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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。
支笏洞爺国立公園 洞爺湖地区(羊蹄山・洞爺湖・登別)の情報を、アクティブ・レンジャー幸村和実が発信しています

アメリカオニアザミ

2025年11月18日
洞爺湖 幸村 和実
 みなさんこんにちは。洞爺湖ARの幸村です。
 今回は洞爺湖中島で行っている、アメリカオニアザミの防除活動について紹介したいと思います。

 アメリカオニアザミ 生態系被害防止外来種

 キク科の多年草で、きれいな花を咲かせる反面、花以外の全体に鋭いトゲがあり、家畜や人に傷を負わせるリスクがあります。
 タンポポのように綿毛の痩果(種)を作り、風、動物、人などにより拡散します。


 
アメリカオニアザミ
きれいな花を咲かせるが、鋭く強力な棘をもつ

中島のアメリカオニアザミ

 洞爺湖中島は、シカが逃げ出して爆発的に繁殖した問題と、アメリカオニアザミを含めシカが食べない植物(不嗜好性植物)が大群落を作る、偏った生態系の問題は切り離せません。
 特にアメリカオニアザミは、観光で遊歩道を歩く方にけがをさせる恐れがありますので、環境省や地元自治体が毎年防除活動を行っています。
 中島のアメリカオニアザミは、大平原と遊歩道周辺で広がりを見せているため、ここを中心に防除を行っています。
 大平原は、遊覧船を降りてから20分ほど歩いた中島中心部にあり、過去にシカが大繁殖した時には、焼け野原のようだった、と聞いています。
 一部実験的に防鹿柵で囲った場所があるのですが、いまでも柵の中と外で植生が全く違うのが確認できます。
 アメリカオニアザミは開けた日当たりの良い場所を好みます。
 大平原では、シカがアメリカオニアザミ以外の植物を食べつくしたことで、アメリカオニアザミにとって、生育しやすい環境が作られているとも言えます。
大平原
大平原 晴れた日は正面に羊蹄山を望む
防鹿柵
赤丸が柵で囲われた場所

防除の手法

 昨年まで防除には、皮手袋を装着、鎌・刈込ばさみや移植ごてで、茎を刈り取り、根を堀ったりしていましたが、トゲが皮手袋を突き破って激痛に見舞われるので効率がよくありませんでした。
 また、茎を刈るだけでは、残った根から生えてきますので、できれば根ごと除去したいところです。
 試行錯誤を重ねてたどり着いたアイテムが、「剣先スコップ」です。
剣先スコップの良いところは、
アメリカオニアザミに触れずに除去できる(痛くない)
根っこまで除去できる
なにより効率がいい
というところです。
 デメリットとしては、あまりないように思いますが、ガンガン防除できるので頑張り過ぎてしまうこと・・・でしょうか。
 今年の春から、剣先スコップを多く持ち込み、中島遊歩道の外周部分と森林博物館周辺を集中的に防除しました。
従来のスタイル
皮手袋+鎌を使った従来のスタイル
剣先スコップ
剣先スコップで根っこごと防除できる

防除のコツ

 アメリカオニアザミの防除は、
種をつける前に 根っこごと 除去する。
 ※花・種がついたら、ハサミで除去して持ち帰り処分する。
道具は剣先スコップが良い。というのが、いまのところ最適解だと思います。 
 もっと良い道具があれば、ぜひ教えていただきたいです。

振り返り

 今年は、パークボランティアでの活動に加え、洞爺湖風景林保護管理協議会主催の活動に参加して、合計4回の防除活動を行いました。
 特に洞爺湖風景林保護管理協議会主催の防除では、一般ボランティアさんとパークボランティア、自治体職員ら総勢30名超で防除したこともあり、森林博物館周辺では、個体を確認できないほど、防除圧を高められました。
 外来種防除はやはりマンパワー。30人のパワーはすごいです。
防除の成果
この日の成果
 外来種の防除は、「一日にしてならず」で、来年も継続して防除と振り返りをやっていこうと思います。今年の成果を、来年の最初の防除活動で確認するのが楽しみです。
 最後までご覧いただきありがとうございました。
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