ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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釧路湿原国立公園 釧路湿原

175件の記事があります。

2010年07月09日【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで100日前】

釧路湿原国立公園 釧路湿原 本藤 泰朗

森のいのち

釧路の森を歩いていると、ミズナラ(どんぐりの木)の大木が倒れているのを見つけました。
直径はおよそ1.5m。
恐らく100年以上はここにひっそりと立っていたことでしょう。
今年の冬の厳しい風雪に耐えられずに倒れてしまったのかもしれません。


可憐な春の花の時期が終わった北海道の初夏の森は樹木の葉が一斉に茂り、薄暗くなった林床では見かける花も少なくなります。

充分な陽の光を浴びることのできなくなった植物はどことなく元気が無いように見えます。

大木が倒れたこの場所では森の上にぽっかりと大きな穴が開き、強い日差しが森の中まで降り注いでいます。



そんな光の差す森の中では、この時をじっと待っていたかのように若い樹木が青々とした葉をいっぱいに広げ、貪欲に陽の光を受けて成長しようとしていました。

やがて森の中にぽっかりと開いた穴は若い樹木達によってふさがれることでしょう。

そして倒れた大木は様々な虫の住み家となり、それらを食べる鳥たちに恵みを与え、さらには菌類などに分解され、土に還り、やがて森の養分となります。



私たちに憩いや安らぎを与えてくれる森の中では、長い年月をかけて様々ないのちの受け渡しが静かに行われています。

そんなことを考えながら森の中を歩いてみるのはいかがでしょうか?

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2010年07月07日日本のいのち、つないでいこう! COP10まで100日前

釧路湿原国立公園 釧路湿原 日吉 真樹子

「釧路湿原ラムサール条約登録30周年」

今年は釧路湿原がラムサール条約に登録されて30周年、ということで、
弟子屈町を皮切りに、標茶町、釧路町、鶴居村、釧路市の各市町村で様々なイベントが開催される予定です。

先日7月4日、早速、弟子屈町でのイベントが開催されました。テーマは「川と湿原」。
川に棲む生き物や、川と生き物のつながりを感じてみよう、というものです。参加者は親子10組。

午前は川に棲む生き物を親子で捕まえ、観察。

きれいな水に棲む、ヤマトビケラ、カワゲラ、カゲロウなどが見つかりました。

午後は屈斜路湖からカヌー、またはゴムボートで釧路川を下りました。
釧路川源流部の水はとても澄んでいて、ウグイの群れを見られたり、違う視点から見た川の風景に、参加者も楽しんだ様子でした。


みんなでパドルを持って川下り。

戻ってから参加者の皆さんに感想を書いてもらいました。みなさん、ちゃんと、水と生き物のかかわりを感じられたようでした。

参加者のメッセージ。

参加者のみなさん、ありがとうございました。

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2010年02月19日スキーとやちまなこ

釧路湿原国立公園 釧路湿原 磯野 満里子

この3年ほど、冬に温根内木道の掛け替えが行われています。
今期は2009年末より奥の高層湿原エリアと、最もビジターセンターに近い入り口付近の工事が行われ、2月上旬に全て終了しました。
今は全コース歩けます。
しかも、通常冬の木道はスキーやスノーシューを使って歩かなければならないところ、作業のために除雪されたので長靴でも高層湿原まで往復できてしまいます(お得?)。
とはいえ、楽しさの点ではやはりスキーがおすすめです。
木道に雪のないところはスキーを外して歩くか、あるいはちょっと木道を外れて迂回する必要もありますが、迂回ついでに夏は入り込めない湿原の上を直に歩けるのは積雪期ならではの体験です。
(今年は雪の布団で湿原の植生もしっかりガードされています)

さてここの木道、入り口付近の見所として、大きな「やちまなこ」があります。


真新しい木道のすぐ側の水面、これが自慢のやちまなこ。

やちまなことは、湿原の中にぽっかりと開いた小さな沼のようなもの。
落とし穴のように、見た目は小さくとも深くて奥行きがある構造になっています。
湿原の説明をするときにはこのやちまなこに長い棒を差し込んで深さを体験してもらったり、元気な子供たちに「湿原にはこんなに深いところがあちこちにあるんだよ~だから木道の上を歩いてね~」とお願い(おどし?)してみたりと、「つかみ」としてなかなかか重要なポイントです。
冬は表面が凍っていることが多いのですが、この日は写真のとおりぽっかりとあいていて・・・心なしか湯気まで立っている気がしたので、水温を測ってみることにしました。

温度計の先を水面に入れました。
その途端、やちまなこの底が動いたのでびっくり!
ざわざわっと小さな物が一斉に動いたのです。
正体は小さな魚。やちまなこの底にはたくさん魚が集まっていました。


見えますか?黒っぽい細長いの、全部魚です。(恐らくトゲウオの仲間)

魚を眺めながら待つこと5分。
期待の水温はプラス5.1℃でした。
一方、気温は-7.2℃。
5℃という水温は私にはとても冷たく感じられましたが、気温との差が12℃もあると点を考えれば、魚たちにとっては十分温かいのでしょうね。
(魚のいる底のほうまで温度計が届けばもう少し水温が高かったのかもしれませんが)

地下水は比較的温かいので、湿原では湧水ポイントに魚やカエルなど水棲生物が集まって冬を越すことが知られています。
ここも湧水が底から出ているか、近くから流れ込んでいるのだと思います。

そして温かいということは、溶けやすい(あるいは凍りにくい)ということ。
ここ以外にも木道周辺には水面をのぞかせていたり、雪の上に水がにじんでいる「あやしい!」場所がいくつかありました。
木道のまわりには思い思いに「迂回」したスキーやスノーシューの跡がたくさんついていて、歩いた方々の楽しそうな様子が目にうかぶようでした。
でも徐々に温かくなっていくこれからの季節、安全のためにも雪の下には「目覚めかけ」のやちまなこが潜んでいる可能性をちょっと意識してほしいと思います(スキーが「やちまなこダイビング」になってしまうと大変なので)。

「迂回」は木道から離れすぎず、ほどほどに楽しんで下さいね。


夏はイソツツジなどの高山植物が咲き競うミズゴケ湿原も今は一面の雪野原に!
どこまでも歩いていってしまいそう・・・

*歩くスキーは温根内ビジターセンターで借りることができます
是非、カウンターでフィールドの様子やコースの情報など聞いてからお出かけ下さい。

温根内ビジターセンター 
冬期開館時間:10時~16時(火曜日休館)

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2009年12月25日集合!を観察

釧路湿原国立公園 釧路湿原 磯野 満里子

釧路湿原もうっすらと雪化粧。
街中の師走の慌ただしさとは正反対に、お客さんに滅多に会わない静かな時期を迎えていますが、フィールドは日々変化があります。
冬も国立公園内を定期的に巡回してフィールド情報を収集しています。
むしろ動物に関しては、冬は「集合」する動物がいるので、観察ネタにこと欠きません。

2009年もいよいよ終わり。
今年の巡視納めということで、釧路湿原でも一番人気のビュースポット、細岡展望台へ。



最高に良い天気。
釧路川の蛇行、その向こうには隣の阿寒国立公園の山々が見えます。
(これが細岡展望台の人気の理由です。)

さて、展望を楽しんだところで、定位置におもむろに望遠鏡を設置。
右手にはカウンターを持ち、さあカウント開始!

カウント対象はエゾシカです。

望遠鏡を覗くと・・・



黒い点がみんなエゾシカです。
カウント途中にお客さんがいらっしゃると、ちょっと望遠鏡をのぞいてもらっています。
一見枯れ草色の景色の中に、多くのエゾシカがいることを知ると、皆さん驚いています。
(保護色なのでなかなか気がつかないようです。もう少し雪が積もると探しやすくなります。)
展望台からの視野200°強の範囲、少しずつ角度をずらしながら眺めていくと、こんな風に所々にエゾシカが「集合」しています。

寒さの割に雪が少ない釧路湿原は、エゾシカにとって餌となる植物を探しやすい環境です。
また湿原の中には所々ハンノキの林が、周辺の丘陵地には樹林帯があり、風雪を除けて休む場所にも困りません。
格好の越冬地というわけです。

よく見るとエゾシカが集合しているのは、釧路湿原の中でもあまり草丈の高くないところ、スゲなどの植生の所です。
遠目には同じように見えますが、シカが細かな植生の違いに気づかせてくれます。

近年、北海道ではエゾシカが増加し、植生の破壊などが各地で深刻な問題となっています。
釧路湿原での越冬は昔からエゾシカがとっていた行動、自然の営みの一環であったはずですが、最近は植生への食圧や踏圧などの影響が心配されています。

さて目の前にして数えているエゾシカは、湿原が「養える」数より多いのか、少ないのか。
(因みに上の写真の1群れで約40頭・・・)
一定の方法で観察を続けることは、それを知る手がかりの一つだと思っています。





おまけです。
この季節「集合」する代表といえば、やはりタンチョウ。
(写真は雪が降るちょっと前のものです)
釧路湿原周辺には、タンチョウを保護する目的で、冬場の餌不足解消のために公的に給餌が行われている場所があります。
今年もたくさんのタンチョウが集まっています。


***

色々な野生動物が集合している釧路湿原に、年末年始を利用して来訪される方もいらっしゃると思います。

雪が少なく道路が乾いているように見えても、寒さの厳しい釧路地方では朝夕の時間帯や日中でも日陰は路面が凍り滑りやすくなります。
また、エゾシカが道路を横切ったり、タンチョウが道路の近くを飛んだりすることもあります。

車の運転には(ご自身のためにも動物のためにも)十分ご注意下さい。

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2009年10月09日空から見た釧路湿原

釧路湿原国立公園 釧路湿原 磯野 満里子

先日、釧路湿原を空から撮影する作業に立ち会うチャンスがありました。

空から撮影、というとすぐに思い浮かぶのはヘリコプターやセスナに人が乗りこんで撮影する方法でしょうか。
しかし今回飛んだのは我々人間ではなくこちら、「バルーンカメラ」。



バルーンの下にデジタルカメラ等を取り付けて撮影する機材です。
(赤丸印のところにカメラがついています)
リモコンで撮影向きやシャッターを操作できる仕組みで、カメラの画像を地上のPCモニターで受信しながら作業できます。

今回は釧路湿原周辺の4カ所で業者さんにこのバルーンカメラを上げて頂き撮影を行いました。
バルーンは地上とワイヤーで繋がっており、ヘリコプターのように自由自在に飛び回る、というわけにいかないので、ポイントごとにバルーンを上げ下ろししました。
またバルーンが木などに引っかからないように、上げ下げの作業には開けている駐車場やキャンプ場の敷地などを使わせて頂きました(オレンジ色の大きなバルーンはとても人目を引いていました)。

果たしてその実力やいかに!
私もリモコンでの撮影に挑戦しましたので、今回撮影した写真を使って釧路湿原を空からご紹介します。




細岡展望台の駐車場から釧路川を撮影しました。
細岡展望台は釧路川が蛇行しながら釧路湿原を流れていく景色が見られることで人気がありますが、上空からだとこの蛇行がよりはっきり見えます。
釧路湿原を紹介する場面で「いかにも釧路湿原らしい景色」というと真っ先にこのような写真を資料として求められる場合が多いので、是非とも欲しかったショットです(自然保護官 談)。

この写真では、蛇行のカーブの途中から細い直線的な河道が湿原に延び得ているのが見えます。
湿原周辺は陸路がまだ不便だった戦前は水運が流通に大きな役割をはたしていたようですが、これもその頃に作られたものなのでしょうか?湿原北側の丘陵地にあった民家では近くの川から家の側まで水路を引き、生活の足にしていたといいます。

(上空とは角度は異なりますが、展望台からも蛇行を含む釧路湿原の眺めが十分堪能できます。是非お立ち寄りを!)




次は、釧路湿原の特別保護地区内の核心部に位置する赤沼です。
この赤沼の周辺は、貴重な湿原植生の宝庫なのですが、今回空から見てみたらその貴重な植生の中に想像以上に「エゾシカ道」が縦横無尽についていました。
(掲載している写真のサイズでは見えにくいですが)
数が増加しているエゾシカの影響は釧路湿原でも懸念されています。
定期的に上空から撮影できれば、十分モニタリングにもなりそうです。

今回撮影した地点は、私にとっては日々の巡回で見慣れた景色なのですが、ほんの100~200mでも上空から見ることで環境の状況や変化がより分かりやすい場合もある、と実感しました。
撮影作業をしながら、季節ごとに撮影できたら・・・あそこも撮影できたら・・・と希望(欲望?)がバルーン並に膨らんでいきましたが、とりあえず今回の撮影は1日で終了。

自然環境や施設の状況など、国立公園の環境は日々変化しています。定期的に現状を画像として記録し、資料として蓄積することも国立公園を管理する上で大切な作業です。
今回の撮影分も資料に加えて、今後活用していきたいと思います。


*撮影した写真を「環境省 釧路湿原野生生物保護センター」に展示しています。
 お近くへお越しの方は是非ご覧下さい。

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2009年08月28日釧路湿原オオハンゴンソウ刈り取り作業

釧路湿原国立公園 釧路湿原 磯野 満里子

釧路湿原の一角に人知れずできてしまっていたオオハンゴンソウの大群落を発見したのは8月18日のこと。
釧路川沿いの河川敷の一角数百メートルに渡り行けども行けども特定外来生物オオハンゴンソウの黄色いお花畑。

私は過去のハードな駆除体験(対象の種類は違いますが)がトラウマとしてあるので、「キク科の外来植物群落とはもう戦わない」と決意し、道路沿いに侵入した株を見つけては抜く、というささやかな抵抗もしていたのですが・・・甘かったようです。



オオハンゴンソウの花。
詳細は8月24日の支笏湖ARさんの記事でも(「北の国から」のプロポーズエピソードも含め)説明されているので省略しますが、日本各地の自然地域に入り込み、駆除が行われているものの抜き取りで残った根から新たに芽が出てしまうなどの理由から駆逐はかなり難しく、作業者を悩ませています。
これ!といった効果的な防除法はまだ見出されていないようです。

でもせめて、ここで膨大な種が生産されることを防ごう!
ということで、8月28日、環境省職員のほか地元自治体やパークボランティアさん、学生ボランティアさんなどと一緒に、総勢20名で花の刈り取りを行いました。

各自手鎌、大ガマ、剪定バサミ、刈り払い機を動員してオオハンゴンソウと対決。
20人でひたすら刈り取り作業。
午後からは雨の予報、ということも手伝って早期決戦を目指してもくもくと刈る、刈る、刈る。



オオハンゴンソウの密度の濃いところ(希少な植物を巻き込む心配のないところ)は機械でどんどん刈り進む。



密度の薄いところや他の植生への配慮が必要な場所は、手刈り部隊ハンゴンソウだけを丁寧に刈り取り。
花畑の中での作業は「ヒマワリ迷路」の中でウロウロしているようにも見えます。
でも手刈り部隊も迷わず高スピードでどんどん刈り進みます。

・・・といった具合で刈ること2時間。予想より早くこの群落の刈り取りを終了する事ができました。マンパワーは本当に素晴らしいです。

とはいえ、今回の作業の効果は種の生産を減らすという点のみ。
地中に残された根から、また来年も同じようにこの場所に「お花畑」ができることは必至。
今後の作戦はこれから考えていかなければなりません。


外来生物の防除の主目的は、生態系への影響を何とかする点にありますが、今回のオオハンゴンソウの大群落のような場合、もっとシンプルな動機も大きいと感じました。

景色が、本当に大きく変わって見えるのです。

釧路湿原を訪れた方が、オオハンゴンソウの花畑を「釧路湿原の自然の景色」と喜び感動をもって眺める状況となってしまったら哀しいことだな、と。

本来の自然と思って眺めている景色が本当にそうであり続けるように。
少し外来生物の存在を意識してもらえたらと思います。



<今回の作業に参加・協力いだいた方々>
標茶町役場
塘路湖エコミュージアムセンター
釧路湿原国立公園パークボランティア
FAネットワークキナシベツワークキャンプ参加学生の皆さん

ありがとうございました

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2009年06月25日長雨後の釧路湿原

釧路湿原国立公園 釧路湿原 磯野 満里子

しばらく続いた「蝦夷梅雨」がようやくあがりました。
さて長雨後の釧路湿原、あちこち増水して、いつも以上に潤っています。



釧路川の蛇行が見えることで人気の細岡展望台から湿原を眺めてみると、どこが川筋やらわからないほど増水中。



細岡カヌーポートは駐車場まで水浸しで、釧路川本流と一体化して見分けがつかず。
(写真真ん中に横にならんでいる杭のむこうが釧路川本流。杭の手前は通常時はカヌーや釣りの方が駐車場として使っているのですが・・・)

湿原には水を蓄える機能があります。
見た目は派手に増水していても、「湿原のおかげでこの程度ですんでいる」のかもしれませんね。

「蓄え」がなくなるまでのしばらくの間、このような状態が続くと思いますが、主な展望台や木道は通常通り利用できます。ちょっと潤いたっぷりの湿原を眺めてみて下さい。

ただ、この日は標茶町の塘路とコッタロ展望台を結ぶ砂利道区間が増水のため通行止めになっていました(追記:6月28日には開放されました)。



塘路側からコッタロ方面へ向かう道の通行止めゲート。ゲートのすぐ向こうにも大きな水たまりができていました。
このような時、コッタロ展望台へは場合は湿原の西側(鶴居村側)からアプローチすることになり、通り抜けができなくなります。

雨の後にこの区間を通られる方は、ちょっとご注意下さい。



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2009年06月12日霧と花の季節

釧路湿原国立公園 釧路湿原 磯野 満里子

釧路湿原はこのところ曇りや雨、そして霧(←何と言っても釧路名物)の日が続いていますが、そんな中でも花の多い季節を迎えています。
釧路湿原随一の花スポット、温根内木道の巡視に出てきました。


昨年度の冬に掛け替え工事を行ったミズゴケ湿原のテラスは開放感抜群。眺めが良いですし、花も間近で観察できます。
白い点のように見えるのは全てイソツツジの花です。
この日はちょっと肌寒く、私はモコモコのフリースを着て巡視をしていたのですが、とてもきれいに咲いていて見頃を迎えていました。



イソツツジはいわゆる高山植物で、もっと標高の高いところで見られることのほうが多いのですが、釧路湿原は気候が冷涼なため高山帯と同じような条件となります。おかげで海抜わずか数十メートルにもかかわらず、他にもいろいろと高山帯と同じ植物が生育しています。
バリアフリーの木道を歩いて高山植物に会いに行けるなんて、本当にお手軽です。



ワタスゲも(こちらは実ですが)いい感じです。

これから次々と様々な花が咲いて移り変わっていく楽しい季節です(イソツツジのつぼみもまだあります)。
ちょっと肌寒い日もあるかもしれませんが、これが湿原の植物を育んでいる気候なのだなあと、花と一緒に(天気にあった服装をして)楽しんでみて下さい。

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2009年02月16日釧路湿原の出口にラッコが来た

釧路湿原国立公園 釧路湿原 磯野 満里子

釧路湿原国立公園から海岸へ約10km下った場所(釧路市街地)なのですが、釧路川の河口に数日前からラッコが現れています(テレビなどで既にご存知の方も多いでしょう)。

 出没地点が役所や繁華街も近いまさに街のど真ん中ということもあり、なま「野生ラッコ」をひと目見ようと橋の上や河岸は人だかり。



それにしても・・・ち、近い。
間近で見るラッコに群衆(私も含む)は大興奮です。

(2/18追記)
この付近では、ラッコ見学者の釧路川への転落事故も発生しています。足もとも氷や雪で大変滑りやすくなっていて危険です。見学に際しては、柵にもたれかからないなど現地での注意事項を遵守してください。また、ラッコに負担をかけないよう静かに見学しましょう。




当のラッコは大観衆に囲まれても潜ったり毛繕いをしたりとかなりのリラックスぶり。ケガや衰弱している様子はないのでこの場所が嫌なら自力で去るとは思うのですが、陸の人間の存在は今のところ気にしていないみたいです。
さてこんな街中の川で食べるものがあるのか?と心配だったのですが、次々と潜っては貝やヒトデを獲って食べていました。これには釧路川の河口もけっこう豊かなのだなと驚きました。同時に、漠然とですが海の資源が豊かなのも釧路湿原やその上流の森林の恵み、それらが流域を通じて海へ流れ込んだ結果なのだろうと感じました。

釧路川は阿寒国立公園の中の屈斜路湖に流れを発し、その流路154kmの間には森や釧路湿原、そして町や農地など人の生活の場があります。それらの良い影響も悪い影響も全て流域を通じ下流へ移動し、最後は海へ流れ出ていきます(もちろんその先の海へも・・・)。
釧路湿原自然再生事業の進め方の基本的な考え方では「生態系のつがなりある流域全体を対象に考える」という原則を挙げていますが、このようなつながりを実感する機会はあまりなく、意識しにくいようです。ただ野生動物を媒介とすると自然環境のつながりや大切さが理解しやすくなったり、魅力を持って受け入れられる場合があります(例えば森が海の魚を育てる・・・など、最近よく言われますよね?)。
釧路川の河口は釧路湿原の「出口」。そこで強引かもしれませんが釧路湿原を「ラッコの暮らす海とつながっている場所」と考えてみるとどんな印象になるでしょう?ちょっと流域のつながりを意識しやすくなる人もいるのでは?あるいは釧路湿原に対して今まで以上に大切な役割を持った場所に感じる人もいるのでは?

(2/18追記)
 ラッコは野生動物です。ラッコの生態を乱すおそれがあるので、写真撮影をするなどの目的で餌付けはしないでください。

(2/20追記訂正)
 餌付けの可能性を示す写真として、ツブ貝の写真を掲載していましたが、その後このツブ貝の所有者の方より、餌付けに用いるものではないとの連絡を頂きました。
このため、誤解が生じないようツブ貝の写真を削除させて頂きました。
皆さんもラッコと追いかけたり餌付けしたりせず、その野生の姿を暖かく見守りましょう。


<参考>
ラッコについては、農水省(水産庁)所管の法律「猟虎膃肭獣(らっこおっとせい)猟獲取締法」で捕獲禁止などの措置がとられています。
環境省レッドリスト2007ではCR(絶滅危惧IA)類に指定されていますが、いわゆる「種の保存法」や「鳥獣保護法」は適用されません。

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2008年12月25日雪の上には・・・

釧路湿原国立公園 釧路湿原 本藤 泰朗

皆さんこんにちは。
今年の釧路の冬はなんだか変です。寒くなったと思ったら暖かくなり、ようやく雪が降ったと思ったら今日は大雨です。それでも先週末に10センチほどの雪が積もり、一昨日はマイナス10℃を下回りました。ほんの数日だけの雪景色でしたが、釧路湿原野生生物保護センター裏の池もようやく凍結し、安心して氷の上を歩くことができました。
(今日の大雨でまた歩けなくなりましたが・・・)

そんな池の氷に積もった雪の上に不思議なものを見つけました。


これ何だと思いますか?
雪の上を点々と続いていました。幅は5センチほどです。
この点々をたどっていくと・・・


今度は大きな模様が現れました。
そして・・・


よく見ると血の跡のようなものが散らばっています。

みなさんこれ何だか分りましたか?

実は1番目の写真はネズミの足跡でした。
おそらくヤチネズミです。雪上に残るネズミの足跡は足と足の間にしっぽの跡が残るのが特徴です。

それでは2番目と3番目の写真はというと、わりと大きめの猛禽類(おそらくトビだと思います)が雪上に出てきたヤチネズミを捉えた跡です。よく見ると両翼と尾羽の跡が見えます。

上空で待ち構えていたトビが一気に降下し、獲物を捕える一瞬の場面がはっきりと目に浮かびます。
3番目の写真は哀れトビの朝食になってしまったヤチネズミの血痕でした。

雪が降った次の日、雪上にはいろいろな動物の足跡が残っています。
他にもキタキツネやエゾユキウサギ、エゾシカの足跡がたくさんありました。

動物の足跡を見ることで、その行動を想像するのはとても面白いです。
追いかけてゆくと糞が落ちていたり穴が掘ってあったり、中には足跡の主に出会ってしまったりすることもあります。

私は雪の上ではいつも足跡を見ていろいろなことを想像しながらニヤニヤしています(怪しい奴とは思わないでください)。

今年の冬は皆さんも雪上の動物の痕跡探しをしてみませんか?
雪の上には新たな発見がたくさん隠れています。







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