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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

支笏洞爺国立公園 洞爺湖地区(羊蹄山・洞爺湖・登別)の情報を発信しています。

冬の金比羅火口

2025年03月14日
洞爺湖 幸村 和実
 3月31日は、前回有珠山が噴火してから25年目になります。
 今回のAR日記は、2月にパークボランティア5名にもお手伝いいただき、ビジターセンターのイベントで行った冬の金比羅火口(冬期閉鎖中)を紹介しつつ、前回の2000年噴火を振り返りたいと思います。

2000年噴火

 2000年3月31日、3日半の前兆活動を経て、西山山麓で噴火が始まりました。4月上旬には、金比羅山西側中腹から山麓にかけても噴火が始まりました。噴出物は熱泥流1)となって、温泉街西側に被害をもたらしました。4月中旬まで西山山麓と金比羅山中腹で、60を超える火口が次々とできたそうです。金比羅火口群の代表格、有くん火口(K-A火口)は、「タフコーン2)」という火山地形を見ることができます。
 熱泥流が流れ込んだ町営浴場、公共住宅、流された橋などが、噴火遺構公園として保存展示されていて、防災学習に役立てられています。(冬季閉鎖中)
 今回は、冬期閉鎖されている金比羅山麓ルートを、スノーシューで有くん火口まで行き、自然解説や噴火の歴史などを学ぶという、ビジターセンターのイベントに参加してきました。
2008年の有くん火口
2008年の有くん火口  少しずつ植生が回復
2024年の有くん火口
2024年の有くん火口 2008年と比べるとその差は歴然です

散策路

 金比羅山麓ルートは、洞爺湖有珠山ジオパークのフットパスコースになっています。見どころは、砂防ダム3)内の災害遺構群と、有くん火口・珠ちゃん火口です。有くん火口は、火口の縁から内部を見ることができます。(安全対策のロープまでです)
 今回は安全を考慮して、階段やアップダウンが多い災害遺構群には寄らず、まっすぐ有くん火口を目指すルートにしました。
 参加者は、ビジターセンターに集合して、受付を済ませたあと、本日案内役のビジターセンターの久保田さんから、床にある航空写真を使ってコースの説明を受けました。(ビジターセンターには、洞爺湖の1/200スケールの巨大航空写真があります。2階からの眺めは圧巻です。ぜひお越しください。)
ルートマップ
青線のルート①から⑦をめざす
航空写真
航空写真を使ったルート説明

アニマルトラック

 スノーシューをつけて散策路に入ると、あちこちに動物の足跡を見つけることができます。エゾユキウサギ、エゾリス、エゾシカの足跡がありました。自作の解説板で、解説していただき、参加者がうなずく姿が印象的でした。
みんなで歩く
気持ちの良いスノーシューハイキング
動物の足跡
エゾユキウサギ(左)とエゾリス(右)の足跡
頑張る参加者
足跡の説明
自作の資料で火山と自然の解説

温泉

 洞爺湖といえば温泉ですね。今日歩いている金比羅ルートも温泉と深く関わりがあります。
珠ちゃん火口横の散策路に沿って、雪のない道が続きます。⑥から⑦の辺りです。これは、下に温泉の管が埋設されていて、雪が積もらないのだそうです。
 源泉は100℃以上あり、低温でも発電できるバイナリー発電4)に利用されています。発電に使ったあとは、温泉街のホテルや旅館などに送られ、温泉資源が無駄にならないよう利用されています。
温泉管が下に
雪のあるところとないところがはっきり分かれています
玉ちゃん火口横
温泉が下を流れているのですね

有くん火口

 2000年噴火で金毘羅山周辺にできた最大の火口が、有くん火口(K-A火口)です。ちなみにK-B火口を珠ちゃん火口と言います。象徴的な2つの火口に、有珠山の有と珠から名付けたのですね。
 今日の目的地、有くん火口に着きました。夏はエメラルドグリーンの水をたたえていますが、雪に覆われて真っ白です。シカでしょうか、動物の足跡が点々と付いています。
有くん火口に到着
有くん火口に到着 ロープから先は危険です
有くん火口
雪に覆われて真っ白な有くん火口。動物の足跡は写真では見つけにくいですね
洞爺湖と羊蹄山
有くん火口から洞爺湖と羊蹄山を望みます。
 安全に配慮して開催された、スノーシューイベントは無事に終了しました。ビジターセンターで解散したとき、参加者のみなさんの満足感が伝わってきて、わたし自身も参加して良かったと感じました。


注釈
1)熱泥流:泥流の中でも水の温度が高く、水蒸気をあげながら流れる泥流。
2)タフコーン爆発的な噴火で粉々になった火山灰や火山岩片などの噴出物が、火口の周りに積み重なってできた円すい形の火山体。
3)砂防ダム:泥流などの被害を軽くするために、泥流中の岩や砂をせき止めて、水だけ流すために作る構造物。砂防堰堤(えんてい)ともいう。
4)バイナリー発電:低温の熱源を利用し、水よりも沸点の低い液体を沸騰させて蒸気を作り、その蒸気でタービンを回し発電します。

参考 洞爺湖有珠山ジオパークガイド02 金比羅山・2000年噴火遺構公園ルートを歩く第2版 発行:洞爺湖有珠山ジオパーク推進協議会 
   洞爺湖有珠山ジオパーク 散策マップ 発行:洞爺湖有珠山ジオパーク推進協議会



 

おまけ

 散策中に出会ったシマエナガとエゾリス
シマエナガ
シマエナガちゃん 人気が出るのわかりますね~
エゾリス
エゾリーちゃん 少し毛換わりした?
ご覧いただきありがとうございました。
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