北海道のアイコン

北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

上士幌管理官事務所はトムラウシ南沼汚名返上プロジェクトに参加しています。
2017年、南沼野営指定地周辺におけるし尿ゴミをなくし、踏分け道の植生を復元しようと、関係機関が連携してトムラウシ南沼汚名返上プロジェクトを開始しました。野営地から放射状に数本の踏分け道が認められ、43個のティッシュペーパーなどトイレ痕が確認されましたが、この3年は4~5個が続いています。

トムラウシ南沼汚名返上プロジェクトの今

2025年02月26日
上士幌 上村 哲也
 かつて、日本一汚い野営地と評されたトムラウシ山の山頂直下にある南沼野営指定地は、大きな改善を果たしました。お花畑がトイレ道で踏み荒らされ、し尿の臭いが漂い、水場の水質が懸念されていた野営指定地は、今、生き返ろうとしています。 
 南沼野営指定地の野外し尿をなくし、トイレ道の植生復元を目指して、2017年春、十勝総合振興局を事務局に、新得山岳会、十勝山岳連盟、山のトイレを考える会、十勝西部森林管理署東大雪支署、新得町、上川総合振興局、上士幌管理官事務所を構成員として「トムラウシ南沼汚名返上プロジェクト」が立ち上がりました。野営指定地や登山口で登山者にアンケートを行い、野営指定地に自動カメラを設置しテントの数から利用数を推定し、登山者の意識や利用の実態を調査してきました。
 過去8年間の調査では、毎年、テントの数にして300張り~500張りの利用があり、1日の最多では53張りを観察しました。
最多利用日2024年7月13日の53張
 プロジェクト前年の2016年にトイレ痕を調査したときには1シーズンで50個以上のし尿痕を回収、プロジェクト開始後は、毎年の回収数を記録することとしました。
 携帯トイレ利用を啓発、携帯トイレブースを増設、トイレ道にヤシネットを張り立入禁止を施し、携帯トイレ配布ボックスを設置するなど、できる限りの対策を講じました。携帯トイレ配布ボックスは、利用者の多い短縮コース登山口に設置しています。朝早く出発する登山者が多いため、途中のコンビニや宿泊施設に立ち寄って買い求めることが難しいでしょう。最後の最後に登山口で手に入れることができればよいと設置に至りました。
 その結果、トイレ痕が2022年に4個、2023年と2024年に5個までに減りました。調査のためとはいえ、我々もトイレ道に踏み入るのがはばかられドローンを導入することにしました。ドローンを飛ばしトイレ痕を探して、植生への立入りは回収のための最少限に抑えようとしています。
 野営指定地や登山口でのアンケート調査では携帯トイレ持参の有無を伺いましたが、手法が定まらず調査回数の多少もあり信頼できる値に結びついたか疑いがありました。森林管理署に協力をいただき、2022年からは登山口に設置する入林簿で日帰りや南沼泊など行程の別、携帯トイレ持参の有無について問うています。2024年の集計では、記入した2千人余りのうち93%が有と回答。南沼泊とした3百人弱に限れば99%の持参率でした。
 短縮コース登山口と温泉コース登山口には携帯トイレ回収ボックスが置かれています。携帯トイレ回収ボックスにおける使用済み携帯トイレの回収数は、プロジェクト前年まで200個余りでしたが、2024年は1,252個に達しました。トムラウシ山では携帯トイレが受け入れられています。
トイレ痕ほかの推移
 トイレ道の植生は回復しつつあるように感じます。立入り禁止を示すロープなどの効果で、植生に踏み入る方が減ったのでしょう。代表的なトイレ道のひとつは、踏み固められて裸地となっていた状態が、周囲の植生に覆われようとしています。
2017年6月ブースの左手に裸地化したトイレ道
2022年6月スゲ類に覆われつつあるトイレ道
トイレ痕はまだゼロではありません。プロジェクトは継続していきます。