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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

東大雪地域は、面積で大雪山国立公園の半分以上を占めていますが、登山道の利用者は1割に届きません。
上士幌管理官事務所は、トムラウシ山の短縮コースと温泉コース、石狩岳、ニペソツ岳及びウペペサンケ山の登山口に登山者カウンターを設置し、利用者数を調査しています。また、森林管理署から入林簿情報の提供を受け、そのほかの登山口の入林者数や携帯トイレ保有の有無などを集計しています。

東大雪地域における登山道利用者数の推計

2025年12月16日
上士幌 上村 哲也

2025年の利用者数

東大雪地域全体で登山者カウンターが計測した数、入林簿に記入された数の合計は12,269人で、昨年の12,433人にわずかに届きませんでした。
登山口別の利用者数
これは、大雪山全体の約14万人と比べると、その1割に満たない数です。
東大雪地域は大雪山国立公園の中、面積では半分以上を占め、登山口では30箇所ほどのうち12箇所があります。
しかし、旭岳や黒岳のようにロープウェイがあるところはなく、トムラウシ山の短縮コースや石狩岳のシュナイダーコースでは登山口まで長く林道を走らなければなりませんから、やむを得ません。静かな山歩きを楽しみたい方にお勧めします。
 
登山口ごとの月別利用者数
  年間 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
十勝岳新得側 40   14 6 2 3 5 10
トムラウシ山短縮口 3389   4 287 1219 1093 698 88
トムラウシ山温泉口 212   2 45 52 82 18 13
石狩岳 1145   5 230 290 281 273 66
ユニ石狩岳 217   0 41 23 52 88 13
ニペソツ山 1409   11 356 345 283 293 121
ウペペサンケ山 601   6 92 112 138 174 79
白雲山士幌側 1305 80 329 292 145 108 201 150
白雲山鹿追側 1953 7 176 429 370 281 361 329
東ヌプカウシヌプリ 1832 9 173 345 343 272 412 278
南ペトウトル山 166 2 16 27 31 35 9 46
合計 12269 98 736 2150 2932 2628 2532 1193

今年は、十勝岳新得コース登山口に通じる林道途中の殿狩橋の修復が完了し、同コースの利用が見られました。5月に利用者が多かったのは、上ホロカ川の大雪渓を目指したスキーヤーらと考えられます。
然別湖周辺の山々は、登山道のあるうちで最も高い南ペトウトル山でも1,345mであり、春の雪解けが早く、早くから日帰り登山に利用されています。表大雪地域は6月下旬に山開きを迎えますが、東大雪地域では、登山者カウンターを5月末から10月中旬まで設置し、然別湖周辺の入林簿は4月から10月までを集計しています。
東大雪地域の中では、トムラウシ山の短縮コースの利用が3,389人で最多でした。
白雲山は、然別湖の湖畔と士幌高原とに登山口があります。いずれも白雲山のほか天望山や東雲湖、岩石山と多様な利用が見られます。入林簿の行程欄から白雲山を目指すと記した利用者は2,892人でトムラウシ山を追っています。

携帯トイレの持参が広がっています。

入林簿に携帯トイレ持参の有無を記入いただいています。
携帯トイレの持参率
トムラウシ山やニペソツ山など登山時間の長い、あるいは、健脚向きの山で持参率が高いように見受けられます。登山のステップが上がる中で装備を整え、携帯トイレもその一つに加えられているのでしょう。
全体を合算すると74%で昨年から1ポイント上がりました。

東ヌプカウシヌプリとトムラウシ山短縮口を比べてみたら

東ヌプカウシヌプリは標高1,252m、登山口となる白樺峠から登り1時間、下り40分と紹介され、日帰り登山、初級者向けの山です。山頂からは十勝平野を見下ろし、大雪山国立公園と人の営みの境にある山です。
トムラウシ山は標高2,141m、短縮口からは登り7時間、下り5時間。日本百名山に選ばれ、上級者向け。南沼野営指定地にテント泊で往復する利用者も14%ほどいます。
二つの山を比べてみました。
 
曜日別
月別
曜日別では、いずれも土曜日、日曜日が多く、休日になることも多い月曜日が続いています。
月別では、雪が残る5月や降雪が始まる10月にトムラウシ山は利用者が少なく、雪の少ない東ヌプカウシヌプリでは4月から10月まで幅広く利用者が訪れますが、夏の暑さが厳しい8月にはいくらか凹んでいるようです。
 
東ヌプカウシヌプリ時間帯別
東ヌプカウシヌプリ時間帯
トムラウシ山時間帯別
時間帯別の利用者数を山ごとに入山と下山で見てみました。
東ヌプカウシヌプリでは、5時から15時まで幅広く入山があります。所要時間の短さが現れています。滞在時間が2時間以上、3時間未満の利用者が60%を占め、その時間差で下山の時間帯も分布しています。
トムラウシ山では、長い登山時間を見越して日の出前後に入山される利用者も多く、4~5時にピークが見られますが、山中泊の利用者であろうゆっくり目の入山も見られます。12時ごろまでに下山されるのも山中泊の利用者でしょうか。登山時間に幅があるのでしょう、下山には入山ほどのピークが見られません。
以前、トムラウシ山短縮口にセンサーカメラを置いた時、日の出前と日没後の暗い時間帯にヒグマを捉えたことがありました。どうか無理をせず安全な登山を心がけください。南沼野営指定地にテント泊でのトムラウシ山登山は、夕方と早朝の2回、山頂での展望に恵まれるチャンスがあるのでお勧めです。

集計には誤差があります。

登山者カウンターは、赤外線式と熱感知式とを利用しています。赤外線式について、実地に精度を検証したところ、接近して通過する複数の利用者を取りこぼしたり方向を取り違えたりする事象が見つかりました。設置方法を工夫し、検証を積み精度を高めていきます。
入林簿は、利用者全員には記入いただけていません。いくつかの登山口では登山者カウンターと入林簿の両方が設置されています。取りこぼしのある登山者カウンターですが、こちらを100%とすると、入林簿の記入率は、トムラウシ山短縮コースで59.3%、温泉コースで36.8%、ニペソツ山で41.9%、合算すると53.4%でした。然別湖周辺の利用者は、もっと多いに違いありません。

この記事では数字を丸めずに紹介していますが、誤差を含むことを御承知おきください。