トイレをゴミとして廃棄することになります。使用後はそれなりの大きさになり、ザックの中で袋を破裂させないよう取扱い注意な荷物になり、私的には生理現象として毎日使用する割に大げさというか、スマートではなくなってきました。そこで考えたのが、ピーボトル(尿瓶)。
私はM社の飲料用ボトルをピーボトルとして使っています。
口が広いので、女性でも問題なく使えますし、密閉性があり漏れる心配はなく、一度買えば、ゴミも出ません。ボトルに用を足し、下山してからトイレに流して洗うだけ。一連の作業はすぐに慣れました。シンプルで、携帯トイレを使うより時短にもなります。
大好きな大雪山にいつまでも登らせてもらえるように、山への負荷は最小限に、山への敬意は最大限に。
皆さんにも、理解していただき、正しい選択をしてもらえるよう、環境に、山に、優しい登山をしていきたいです。
9月8日(水)~10月5日(火)まで、中岳温泉に携帯トイレブースを設置しています。ぜひ、ご利用ください。