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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

再び空を飛ぶために

2024年12月27日
稚内 大宮 恋

こんにちは、サロベツ担当のアクティブ・レンジャーの大宮です。
気づけば今年ももう終わり。やり残したことはないだろうかと思いながら業務に取り組む日々を過ごしています。
冬の季節になると多く訪れるオオワシやオジロワシですが、怪我や事故などにより動けなくなることもあります。
今回のAR日記では12月中サロベツ地域に発生した傷病鳥獣の保護の様子をご紹介したいと思います。

【逃げないオジロワシ】

12月中旬、市内に人が近づいても逃げる様子のないオジロワシがいると連絡が入りました。
警戒心の強いオジロワシが逃げないのは、個体が弱っている可能性があるため、捕獲の準備を整えて現場へ向かいました。

現場につくと、オジロワシの姿が屋根の上にありました。

 
さてどうしたものかと考えている中、オジロワシが飛び立ちます。
先を追いかけますが、すぐさま地面へと降りたところを見るに本調子ではなさそうです。
今度は逃がさないよう、囲い込むようにゆっくりと歩み寄ります。

  
緊張の中、少しずつ近づき、追い詰めたところで網を下ろし、無事に捕獲が成功しました。

 
ケージに収容したオジロワシ

そんな目で見られてしまうと、なんだか悪いことをしている気がしてしまいます。
申し訳ないが少しの間我慢してくれと心の中でひとりごと。

【怪我を負ったオオワシ】

また別の日に稚内豊富間の線路付近で怪我をしたオオワシがいると電話が入りました。
線路付近とのことでJRと情報を共有して整理しつつ、動きます。


発見された現場までは車や徒歩で向かうには難しい場所だったためJR職員の方の協力を得て、
近場の踏切から線路保守用の軌道自動自転車を使って移動させていただきました。

 
現場に到着すると、姿は見えず、雪の上には大きな翼を広げた跡と血痕が残っています。
付近の雪上にはなんとか移動した痕跡が見られ、その痕跡をたどって探索すると個体を発見しました。

 
茂みの中でひっそりと隠れるオオワシ。
怪我をしているとはいえ、オオワシの成鳥。油断はできません。

   
逃げ場がなくなるように4人で囲むようにゆっくり近づき、捕獲しました。
さすが空の王者。足も翼も桁違いに大きい。足で掴まれたらひとたまりもないでしょう。
個体に目立った外傷はありませんでしたが口から吐血しているため、おそらく内臓に傷を負ったのではないかと思いました。

【その後の2羽たち】

2羽は、釧路にある猛禽類医学研究所へとリレー形式で搬送されました。
猛禽類医学研究所では野生復帰に向けて適切な治療、リハビリテーションが行われています。
保護された2羽は鳥インフルエンザ、鉛中毒の検査は陰性でした。
また空を自由に飛べるよう回復に向かってくれることを切に願うばかりです。
 
こうして2羽の命をつなぐことができたのは、適切な連絡、関係機関との協力があったからこそだと思っています。
御礼を申し上げるとともに、これからも野生生物保護に尽力したいと思います。
猛禽類医学研究所(IRBJ)
保全医学をテーマに活動を行う獣医医療機関です。
猛禽類に起きている現状を知ることができますので、気になった方はぜひご覧下さい。
http://www.irbj.net/index.html

またオジロワシの捕獲については稚内プレスにて記事が公開されています。
こちらもよろしければご覧下さい。
https://wakkanaipress.com/2024/12/19/74374/

施設情報

冬季期間より施設の開館時間に変更がありますのでご注意ください。

●サロベツ湿原センター
 開館日 11月1日~4月30日 10:00~16:00
 休館日 月曜日 (祝日の場合は開館となり、火曜日が振替休館となります。)
     年末年始(12月29日~1月3日)
 木道利用可能
 トイレ利用可能(開館時間内)

●幌延ビジターセンター
 11月1日~4月30日まで閉館
 木道利用可能
 トイレ利用不可