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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道東トレイル(HET)

2025年04月21日
川湯 朝倉 弘之
こんにちは。阿寒摩周国立公園管理事務所(川湯事務所)の朝倉です。
 
長く続く歩く旅の道、ロングトレイル。昨年2024年10月、北海道の3つの国立公園、釧路湿原国立公園、阿寒摩周国立公園、知床国立公園を繋ぐ「北海道東トレイル(Hokkaido East Trail=HET)」が誕生しました。その距離約410km(釧路~摩周~知床羅臼350km、摩周~阿寒湖・オンネトー60km)の魅力あふれるロングトレイルです。
 
移動手段は様々あり、移動にかける時間が短く楽になっている今、古くからの移動手段である“歩く”・・・。タイムパフォーマンスが良い世の中になっていますが、気ままにゆっくりゆったりと“歩く旅”をしてみませんか。
 
出発点を釧路市街とし、羅臼町までの350kmを簡単にご紹介します。
 

■日本最大の湿原、釧路湿原

旅は世界三大夕日のまち釧路市街地を流れる釧路川のほとりに位置する「幣舞公園」から始まります。北海道地名の名付け親と言われている松浦武四郎とアイヌ男性2名の像があなたを見送ってくれます。
釧路川に沿って市街地を抜け、少し北上すると日本最大の湿原「釧路湿原」が目に入ってきます。広大な湿原の中をゆったりと蛇行を続け流れる釧路川。周辺ではエゾシカやオジロワシ、時にはタンチョウなど様々な野生動物に出会えることでしょう。
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釧路湿原
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釧路湿原タンチョウ

■雄大な牧草地

湿原を抜けると、丘陵を切り開いた酪農地帯へ。
釧路川を中心に永遠と続く牧草地と、乳牛や馬たちが自由に暮らしている様は、まさに北海道らしさを感じさせてくれるエリアです。どこまでも続く丘が、白波のように動いているように錯覚することも。歩き進むと、360度見渡すことができ、地球が丸いことを体感できる多和平展望台、丘全体が牧草地で壮観な景色の900草原が続きます。
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牧草地
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牧草地

■日本最大のカルデラ、火山

遠くはカムチャツカから続く千島火山帯に位置する阿寒摩周国立公園には、火山の噴火で生まれた摩周湖、屈斜路湖、阿寒湖等があります。
屈斜路湖は国内最大のカルデラである屈斜路カルデラの中にあり、屈斜路湖を見下ろしながら歩く『屈斜路カルデラトレイル(北海道東トレイルの一部)』の景観は心に刻まれること間違いありません。北海道の雄大さと広大なカルデラ地形を感じることができます。
また、真白い火山灰に覆われた厳しい環境に生きるハイマツやイソツツジ群(つつじヶ原自然探勝路)の中を歩き抜けると、屈斜路カルデラの中の活火山『アトサヌプリ(硫黄山、標高512m)』に到着します。アトサヌプリ(硫黄山)には、1500もの噴気孔があり、噴煙があちこちからゴウゴウと音を立てて上がっており、マグマの鼓動を五感で感じることができます。火山が作り出した大地の記憶を感じるカルデラはあなたを優しく包み込んでくれるでしょう。
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屈斜路湖
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アトサヌプリ(硫黄山)

■広大な畑作地帯

摩周湖から北上すると斜里岳の裾野に広がる広大な畑作地帯が見えてきます。遠くにオホーツク海を望みながら歩き進むうち、その地を見守る雄々しく猛々しい斜里岳がどんどん迫ってきます。角度によって違う姿を見せてくれる斜里岳を眺めながら、畑作エリアを歩いていくと、収穫の時期にはトウモロコシ、小麦やビートなど畑に実る作物たちで溢れかえります。天の恵みを感じ、北海道の厳しくも優しい環境の中で暮らす人々とのふれあいを通して、人の温かさを感じることができます。まさに、天・地・人を感じることができるエリアです。
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斜里岳
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斜里岳

■海岸断崖が織りなす雄大な景観

斜里岳を後ろにオホーツク海を望みながら歩き進めると、世界自然遺産に登録されている知床国立公園に入っていきます。雄大な景観と様々な野生動物が色濃く息づいているエリアです。
知床峠にさしかかると羅臼岳が眼前に近づいてきます。峠を越えると北方領土の国後島が見え、いよいよゴールのらうすしおかぜ公園です。国後島を望みながらこれまでの歩いてきた旅を思いかえしてください。
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羅臼岳
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オオワシ


素晴らしい自然だけでなく、その地に暮らす人々、文化や歴史などを「歩く」ことで感じるはずです。” Don’t think, feel”
 
多くの人が「ハイカー」になり、長く続く歩く旅を体験していただければと思っています。
この「北海道東トレイル」を自然・人を愛する方々と一緒に歩き続けていきたい。そう願っています。
2025年春いよいよ本格的に始動する『北海道東トレイル(Hokkaido East Trail=HET)』でお待ちしています。
 
最後にトレイル憲章を紹介します。
 
1.この道は、道東の多彩で多様な風景と風土を楽しむ道。
2.この道は、人と自然のあるべき関係を考える学びの道。
3.この道は、この土地の自然・歴史・文化を敬い尊ぶ道。
4.この道は、たぐいまれな道東の豊かさを未来へ繋ぐ道。
5.この道は、地域の人々とハイカーがこころを重ねる道。
6.この道は、ここに関わるすべての仲間が共に育てる道。