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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

沼ノ原大沼は、水鏡にトムラウシ山を映す美しいところです。
沼ノ原大沼野営指定地は、シーズン初めの雪解けや大雨などで水没することが知られています。

沼ノ原大沼野営指定地の水没

2025年10月27日
上士幌 上村 哲也

クチャンベツ沼ノ原登山口から

クチャンベツ沼ノ原登山口は、五色岳や五色ヶ原、忠別岳、トムラウシ山登山にも利用されています。クチャンベツ沼ノ原登山口を利用できるのは、上川町道高原温泉道路と層雲峡本流林道が開通しているおおよそ6月10日から10月10日までです。
沼ノ原は標高1,400m余りに広がる高層湿原です。大小の池塘を抱え、様々な高山植物を育み、針葉樹が風雪に耐えています。入山して2時間ほどにある沼ノ原大沼が野営指定地に定められています。沼ノ原大沼は、水鏡にトムラウシ山を映す美しいところですが、私はまだ静水に恵まれたことがありません。
沼ノ原から望むトムラウシ山
9月、ヒサゴ沼周辺の現地調査のため通りかかったところ、沼ノ原大沼は満々と水を湛え野営指定地は利用できそうにない状況でした。夏山シーズンの初め、雪解けの水が引くまで大沼に水が満ちているのは毎年のことですが、大雨により水没することも珍しいことではないようです。
水没した野営指定地(2025/9)
利用可能な野営指定地(2022/8)

水没を予測したい…

魅力いっぱいな沼ノ原大沼野営指定地が、利用できるのかできないのか、知る術はないものでしょうか。
結論から言えば、山行記録を投稿するSNSが頼りになります。沼ノ原大沼を利用する方の報告は少なくありませんし、ヒサゴ沼や忠別岳方面を目指して通りかかり様子を投稿してくださる方もいらっしゃいます。これらの写真やコメントから、野営指定地の水没、利用可否に関する情報を拾ってみました。2025年は6月10日から10月10日までの123日間のうち47日について情報が得られました。今年は、6月と9月に雨が多かったようで、シーズンの初めに利用可となったのは6月30日、8月24日に再び水没し水が引いたのは9月17日でした。
では、利用できるという情報を得たけれどしばらく雨が続いているとき、水没していると聞いたが晴れが続いているとき、どう判断したらよいでしょう。
沼ノ原大沼の降雨量を直接知ることはできません。最も近いアメダスが上士幌町三股で16㎞あまり離れています。層雲峡21km、白金温泉26㎞、ぬかびら源泉郷27kmと続きますが、いずれも石狩連峰や白雲岳など高い山を挟んでいますので、どれだけ参考にしてよいのか悩ましいところです。
4地点の日別降水量とその小計、野営指定地の利用可否を表にしてみました。
8月5日から8月24日までの20日間、利用可能から水没へ向かう4地点降雨量の合計は534㎜、1日の平均は26.7㎜でした。
8月24日から9月17日までの25日間、水没が続く間の合計は650㎜、1日の平均は26.0㎜でした。
この量の雨が沼ノ原大沼を増水させ、あるいは水位を維持するようです。

衛星画像の利用

もう一つの手段として、アメリカの衛星、Landsat の画像を利用できます。Landsat は、1972 年から世界中で画像を撮影している、長い歴史のある衛星画像プログラムです。
Webブラウザでは、Landsat Explorer などが見つかります。
https://livingatlas.arcgis.com/landsatexplorer/#mapCenter=142.94091%2C43.53598%2C14.000&mode=find+a+scene&mainScene=2025-07-01%7CAgriculture+for+Visualization%7C9921546&hideMapLabels=true&hideTerrain=true
スマートホンのアプリもあります。
上空を衛星が通過しなかった日や雲が広がっている日は利用できませんが、123日間のうち、9枚が利用できそうでしたので、GIFアニメーションにしてみました。野営指定地が水没した沼ノ原大沼は黒々と水に満たされ、利用可能な日は茶色い沼底が写っています。
沼ノ原衛星画像スライド
ランドサットの画像は翌々日には公開されるようです。SNSも下山後、日を置かずに投稿される方が多いようです。山行予定にタイミングよく情報が得られれば安心して出発できることでしょう。数日、情報の更新がないときは、周辺の降雨量を参考にしてみてください。