ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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大雪山国立公園 上川

159件の記事があります。

2007年06月15日野生動物との距離

大雪山国立公園 上川 大久保 智子

沼の平の歩道調査でハイマツ帯を歩いていると、癒される声がハイマツの中から聞こえてきました。ハイマツの中をのぞいて見てみると、大雪山で会えることを願っているファンも多い、ギンザンマシコがいました。

図鑑で見るよりも色鮮やかで、ドッテリとした雰囲気は、高山で生き抜くたくましさの貫禄も漂いつつ、でも、全体的にはかわいらしかった、生のギンザンマシコ。

野生動物に会いたいと思っていると、その気持ちが強すぎるあまり、殺気立ってしまい、なかなか会えません。しかし、欲を捨て、無心で歩いていれば、ひょっこり遭遇したりするのです。そのときの喜びは、会いたいと願っているとき以上に嬉しいものです。

ほんのわずかな時間ですが、肉眼で様子がわかるほどの距離で会え、貴重な時間を共有することができて、嬉しかったです。たまに味わえる喜びをいつまでも感じられるように、お互いにストレスを与えないくらいの距離を保ちながら、野生動物とつきあっていきたい。

◆ギンザンマシコ◆
特  徴:オス:頭部から胸、腹は紅色。腹以下は灰色。
     メス:頭部から胸、背から上尾筒が黄色。
生息環境:繁殖期は高山のハイマツ帯、冬季は平地から低山の針葉樹の多い森     林に漂行し、時に都市部の街路樹などでもみられる。
生息状況:・1975年に大雪山のハイマツ帯で国内繁殖が初確認された。
     ・道内の高山帯でも繁殖の可能性がある。
     ・北方圏から冬鳥として渡来・越冬、あるいは旅鳥として通過するものがある。
行  動:ハイマツの実を主食とし、同林内に営巣。繁殖期には昆虫類やクモ     類も補食する。



ギンザンマシコ
手前:黄褐色のメス
奥:橙色の若鳥のオス

雄成長は頭部から胸、腹は紅色ですが、この鳥は橙色なので、若鳥と思われます。

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2007年06月06日玄関口

大雪山国立公園 上川 大久保 智子

 大雪山の山々を歩く、登山基地となっている一つが、層雲峡。その層雲峡温泉街の真ん中を通っている、歩道の木道が傷んできているので、加工塗料を塗り直す作業を、6月6、7日の2日間にわたって行いました。
作業は、層雲峡温泉街の町内会が中心となって、商店街のみなさん、層雲峡観光協会、上川町役場で、補修しました。私も作業の手伝いをしてきました。
 一つ一つの施設を大切にする心と、利用者に心地よく過ごしてもらいたいというおもてなしの心を持って、いろいろな立場のいろいろな人たちが協力して、層雲峡温泉街は夏シーズンを迎えます。

 大雪山国立公園は山岳国立公園ですが、山の上を支える麓も国立公園内です。山の上に行く人、帰ってきた人、山を見に来た人、温泉に来た人などなど・・・大雪山の玄関口として利用者の皆様をお待ちしています。


作業風景

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2007年05月30日カモフラージュ

大雪山国立公園 上川 大久保 智子

愛山渓地区の歩道巡視の帰り道、目の端の方で、ドタバタと重いものの何かが、騒がしく動いたのが見えました。
消えた方向を、探しても見つからない。
ねばって、よ?く目を凝らして見てみると・・・
いました、エゾライチョウ。
木の枝の上でジッとこちらの様子を伺っています。
ちょうど止まっていたトドマツの樹皮、それに付く地衣類と、エゾライチョウの背中の模様がとても似ていたので、見事にカモフラージュできていました。

自然界の中には、カモフラージュされているものがいくつもあります。
そういう自然界の不思議に気が付いたり、見つけたりするのも楽しみの一つだと思います。


エゾライチョウが消えた森の中。

よ?く目を凝らしてみると…(アップにすると…)
うまくカモフラージュできてます。

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2007年05月22日青い鳥

大雪山国立公園 上川 大久保 智子

5月17日、層雲峡。
芽吹き出しそうな森の中で、ひときわ光輝く青い色を目にしました。
オオルリです。
まだ味気ない森も、その時ばかりは、オオルリの青い羽根を引き立てるには、ちょうどいい塩梅でした。

◆オオルリ◆
大きさ :16?
時 期 :夏鳥
生息環境:沢沿いや山間の湖沼沿いにある森林
行 動 :雄は沢筋の梢にいくつかのソングポスト(さえずり場所)を持つ
※参照:『北海道野鳥図鑑』?亜璃西社発行

美貌の上に、美声でもあるオオルリは、コマドリ、ウグイスとともに日本三鳴鳥ともいわれている。

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2007年04月27日春の足音

大雪山国立公園 上川 大久保 智子

冬期通行止めになっていた道道愛山渓線は、4月24日に通行止め解除になり、終点の愛山渓温泉まで行けるようになりました。上川町内で降っていた雨が、愛山渓では白い雪が舞っていました。周囲にはたっぷり雪も残っていて、春山の雪遊びが十分楽しめます。

冬の間、雪で包まれた静寂な森も、あまりの静けさで、時間が止まってしまったような森も、春の柔らかい日差しによって、少しずつ解けた水が流れだし、せせらぎの音が聞こえてきました。水が流れだす音を聞くと、季節が動きだしたことを実感します。

同時に、私の五感が、春の訪れを感じ取る力を持っていることに、嬉しくなりました。
人それぞれに感じるものは違うと思いますが、自然の営みを捉えるアンテナをたくさん増やしていきたい。

みなさんは、どんなことで春を感じますか?


4月26日:春とはいえども、天気が崩れると一気に冬に逆戻り。この日の愛山渓は吹雪でした。

4月23日:黒岳山頂から。凌雲岳・北鎮岳もまだまだ真っ白です。山行には冬の装備が必需です。

4月25日:上川町内。雪が解けた水場には、水芭蕉が咲き始めました。

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2007年01月24日氷と雪の競演

大雪山国立公園 上川 大久保 智子

 雪が降り続けるこの時期、たまのご褒美のような晴れ間に、喜び勇んで外に出れば、冬の気候が作りなす風景に出会うことができる。
 層雲峡の柱状節理の間から吹き出す滝も、厳しく低い気温によってじっくりと凍り、氷の芸術作品へと変わっていく。その迫力ある姿に見とれていれば、頭上では気流に乗って旋回しているオジロワシが優雅に舞っている。森に入れば、雪の白と木々の黒のモノトーンと、空の青さのコントラストが美しく、足下は雪上を通った風の跡が波模様を作り出し、深く積もった雪の上には大小様々な動物の足跡を見ることができる。
 静寂な空気に包まれながら、過酷な環境の中で生きる物の息吹を感じとることができたり、自然の作り出したはかない風景にふれられたりする。
 
 万全な防寒対策で身を包めば、冬ならではの散策を楽しむことができます。冬の峡谷で雪と氷の競演している中に、足を一歩踏み入れてみませんか?

層雲峡園地より黒岳を望む。

銀河の滝。
流れる滝もこの時期は氷の作品へと姿を変えます。

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2006年09月08日秋空のもとで

大雪山国立公園 上川 大久保 智子

 足下に黄色く色づいた葉に、ほんのり付いた霜の粒が日に当たり八方に輝きを放ち、頭上を見上げれば空高く、雲一つ無い最高の天気で、秋の気配を感じないわけにはいかない雰囲気の9月2・3日、パークボランティア活動でひさご沼に行ってきた。活動内容は夏山シーズン後半の避難小屋、野営指定地及び周辺登山道整備。
 私が参加したひさご沼避難小屋コースは参加者4名。途中の五色岳までは忠別避難小屋コース参加者の6名と同行し、10名での賑やかな登山道整備となった。10人集まれば十人十色。登山道の木道を直しながら、ゴミを拾いながら、一歩一歩確認しながら歩くにも様々な意見が飛び交いました。ひさご沼避難小屋に着けば、木道設置やトイレ処理に関わっている方、登山道調査をしている方などに会いました。
 今回、大雪山国立公園に関わる人の多さに本当に驚きましたし、ゴミの量も思っていたよりも少なくて登山道は綺麗に保たれていました。一人一人の意識の向上が大雪山の自然を残していくのだろうと思うと非常に嬉しく、感動しました。

 一緒だったボランティアの皆さん、ひさご沼でお会いした方たちは、私よりも登山経験も山岳整備活動も長いので、当然教わることが多かった。それは、特に口頭での指示はないものの、その人方の行動そのものが教本となりました。経験がにじみ出ている意識や知恵など見習って、習得したいことだらけでした。
私も経験を沢山積んで引き継いでいきたい。そう思ったことが今回パークボランティア活動に参加した1つの意義や役割だと、秋空のもと、アキアカネが飛び交う沼ノ原を後にしながらしみじみ感じました。


ずれている登山道の木道も直しました。

ロープ張り直し作業。

ヒサゴ沼避難小屋及び周辺のゴミ収集後。
全部で6kgほどの量のゴミを回収しました。

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2006年08月14日道のセンス

大雪山国立公園 上川 大久保 智子

 7月19、20日に山岳・山麓インタープリター養成研修会に参加しました。研修内容は、自然環境を傷めずに利用していく、近自然工法による登山道整備の座学講習会と現地研修です。

 登山道に雪解け水や雨水が流れ、川や池状態となった道が深く浸食し、そこをまた人が水や泥濘を避けるように歩くので、道が広がるという一連の登山道荒廃が、上川町愛山渓温泉?沼ノ平に向かういくつかの道にあらわれていました。その場所が今回の研修対象です。

 座学では、水の流れの特徴についてや、石組みの基本となる伝統工法の基礎知識を学び、翌日には座学をふまえた現場での実習を行いました。まずは、水の流れを読んで、水の道をつくり、それから人が歩きやすい道をつくります。それは道を「つくる」というよりも、「誘導する」道づくりでした。
 水の流れはちょっとの角度で変わるので慎重に水の流れを読んでいきます。そして、石の組み方によって、そこを人が歩くか、避けるかの違いが出たり、月日がたって石組みの役割が残るか残らないかが変わってきたりします。きちんと組まないと石が崩れ、水がたまったり、歩きづらくなったりするのです。
登山道整備は野石や木だけでなく、数々の道具を運ぶので力も使います。しかし、それ以上に違和感がない、自然にとけ込む景観づくりの美的センスや自然に対する配慮など、きめ細やかさが必要な作業でした。

 今回の研修で学んだことはとても難しく、なかなか自分の中には落とし込みが出来ず、実際の現地研修では混乱しました。しかし、山が好きで利用している立場としては、今後気が付いた時に身近なところからでもさりげなく補修していきたいと希望をもっているので、これからも近自然工法の登山道整備をいろいろ見ていきたいと思っています。

 大雪山国立公園の登山道では、近自然工法による整備が着々と進められてきています。自然にとけ込んだ工法なのでよく見ないと気が付かなかったりもするのですが、皆さんも登山道を歩くとき、足下のセンスを見てみませんか?自然にも人にも優しい工夫がしてあるかもしれませんよ。


整備前のぬかるんだ登山道

野石を使った登山道整備後。
水と人の道をつくりました。

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2006年07月05日「憧れの存在」

大雪山国立公園 上川 大久保 智子

 子供の頃、めちゃくちゃ無謀な夢をもっていた。
「大きくなったら鳥になりたい」と…。
里山で育った私がみて憧れた鳥は、対象モデルは覚えていないが、たぶんとっても身近な鳥で、ハトやツバメ、スズメやカラスなどだろう。飛べること、どこにでも行けることが憧れの理由だった。

 山を歩いていても、いろいろな鳥に出会う。
大雪の山々の上を悠々と飛んでいたり、登山道脇の木々に止まって自慢の歌声を披露していたりする姿は、優雅で自由で楽しそうに見るし、さえずりも山歩きを演出してくれる。

 登山するにも多様な目的や目標がある。高山植物を愛でること、非日常の風景にふれること、多くの山を踏破することなど。いずれにせよ、登山者には高山に入るという畏敬の心構えや、心の余裕をもって、山の持つ魅力や恐さを受け止め堪能して欲しい。

 山にいるときは、鳥のように風景に溶け込み、1枚の絵になるような存在になりたいと思う。そして自然と共存していくために、保護と利用のあり方を勉強していきたい。
 大人になった今でも鳥は憧れの存在だ。


ノゴマ

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