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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

神様への捧げもの

2026年02月27日
東川 渡邉 あゆみ
こんにちは、東川管理官事務所の渡邉です。
あっという間に3月も間近。2月なのに雨が降ったり、温暖で雪解けが進んで、シジュウカラが春と間違えたのかツピツピさえずっていました。そろそろフキノトウが出てきそうな雰囲気を醸し出している東川町。

四季の中では冬が一番好きなので、日に日に長くなっていく日照時間を歓迎できない少数派の人間です。
 
さて、2月7日(土)、8日(日)に東川町でパークボランティア冬期研修会を開催しました。
 
一日目は室内研修で、山岳医療救助機構から国際山岳医 大城先生、山岳救助のスペシャリスト 村上先生をお招きし、山岳ファーストエイドをテーマに、夏山で起こりうる熱中症・低体温症に関する研修を実施しました。

山で熱中症に陥ってしまったとき、手持ちの物で体温を下げる方法や、実際にツェルトを広げて低体温症になってしまった人の体温を上げるデモンストレーション訓練など、とても参考になる内容で、みなさん真剣に研修に参加されていました。
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ツェルトを広げ、中に入ってみる
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ツェルト内で湯たんぽを作成中
村上先生が「山岳ファーストエイドは登山技術の一つ」と仰っていたのが印象に残っています。
登山道整備やパトロール等、山での活動が多い大雪山のパークボランティア。
本研修はみなさんの登山技術の向上と、今後の山人生をより豊かにしてくれる充実の内容だったと思います。
 
二日目は、旭岳クロスカントリースキーコース、江卸山、幣(ぬさ)の滝、3コースに分かれて野外研修を実施しました。
私は幣の滝コースを担当し、パークボランティアの皆さんをご案内したので、その様子をご報告します。
 
当日は9時に旭岳ビジターセンター駐車場を山スキーやスノーシューで出発。
旭岳クロカンコースからワサビ沼まで進みます。
道内で最も標高が高い野鳥の越冬沼であるワサビ沼は地中から温泉が湧き出ているため、水温は一年中25度以上あり、冬でも凍ることはありません。
この日も数種類のカモが羽を休めていました。
また、ワサビ沼は名前の通り、葉ワサビが自生しています。


 
 
ワサビ沼からクロカンコースを外れ、ワサビ沼北側の縁を回り込み、二見川方面へ向かいます。
この先は圧雪されていないバックカントリーエリアとなるため、ラッセルを交代しながら進みます。
目印はなく、ルートファインディングが重要となり、上がり過ぎず、下がり過ぎず、体力を消耗しないよう意識しながら進みます。


 
 
二見川に到着後、右岸からでは滝が遠く見えにくいため、スノーブリッジ(橋の形をした雪の塊)で左岸へ渡ります。
幣の滝へ至るルートの核心部分です。
当日は安全に渡れるスノーブリッジを探すのに20分ほどかかりましたが、下流に大きなスノーブリッジを見つけて無事に渡渉できました。


 
 
左岸をしばらく進むと、幣の滝が姿を現します。
滝直下は小さな沢が入り組んでいるため、さらに安全に渡れるスノーブリッジを探し、最終的には滝まで約10mの距離まで近づくことができました。



 
北海道の氷瀑といえば、層雲峡の銀河の滝や流星の滝が有名ですが、幣の滝は知名度がなく、ネット情報もほとんどありません。
 その理由として、
・駐車場から眺められる層雲峡の滝と異なり、歩いて行く必要があること(遊歩道等もないので、冬にしか来ることができない)
・落差約15mと比較的小規模であること(銀河の滝は落差120m、流星の滝は落差90m)
・層雲峡より気温が高いため滝が完全結氷しにくく、アイスクライマーも来ない
などが挙げられます。
 
幣の滝の語源について調べましたが、明確な由来は確認できませんでした。
「幣」には、
・神様への捧げもの・供え物
・神祭用具である御幣(神主がふるお祓い棒)
・お金
といった意味があるそうです。

幣の滝はこれまで何度か訪れていますが、スッキリとしたブルーアイスになっているのは見たことがなく、地形や湿度の関係なのか、いつも滝に雪が吹き溜まっています。このフォルムが御幣に見えなくもない!?
でも、神様に捧げたくなるほど神聖で美しい滝、という名付け親としての気持ちもわかりますよね~。
由来は定かではありませんが、「御幣」の姿と神聖さの両方を思わせる名なのだろう、と自分なりに落とし込みました。

その姿に思いを重ねながら名の意味を想像するのも、滝を訪ねる楽しみのひとつですね。

途中で国立公園にまつわるクイズや周辺の自然についても解説をしながら、来たトレースを辿り、予定通り12時にビジターセンターに戻ってきました。
数年前から温めていた幣の滝を、今回パークボランティアの皆さんにご案内できたことを嬉しく思います。
 
【幣の滝の注意点】
・少雪の年はスノーブリッジが発達せず、左岸へ渡れない場合があります。積雪の多い年の1~2月頃に行かれることをお勧めします。
・スノーブリッジの渡渉判断は経験者の見極めのもと行動してください。
・目印が少なく、携帯電話も圏外となるエリアです。必ず複数人で入山してください。