ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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阿寒摩周国立公園 阿寒湖

88件の記事があります。

2007年05月29日春爛漫?!

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 福井 絵美

5月29日(火)  

  日が差し込む日が増え、日に日に暖かくなる今日この頃。阿寒湖畔にもようやく桜が開花しました。その甘い香りに誘われて虫たちも活発になってきています。フキノトウ、ミズバショウ、エゾエンゴサクを始め、これからはエゾオオサクラソウやニリンソウなどが見頃を迎えます。さまざまな野花を観賞するには6月頃がお勧めの時期です。

 しかし、このような野花だけでなく雪解けとともに春に目につくのは、国道や林道などの道ばたに転がっている空き缶やペットボトル、ガラスのビンなどさまざまです。ゴミと一緒に顔を出すミズバショウやフキノトウがとてもかわいそう。「とるのは写真だけ、残すのは想い出だけ」という言葉があるように、ゴミはその場に捨てずに持ち帰り、ひとりひとりが気持ちよく自然を楽しむことができるよう、公園の利用マナーを守りましょう。



エゾヤマザクラ



フキノトウのそばに捨てられたペットボトルのゴミ



ミズバショウ

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2007年04月25日今年もどうそよろしく

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 福井 絵美

 阿寒湖AR(アクティブレンジャー)の福井絵美です。平成17年6月に阿寒湖自然保護官事務所に勤務して1年10ヶ月。また今年の4月から1年間、アクティブレンジャーとして同事務所にてお世話になることになりました。今年度も引き続きアクティブレンジャー業務に励んでいきたいと思っていますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 今回は、阿寒湖畔EMC(エコミュージアムセンター)の施設内に、「アクティブレンジャー展示コーナー」を設けましたのでそのご報告です。

 アクティブレンジャーは、日本の国立公園において全国で60名以上、各国立公園に1~2名配属されていますが、アクティブレンジャーの業務内容(業務内容は、各国立公園によって多少異なる場合がある)などについてご存知の方はまだまだ少ないのではと思いました。そこで、レンジャーの制服のカラーも周知してもらう意味でも「展示」をしてみるのが良いのではと思い作ってみました。

 この「アクティブレンジャー展示コーナー」は、アクティブレンジャーの活動の紹介と私が阿寒に来てから約2年間かけて撮影した阿寒の四季の風景、野生の動植物、阿寒湖パークボランティアの皆さんの活動の様子、自然観察会の様子などなど、たくさんの美しい写真を展示しました。ふだん、何気なく眺めていた阿寒の風景や野生の動植物たち、また人々のいきいきとした活動の様子が伝わったらと思っています。未熟な点が多々あると思いますが、是非、楽しんでご覧になって頂けたらと思います。







アクティブレンジャー展示コーナーの展示物の一部。内容は乞うご期待!

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2007年03月15日思わぬ急患

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 福井 絵美

3月6日(火) 晴れ 9:30a.m. 

 事務所の駐車場に止めてあった公用車をバックさせて出そうとしたその時だった。真後ろに突如一台の車が入ってきた。その時点ではまだ私は事態がわからずにいた。「せっかくバックしようとしたのに?」と思いながらも、その入ってきた車の車内をおもむろにみてみると、「んっ??ん?!!!オオワシじゃないか?!!なんで?どうして?」と心の中で絶叫する。なんとそこには、後部座席の背もたれの肩にとまった1羽のオオワシだった。
        
 思いもよらぬオオワシとのご対面。オオワシを搬送してきたのは北海道の鳥獣保護監視員の方だった。監視員の話によると、昨日の夜に阿寒湖畔スキー場付近の養魚場にて衰弱していたオオワシ1羽を阿寒湖漁業協同組合の職員の方が発見したとのこと。その後、道の監視員に連絡が入り、昨晩一時保護するということになったという。

 戸田保護官が釧路湿原野生生物保護センター(WLC)へすぐさま連絡。車内にいたオオワシを毛布で覆って箱に戻そうとする。しかし、鋭い爪が座席のシートに深く食い込み、なかなか離れようとしない。今度は、2,3人の男性にも手伝ってもらい、爪1本1本を慎重に座席のシートから外していく。そしてなんかとか無事、箱の中へオオワシを収めることができた。
(※もし、負傷したり衰弱したりしているオオワシ、オジロワシなどの大型の鳥類を発見したら、まず都道府県の担当部局や環境省に連絡をして下さい。決して一人で扱わないようにして下さい。大変危険です。)

 衰弱したオオワシをWLCへ搬送するのが私の任務となった。阿寒湖畔からWLCまでは、車で約1時間半。
「オオワシを乗せて1時間半の旅か」
「もし運転中、箱から突然飛び出してきたらどうしよう」・・・
とか色々なことが頭の中を錯綜する。
 なにしろオオワシと二人きり(?)のドライブは、過去に経験した覚えがない。少々不安を抱えながらも、聞いた情報を頭の中で整理しつつ、オオワシを乗せた車を走らせ、WLCへと急いだ。


11:30a.m. 釧路湿原野生生物保護センターに到着。

 早速獣医さんにオオワシを診てもらった。「しばらくこちらにいてください」と獣医さんに言われ、しばらく診察の様子を見ることになった。まず、体に外傷がないか確認し、聴診器で診察、血液検査、体重測定、補液、レントゲン、給餌等を獣医さんが手際よく済ませていく。
 よく見るとオオワシの尾羽の部分に緑色の便が付着していた。通常の排泄物の色は白色と黒色だが、緑色の便は、鉛中毒の症状だという。案の定、獣医さんによると、鉛中毒の可能性があるとのこと。しばらくWLCで収容し様子を見てもらうことになった。


11:30p.m. 診察終了

 帰りの車の中で、しばらく「鉛中毒」という言葉が頭に響いていた。既に北海道では、エゾシカ猟においては鉛弾の使用が禁止されている。それがなぜ、鉛中毒の症状が出ているのか。それを考えるととても心が痛む。後になって聞いた話だが、衰弱したオオワシが発見された場所の上空を1羽のオオワシが旋回して飛んでいたという。おそらくこの2羽のオオワシは、つがいだったのだろう。今こうしている間もその衰弱したオオワシを待っているのかもしれないと思うととてもせつない。


 こうした野生鳥獣の鉛中毒の問題の一番の解決策は、狩猟の際に鉛弾を使用しないこと。鉛弾から無毒性の代替弾への切り替えができれば、多くの野生生物が広い自然環境の中で安心して棲息ができる。私たちのほんの少しの配慮、思いやりで自然環境は、少しずつではあるけれど私たちの気持ちに答えてくれ、私たちをも幸せにしてくれるはず。
 衰弱したオオワシが1日も早く回復し、再び元気に大空を舞う日がくればと思う。


●鉛中毒とは
 鉛弾で撃たれ放置されたエゾシカの体内に残された鉛分を、猛禽類等が肉と一緒に摂取してしまうなどして起きるもの。死に至ることもある。症状としては(オオワシの場合)、前かがみになり、尾羽に緑色の便が付着することなど。



★オオワシの豆知識★

和名 オオワシ  学名 Haliaeetus pelagicus pelagicus (Pallas, 1811)
英名 Stellar’s sea eagle (East Siberian subspeacies)

摘要:カムチャッカ半島・オホーツク海沿岸・サハリン北部で繁殖し、日本には冬鳥として渡来する。北海道各地の海岸、湖沼周辺とくに知床半島、根室海峡の海岸に多く越冬する。

形態:全長90~100cm、翼開長220~245cm。メスがオスより大きい。体の大部分は黒褐色、小雨覆、下雨覆の一部、腿、尾は白色。尾はくさび形をしている。嘴と脚は黄色。オジロワシに比べ大型。

生態:繁殖期は、4月下旬~8月。産卵数は1~3、多くは2。幼鳥は8月上旬に巣立つ。日本には10月下旬~11月に飛来、多くは3月下旬までには渡去する。

食性:主に魚類、鳥類、哺乳類を捕らえて、またはこれらの死体を食べる。
                        
その他:2005年12月にオオワシ保護増殖事業計画が文部科学省、農林水産省、国土交通省、環境省により策定され、当計画に基づき各種保護増殖事業が実施されている。

<参考文献> 

・森と木と人のつながりを考える (株)日本林業調査会,2001. 野生鳥獣保護管理ハンドブック?ワイルドライフ・マネージメントを目指して?

・財団法人 自然環境研究センター,2001. 日本の絶滅のおそれのある野生
生物?レッドデータブック?(脊椎動物編)

・斜里町・斜里町教育委員会,1999. しれとこライブラリー?知床の鳥類


車内にいた思わぬ急患(オオワシ)。これほど間近で見たのは初めてかもしれない。衰弱しているとはいえ、ものすごい迫力。


血液検査を受けるオオワシ(釧路湿原野生生物保護センターにて)


白い尾羽に付着した緑色の便。鉛中毒のワシは、尾羽が緑色に汚れていることが多いという。

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2007年02月19日阿寒湖の氷上をゆく

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 福井 絵美

2月13日(火)

 2月18日(日)に予定している阿寒湖畔エコミュージアムセンター主催の自然ふれあい行事「エゾシカ観察ハイキング」のコースの下見と巡視のため、阿寒湖を見下ろす展望地、阿寒湖の氷上、ボッケ(湖畔の地熱地帯)、大島等へ「歩くスキー」を履いて行ってきました。
 
 阿寒湖湖畔南部の森林内をスキーを履いて登り始めてから2時間、ようやく白く結氷した阿寒湖、雄大で今にも動き出しそうな雄阿寒岳、そして大島全体がはっきり見えてきた。特に名前のないこの展望台。これだけ迫力ある雄阿寒岳を間近で、しかも同じくらいの目線でみられる場所はそうないだろうと実感。空を見上げると、ゾッとするような青さだった。雪の斜面と周辺のシラカンバ、そして雲の白さがその空の色と見事にマッチしていた。

 絶景を前にして展望台で昼食をとり30分程休んだ後、阿寒湖の大島へと湖岸側の雪の斜面を滑り下りた。雪の上は、太陽の光がキラキラ反射してダイアモンドが散りばめられたよう。人の足跡がない雪の斜面をスキーで滑るのは、また格別。あるのは、エゾリス、エゾシカ等の足跡だけ。決して他では味わうことのできない「特別な場所」ならではのぜいたくな冬の楽しみのひとつだ。

 阿寒湖の氷上に出ると、目の間に広がるのは一面、白、白、白一色・・・。ひとまず真正面にある大島へと向った。岸のあたりを見ると何か様子が違っていた。大島に生えていた木、特に、トドマツなどの針葉樹が風で倒れていたのだ。年末年始の低気圧の影響による爪あとを目の当たりにし、自然のすさまじさを改めて感じさせられた。

 阿寒湖の湖岸に沿って歩いていくと、氷上を歩いているエゾシカを発見。またしばらく歩くとエゾシカの親子が小島の上でこちらの様子をじっと伺っていた。そして突然我に返ったかのように、「ピヤァッ」と警戒音を発した途端、サッと一目散に森の中へと姿をくらました。冬の森を歩いていてエゾシカに出会った時、しばらく時間(とき)が止まったかのような場面(エゾシカが警戒音を発し逃げるまでの時間)がある。そのわずかな間に、私は度々不思議な時間が流れているように感じる。

 ふと後ろを振り返ると、薄く白い雲のヴェールに包まれた雄阿寒岳が見えた。すっかり夕暮れ時となり、淡いピンク、紫と柔らかい色に包まれた小島は、まるで異国の地のように見えた。


展望台からの眺め(見えるのは大島、阿寒湖、雄阿寒岳)


低気圧の影響による風倒木


阿寒湖の氷上にたたずむエゾシカ

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2006年12月21日『ボッケの森をネットで護ろう』を終えて・・・

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 福井 絵美

 12月10日(日)に行われた(財)前田一歩園財団及び阿寒湖畔エコミュージアムセンター運営推進協議会主催の自然ふれあい行事『ボッケの森をネットで護ろう』は、昨年に引き続き今回が2回目になります。
 今回の行事を実施するにあたり、調査の実施、スライド報告会、ネットの資材提供などの面で、(財)前田一歩園財団、釧路森づくりセンターに多大な御協力をいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

 今回の行事『ボッケの森をネットで護ろう』では、越冬期のエゾシカによる樹皮食害を少しでもくいとめ、また将来の母樹となる木を残すために、木にプラスチックネットを巻いて森の生態を護ろうという目的でいくつかの作業を行いました。

 午前10時に阿寒湖畔エコミュージアムセンターに集合・受付を行い、10時半よりスライド報告会を行いました。
 報告会では、?「阿寒の森のはたらき」について釧路森づくりセンターより、?「阿寒のシカの生態」では、阿寒湖畔でこれまでに行われてきたエゾシカ対策を含めエゾシカの生態について、阿寒湖自然保護官事務所アクティブレンジャーこと私(福井)より、そして?「平成18年度ボッケの森 被害木調査報告」では、被害の現状を知っていただくため、本年度ボッケの森で実施した被害木調査の報告を(財)自然公園財団スタッフにより報告を行いました。

 平成18年度9月~12月にかけて行った?の「被害木調査」では、森の中に「どんな木が・どれくらいあるのか」を1本1本把握すること、木に被害があるかないかを調べ「被害率」を把握すること、そして「被害率」から危機的な状況にある木を把握し、その結果を踏まえネットを巻く木を選定することを目的としました。
 調査区(全部で13区画)は、昨年度の調査区の残りの7区画(計24105?)で、そのうちの3区画(区画5、区画6、区画11)を、ネット巻き作業を行う対象区画としました。

 今年度の毎木調査の結果(7区画分)、小径木に被害が集中していたシウリザクラ(被害率42.5%)、小径?大径の木までまんべんなく被害を受け、近い将来危機的な状況になるとされるオヒョウニレ(64.2%)、そして、最も危機的な状態のイチイ(被害率82.6%)の3樹種の被害率が極めて高いという結果となりました。

 そして、今回3区画を選び、その中から合計146本の木をネット巻き対象として選定しました。

 今回の行事の参加者は、12名、スタッフ20名(パークボランティア7名、釧路森づくりセンター5名、(財)前田一歩園財団3名、支庁林務課1名、(財)自然公園財団3名、環境省阿寒湖自然保護官事務所1名)の計32名でした。
 ネット巻き作業は、13時?14時半とし、2つのグループに分かれ、ネットを運ぶ作業、ネットを切る作業、ネットを木に巻く作業と、2、3人ごとに役割分担をし、それぞれの作業を交代しながら行いました。
 作業開始直後は、作業の段取りに慣れるのにしばらく時間を要している様子でしたが、次第にネットを巻く本数が増すうちに、参加者の表情にもゆとりが見え始めてきました。そして最後には、「もっとネットを巻きたい」、「おもしろかった」という声が聞かれました。

 私は巡視業務で白湯山展望台という場所へよく訪れることがあります。その場所から眺める阿寒の風景が私は大好きです。その場所に立つだけで、雄阿寒岳、雌阿寒岳とともに阿寒湖と阿寒湖畔の森一帯を眺められるとても美しい景観に出会うことができるからです。
 しかし、ボッケの森に一度入ると、実際多くの木々がエゾシカによる被害を受け病んでいる状況を目の当たりにします。エゾシカが阿寒の森の生態に与える影響はとても大きく、とても見て見ぬふりはできないほど見た目よりもその被害というのはとても深刻なものです。

 エゾシカによる「樹皮はぎ」は、冬場の餌不足によりおこるもので、自然の摂理でもあります。しかし近年、エゾシカの個体数が増加し、それに比例して樹皮食害が深刻化している背景には、農地造成(本来のエゾシカの生息地が減少する)やエゾオオカミなどの天敵の絶滅、ハンターの高齢化などの人為的要因により、好適な環境(森)にエゾシカを集中(自然的要因もある)させてしまったのではないかということも指摘されています。

 阿寒の森は、エゾシカにとっても、野鳥やエゾリスなどの他の野生生物にとっても生存する上でなくてはならない貴重な宝物です。そして、私たち人間も、心と体を癒してくれるという恩恵を阿寒の森から受けています。

 今回の行事『ボッケの森をネットで護ろう』を終えて、私を含め、今回参加された方々、個人個人が阿寒の森の実態を知り、森の生態の深さを感じることで、森やエゾシカとの関わり方や自然環境に対して何ができるかを考えるきっかけになればと思います。そしてそれが、森とシカと人が共生する社会への一歩につながることを願っています。



ボッケの森の被害木調査の様子(阿寒湖自然保護官事務所アクティブレンジャー)


ボッケの森概略図及び調査範囲 (財)自然公園財団阿寒湖支部提供


エゾシカによる樹皮食害を防止するためのネット巻き作業の様子(平成18年12月10日)

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2006年11月22日阿寒に冬到来!!

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 福井 絵美

 11月13日 巡視日和。今朝の阿寒の天候は、快晴とは言えないが、晴れ。

 昨日、阿寒湖畔周辺で初雪が降った。降り続いた雪がうっすら地面に残っていた。水たまりは凍りつき、その上を歩くたびにパリッパリッという音がはじく。天候はよいけれど、ひとたび外に出ると冷たい空気がひやりとした。

 鶴見峠、フレベツ線の林道を車で走り、標高600~700mくらいまでくると、あたりの森は一面白一色の銀世界。鶴見峠からは、うっすらと雪化粧した雌阿寒岳と雄阿寒岳を、フレベツ線では、木々の間から水墨画のようなフップシ岳をのぞむことができた。

 例年、阿寒の紅葉期は9月下旬?10月中旬頃といわれ、今年も9月下旬頃から、ちらほらと広葉樹の葉が色づきはじめていた。今年も紅葉を楽しみにしていたものの、残念なことに10月上旬の低気圧の影響により、完全に色づく前に葉が落ちてしまった。

 11月を迎え、初雪が降り、季節がめぐるのが本当に早いものだなぁと、自然が身近にあるせいか、特に阿寒に移り住んでから常日頃実感する。

 本格的な冬が到来するのは、12月半ば頃。阿寒ならではの極寒をまた肌で実感できる季節がもうそこまで来ていた。


まるで粉砂糖をふりかけたような銀世界のフレベツ線道路(林道)


うっすらと雪化粧した雄阿寒岳(鶴見峠から)


水墨画のようなフップシ岳(1225.5m)

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2006年10月06日雌阿寒岳登山

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 福井 絵美

 9月16日(土)、「雄阿寒岳山開き実行委員会」によるイベント、「雌阿寒岳登山」の日。この日は、参加者20名、スタッフ10名の計30名で雌阿寒岳に登りました。

 朝7:50に集合し、バスで阿寒湖側の登山口へと向かいました。登山口に到着してから軽く準備体操をし、8:30より登山を開始。天候は快晴とまではいかないけれど、晴れ。辺りの空気はひんやりと気持ち良く、ナナカマドの葉がうっすらとオレンジ色に染まりはじめていました。上空を見上げると、空の色とナナカマドの葉のコントラストが非常に美しい。もうすでに紅葉がはじまっている。登山口周辺を見渡すと、黄色や薄いオレンジに染まった広葉樹に黒々とした針葉樹のシルエットがアクセントになっていた。エゾマツ、トドマツの針葉樹、ニレ、ハンノキ、カエデ類の広葉樹が混在した森(針広混交林)は、阿寒の森の特徴であり、普段から見慣れている私でさえも思わず足を止めてしまうほどのなんとも言えない美しい情景。

 入山をしてから2時間あまり、少しずつ視点が高くなるにつれ見えてくる景色や周囲の植生の変化や、登山道脇にひょっこり顔を出す野の花、どこからともなく聞こえてくる野鳥の鳴き声を楽しむ。見るもの聞くもの、次から次へと興味深いものが飛び込んできて、登っている私たちをあきさせることなく、心を癒してくれる。

 11:00 雌阿寒岳山頂到着。参加者、スタッフ全員で記念撮影。久しぶりに見た雌阿寒岳の噴火口。まるでジェット機が離陸時に出すゴォーッというような迫力ある水蒸気の噴出音が常時聞こえてくる。風が出て、肌寒い。持ってきたフリースを着込み、風のあたらない場所へ移動し、昼食をとる。

 12:10 下山開始。登山終了地点であるオンネトーの野営場付近の登山口へと向けてその場を後にした。右には雌阿寒岳の噴火口、左には美しい形状の阿寒富士を目に焼きつけた。まるでテレビでハイビジョン映像を360度見ているような(※本物はそれ以上です)迫力ある光景でした。

 14:00 登山終了地点の登山口に到着。イベントに参加された方、スタッフともに無事ケガもなく、終始笑顔がこぼれ、満足された様子でした。最後に、登ってきた雌阿寒岳を感慨深く眺め、帰路に着きました。

 雌阿寒岳は、平成18年2月18日以降火山性地震が増加し、3月21日に山頂北西部斜面において小規模な噴火が発生してから、地元自治体や関係機関、関係団体から構成されている「雌阿寒岳火山防災会議協議会」による入山規制が実施されてきました。
 その後火山活動が落ちついてきたため、同協議会において入山規制解除の検討がなされ、9月1日より入山規制が解除されました。

 入山される際は十分注意して、天候、服装、装備等を確認し、登山上のマナーを守り、登山を楽しんでほしいと思います。


阿寒湖側の雌阿寒岳登山口付近の紅葉(平成18年10月2日撮影)


左:阿寒富士(1476.3m) 右:雌阿寒岳(1499m)の火口


シラタマノキ

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2006年07月30日ペンケトー・パンケトー自然探勝会

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 福井 絵美

7月16日(日)曇り後晴れ

 阿寒湖畔エコミュージアムセンター主催の自然ふれあい行事「ペンケトー・パンケトー自然探勝会」に参加してきました。一般参加者30名、阿寒パークボランティア10名、スタッフ(自然公園財団)6名で、3班に分かれて、キネタンペ湾の養魚場、イベシベツ川の清流、目的地のパンケトー、ペンケトー、マリモの生育地のチウルイ湾といくつかの観察ポイントを探勝してきました。

 阿寒湖の北側を通る林道(阿寒パンケトー林道)を車で移動し、最初に3班合同で訪れたのは、養魚場のあるキネタンペ湾。ここでは、阿寒漁業組合により養殖されているイトウ、ヒメマスなどの様子と、イベシベツ川(パンケトーから流れ出し阿寒湖へと注ぐ川)の流入口となっているキネタンペ湾を観察しました。またこのイベシベツ川の流入口は、初秋になるとアメマスなどの魚が産卵のため数多く集まってきます。

 キネタンペ湾を観察した後、3班はそれぞれローテーションで観察ポイントをまわり、私の班が向かった先は、今回の探勝会の目的地でもあるペンケトー。ペンケトーまでは、徒歩で片道40分程度の道中、ふだんじっくり目に触れる事のできないめずらしい植物や、参加者が「人工林?」と見間違うほど整然と美しく立ち並んだ多数のエゾマツ・トドマツの倒木更新など、スタッフやボランティアによる自然解説を交えながらじっくり観察していました。

 ササを掻き分け、先へ先へと進むにつれ、黒々とした木々の間からようやくキラキラ光るエメラルドグリーンの水面、ペンケトーが見えてきました。ペンケトーの水位は昨年より高い位置にあり、昨年歩いた湖岸はすっかり沈んでいました。それでも、なんとか傾斜のある湖岸で参加者の方と記念撮影ができました。ペンケトーの静かなたたずまいに参加者の方々がうっとりされていた様子が印象に残りました。また、ふだん立ち入ることのできない場所であるため、参加者の中には、立ち去るのがとてもなごり惜しそうにしていらした方もいました。

 パンケトーでは、阿寒カルデラの成り立ちや、カルデラ壁の側面を移動することでさまざまな姿を見せる雄阿寒岳、そして阿寒カルデラの広がり、深さを体感することができるといったスタッフによるお話があり、参加者の方々はとても興味深く耳を傾けていました。

 林道沿いを緩やかに流れるイベシベツ川、その川の中ほどにある乙女の滝にも訪れました。川の水は、とても美しく透明で、そしてあたりに響き渡る滝の音はなんとも涼しげで心地いい。そんな乙女の滝は、イベシベツ川でもとりわけ美しく、観察ポイントとしてはとても魅力的な場所のひとつです。

 そして、最後に訪れたのは、マリモの生育地であるチウルイ湾。ここでは、釧路市教育委員会マリモ研究室の職員よりマリモの説明をしていただきました。お話では、球状マリモ、湖底を浮遊しているマリモ、岩などに付着しているマリモなどマリモの特徴、生育地、そして生育条件などについての説明がありました。参加者の方々は、湖岸に打ち上げられたマリモを観察し、直接触れ、とても満足されていました。最後には、3班全員で雄阿寒岳を背景に記念撮影をしました。

 探勝会解散後の後かたづけの最中、一人の参加者が歩み寄り私に一言。満たされた笑顔で「色々とお話ありがとうございました」と。その方は、探勝会の移動中の車内で、私の得意分野の阿寒やエゾシカの話をして仲良くなった参加者の一人でした。思いもよらぬ何気ない一言がとても嬉しく、気づくと参加者以上に心が満たされていた自分がいました。阿寒カルデラの広がり、深さを感じ、阿寒カルデラ内部のさまざまな自然の観察をとおして、参加者の方々や阿寒パークボランティアの方々と交流する素敵な時間を頂きました。

【ペンケトー・パンケトーとは】
 ペンケトー・パンケトーは、雄阿寒岳の東の麓に位置し、約1万年前、雄阿寒岳の噴出により阿寒湖と分割されて、約5000年前に現在の形となって現れた湖です。
 ペンケトー・パンケトーの名前はアイヌ語で、ペンケトーが「上の沼」、パンケトーが「下の沼」という意味です。湖面の標高は、ペンケトー(標高520m)の方が、パンケトー(標高450m)より上にあります。ペンケトー・パンケトーは沢でつながっており、ペンケトーが「上流」、パンケトーが「下流」に位置しています。
 ペンケトー・パンケトーは、国立公園の中で最も厳重に保護されている「特別保護地区」に指定され、ふだんは立ち入りが規制されています。






ペンケトー


湖岸に打ち上げられたマリモ(チュウルイ湾にて)


乙女の滝(イベシベツ川)

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