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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

氷の世界へ ~2026~

2026年02月10日
上川 坂井まお
こんにちは、大雪山国立公園管理事務所の坂井です。
今回は層雲峡ビジターセンター において実施している冬季観察会についてご紹介します。
この観察会で訪れるのは、大函という場所です。
普段はニセイチャロマップ川と石狩川が流れていますが、冬期は上流の大雪ダムが取水制限を行っている関係でほとんど水が流れていないため、層雲峡を代表する柱状節理の岩壁を間近で観察しながら歩くことができます。
 
ここで「柱状節理とは?」と思われた方のために、簡単に層雲峡の成り立ちと柱状節理について説明します。
約3万年前、大雪山のお鉢平で大規模な噴火が起こり、火砕流が周辺一帯を覆いました。その堆積物は最大で約200mもの厚さに達し、冷えて固まる過程で規則的な割れが生じました。こうして形成されたのが、柱状理節理(層雲峡溶結凝灰岩)です。

また、流れ出た火砕流は層雲峡を埋め尽くし、せき止められた石狩川は古大雪湖となりました。湖の強力な圧力はやがて溶岩の堆積した台地を押し破り、削り取るように流れ、堆積物を侵食することで現在の層雲峡ができあがったのです。さらに、石狩川は溶岩台地の弱い部分から侵食し始めましたが、その場所の一つが今回訪れた大函だったとされています。

現在の大函の様子。
中央には雪に覆われた石狩川と両岸に柱状節理の岩壁が並んでいる。

 
           
右の写真は柱状の岩が途中で落下していますが、これは、柱状節理の岩壁のなかでも外側と内側で温度差があり、岩壁の外側において、夏は内側と比べ膨張し、逆に冬は収縮することで柱自体がたわみ、元々あったき裂が次第に大きくなっていきます。そして春、き裂面に凍結していた水が溶けることで摩擦が減り、そこに長雨が降ることで雪解け水と雨がいわば潤滑剤となって崩壊したと考えられます。また、柱状節理の下部が川によって削られることも崩壊の原因の一つと言われています。
こんな巨石が落下してくると思うとゾッとしますが、これも層雲峡ならではの迫力かもしれません。

他にも、観察会では様々な雪氷現象を見ることができます。

 
  
大函で石狩川と合流するニセイチャロマップ川の上流に向かうと、高さ約10m、横幅約200mにわたる氷柱群が現れます。
氷柱は、日中に岩肌から染み出た雨水や雪解け水などが崖から流れ落ちる際、寒気にさらされて徐々に上部から下部へと凍りつくことで形成されます。気候条件によって毎年表情が異なり、長い氷柱になるには厳しい寒さだけでなく「凍る」と「溶ける」を繰り返す寒暖差も必要になります。


 
   
また、左の写真は大函トンネルの試し掘り跡地の天井で見られる霜結晶です。
岩穴内に溜まっている水は外気より温度が高いため、表面から蒸発した水蒸気が昇華して、結晶となって天井を覆ったものです。
近寄ってみると一つ一つが小さな結晶でできており、とても繊細で神秘的な空間が広がっています。
このように、冬季観察会では層雲峡の歴史を感じられる柱状節理の岩壁と、自然が作り出した氷の世界のコラボレーションが見どころです。

※河川や岩穴内などは、薄い氷が張っているだけの場所があるため、安全のためにもビジターセンターなどが実施する観察会をご利用ください。
 
参考文献
“層雲峡峡谷の秘密.”環境省北海道地方環境事務所,株式会社乃村工藝社,北海道映像記録株式会社,2010.
石田二三雄編(1970)『大雪山のあゆみ』層雲峡観光協会
根岸正充、中島巌(1993)「層雲峡溶結凝灰岩の柱状節理におけるき裂進展とすべり破壊―寒冷地における岩盤斜面崩壊に関する研究(第一報)―」『応用地質』34-2.日本応用地質学会
根岸正充、中島巌、氏平増之(1991)「層雲峡溶結凝灰岩における斜面崩壊形態とAEによる崩壊予知に関する基礎研究」『開発土木研究所』453
層雲峡ビジターセンター編『層雲峡冬ガイド』

冬季観察会は2月15日までの土日に開催されており、事前予約が必要です。層雲峡は現在厳冬期を迎えていますので、参加される際は防寒対策を十分に行ってください。詳細は層雲峡ビジターセンターのHPをご確認下さい。
イベント | 層雲峡ビジターセンター

他にも層雲峡では3月8日(日)まで層雲峡氷瀑まつりが開催されています。
詳細は層雲峡観光協会のHPをご確認ください。
層雲峡温泉 氷瀑まつり-北海道層雲峡観光協会