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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

環境省アクティブ・レンジャー写真展~北の自然の舞台裏~

2023年06月01日
帯広自然保護官事務所 谷水亨

日高山脈襟裳国定公園

帯広自然保護官事務所 アクティブ・レンジャー 丸岡 梨紗 (現任:谷水 亨)

悠久の時


エサオマントッタベツ岳付近 10月
 
 プレート同士の衝突からの隆起、氷河期の侵食、氷期が終わって温暖化し、その後の風化や侵食、果てしない悠久の時の流れと壮大な地球の活動を目にすることのできる場所、日高山脈。
 ここでは、ナキウサギのように氷河期からこの場所に生き続ける動物や植物にも出会えます。
 日々時間に追われる社会生活から離れて、ここでゆったり自然を見ていると、目に映るものから微生物のような目に見えない生き物が同じ空間に生きていることを感じ、風や光などの様々な地球の営みなども五感で感じられ、循環する自然の世界の時の流れに浸ることができます。自然の世界そのものである山では、エネルギーを頂き、自分も今この瞬間を生きる自然、地球や宇宙の一部だと感じます。

生きている宝石


アポイ岳 5月

 ヒメチャマダラセセリは、焦げ茶に白いまだら模様がある3センチほどの蝶です。幼虫の食草であるバラ科のキンロバイに卵を産み、日本では、アポイ岳周辺に限って生息しています。
この蝶は、1973年に発見され、その後、国の天然記念物に指定されて、生態の研究と同時に手厚い保護の歴史が続いてきました。
 成虫が発生する5月から6月のお天気が良い日に、この蝶に出会えるかも知れません。
最終氷河期の後でアポイ岳にのみ残ったこの蝶が、この場所で脈々と命のバトンを受け継がれて、今でもこうしてお花畑で優美に舞う姿を見ると、保護活動を続けられた方々の思いの詰まった生きている宝石だと感じました。