北海道のアイコン

北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。
十勝三股の小中学校跡地で植生復元活動を続けています。

十勝三股植生復元活動

2024年11月20日
上士幌 上村 哲也

小中学校跡地に植樹

上士幌町三股は、かつて林業で栄え1,200人ほどが暮らし、人々の往来や木材の搬出にと国鉄士幌線の終着駅が置かれるほどでした。現在は2世帯が暮らすのみになりました。
環境省は一帯を所管地とし、上士幌管理官事務所では小中学校跡地を中心に、植樹や自生樹木の食害防止など森に還す活動を続けています。植樹は、ひがし大雪自然館と共催のイベントとして参加者を募り、毎年の秋に針葉樹と広葉樹の稚樹20本ほどを植えています。近くの国道脇から、いずれ管理のため刈り払われてしまう稚樹を掘り取り移植しています。針葉樹は主にトドマツ、広葉樹はカバやヤナギ、ハルニレなど、小中学校跡地の周辺にも見られる種類です。
樹を植え網で囲んで
当初、木枠と金網で柵を巡らし複数の植樹を囲むように鹿の侵入を防いでいましたが、現在は、樹脂網と支柱を用いて1本1本を守っています。稚樹の掘り取りや食害防止樹脂網の設置などは大雪山国立公園パークボランティアのみなさんがサポートしています。

テキサスゲートの構築

長い時間を経て防鹿柵が傷み、金網に穴が開き木枠が倒れてきています。順に解体し廃材として処分するところでしたが、専門家から「テキサスゲート」として活用できると助言をいただきました。鹿は岩や木道など堅く不整地であるところ、滑りやすいところを避ける性質があります。テキサスゲートは、金属製のアングルを格子状に敷き並べ、自動車などは通行できるようにしながら、牧場から牛が逃げ出したり鹿など害獣が侵入したりすることを防ぎます。小中学校跡地の植樹区画では自動車を走らせることはないので、防鹿柵を解体した木枠や松製材でも十分効果が期待できます。
廃材で囲んだふたつの区画
松製材で囲んだふたつの区画とその周囲を見渡す位置にセンサーカメラを設置し、鹿の行動を観察しました。画像の右側を北ゲート、左側を南ゲートとします。期間は5月下旬から8月末まで。静止画ですと分かりにくいので、10秒の動画で記録しました。居座る鹿をとり続けては保存容量が持たないので、10分のインターバルを開けて次の検知に進むよう設定しました。
期間中に撮影された鹿は111頭。北ゲートに侵入したのは4頭4%、南ゲートのそれは16頭14%で、大きな抑止効果を検証できました。
  南ゲート 北ゲート 周囲 合計
5月 5 3 17 25
6月 4 1 44 49
7月 5 0 25 30
8月 2 0 5 7
合計 16 4 91 111
  14% 4% 82%  

テキサスゲートの改良

ゲートの内側を敷き詰め
今年は更に改良を重ね、比較的侵入の多かった南ゲートを内側まで敷き詰めることにしました。
8月になると、鹿たちはどこか標高の高いところへでも移動したのか、小中学校跡地にはあまり現れなくなりました。
また、来年の観察を楽しみにします。

おまけ

ときにはこんな訪問者も