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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

大雪山国立公園で特定外来生物オオハンゴンソウの防除に取り組んでいます。
大雪山国立公園東大雪地域では、糠平国道や道道忠別清水線の道路脇に特定外来生物であるオオハンゴンソウやヤエザキハンゴンソウの生育が見られます。このうち、特別地域での生育を抑え込もうと抜き取りを続けています。

オオハンゴンソウとの戦い

2025年10月03日
上士幌 上村 哲也

糠平国道と道道忠別清水線沿いの開花株抜取り数推移

  2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025
糠平国道51km 23  11  2
糠平国道49km 734  266  303  不明 44  114  80
黒石平音更第3橋梁 62  79  17  25  19  60  20
糠平国道国立公園界   379  75  116  48  51  19
そのほかの糠平国道 18  6
忠別清水線1 179  109  59  15  19  30  12
忠別清水線2 10  0
合計 1026 853 457 158 135 256 125

大雪山国立公園東大雪地域では、糠平国道や道道忠別清水線の道路脇に特定外来生物であるオオハンゴンソウやヤエザキハンゴンソウの生育が見られます。特別地域を対象に2019年から開花株を数えつつ抜き取り防除をはじめました。この年の抜き取り数が千本余り、作業時間が14日の18時間ほどであったことから、継続していけるであろうと考えました。
糠平国道国立公園界にはヤエザキハンゴンソウが生育しています。ここは特別地域ではありませんが、耕地や集落はなく森林の中を国道が縫っている国立公園の入口なので、2020年から防除を始めました。
糠平国道49kmの2022年は善意のどなたかが抜き取りしていただいたようで、本数は不明です。
そのほかの糠平国道とは、少数の生育が点在するものを合わせたものです。多くの場所ではその後の生育がない状態ですが、突然、新しい場所に現れたりもするので注意が必要です。
7年間の活動で、現在は、抜き取り数125本、作業時間は5日の8時間足らずとなりました。
開花株の推移
表を折れ線グラフにしてみます。場所によって生育数に開きがあるので対数目盛を用いました。
昨年にいくつかの場所で盛り返していますが、全体としては減少傾向にあります。
忠別清水線2と名付けた場所ではゼロが続いています。まずはひと桁に抑え込むことが根絶への道なのかもしれません。

人知れず森の陰に群生地

千本余りの抜き取りから始まったオオハンゴンソウとの戦いですが、その後、あまり人の目に触れない森の中に数万本の群生地が見つかりました。
群生地の発見
この場所では、遮光防除という手法を試みています。一年間、太陽光を遮ると植物は枯れてしまうそうです。オオハンゴンソウも根塊の養分まで使い果たしてしまうようです。試行ですので、群生地の一部を遮光シートで覆います。一年覆った遮光シートを初夏に移動させると下にあった植物は枯れて裸地になります。オオハンゴンソウが種子を結実し成熟させるのは秋が深まる頃ですから、オオハンゴンソウ以外の植物が先に侵入します。
裸地になって二年経った区画を観察すると、トリカブトやツユクサ、フキ、タネツケバナ、カラマツソウ、ワスレナグサ、フッキソウなど数々の植物が入り込み、オオハンゴンソウの姿は見られませんでした。
しかし、シードバンクといって以前に産出され土に埋もれた種が芽を出すことも考えられます。これらの種の寿命が何年であるか分かっていません。やはり特定外来生物であるオオキンケイギクでは7年という研究があります。この先、数年の観察が必要そうです。

思わぬ邪魔者

群生地では遮光シートで覆った以外のオオハンゴンソウを刈払っています。新たな種子を産出させないためです。
ところが今年は思わぬ邪魔者が現れました。スズメバチです。モンスズメバチのようです。キイロスズメバチほど狂暴ではありませんが、スズメバチに変わりはありません。今年は、群生地での活動を見合わせることにしました。
見合わせたことで、遮光シートで2年間覆う区画が生じます。より確かな効果が表れるのか、やはり1年で十分なのか、興味深いところです。