北海道のアイコン

北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

環境省アクティブ・レンジャー写真展 ~北の自然の舞台裏~

2024年06月01日
羽幌 忠鉢伸一

国指定天売島鳥獣保護区

羽幌自然保護官事務所 希少種保護増殖専門員 岩原真利

ほっとスポット


天売島  6月
 
6月の海鳥繁殖シーズンまっただ中のとある朝方、点検作業のため海鳥の繁殖場所である赤岩まで向かい、作業を終えほっと一息つきながら海岸に腰をかけ、海の方に目をやるとウミガラスやケイマフリも岩礁で休憩している。人気の休憩スポットなのだろうか。ウミガラスが岩礁で何羽も休息している光景を見れるようになったのはここ数年の話で、ウミガラスが徐々に増えてきているということをしみじみと実感。いつの日か、島内の海鳥繁殖地内であればどこでもウミガラスを見ることができる、そんな光景を目にしてみたい。

静かな眼差し


天売島 5月

天売島というと、世界有数の貴重な海鳥繁殖地というイメージが強い。けれど、島の中心部には森がある。かつて水不足に悩まされ、その解決策として先人たちが森作りを始め地道に植林をし、その森を守り、次世代につないできたという歴史がある。そして今も森を作る取り組みは続いており、何世代にも渡り大切にされてきた森は少しずつ大きくなり、水源林としての重要な役割を担い、流れ出す森からの栄養が海に豊かさをもたらしている。また森は渡り鳥たちの大事な中継地であり、陸鳥類の営巣場所でもある。そんな森を5月末の夜、歩いてみると「ピィーーー!ピィーーー!」という甲高(かんだか)い鳴き声が響いている。トラフズクの巣立ち雛が一晩中鳴いている。そして、夜が明けて明るくなった頃に、島のバンダーさんから「トラフズクの雛がいるぞ」と連絡が入り、急いで森へ向かうとトラフズクの雛がひっそりと佇んでいた。木の上からじーっとこっちを見据えている。そして、よく見るとその奥にもう1羽。まるでこの森を静かに見守っているようだ。