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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

礼文高校生徒さんと協力して実施したササ刈り

2024年11月01日
稚内 後澤 宏文
 こんにちは! 礼文島担当のアクティブ・レンジャー(AR)の後澤です。
 
 本年度,礼文高校1年生の皆さんとササ刈りを行いました。
 目的は,「花の浮島 礼文島」のシンボルであるレブンアツモリソウ(写真①)の生育に適した環境を整えるためです。
 レブンアツモリソウ保護増殖のための様々な取り組みの結果,ササなどが拡大している場所では継続的な草刈りなど,人が積極的に環境改善をしなければレブンアツモリソウを守れないことが明らかになってきました。そして,継続的な環境改善に向けて,島内や島外の方々も一緒になって,「みんなで守る」という動きをより進めていく必要が出てきています。その第1号として,礼文高校の生徒さんと連携することになったのです。
 なぜササを刈るとレブンアツモリソウが増えるのかを知ってもらうために,まず春先のレブンアツモリソウが咲く時期に,レブンアツモリソウの生育環境の観察を行いました。

〈5月29日 レブンアツモリソウの観察〉

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①レブンアツモリソウ
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②ササ刈りの効果
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③群生地での観察
 最初に,これまで試験的にササ刈りを行ってきた場所を観察しました。②の写真で,柵の奥はササに覆われています。柵より手前がそのササを刈り取った試験区です。ここではレブンアツモリソウや高山植物などが生育してきており,ササ刈りの効果がよく分かりました。
 次に,レブンアツモリソウを観察するために,レブンアツモリソウ群生地に行きました。③の場所では間近で見ることができ,生徒さんたちは写真を撮ったりメモをとったりしていました。
 この日の生徒さんたちのレポートを礼文高校の先生からいただきましたのでご紹介します。

・保護区では,ササの刈り払いをすることで再びレブンアツモリソウが生える環境を作っていた。刈り払いをすることによって,種を蒔くことなく自然に生えてきたという。生えてこれなかっただけでずっと眠っていたレブンアツモリソウの生命力がすごいと思った。昔は畑だった土地が放置されることによって,一面にあったレブンアツモリソウも笹に覆われた。刈り取った笹は柵(境目)において笹の侵食を防いでいる。まだ数が多いとは言えないけど,また一面に咲き誇るレブンアツモリソウが見られることに期待が高まった。

〈10月4日 ササ刈り実習〉

 春の観察をもとに,秋には実際に環境改善のためのササ刈りと植生調査を行いました。
 高校生に刈ってもらう範囲は10m×10m(1a)です。
 ササ刈りの効果を今後確認していくために,まず植生調査を行いました。1m×1mの枠を2箇所設置し,その中に生育する植物全ての種類・被度・草丈を記録していきました。
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④調査枠A
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⑤調査枠B
 枠内には,ササやススキ・イワノガリヤス・オオヨモギなどの高茎草本が生い茂っていましたが,それらをかき分けて探すと,他の植物が何種類も見つかりました。レブントウヒレンの葉など,ササや高茎草本がなくなれば花を咲かせてくれそうな貴重な植物たちも控えていました。
 続いて,いよいよ鎌や剪定ばさみを用いてササ刈り開始です。
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⑥鎌で刈る
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⑦鎌やはさみで刈る
  写真⑥⑦のように鎌や剪定ばさみでササを刈りました。根元からしっかり刈り取り,地面が出るようにします。そうすると,雪が風で飛ばされて積もらず,地表が外気にさらされて凍り付きます。ササはそのような環境が苦手なので,結果としてササが衰退し,レブンアツモリソウや高山植物が生えてくるチャンスが生まれます。
 
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⑧刈ったササを集める
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⑨刈ったササを運ぶ
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⑩刈ったササを柵沿いに積む
 同じ理由から,刈り取ったササの葉などを残らず集めました(写真⑧)。そしてブルーシートや背負いかごで急斜面を登って運び(写真⑨),柵沿いに積みました(写真⑩)。これにより,柵の向こう側のササや高茎草本の侵入を防ぎます。急斜面での作業は大変でしたが,高校生は張り切って取り組んでくれました。(若いっていいなぁ。)
 約30分で予定の範囲をほぼ刈ることができました。
 刈る前と後の記念写真を撮りました。
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刈り取り前
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刈り取り後
 高校生のレポートから感想を載せます。
 
・アツモリソウの保護区があるってことやアツモリソウを守るために刈払いという作業などをしていたことも初めて知ることができました。そして今回初めて私たちがササ刈りをして,礼文にしかないレブンアツモリソウを守るというのを一番近くでできてとても嬉しかったです。

・今回の実習はとてもやりがいがあり楽しかったです。ササを刈ったらレブンアツモリソウの数が増えるならいくらでも刈っていられると思ってしまいました。また,鉄府保護区に一般の人が入るのは私たちが初めてだと聞きました。とても光栄で嬉しく,そんな貴重な体験をさせてくれた環境省の皆さんのおかげでとてもレブンアツモリソウ保護についても積極的になれたと思います。今後も高山植物の授業を通してレブンアツモリソウ保護を進めていけたらと思います。
 
 感想だけではなく,このレポートの中で高校生は,「自分たちにできるレブンアツモリソウの保護活動」について様々なアイデアも書いてくれました。生徒さんたちのアイデアもぜひ生かして,レブンアツモリソウの保護増殖に取り組んでいきたいと思いました。
 
 この活動は,来年度以降も礼文高校1年生が継続していくことになっています。自分たちがササ刈りをした場所が2年後,3年後,…にどうなっていくのか関心を持って見守ってくれたらいいなと思います。いつか,この場所でレブンアツモリソウが花を咲かせたら最高ですね。