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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

環境省上士幌管理官事務所では、上士幌町黒石平の山中で、特定外来生物オオハンゴンソウの防除手法を調査検討しています。
オオハンゴンソウは、キク科の多年生草本で、高さは0.5~3m程度にまでなります。路傍、荒地、畑地、湿原、河川敷など、肥沃で湿った、ときに湧水のあるところに生育します。開花期は7~10月。寒冷地に生育でき、大雪山国立公園の周辺部にも侵入しています。

オオハンゴンソウ防除手法調査

2023年09月04日
上士幌 上村 哲也
環境省上士幌管理官事務所では、国立公園内の糠平国道脇、上士幌町黒石平の山中などで、特定外来生物オオハンゴンソウの防除手法を調査検討しています。
国道脇など公園利用者の目に触れるところでは生育数を調査するため抜き取りを行っています。抜き取りは生育数を減らすことが期待できますがたいへん手間がかかります。国道から離れた山中に一つだけ見つかった群落では刈り払いを行なっています。オオハンゴンソウは、親指ほどでも根塊が残っていると高い確率で再生してしまいます。地上部の刈払いだけでは生育数の減少効果は低いですが、抜き取りには膨大な作業量が必要であり、大きな群落では開花期が終わるまでに抜き取りが完了できません。このため、取り敢えず新しい種を成熟させず、生育範囲を拡大させないようにエンジン付き刈り払い機で年2回の刈り払いを試みています。刈り払いだけでは種から増えることはないものの多年草であるオオハンゴンソウの生育株が減っていくことは難しいでしょう。そこで、妙高高原(長野県)での試みに学び遮光防除を試みることにしました。
山中の群落
遮光防除は、日光を透さない防草シートで植生を覆って、一端、全ての植物を枯らせてしまい、その後に在来種が生育することを期待する防除手法です。
9月2日(土)、大雪山国立公園パークボランティアさんの協力を得て、昨年に敷設した遮光シートを剥がし隣の区画へ移設しました。1年余りシートで覆った地面は光を遮られて光合成が妨げられただけでなく、黒いシートが熱を受け中の植物を蒸し殺したのではないでしょうか。植物の姿は消えて裸地が見えています。
ここに経過観察のための1メートル四方の方形区を設定し、来年以降にどのような植物が生育するか観察し防除手法の有効性を確認していきます。今後はこれまで親しんできた高山植物ではなく里山の植物についても同定ができるように知識を身につけていかなければなりません。長い戦いになります。
遮光シートの移設と経過観察方形区の設定
その後、周辺の林道で小群落の抜き取り防除に取り組みました。手鍬を奮って土中の根塊ごと掘り取ります。親指ほどの根塊が残っていると高い確率で再生するからです。昨年は1028本を抜き取りましたが、今年は740本でした。僅かな時間と人数で抜取り完了するよう、さらに生育数が減少していくことを望んでいます。
特定外来生物の防除は非常に困難な課題ですが、現実的に動員できる作業人員や作業量・費用も考慮しつつ、当該地における最適な防除手法を見いだせるよう、今後もパークボランティアさんなどのご協力を得ながら、試行錯誤を続けていきます。

 
小群落の抜取り防除