ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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阿寒摩周国立公園 阿寒湖

81件の記事があります。

2007年07月31日雌阿寒岳の自然

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 福井 絵美

 
 7月26日(木)。今日は、雌阿寒岳へ巡視に行ってきました。雌阿寒岳へは阿寒湖畔コース、野中温泉コース、オンネトーコースの3つのコースから登山することができます。今回は、阿寒湖畔コースから登山し、野中温泉コースから下山することにしました。

 阿寒湖畔コースの登山口からスタートし、しばらくアカエゾマツやササが中心となった森林の中を歩きます。

 アカエゾマツの樹林帯をぬけると、イタドリやハイマツ帯が見え始めます。ここには、センダイハギという黄色い花がたくさん咲いていました。また、ハイマツの間に所々に見え隠れするコケモモ。まだ完全に熟していない赤い小さな実でしたが、これから大きくなるのが楽しみです。



センダイハギ


 トンネルのようなハイマツ帯をすぎると、しだいにごつごつとした岩場の登山道に変わっていきます。しばらくすると阿寒富士の山頂部分や雌阿寒岳の山頂、「ポンマチネシリ」が見えてきます。植物など育たないまるでどこかの遠い惑星に舞い降りてしまったかのようなこの岩石と砂れき帯を歩けば、メアカンキンバイやメアカンフスマ、イワブクロなど雌阿寒岳の代表する可愛らしい高山植物たちが出迎えてくれます。


イワブクロ


ガンコウラン


メアカンフスマ


 やっとの思いで雌阿寒岳の山頂に到着。そこから見る景色がまた格別。スタート地点の阿寒湖畔側を見るとナカマチネシリと遠くの方にうっすらと見える阿寒湖。そして後ろを振り返ると雌阿寒岳の主峰ポンマチネシリの火口と阿寒富士を望むことができます。


阿寒湖とナカマチネシリの火口



ポンマチネシリの火口と阿寒富士

 
 思わず足がすくんでしまいそうな外輪山に立ち勇気を出して(?)雌阿寒岳の火口を覗くと、青く透きとおった「青沼」、そして下山途中で見えた「赤沼」をはっきり見ることができます。その名の通り、「青沼」は青く見え、「赤沼」は赤く見える不思議でいて、とても美しい沼です。いつのまにか登山の疲れを忘れさせてくれる雌阿寒岳の豊富な自然に感謝です。


青沼


赤沼

【雌阿寒岳】

 阿寒湖の南西部に位置し、標高1,499mの阿寒山群の主峰。約2万年前に火山活動を開始し、何度も噴火をくり返し複雑な山体をつくっている。主峰のポンマチネシリは、約1万5千年前にでき、南側に位置する標高1,476mの阿寒富士は、約2千年前に誕生した。


【雌阿寒岳登山コース案内】

●阿寒湖畔コース(6.0km)登り3時間・下り2時間
温泉街の西部のフレベツ林道を車で登山口まで向かう。登り時間は3コースの中で一番長いが、ゆるやかな登りが続き、植生の変化も楽しめる登山コースとなっている。

●野中温泉コース(3.3km)登り1時間50分・下り1時間20分
登り時間が3コースの中で、最短で山頂に辿り着ける一般的な登山コース。火山れきがある急な登りがあり、高度が増すにつれオンネトーなどを望むことのできる見晴らしの良いコース。

●オンネトーコース(4.2km)登り2時間20分・下り1時間40分
オンネトー野営場からほど近く、途中から阿寒富士へ登るコースもある。コケモモやガンコウランなどの植物を見ることができ、頂上へは噴煙を上げる雌阿寒岳の火口の外輪を通って登るコースとなっている。

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2007年07月31日オンネトー自然探勝会

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 福井 絵美

 
 7月22日(日)、阿寒湖畔エコミュージアムセンター主催の自然ふれあい行事「オンネトー自然探勝会」が催され、巡視を兼ねて行事に参加協力してきました。
 
 今回の行事の一般参加者は7名、スタッフは9名、あわせて16名での自然探勝会となりました。当初、一般参加者は倍以上の人数が見込まれていましたが、なぜか阿寒地域以外の釧路、弟子屈、網走地方では、どしゃぶりの大雨の天気だったようで、急遽行事への参加をキャンセルされる参加者の方もみられました。なぜか阿寒地域だけ『台風の目』のような天気で、幸運にも自然探勝会日和となり予定どおり行事が行われることとなりました。
 
 今年度のオンネトー自然探勝会の散策コースは、雌阿寒岳温泉を出発し、オンネトー野営場を通り、最後の目的地であるオンネトー展望台を目指すルートでした。主な見どころは、雌阿寒温泉からすぐの湿地帯。ここをじっくり観察しながら歩くと、赤褐色の水面を見ることができます。これは、水底に鉄鉱(酸化鉄)が堆積しているためと言われています。



赤褐色の水面(湿地帯)



 湿地帯を過ぎると、まただんだんと植生が変化し、高く真っ直ぐそびえるアカエゾマツの純林に出会いました。「アカエゾマツの純林?」とお思いになる方もいらっしゃるかもしれませんが、丁度見頃を迎えていたハクサンシャクナゲとともに見るその光景は本当に美しいもの。スタッフの解説によると、アカエゾマツは他の樹木が育ちにくい厳しい環境のところでも生育できるという特徴を持っていて、逆に条件の良い環境では他の木との競争に負けてしまうのだそうです。静寂した森に包まれながら、改めて自然のたくましさを目の当たりにしました。


アカエゾマツの純林



ハクサンシャクナゲ

 
 アカエゾマツの純林を過ぎると、ようやく青いコバルトブルー色に輝く水面、「オンネトー」が見えてきました。昼食場所は、そのオンネトーをゆっくりと眺めることのできる、湖畔にあるオンネトー野営場。皆それぞれ思い思いのところで、昼食をとりました。


コバルトブルー色したオンネトーの湖面
 
 昼食後は、オンネトー野営場から再び歩き、最後の目的地、オンネトー展望台にたどり着きました。オンネトー展望台は、よく晴れた日にはコバルトブルー色のオンネトーの湖面と雌阿寒岳、阿寒富士を望むことができ、多くの観光客が訪れる名所となっています。この日は、雌阿寒岳の山頂部分が雲で少し隠れてはいましたが、オンネトー展望台からの美しい景色を望むことができ、参加者もスタッフも皆さん満足されていました。最後に展望台で記念写真を撮り、車で雌阿寒温泉に戻り現地解散しました。



オンネトー展望台にて

 
 誰一人ケガもなく、楽しくオンネトー周辺の生き物を観察することができ、なによりの自然探勝会でした。オンネトーへの利用者の多くは、オンネトー展望台や雌阿寒温泉に集中していますが、今回の自然探勝会で散策したコースは、なかなか表では見ることのできないもうひとつのオンネトーの美しい自然の姿を見ることができる素敵なコースでした。


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2007年06月11日ボッケの森のこみち

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 福井 絵美

6月8日(金)

  今日は、ボッケの森の巡視の日。昨日に巡視した際に、森のこみちの自然解説板が汚れていたのを確認したため、今日は、その清掃作業とともに巡視を行うことにしました。   

  この自然解説板は、阿寒湖畔エコミュージアムセンターの施設の一部であり、自然公園財団が維持管理を行うことになっています。清掃には、自然公園財団のスタッフと協力して作業にあたりました。


Before(ビフォー) 汚れた自然解説板

  春の雪解けとともに土やホコリだらけで文字が読みづらくなっている看板を、ひとつひとつ丁寧に雑巾で拭いていきました。




自然解説板の清掃作業の様子

  汚れたモノを綺麗にする。なんだか気持ちも晴れ晴れしてきました。



After(アフター) 綺麗になった自然解説板

  

  ふと、森のこみちの脇に視線を向けると、エゾオオサクラソウやニリンソウなどのたくさんの野花たちが見頃を迎え咲いていました。清掃作業は、頑張りの甲斐あって自然と心が和むひとときでした。



エゾオオサクラソウ

  皆さんも森の成り立ちなどの自然解説板を読みながらボッケの森のこみちを散策してみてはいかがでしょうか。

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2007年05月29日春爛漫?!

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 福井 絵美

5月29日(火)  

  日が差し込む日が増え、日に日に暖かくなる今日この頃。阿寒湖畔にもようやく桜が開花しました。その甘い香りに誘われて虫たちも活発になってきています。フキノトウ、ミズバショウ、エゾエンゴサクを始め、これからはエゾオオサクラソウやニリンソウなどが見頃を迎えます。さまざまな野花を観賞するには6月頃がお勧めの時期です。

 しかし、このような野花だけでなく雪解けとともに春に目につくのは、国道や林道などの道ばたに転がっている空き缶やペットボトル、ガラスのビンなどさまざまです。ゴミと一緒に顔を出すミズバショウやフキノトウがとてもかわいそう。「とるのは写真だけ、残すのは想い出だけ」という言葉があるように、ゴミはその場に捨てずに持ち帰り、ひとりひとりが気持ちよく自然を楽しむことができるよう、公園の利用マナーを守りましょう。



エゾヤマザクラ



フキノトウのそばに捨てられたペットボトルのゴミ



ミズバショウ

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2007年04月25日今年もどうそよろしく

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 福井 絵美

 阿寒湖AR(アクティブレンジャー)の福井絵美です。平成17年6月に阿寒湖自然保護官事務所に勤務して1年10ヶ月。また今年の4月から1年間、アクティブレンジャーとして同事務所にてお世話になることになりました。今年度も引き続きアクティブレンジャー業務に励んでいきたいと思っていますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 今回は、阿寒湖畔EMC(エコミュージアムセンター)の施設内に、「アクティブレンジャー展示コーナー」を設けましたのでそのご報告です。

 アクティブレンジャーは、日本の国立公園において全国で60名以上、各国立公園に1~2名配属されていますが、アクティブレンジャーの業務内容(業務内容は、各国立公園によって多少異なる場合がある)などについてご存知の方はまだまだ少ないのではと思いました。そこで、レンジャーの制服のカラーも周知してもらう意味でも「展示」をしてみるのが良いのではと思い作ってみました。

 この「アクティブレンジャー展示コーナー」は、アクティブレンジャーの活動の紹介と私が阿寒に来てから約2年間かけて撮影した阿寒の四季の風景、野生の動植物、阿寒湖パークボランティアの皆さんの活動の様子、自然観察会の様子などなど、たくさんの美しい写真を展示しました。ふだん、何気なく眺めていた阿寒の風景や野生の動植物たち、また人々のいきいきとした活動の様子が伝わったらと思っています。未熟な点が多々あると思いますが、是非、楽しんでご覧になって頂けたらと思います。







アクティブレンジャー展示コーナーの展示物の一部。内容は乞うご期待!

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2007年03月15日思わぬ急患

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 福井 絵美

3月6日(火) 晴れ 9:30a.m. 

 事務所の駐車場に止めてあった公用車をバックさせて出そうとしたその時だった。真後ろに突如一台の車が入ってきた。その時点ではまだ私は事態がわからずにいた。「せっかくバックしようとしたのに?」と思いながらも、その入ってきた車の車内をおもむろにみてみると、「んっ??ん?!!!オオワシじゃないか?!!なんで?どうして?」と心の中で絶叫する。なんとそこには、後部座席の背もたれの肩にとまった1羽のオオワシだった。
        
 思いもよらぬオオワシとのご対面。オオワシを搬送してきたのは北海道の鳥獣保護監視員の方だった。監視員の話によると、昨日の夜に阿寒湖畔スキー場付近の養魚場にて衰弱していたオオワシ1羽を阿寒湖漁業協同組合の職員の方が発見したとのこと。その後、道の監視員に連絡が入り、昨晩一時保護するということになったという。

 戸田保護官が釧路湿原野生生物保護センター(WLC)へすぐさま連絡。車内にいたオオワシを毛布で覆って箱に戻そうとする。しかし、鋭い爪が座席のシートに深く食い込み、なかなか離れようとしない。今度は、2,3人の男性にも手伝ってもらい、爪1本1本を慎重に座席のシートから外していく。そしてなんかとか無事、箱の中へオオワシを収めることができた。
(※もし、負傷したり衰弱したりしているオオワシ、オジロワシなどの大型の鳥類を発見したら、まず都道府県の担当部局や環境省に連絡をして下さい。決して一人で扱わないようにして下さい。大変危険です。)

 衰弱したオオワシをWLCへ搬送するのが私の任務となった。阿寒湖畔からWLCまでは、車で約1時間半。
「オオワシを乗せて1時間半の旅か」
「もし運転中、箱から突然飛び出してきたらどうしよう」・・・
とか色々なことが頭の中を錯綜する。
 なにしろオオワシと二人きり(?)のドライブは、過去に経験した覚えがない。少々不安を抱えながらも、聞いた情報を頭の中で整理しつつ、オオワシを乗せた車を走らせ、WLCへと急いだ。


11:30a.m. 釧路湿原野生生物保護センターに到着。

 早速獣医さんにオオワシを診てもらった。「しばらくこちらにいてください」と獣医さんに言われ、しばらく診察の様子を見ることになった。まず、体に外傷がないか確認し、聴診器で診察、血液検査、体重測定、補液、レントゲン、給餌等を獣医さんが手際よく済ませていく。
 よく見るとオオワシの尾羽の部分に緑色の便が付着していた。通常の排泄物の色は白色と黒色だが、緑色の便は、鉛中毒の症状だという。案の定、獣医さんによると、鉛中毒の可能性があるとのこと。しばらくWLCで収容し様子を見てもらうことになった。


11:30p.m. 診察終了

 帰りの車の中で、しばらく「鉛中毒」という言葉が頭に響いていた。既に北海道では、エゾシカ猟においては鉛弾の使用が禁止されている。それがなぜ、鉛中毒の症状が出ているのか。それを考えるととても心が痛む。後になって聞いた話だが、衰弱したオオワシが発見された場所の上空を1羽のオオワシが旋回して飛んでいたという。おそらくこの2羽のオオワシは、つがいだったのだろう。今こうしている間もその衰弱したオオワシを待っているのかもしれないと思うととてもせつない。


 こうした野生鳥獣の鉛中毒の問題の一番の解決策は、狩猟の際に鉛弾を使用しないこと。鉛弾から無毒性の代替弾への切り替えができれば、多くの野生生物が広い自然環境の中で安心して棲息ができる。私たちのほんの少しの配慮、思いやりで自然環境は、少しずつではあるけれど私たちの気持ちに答えてくれ、私たちをも幸せにしてくれるはず。
 衰弱したオオワシが1日も早く回復し、再び元気に大空を舞う日がくればと思う。


●鉛中毒とは
 鉛弾で撃たれ放置されたエゾシカの体内に残された鉛分を、猛禽類等が肉と一緒に摂取してしまうなどして起きるもの。死に至ることもある。症状としては(オオワシの場合)、前かがみになり、尾羽に緑色の便が付着することなど。



★オオワシの豆知識★

和名 オオワシ  学名 Haliaeetus pelagicus pelagicus (Pallas, 1811)
英名 Stellar’s sea eagle (East Siberian subspeacies)

摘要:カムチャッカ半島・オホーツク海沿岸・サハリン北部で繁殖し、日本には冬鳥として渡来する。北海道各地の海岸、湖沼周辺とくに知床半島、根室海峡の海岸に多く越冬する。

形態:全長90~100cm、翼開長220~245cm。メスがオスより大きい。体の大部分は黒褐色、小雨覆、下雨覆の一部、腿、尾は白色。尾はくさび形をしている。嘴と脚は黄色。オジロワシに比べ大型。

生態:繁殖期は、4月下旬~8月。産卵数は1~3、多くは2。幼鳥は8月上旬に巣立つ。日本には10月下旬~11月に飛来、多くは3月下旬までには渡去する。

食性:主に魚類、鳥類、哺乳類を捕らえて、またはこれらの死体を食べる。
                        
その他:2005年12月にオオワシ保護増殖事業計画が文部科学省、農林水産省、国土交通省、環境省により策定され、当計画に基づき各種保護増殖事業が実施されている。

<参考文献> 

・森と木と人のつながりを考える (株)日本林業調査会,2001. 野生鳥獣保護管理ハンドブック?ワイルドライフ・マネージメントを目指して?

・財団法人 自然環境研究センター,2001. 日本の絶滅のおそれのある野生
生物?レッドデータブック?(脊椎動物編)

・斜里町・斜里町教育委員会,1999. しれとこライブラリー?知床の鳥類


車内にいた思わぬ急患(オオワシ)。これほど間近で見たのは初めてかもしれない。衰弱しているとはいえ、ものすごい迫力。


血液検査を受けるオオワシ(釧路湿原野生生物保護センターにて)


白い尾羽に付着した緑色の便。鉛中毒のワシは、尾羽が緑色に汚れていることが多いという。

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2007年02月19日阿寒湖の氷上をゆく

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 福井 絵美

2月13日(火)

 2月18日(日)に予定している阿寒湖畔エコミュージアムセンター主催の自然ふれあい行事「エゾシカ観察ハイキング」のコースの下見と巡視のため、阿寒湖を見下ろす展望地、阿寒湖の氷上、ボッケ(湖畔の地熱地帯)、大島等へ「歩くスキー」を履いて行ってきました。
 
 阿寒湖湖畔南部の森林内をスキーを履いて登り始めてから2時間、ようやく白く結氷した阿寒湖、雄大で今にも動き出しそうな雄阿寒岳、そして大島全体がはっきり見えてきた。特に名前のないこの展望台。これだけ迫力ある雄阿寒岳を間近で、しかも同じくらいの目線でみられる場所はそうないだろうと実感。空を見上げると、ゾッとするような青さだった。雪の斜面と周辺のシラカンバ、そして雲の白さがその空の色と見事にマッチしていた。

 絶景を前にして展望台で昼食をとり30分程休んだ後、阿寒湖の大島へと湖岸側の雪の斜面を滑り下りた。雪の上は、太陽の光がキラキラ反射してダイアモンドが散りばめられたよう。人の足跡がない雪の斜面をスキーで滑るのは、また格別。あるのは、エゾリス、エゾシカ等の足跡だけ。決して他では味わうことのできない「特別な場所」ならではのぜいたくな冬の楽しみのひとつだ。

 阿寒湖の氷上に出ると、目の間に広がるのは一面、白、白、白一色・・・。ひとまず真正面にある大島へと向った。岸のあたりを見ると何か様子が違っていた。大島に生えていた木、特に、トドマツなどの針葉樹が風で倒れていたのだ。年末年始の低気圧の影響による爪あとを目の当たりにし、自然のすさまじさを改めて感じさせられた。

 阿寒湖の湖岸に沿って歩いていくと、氷上を歩いているエゾシカを発見。またしばらく歩くとエゾシカの親子が小島の上でこちらの様子をじっと伺っていた。そして突然我に返ったかのように、「ピヤァッ」と警戒音を発した途端、サッと一目散に森の中へと姿をくらました。冬の森を歩いていてエゾシカに出会った時、しばらく時間(とき)が止まったかのような場面(エゾシカが警戒音を発し逃げるまでの時間)がある。そのわずかな間に、私は度々不思議な時間が流れているように感じる。

 ふと後ろを振り返ると、薄く白い雲のヴェールに包まれた雄阿寒岳が見えた。すっかり夕暮れ時となり、淡いピンク、紫と柔らかい色に包まれた小島は、まるで異国の地のように見えた。


展望台からの眺め(見えるのは大島、阿寒湖、雄阿寒岳)


低気圧の影響による風倒木


阿寒湖の氷上にたたずむエゾシカ

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2006年12月21日『ボッケの森をネットで護ろう』を終えて・・・

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 福井 絵美

 12月10日(日)に行われた(財)前田一歩園財団及び阿寒湖畔エコミュージアムセンター運営推進協議会主催の自然ふれあい行事『ボッケの森をネットで護ろう』は、昨年に引き続き今回が2回目になります。
 今回の行事を実施するにあたり、調査の実施、スライド報告会、ネットの資材提供などの面で、(財)前田一歩園財団、釧路森づくりセンターに多大な御協力をいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

 今回の行事『ボッケの森をネットで護ろう』では、越冬期のエゾシカによる樹皮食害を少しでもくいとめ、また将来の母樹となる木を残すために、木にプラスチックネットを巻いて森の生態を護ろうという目的でいくつかの作業を行いました。

 午前10時に阿寒湖畔エコミュージアムセンターに集合・受付を行い、10時半よりスライド報告会を行いました。
 報告会では、?「阿寒の森のはたらき」について釧路森づくりセンターより、?「阿寒のシカの生態」では、阿寒湖畔でこれまでに行われてきたエゾシカ対策を含めエゾシカの生態について、阿寒湖自然保護官事務所アクティブレンジャーこと私(福井)より、そして?「平成18年度ボッケの森 被害木調査報告」では、被害の現状を知っていただくため、本年度ボッケの森で実施した被害木調査の報告を(財)自然公園財団スタッフにより報告を行いました。

 平成18年度9月~12月にかけて行った?の「被害木調査」では、森の中に「どんな木が・どれくらいあるのか」を1本1本把握すること、木に被害があるかないかを調べ「被害率」を把握すること、そして「被害率」から危機的な状況にある木を把握し、その結果を踏まえネットを巻く木を選定することを目的としました。
 調査区(全部で13区画)は、昨年度の調査区の残りの7区画(計24105?)で、そのうちの3区画(区画5、区画6、区画11)を、ネット巻き作業を行う対象区画としました。

 今年度の毎木調査の結果(7区画分)、小径木に被害が集中していたシウリザクラ(被害率42.5%)、小径?大径の木までまんべんなく被害を受け、近い将来危機的な状況になるとされるオヒョウニレ(64.2%)、そして、最も危機的な状態のイチイ(被害率82.6%)の3樹種の被害率が極めて高いという結果となりました。

 そして、今回3区画を選び、その中から合計146本の木をネット巻き対象として選定しました。

 今回の行事の参加者は、12名、スタッフ20名(パークボランティア7名、釧路森づくりセンター5名、(財)前田一歩園財団3名、支庁林務課1名、(財)自然公園財団3名、環境省阿寒湖自然保護官事務所1名)の計32名でした。
 ネット巻き作業は、13時?14時半とし、2つのグループに分かれ、ネットを運ぶ作業、ネットを切る作業、ネットを木に巻く作業と、2、3人ごとに役割分担をし、それぞれの作業を交代しながら行いました。
 作業開始直後は、作業の段取りに慣れるのにしばらく時間を要している様子でしたが、次第にネットを巻く本数が増すうちに、参加者の表情にもゆとりが見え始めてきました。そして最後には、「もっとネットを巻きたい」、「おもしろかった」という声が聞かれました。

 私は巡視業務で白湯山展望台という場所へよく訪れることがあります。その場所から眺める阿寒の風景が私は大好きです。その場所に立つだけで、雄阿寒岳、雌阿寒岳とともに阿寒湖と阿寒湖畔の森一帯を眺められるとても美しい景観に出会うことができるからです。
 しかし、ボッケの森に一度入ると、実際多くの木々がエゾシカによる被害を受け病んでいる状況を目の当たりにします。エゾシカが阿寒の森の生態に与える影響はとても大きく、とても見て見ぬふりはできないほど見た目よりもその被害というのはとても深刻なものです。

 エゾシカによる「樹皮はぎ」は、冬場の餌不足によりおこるもので、自然の摂理でもあります。しかし近年、エゾシカの個体数が増加し、それに比例して樹皮食害が深刻化している背景には、農地造成(本来のエゾシカの生息地が減少する)やエゾオオカミなどの天敵の絶滅、ハンターの高齢化などの人為的要因により、好適な環境(森)にエゾシカを集中(自然的要因もある)させてしまったのではないかということも指摘されています。

 阿寒の森は、エゾシカにとっても、野鳥やエゾリスなどの他の野生生物にとっても生存する上でなくてはならない貴重な宝物です。そして、私たち人間も、心と体を癒してくれるという恩恵を阿寒の森から受けています。

 今回の行事『ボッケの森をネットで護ろう』を終えて、私を含め、今回参加された方々、個人個人が阿寒の森の実態を知り、森の生態の深さを感じることで、森やエゾシカとの関わり方や自然環境に対して何ができるかを考えるきっかけになればと思います。そしてそれが、森とシカと人が共生する社会への一歩につながることを願っています。



ボッケの森の被害木調査の様子(阿寒湖自然保護官事務所アクティブレンジャー)


ボッケの森概略図及び調査範囲 (財)自然公園財団阿寒湖支部提供


エゾシカによる樹皮食害を防止するためのネット巻き作業の様子(平成18年12月10日)

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2006年11月22日阿寒に冬到来!!

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 福井 絵美

 11月13日 巡視日和。今朝の阿寒の天候は、快晴とは言えないが、晴れ。

 昨日、阿寒湖畔周辺で初雪が降った。降り続いた雪がうっすら地面に残っていた。水たまりは凍りつき、その上を歩くたびにパリッパリッという音がはじく。天候はよいけれど、ひとたび外に出ると冷たい空気がひやりとした。

 鶴見峠、フレベツ線の林道を車で走り、標高600~700mくらいまでくると、あたりの森は一面白一色の銀世界。鶴見峠からは、うっすらと雪化粧した雌阿寒岳と雄阿寒岳を、フレベツ線では、木々の間から水墨画のようなフップシ岳をのぞむことができた。

 例年、阿寒の紅葉期は9月下旬?10月中旬頃といわれ、今年も9月下旬頃から、ちらほらと広葉樹の葉が色づきはじめていた。今年も紅葉を楽しみにしていたものの、残念なことに10月上旬の低気圧の影響により、完全に色づく前に葉が落ちてしまった。

 11月を迎え、初雪が降り、季節がめぐるのが本当に早いものだなぁと、自然が身近にあるせいか、特に阿寒に移り住んでから常日頃実感する。

 本格的な冬が到来するのは、12月半ば頃。阿寒ならではの極寒をまた肌で実感できる季節がもうそこまで来ていた。


まるで粉砂糖をふりかけたような銀世界のフレベツ線道路(林道)


うっすらと雪化粧した雄阿寒岳(鶴見峠から)


水墨画のようなフップシ岳(1225.5m)

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2006年10月06日雌阿寒岳登山

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 福井 絵美

 9月16日(土)、「雄阿寒岳山開き実行委員会」によるイベント、「雌阿寒岳登山」の日。この日は、参加者20名、スタッフ10名の計30名で雌阿寒岳に登りました。

 朝7:50に集合し、バスで阿寒湖側の登山口へと向かいました。登山口に到着してから軽く準備体操をし、8:30より登山を開始。天候は快晴とまではいかないけれど、晴れ。辺りの空気はひんやりと気持ち良く、ナナカマドの葉がうっすらとオレンジ色に染まりはじめていました。上空を見上げると、空の色とナナカマドの葉のコントラストが非常に美しい。もうすでに紅葉がはじまっている。登山口周辺を見渡すと、黄色や薄いオレンジに染まった広葉樹に黒々とした針葉樹のシルエットがアクセントになっていた。エゾマツ、トドマツの針葉樹、ニレ、ハンノキ、カエデ類の広葉樹が混在した森(針広混交林)は、阿寒の森の特徴であり、普段から見慣れている私でさえも思わず足を止めてしまうほどのなんとも言えない美しい情景。

 入山をしてから2時間あまり、少しずつ視点が高くなるにつれ見えてくる景色や周囲の植生の変化や、登山道脇にひょっこり顔を出す野の花、どこからともなく聞こえてくる野鳥の鳴き声を楽しむ。見るもの聞くもの、次から次へと興味深いものが飛び込んできて、登っている私たちをあきさせることなく、心を癒してくれる。

 11:00 雌阿寒岳山頂到着。参加者、スタッフ全員で記念撮影。久しぶりに見た雌阿寒岳の噴火口。まるでジェット機が離陸時に出すゴォーッというような迫力ある水蒸気の噴出音が常時聞こえてくる。風が出て、肌寒い。持ってきたフリースを着込み、風のあたらない場所へ移動し、昼食をとる。

 12:10 下山開始。登山終了地点であるオンネトーの野営場付近の登山口へと向けてその場を後にした。右には雌阿寒岳の噴火口、左には美しい形状の阿寒富士を目に焼きつけた。まるでテレビでハイビジョン映像を360度見ているような(※本物はそれ以上です)迫力ある光景でした。

 14:00 登山終了地点の登山口に到着。イベントに参加された方、スタッフともに無事ケガもなく、終始笑顔がこぼれ、満足された様子でした。最後に、登ってきた雌阿寒岳を感慨深く眺め、帰路に着きました。

 雌阿寒岳は、平成18年2月18日以降火山性地震が増加し、3月21日に山頂北西部斜面において小規模な噴火が発生してから、地元自治体や関係機関、関係団体から構成されている「雌阿寒岳火山防災会議協議会」による入山規制が実施されてきました。
 その後火山活動が落ちついてきたため、同協議会において入山規制解除の検討がなされ、9月1日より入山規制が解除されました。

 入山される際は十分注意して、天候、服装、装備等を確認し、登山上のマナーを守り、登山を楽しんでほしいと思います。


阿寒湖側の雌阿寒岳登山口付近の紅葉(平成18年10月2日撮影)


左:阿寒富士(1476.3m) 右:雌阿寒岳(1499m)の火口


シラタマノキ

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