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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

流域面積と降水量から川の流水量を知る

2021年11月08日
大雪山国立公園 上村 哲也

 上士幌町の幌加川の奥、丸山(1,692m)近くに丸山噴泉塔群という名所があります。地表へ噴き出た温泉に含まれる炭酸カルシウムが積み重なり、塔とまで呼ばれるほど高くなった「石灰華」です。先日、撮影隊に同行する機会を得ました。

 しかし、荒れた林道を歩き、やがて道は踏み跡となり、渡渉を繰り返さなければ辿り着けません。一部の渡渉は胴長が必要なほどでした。雨が降れば水かさが増します。雨が上がってもしばらくは減ってくれません。やがて雪に閉ざされる季節が迫りながら、何度も天候待ちで延期になりました。決行するには川の流水量を見極める必要があります。

 上士幌町の幌加ダムに下る川の流域面積は国土地理院のウェブサイト、地理院地図から約70平方キロメートルと求められます。

幌加川の流域面積は70平方キロメートル ダムに近いぬかびら源泉郷や三股に設置されている気象庁のアメダスから地域の年間降水量(深さ)が1,000から1,300ミリと推定できます。流域面積と掛け合わせれば年間降水量(体積)は7,000から9,000万立方メートルとなります。

 この水量が幌加川に流れ込むと、365×24時間×60×60秒で割り毎秒では2.22から2.85立方メートルという流水量になります。国土交通省のウェブサイト、川の防災情報から幌加ダムの全流入量(=幌加川の流水量)を知ることができます。大雨や雪解けどきを除く穏やかな流れのときは毎秒2立方メートル余りです。

 降った雨は、再び蒸発したり伏流する分もあるでしょうが、ほとんどは川を流れ下るようです。そうして直近の降水とダムへ流入する水量の関係が見えてきます。流域に推定50ミリ余りの雨が降ったとき、流入水量は降り始めから数時間遅れて増加します。雨が降り止んだ頃に頂点を迎え、その後数日かけて平常を取り戻しました。流域の森林が雨を蓄えて流水量の急増を抑える役割を果たしているのです。

幌加川の流域面積は70平方キロメートル 丸山噴泉塔群を訪ねるような、川の渡渉を繰り返す行動では、流域に降った雨の量に気を配る必要がありそうです。どこの川にも雨量や流水量を測る設備があるとは限りません。経験を積んだ現地に詳しいガイドさんがとても頼りになります。今回の撮影でも、地元ガイドさんに大変お世話になりました。

 苦労し時間をかけて辿り着いた丸山噴泉塔は、地中の温度や圧力が下がったのか、頂上からの噴出が見られず高さの成長を止めてしまったようです。それでもあちらこちらからプクプクと泡を立て真っ白な噴出物が流れ出ているようで、落ち葉や倒木などを巻き込みながら下流へと面積を広げているようです。

 なお、今回撮影された映像は、後日、上士幌町ぬかびら源泉郷の「ひがし大雪自然館」において一般公開される予定です。