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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

赤潮の海

2021年12月24日
えりも自然保護官事務所 熊谷 文絵

みなさんこんにちは。

えりも自然保護官事務所の熊谷です。

当事務所ではおなじみ。

今年も、秋サケ定置網漁に同行してのゼニガタアザラシによる漁業被害調査を実施しました。

9月頭から11月20日の最終日まで、途中天候不良や時化に見舞われながらも無事に終えることが出来ました。

漁獲については、数年前から記録的不漁が続いていますが今年も低迷しています。日高管内では統計が残る1989年以降最低の漁獲量を記録し、漁業関係者は肩を落とす事態となりました。

そんな中、9月下旬に道東で大規模な「赤潮」が発生したことで多くの魚が死亡するなどしたため、少ない漁獲にさらに追い打ちをかける大打撃となりました。

「赤潮」とは、プランクトンが大量発生している状況をいい、大量に浮遊していることで海が茶褐色となり、普段より赤く見えるものです。赤潮の状況が一番深刻な時、定置網で沖に出てみると海水がまるでコーヒーのような色をしており、"いつもとは違う、海中で色んな影響が出ているに違いない" そう感じたことをよく覚えています。

 

港の中までプランクトンが大量に入ってきているため、海水が茶色く見えています。

特に右の写真は船から出ている水の勢いで周りの海水が動き、濁り具合が分かり易いです。

いざ外海へ船を出してみると...

 

 

茶色い海が続くばかり...

私が乗船しているのはサケの定置網漁船。この場所へ回遊してやってくるサケにも影響を及ぼしました。

エラ呼吸をしているサケのそのエラに付着し、多くを窒息死させてしまいました。通常、活きのよいサケのエラは血が通っていて濃い赤色ですが、窒息死したサケのエラは白くなります。


▲活きの良いサケ。ハリがあり、エラをめくるのも硬くて大変です

▲赤潮被害で死亡したサケ。

隣の船でも。その隣の船でも...同様の被害が見られました。

 

無傷であっても死亡していれば出荷することは出来ず、売ることが出来ないサケを回収する手間ばかりが増えていく状況です。

この「赤潮」はサケ以外にも、えりも町ではウニが全滅、ツブもほとんどが死亡しているなど多くの生物に影響を及ぼしました。

現場は初めての状況に戸惑い、この影響がいつまで続くのか懸念しています。

しかし!本日、12月24日のニュースや新聞では、今月15日までに赤潮は収束を迎えたようだと発表されていました。約3ヵ月間と長く続いた状況が解消されたことは、良いことです。

 9月下旬、赤潮の海

 11月20日、赤潮が治収まってきている海

ただ、ウニは漁獲できる大きさに育つまで4~5年、ツブに至っては6~7年かかるとされているため、赤潮が引いたこれから先も影響が長引くこと必須。少しずつ快方に向かうことを願います。

このように、赤潮は北海道の広い範囲で影響を及ぼしました。

赤潮が発生した地域を生活圏とするゼニガタアザラシ。アザラシへはどんな影響が考えられるのか、そのことに注視しています。

■海上から

・赤潮の海を泳いでいるアザラシ、サケのようにプランクトンが直接影響し死亡した個体は確認していない

・乗船調査中、普段なら定置網に入る魚を追い侵入してくるアザラシが今年はほとんど見かけない

...どこで過ごしているのでしょうか。

■上空から

・日常的にドローンを用いた個体数調査を実施していますが、映像を見ていても個体が減った様子がない

・見えている限り、変わった動きがない

これらから、今のところアザラシが赤潮の状況下でも生活できていることは確認できました。

しかし、アザラシのエサとなる生物がほとんど死亡してしまっています。今後アザラシはどういった動きをみせるのか、引き続き注視していこうと思っています。

(おまけ)

えりもは1年を通じて気温差の少ない地域と言われていますが、猛烈な風が吹くことで体感温度は一気に下がり、寒さ厳しい地域でもあります。乗船中は早朝という時間帯もあって特に寒いですが...とにかく美しい日の出・朝焼けが見られます。3ヵ月に及ぶ調査期間中、私の活力になりました〇 

 

 

 

 

お疲れさまでした!