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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

 ティッシュやトイレットペーパーは山に捨ててもいいの?

2022年07月25日
上川 入江瑞生

大雪山国立公園では携帯トイレ普及宣言を2018年に行い今年で4年目を迎えようとしています。
登山者の携帯トイレの認知率は上がってきており、それに伴い持参率も上昇してきているのではないかと考えられます。R3年度より集計を開始した携帯トイレの持参率(入林簿に携帯トイレの持参の有無を記載し集計)は59%でした。

しかし、巡視をしているとよく休憩場所に使われる登山道沿いや岩の影にティッシュやトイレットペーパーが落ちており、今年もすでに4箇所で拾っている状況です。真相はわかりませんが、トイレゴミを持ち歩きたくない、紙は分解されるから置いていってもいいのではないかという考えがあるのではないかと思っています。

 
 
巡視で拾うティッシュなどはその年のものではない物もありるため、紙は高山では分解されにくいのではないかと考えていますが、山では「トイレットペーパーがいいよ!」「水に流せるティッシュを持っていくのがおすすめ!」という話を聞き、この事がトイレゴミと関係があるのではないかと思っています。実際にトイレットペーパーは水に溶け分解されるため山への影響が少ないのではないかと考えられる方もいらっしゃいました。

そこで本当にトイレットペーパーなどは分解されるのだろうか気になり、簡単な実験をしてみることにしました。

容器に庭の土を入れトイレットペーパー、ティッシュ、水に流せるティッシュをわかるようにし、定期的に水をかけ観察を行いました。
2ヶ月行った結果、3種類の紙類は実験開始時と変わらず原形をとどめており分解されませんでした。水に流せるティッシュやトイレットペーパーは下水に流す排水管を詰まりにくくするために、紙がほぐれやすい仕組みになっています。今回の実験は土の上にトイレットペーパーと水に溶けるティッシュを置き、水をかけたときは当たった箇所は少しほぐれましたが、そこから分解が進むという事はありませんでした。

今回の実験は事務所で行い、実際の大雪山の厳しい高山環境とは異なります。しかし麓で分解されなかった物は高山ではさらに分解が進むとは考えづらいです。また、人のし尿により水場の汚染や悪臭、景観への影響、土壌栄養の変化等生態系への影響も考えられます。


綺麗な風景の中にティッシュが見えたらどう思われるでしょうか?
お昼休憩しようと思ったら匂いが…。
と、なるのは悲しくなります。せっかく山に来たのに気分がよくないですよね。一人一人の行動で大きく現状を変えていくことができると思います。用を足すときは携帯トイレを使用し、持ち帰るようにお願いします。