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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

お花の上で

2024年10月15日
東川 渡邉 あゆみ
こんにちは、東川管理官事務所の渡邉です。
東川町で初霜が下りた日の早朝、飼い犬の散歩中にセイヨウオオマルハナバチ(以下「セイヨウ」という。)の働きバチがご近所の庭先のマリーゴールドの上で力尽きているのを見つけました。
働き蜂の寿命は2~3週間。一日に1,000~3,000もの花に訪花し、蜜や花粉を集めるそうです。
きっとこの個体もたくさん働いて命を全うしたのでしょう。
にしても、お花の上で寿命が尽きるなんて羨ましいとすら思えて、思わずスマートフォンで写真を撮ってしまいました。

セイヨウは特定外来生物に指定されており、大雪山の山岳地ではモニタリングを行っています。
セイヨウは今のところ山岳地では定着していないものの、麓では蔓延し、北海道の庭先では一般的に見られるマルハナバチとなっています。

セイヨウは90年代、トマト栽培の花粉媒介者としてオランダから輸入され、トマト農家のビニールハウスで飼育されていましたが、ビニールハウスの隙間等から野外に出てしまい、野生化。自然界でセイヨウの数が急増しました。
セイヨウが自然界に及ぼす影響は、在来バチと餌や営巣場所の競合、在来バチとの交雑、花の側面に穴をあけて蜜を盗む“盗蜜”などがあり、2006年、特定外来生物に指定され、飼育や運搬、輸入等が規制されることになりました。

 
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エゾオヤマノリンドウが盗蜜されたらしき跡
ミヤマサワアザミに訪花する在来種エゾオオマルハナバチ
特定外来生物となったセイヨウですが、黄・黒・白の愛嬌のあるボディーカラーとモコモコした体毛と丸っこい体つき、そして花から花へ移り飛び、一生懸命蜜集めをしている姿を見ると憎めなくなってしまいます。
最近は温暖化で北海道も暑いので、剛毛に覆われて暑くないのかしらん・・・と余計な心配もしてしまいます。
 
今夏も、パークボランティアの方々の協力を得て、姿見の池や富良野岳でモニタリングを行いました。
残念ながら富良野岳でモニタリング中に、セイヨウオオマルハナバチの働きバチを一頭を発見し、捕獲しました。
富良野岳でセイヨウを見たのは初めてだったので、ギョッとしました。
人間の都合で日本に連れて来られ、今では悪者のような扱いを受けているセイヨウが不憫ですが、放っておくと大雪山の生態系が崩れてしまう・・・。
大雪山のお花畑や在来マルハナバチを守るために、今後もジレンマと戦いながらモニタリングと駆除を続けていきます。

モンキチョウ
アゲハチョウ
姿見周辺では、たくさんの昆虫がエゾオヤマノリンドウに吸蜜しに来ていました。一体どんな味がするのでしょう?
こんな光景がいつまでも続きますように。