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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

白湯 の山 と キタキツネ

2025年07月31日
阿寒湖 熊野直紀

一期一会


二か月くらい前、尾根の岩傍で風に吹かれる君を見かけた。

野生の子ぎつねを目にしたのはそういえば初めてで、

今日もまたいるかなと思っていたわけではないけれど、

あの日見た岩を目にすると、その時の風景を自然と思い出す。
 
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少しは大きくなれたのか、

それとも次の命に渡されたのか、

今日も風が吹いている。

キタキツネ


北海道で生活していると、キツネを目にすることは特に珍しいことでもない。

キツネは環境順応性が高いようで、

ユーラシア大陸と北米大陸のほぼ全域からアフリカ大陸北部にも自然分布している。

人為的導入を含めればオーストラリアにも定着したらしく、

現在の野生食肉類では最大の分布域になるらしい。

ツンドラから砂漠地帯までカバーしているし、森林から都市にまで生息しているのだからなんだか逞しい。
 
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【阿寒湖畔でも時折見かけます】
日本にはキツネ属の1種であるアカギツネ(Vulpes vulpes)が生息していて、

2亜種として

北海道のキタキツネ(V.v.schrenki)、

本州・四国・九州のホンドギツネ(V.v.japonica)に分類される。


稲荷神社に数多の民話に狐憑きにきつねうどんに…etc…、

野生生物でありながら人間に意識され続けてきた動物だと思うと、

改めて不思議な興味深さが出てきたりもします。
 

白湯の山


そんな子ぎつねに出会ったのは、

阿寒湖と雄阿寒岳を眺望できる白湯山(はくとうざん)展望台の近く。
 
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【展望台への木道】
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【白湯山展望台からの景色】

ボッケ(*)を見ることができるスポットをいくつか持つ阿寒湖周辺ですが、

整備された登山道中でボッケを眺めることができるのも白湯山(標高950m)の特徴のひとつです。


(*)ボッケとは、アイヌ語の「ポフケ(煮え立つ)」からつけられた地名で、「泥火山」のことを指します。
  泥火山では、地下から泥が火山ガスとともに吹き出て地上に盛り上がったり、あぶくをあげたりしています。

 

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【ボッケ(寄り)】
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【ボッケ(引き)】
白湯山はスキー場のゲレンデから山上の展望台まで自然探勝路が整備されていて、

温泉(白湯)の流れる小川もあり、眺望以外にも見どころの多い素敵な山です。
 
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【春のハイキングイベントの様子】
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【ゲレンデからの風景】

展望台まで登られればもちろんですが、
そこまでは厳しいという方はスキー場のゲレンデからでも既に充分綺麗なので、
一寸足をのばせられるのであれば阿寒湖を少し上から眺めてみるのもおすすめです。


(※)阿寒湖畔スキー場の展望台(ゲレンデ)は冬季は閉鎖されています。
・(例年6月上旬~10月末の営業、詳しくは下記をご確認下さい)
https://akan-ski.com/
https://ja.kushiro-lakeakan.com/things_to_do/3728/

登っていく道中では白湯山の名を実感できます。
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【白湯ボッケ】
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【白湯川】
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【適温!】 
行程の途中で現れる白湯ボッケ(泥火山)群、
山の麓へ  阿寒湖へ  と向かう 温泉水 の 白湯川 、

山腹でこのような光景に出くわすとやっぱり不思議な心地になります。
(昔の人はどういう驚きだったろうと想像してしまいませんか?)

ぜひ体感してみてください。

灰青の阿寒

 
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 湧き上がる湯気があり
 たち込める霧があり
 そんな空気の阿寒湖があり

 吸い込まれてしまいそうな灰青色は
 幼い君の目の色にどこか似ていて

 出会ってくれた君の目の色として
 阿寒湖をつつむ色合いのひとつとして
 移ろう記憶に刻まれていく

阿寒湖管理官事務所 熊野