
アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
環境省アクティブ・レンジャー写真展 ~北の自然の舞台裏~
2025年06月01日
上士幌
大雪山国立公園
上士幌管理官事務所 アクティブ・レンジャー 上村 哲也
岩間に咲くイワウメ

平山 6月
イワウメ(Diapensia lapponica var. obovata)は、礫地や岩場で寄り添ってじゅうたんのように広がる常緑の丈が低く形の小さい樹木です。
初めは岩と岩の間の礫の中に種が落ち根を下ろすのでしょうか。茎は岩の間や地表を這って広がりますが、卵形のたくさんの葉が重なって中の様子はうかがい知れません。岩陰を利用しながら葉と葉を密にして風雪から身を守っているのでしょう。
イワヒゲやミネズオウなどほかの矮小低木と競い合うように、あるいは助け合うように、混じり合って咲く姿もよく目にします。ここはキバナシャクナゲと寄り添っていました。
朝焼けに染まるニペソツ山

前天狗 6月
ニペソツ山は、標高2,013m。台風や大雨が重なって、十六ノ沢コース登山口に通じる林道が被害を受け利用できなくなったのは2016年のこと。関係者の努力により幌加温泉コースが再整備され、年間千人前後が利用しています。
ガイドブックなどには往復の所要時間が10時間超と紹介される健脚者向けのコースですが、8割の方は日帰りされているようです。
けれど、少しもったいない。幌加温泉コースが供用されてからは前天狗が野営指定地になりました。ニペソツ山は、山頂から東側が切れ落ちています。前天狗に宿営すると、朝焼けに染まるその東壁を望むことができます。夏至の日の出は午前3時40分頃。テントを抜け出すのがおっくうにも感じますが、その神々しさは必見です。日が昇るとともに、ゆっくりと山肌の色が移ろっていきます。
ところで、前天狗野営指定地はその境を示すロープが張られていませんが、大雪山国立公園の特別保護地区の中にあります。イワウメやイワブクロなどの高山植物、そのほかの植生を傷めないよう、心配りしながら設営場所を選びましょう。たき火は禁止です。風除けにと石や岩を動かして積むこともやめましょう。動かそうとしたその岩を頼みにする生き物が暮らしています。
