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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

外来生物法では明治以降に国外から導入され、生態系などに被害を及ぼす生物を対象としています。
セイヨウオオバコは江戸時代末期に日本へ持ち込まれたとされています。人や車が行き来し土地が硬くなってほかの植物が入り込めないような環境に生育域を広げる性質があります。オオバコは踏みつけには強いのですが、背が低いので、土地が柔らかさを取り戻し、ほかの植物が旺盛になると消えていきます。

登山道の帰化植物

2023年09月08日
上士幌 上村 哲也

先日、愛山渓温泉から永山岳を経て比布岳、愛別岳を踏み、安足間岳、当麻岳、沼の平と現地確認を行ってきました。比布岳近くの分岐から愛別岳へ向かう下りは急斜面で脆く、転滑落すればただではすみません。過去には死亡事故も起きている難所であることから慎重に歩を進めました。

この日は行動13時間、天候に恵まれ展望も楽しみながらの現地確認となりましたが、携行した2リットルのドリンクがギリギリちょうどという始末。北海道の夏もずいぶんと暑くなりました。

愛別岳へ続く稜線

さて、本題は愛山渓温泉から三十三曲り、沼の平へとつながる登山道に生育する帰化植物あるいは国内移入種のお話です。

広く知られているセイヨウオオバコも日本に渡来したのは江戸時代末期とされ、外来生物法に基づき栽培・運搬等が規制される特定外来生物ではありません。オオバコには数種の在来種もありますが、いずれの種も、人や車に踏まれ硬くなった地面を好んで生育するようですから、登山道やアプローチの林道に入り込んだオオバコが、本来この環境になかった帰化植物あるいは国内移入種であることは間違いないでしょう。雨など水にさらされると粘着性を持つオオバコの種は、一般に、登山靴の底などにくっついて登山道や林道に沿って生育域を拡大しますが、温度や土壌環境への適応性が高く、乾燥にも強いとされることから、高山域に生育する希少種等との競合・駆逐等のおそれが懸念されます。

愛山渓温泉から沼の平へと歩を進めると、ある地点からバッタリとオオバコが見られなくなります。そこは泥田が広がっていて水がなかなか引くことがなく木道がいくらか敷いてあるものの数歩は靴を泥に入れなければ通り抜けられません。おそらくはこの泥田がバリアとなってオオバコの侵入を抑えているのです。
トムラウシ山ではどうでしょう。こちらは、カムイ天上が近い標高1,300メートルほどまでオオバコが侵入しています。愛山渓温泉コースの泥田のような目立ったバリアはありませんので、どの程度高山域まで入り込むのか気がかりです。

どうか泥田や水たまりを嫌わずに、持ち込むべきではない植物を洗い落とすと思って踏み込んでください。

当所としても、高山域に生息する希少種等への影響の程度など、登山道や林道を中心に引き続き注視していきます。


本題に関わる画像がなく申し訳ありません。