
アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
ある日の巡視 -旭岳編-
2025年08月08日旭岳方面の巡視を予定していたある日の前日、旭岳ビジターセンターから「裏旭野営指定地にテントやシュラフ、食べ殻などゴミが投げ捨てられていたのを一般登山者が発見し、それらをまとめてくれたが、回収はまだされていない」と連絡がありました。
グッドタイミング!ちょうど旭岳方面へ行く予定だったから、回収できる!と背負子で出発。

温暖化の影響で、北海道の山もすっかり暑くなってしまいましたが、この日は涼しく、久しぶりに快適に登り進めることができました。
背負子を背負っているので、登山者からは「何を背負っているんですか?」と聞かれます。
「今はまだ何も入ってないですが、裏旭にゴミの投棄があるらしく、それを取りに行くんです」と伝えると、みなさん一様に同情と憤りの表情をされていました。

残念ながら岩陰で用を足したと思われるトイレ跡のティッシュゴミも4つ拾いました。
昨年度まで、環境省が実証実験で裏旭や裾合分岐に携帯トイレブースを設置していましたが、今年度の設置はありません。トイレをする場所がなく心苦しいですが、せめてお尻を拭いた紙はお持ち帰りください。
旭岳山頂には15人くらいの方が休憩したり写真撮影をしていました。ロープウェイからここまでピストン(往復)する人がほとんどで、数割が中岳温泉や黒岳方面へ縦走をします。

裏旭の斜面にはほんの少し雪渓が残っていました。
以前はお盆まで雪が残っていましたが、温暖化の影響で雪解けが早く、水の確保ができなくなるので、大雪山のあちこちでテント泊の計画にも影響が出るようになってしまいました。
テント泊を愛している自分にとっては恐れていた現実です…。

裏旭では嬉しい出会いも。
“ヨコヤマリンドウ”です。
ヨコヤマリンドウは国内では大雪山の一部地域でしか咲いておらず、お花の色も青緑ととても地味。花びらもほとんど開かないので、よく探さないと見つけられないミステリアスなお花です。
久しぶりに出会い、テンションが高まりました。

裏旭野営指定地に到着。投棄されたと思われる一式がありました。
(発見者が散乱していた一式をシュラフにまとめてくださっていました。ありがとうございました。)
中を覗くと、泥らだけのテントとシュラフ2つ、カップラーメンの食べ殻、飲みかけのペットボトル、使用済み携帯トイレなどが入っていました。 捨てて行ったのか、何か事情があったのか・・・どういう状況なのでしょう・・・謎です。
食べ殻や使用済み携帯トイレの残置もできないため、一式を回収することにしました。
重さはそれほどないものの、体積は大きいので、背負子のカゴに入れるのも一苦労。袋に入れるのを手伝ってくださった登山者の方がいらっしゃいました。その節はありがとうございました。

気を取り直して、先に進みます。
間宮岳~中岳分岐の 稜線を歩く登山者は数人だったのですが、中岳温泉まで来るとたくさんの方が足湯に入っていました。半分以上、外国の方です。山腹にある温泉が珍しいのでしょう。
近年、中岳温泉を目指して来られる外国の方がとても増えました。

裾合平はチングルマのお花畑が有名ですが、既にチングルマは綿毛になり、タカネトウウチソウ、ミヤマサワアザミ、ミヤマアキノキリンソウが群落になっていました。
季節の移ろいを感じ、すっかり晩夏の雰囲気になっている裾合平もいい感じです。

無事にロープウェイに戻り、ビジターセンターの職員と現場の状況報告や情報交換をして、事務所に戻り後片付けをします。
この日、裏旭で回収した一式のうち、使用済み携帯トイレや食べ殻などは廃棄し、テント・シュラフ2つは、持ち主が現れたときのためにひとまず2ヵ月東川管理官事務所で保管することにしました。
お心当たりのある方は東川管理官事務所0166-82-2527までご連絡ください。

まだまだ続く夏休みシーズン、たくさんの方が大雪山に訪れます。
雄大な大雪山に癒され、力をもらい、大雪山を大切に守っていきたいと思う人が一人でも増えると良いなと思っています。