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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

鳥インフルエンザ感染状況把握のために野鳥の糞便調査を実施しました

2023年01月16日
川湯 栗原詩
 こんにちは。阿寒摩周国立公園管理事務所の栗原です。
 本格的な冬を迎え、事務所がある弟子屈町では気温が-10度を下回ることも多くなりました。気温が下がると感染症のリスクも上がりますよね。実は感染症に脅かされているのは人間だけではないのです。今回は、動物が感染する感染症の一つである鳥インフルエンザについて、ご紹介します。

鳥インフルエンザとは

 鳥インフルエンザは鳥類に感染して起きる感染症の一種で、家禽に対する病原性やウイルスの型によって、高病原性鳥インフルエンザや低病原性鳥フルエンザなどに分類されます。高病原性ウイルスに感染した家禽類は死にいたることが多いため、養鶏場では1羽でも感染が確認されると、蔓延を防止するために全ての鶏を殺処分しなければなりません。農家さんにとって最も警戒される感染症の1つです。
  養鶏場に限らず、カラスやカモ類、最近では希少種のタンチョウからも感染が確認され、生物多様性保全の観点からも警戒されています。また、低病原性のウイルスでも高病原性のウイルスに変異する場合があるため、どちらも警戒が必要です。

環境省の取り組み

 環境省では鳥インフルエンザ蔓延防止のために、「渡り鳥の飛来経路の解明」、「渡り鳥の飛来経路のモニタリング」、「野鳥における高病原性鳥インフルエンザのサーベイランス」の3つに取り組んでいます。今回は、「野鳥における高病原性鳥インフルエンザのサーベイランス」として野鳥の糞便調査に参加しました。この調査では、秋冬に飛来するガンカモ類の糞便から検体の採取を行い、ウイルス保有の有無をモニタリングし、感染の早期発見と感染状況の把握に役立てます。

調査の様子

 調査を行った場所は小清水町のオホーツク海沿いにある濤沸湖です。濤沸湖は、渡り鳥の飛来地として国際的に重要な湿地と認定され、2005年にラムサール条約に登録されています。調査当日の11月も、ヒシクイやオオハクチョウなどの渡り鳥が多く観察できました。調査には濤沸湖水鳥・湿地センターとオホーツク振興局の職員の方々にご協力頂きました。
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調査の流れを確認する様子
 調査方法は、新鮮な野鳥の糞を探し歩いて採集します。湖の中州に水鳥が群がるため、胴長をはいて中州まで歩きました。今年は中州で糞がなかなか見つからず、湖に面した畑でも調査を行いました。採取した糞は厳重に包装して検査機関に発送しました。
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中州へ移動する様子
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糞便採集の様子
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空に舞うヒシクイ

最後に…

 この調査はあくまでウイルス感染状況の把握のためです。鳥インフルエンザウイルスは鳥の糞などから蔓延し、それらを踏んだりすることによって無意識に靴底等にウイルスを付けて遠くまで運んでしまうことも考えられます。ウイルスの拡散を防ぐためには、「野鳥が多いところには近づかない」「野鳥に餌を与えない」など私たちが野鳥と適切な距離をとることが必要です。
 濤沸湖水鳥・湿地センターでは望遠鏡を数台置いており、誰でも利用可能です。知識豊富なスタッフさんと一緒に野鳥観察をしてみたら新たな発見があるかもしれません。是非お立ち寄りください。
 
濤沸湖水鳥・湿地センターや野鳥に関する情報は以下のサイトからご覧頂けます。
濤沸湖水鳥・湿地センター|網走市 (city.abashiri.hokkaido.jp)