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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

環境省上士幌管理官事務所では、南沼とヒサゴ沼野営指定地において、利用数調査を行っています。
タイマーを利用した自動撮影カメラを設置し、早朝と夕方を中心に野営指定地を撮影し、設営されたテントの数を利用数として集計しています。

南沼、ヒサゴ沼野営指定地利用数調査

2023年10月31日
上士幌 上村 哲也
環境省上士幌管理官事務所では、南沼とヒサゴ沼野営指定地において、利用数調査を行っています。
タイマーを利用した自動撮影カメラを設置し、夏山シーズンの早朝と夕方を中心に野営指定地を撮影し、設営されたテントの数を利用数として集計しています。
野営指定地日別利用数
南沼野営指定地における調査は、トムラウシ南沼汚名返上プロジェクトの一環として2017年から始めました。
2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023
調査開始 7月25日 6月25日 7月4日 7月4日 7月28日 6月28日 7月5日
調査終了 10月3日 9月16日 9月14日 9月15日 9月12日 9月26日 9月21日
調査日数 52 84 73 74 47 80 79
日最大 25(8/17) 47(8/12) 37(8/14) 21(7/24) 21(8/13) 30(8/6) 45(7/22)
合計 324 308 469 302 223 422 429

2019年に多くの利用があったのは、ヒサゴ沼で避難小屋の改修工事があり資材置き場などで野営指定地も利用できなかったため、縦走者の多くが南沼を頼りにしたと考えられます。2021年8月末から9月末には北海道に新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が出されました。旅行や登山を控えた方が多かったでしょうか。その後、登山などアウトドアの活動には感染リスクが低いと認識されたのか、登山者が増えているようです。
今夏7月22日(土)には、2018年の47張りに次ぐ45張りを数えました。今夏の2番目が8月13日(日)の26張りですから、なかなか突出した数だと感じます。前日、遠くフィリピンの東方海上では台風が発生していましたが、梅雨前線が日本列島から離れ次々と梅雨明けを迎える頃でした。晴れの日が続くと予報されたことで利用者が集中したのかもしれません。この日、トムラウシ山短縮登山口からの入山者数も今夏最多の168人でした。画像を見渡すとテン場にはまだ余裕がありそうです。どうかロープの内側にテントを張り、植生に踏み込まず裸地を広げないようにしましょう。
調査期間中、霧に遮られた日もありましたが、調査できた79日に429張りの利用がありました。
南沼野営指定地の最多利用日(7/22)
ヒサゴ沼野営指定地における調査は、野営指定地の環境改善を検討する上で降雨後の水たまりや利用数を把握するために昨年から始めました。
2022 2023
調査開始 8月4日 7月7日
調査終了 8月31日 9月12日
調査日数 28 68
日最大 12(8/13) 20(7/8)
合計 79 146
今夏は、7月8日(土)に観察した20張りが最多でした。この日の20張りのうち1張りは前日から、7張りは翌日までの連泊でした。今夏は最寄りと考えられるクチャンベツ沼ノ原登山口に続く層雲峡本流林道が、災害復旧工事のため通行止めでした。より行程の長い天人峡登山口から入山し中間日にトムラウシ山を往復したでしょうか。縦走や定着、様々な山行の形がうかがえます。
ヒサゴ沼野営指定地の最多利用日(7/8)
調査を重ねるうちに、利用数、利用の多い時期や曜日、天候との関連など興味深いことがらが見えてきました。ただ、利用者数をつかむのは難しいことです。
トムラウシ南沼汚名返上プロジェクトの初め、野営指定地で行ったアンケートを基に、テントひと張りあたりの利用者を「2.1人」と見積もり毎年、推定値を算出してきました。withコロナとなって以降、ソロテントの利用者が増えたと感じています。昨年、トムラウシ山の入林簿から南沼泊の利用者は1パーティあたり「1.7人」という数字が出てきました。また、今夏7月9日(日)のヒサゴ沼は16張りでしたが、にわか雨の後の18時頃に日没がきれいだったのか22人の姿を数えました。この日の画像を頼りにすればテントひと張りあたりの利用者数は「1.375人」となります。みんながみんなテントの外に出てきたとは限りませんし、避難小屋泊の利用者が加わっていることも考えられますが、実感に近い数字が出てきました。
16張りのテントと22人の姿
利用者数を知ることは、携帯トイレの普及や植生の保全を進め、野営指定地や登山道を維持管理する上で大切です。アンケートを重ねるのがよいか入林簿を読み解くのがよいか、withコロナなど時代の移り変わりに遅れることなく適切な係数を持てるよう課題としていきます。