アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、利尻礼文サロベツ、知床、阿寒摩周、釧路湿原、大雪山、支笏洞爺、日高山脈襟裳十勝国立公園があります。
春の訪れ~えりもサケ・マス定置網漁~
2022年06月01日
えりも自然保護官事務所
こんにちは。
町内が活気づいてきました!町内の襟裳岬以西で実施されている春の「さけ・ます定置網漁」が解禁となりました。漁期は約2カ月で、7月頭まで実施されます。
えりもの周辺海域にはゼニガタアザラシが生息していますが、彼らはとても賢く、定置網に魚が留まることをよく理解しています。ここにくれば餌が捕れると覚え、何度もやって来ては網に入った魚を喰い散らかすといった漁業被害をもたらします。いくつかの海流がぶつかるこの海域は、餌が豊富であること・岩礁の上で休息をとる習性をもつゼニガタアザラシにちょうどよい岩礁帯があることから棲み処としていると考えられますが、アザラシを別の場所へ追い出すことなく漁業被害を減らすにはどういった対策をとればよいかを考え、実行。アザラシが賢いゆえ、対策に対する慣れも早く、ひとつの対策の効果が中々続きにくいという現状があり、アザラシ対策は長期戦です。また、被害の動向を把握するため、"乗船調査"を実施しています。
出港し、ポイントに到着したら...
まずはロープを使い、網を引き揚げやすい場所に船を固定。ある程度は動力で網を巻き上げます。
写真の人は、海中で網が上手く巻き上げられているかを確認しています。
見えている陸地の一番右は襟裳岬。その先にちょこちょこ顔を出している岩礁帯が、ゼニガタアザラシ国内最大の生息地および繁殖地です。
今日は凪が良い&風が弱いで海上で作業するには最高なコンディション✨
ここからは人力。みんなで網を手繰り寄せます。潮の流れ方を見つつ声を掛け合い、どこかの場所が早い又は遅れることのないよう、同じスピードで手繰り寄せます。
網が仕掛けられている漁場にもよりますが、サケ・マス類は海水温が8℃以上にならないと見込めません。まるで入らないわけではありませんが、数える程度と少なめです。この日は6℃程度だったため、サケ・マスの漁獲は少なめ、スケトウダラやソウハチガレイが大漁です!
定置網漁船には、ダンブルと呼ばれるタンクがあり、最大20トン程度の魚を運ぶことが出来ます。
▼スケトウダラ
▼サケ・マス
※この写真の3尾はそれぞれ種類が違います。どれがなんという種類でしょうか?!答えは最後...!
▼アザラシによってもたらされた食害(この辺りでは「トッカリ食い」と呼ばれます)
この日、アザラシによる食害は2尾。マスの頭部がなくなっていて、エラの部分をひっかいたのでしょう。
こうなってしまうと市場には出せない(=売れない)ため、漁業被害になるというわけです。
漁期は2カ月と長いので、季節が進むにつれ海水温も徐々に上昇、漁模様に変化があります。スケトウダラやソウハチガレイの漁獲が少なくなると、サケ・マスの漁獲が増えてきます。
春の定置網漁、まだまだ始まったばかり。サケ・マスの漁獲が増えてくれば、動く度キラキラと光るそれらを追って網に侵入すると考えられているアザラシによる食害が増えます。今後の動向に注視して、タイミングを逃さず対策にあたります。
気候変動も影響しているのか、ここ数年えりもでは珍しい魚も上がるようになりました。何度かに分け、随時レポート予定です。次回もお楽しみに♪
【答え合わせ】
写真の上から、
●ホンマス(サクラマス)
春先に獲れるマスで、味がよいものの足がはやい(腐り易い)とされ、中々本州などに出回りません。
今時期はこのホンマスがたくさん獲れます(^^)
●トキシラズ(時鮭)
5~7月頃に三陸沖や北海道沖で獲れるサケ(シロサケ)。サケの旬は秋だけれど、春に獲れるものをトキシラズ(時知らず)と呼びます。日本近海を回遊中の若い個体で卵巣や精巣もまだ成熟していないため、栄養や脂が凝縮されていて非常に美味!
●マスノスケ
キングサーモンとも呼ばれ、みなさんはこちらの方が聞き馴染みがあるでしょうか。
この3種のなかで最も脂が多く、この辺りでの食べ方は刺身一択!ホンマスともトキシラズとも味わいです!
全体的に黒っぽく、背びれや尾鰭に黒い斑点があるのが特徴です。
いかがでしたか? 写真からわかったものはありましたか(^^??