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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

スノーモビルによる荷上げ2021編

2021年09月22日
大雪山国立公園 忠鉢伸一

こんにちは大雪山国立公園管理事務所の忠鉢です。

9/11当麻乗越にて、木道を設置作業に立ち会った時の様子をお伝えしたいと思います。

以前AR日記でお伝えした、スノーモビルを使った資材荷上のその後です。

以前の日記も良かったら見てください。

2020.3月「スノーモビルを使った荷上げの調査」

この木材はスノーモビルを使って今年の3月に荷上げしたものです。

大雪山は雪解けが遅いため、登山道が乾く8月下旬~9月上旬が登山道の整備に適した季節となります。

木道を作る角材は1本約15kgあります。この仮置き場から各設置場所へ数100メートル移動させるだけでも一苦労ですが、登山口から約5km位離れたこの場所に人力で運ぶとしたら途方もない労力と時間が掛かるでしょう。

令和元年度からスノーモビルでの運搬ルートや手法の調査を続けてきましたが、今年の春に初めて木材の運搬をする事ができました。

スノーモビル数台のチームで行われたこの調査は、スノーモビルの運転技術のみならず、天候、ルート読み等、山行に適した知識や能力も必要であり、何よりも運搬作業が可能かどうか、重要なのは現地の雪の状態です。パウダー雪では運搬には適さないし、溶けすぎていても樹林帯の走行が難しくなってしまいます。

調査の結果、資材運搬は気温が上がり始めた3月が最も適した時期だとわかりました。

     

当麻乗越付近での資材運搬の様子(2021年3月)

(この作業にあたり、環境省が道有林の入林申請を行い、また国立公園内の乗り入れ規制区域でのスノーモビル使用手続きを取りました。許可無く国立公園内にスノーモビルの乗り入れ規制区域に入ることは禁止されています。)

登山口から遠いと日常的な補修整備ができずに、登山道の浸食を止めることができません。

資材不足が登山道の維持管理を難しくしていた部分もあり、今年のスノーモビルでの荷上げは、今後大雪山の登山道整備の方法を変えていく可能性があると期待しています。

当麻乗越から(2021.9月)

当麻乗越への登山道には高層湿原や、秋は綺麗な紅葉をみることができる場所が多くあり、旭岳や愛別岳の展望も良い素晴らしい場所です。

歩きやすい木道が整備されると、ぬかるみを避けて法面や植生の上を歩く登山者の踏圧による侵食が軽減されます。木道を設置する事で整備は終了ではなく、設置してからの管理がとても重要なため、巡視の際に経過の観察をし、侵食状況や木道の不具合を点検する作業が始まります。

 

今回は全部で13基の木道を制作し、水がたまってぬかるんでいる場所や侵食が進みそうな箇所に敷設されました。

一度に大きな施工を行ったために、場合によって生態系が変化してしまうケースもあり、今後の整備としては、最低限の整備をしつつ現場を良く観察しながら、臨機応変に整備方法を見直していくやり方が望ましいと思われます。

今回の試験的な試みが成功して、色々な地域でスノーモビルが活用されるようになり、今まで資材確保が難しくてできなかった整備が進むことによって登山道が快適になったら良いですね。

登山の際は、登山道整備した箇所を観察しながら歩くのも面白いですよ。

今後の整備後の経過もAR日記でお伝えしていけたらと思います。