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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

環境省アクティブ・レンジャー写真展~北の自然の舞台裏~

2025年06月01日
稚内 大宮 恋

利尻礼文サロベツ国立公園

稚内自然保護官事務所 アクティブ・レンジャー 大宮 恋

感じる息吹


幌延町 5月

5月末、幌延ビジターセンターにて木道の巡視中、トンボの脱皮殻を見つけました。これはと思い注意深く水際を探したところ、羽化後の羽を乾かしている瞬間に遭遇しその姿を納めることができました。木道の下、かなり見えづらく他の虫や鳥などの外敵に狙われないような場所で羽化が行われたものだと思います。
春の暖かい陽気が続き、自然の息吹を感じるこの時期に出会ったオオトラフトンボは、まさに季節の移り変わりを象徴する存在ではないでしょうか。この厳しくも美しい自然の中で育まれた命がまた次の世代の命へとつながることで、サロベツの豊かな生態系が形成されていくのだと思います。私はそんな過程に自然の力強さと優雅さをとても強く感じました。

はつらつ


豊富町 7月

上サロベツ湿原は、過去の開発や泥炭採掘などにより地下水位が低下し乾燥化が進むことで湿原植生に影響を受けてきました。この状況を受け、平成17年に上サロベツ自然再生協議会が発足し、自然再生事業が実施されています。事業の一つとして、乾燥化の原因となる水の流出対策やササの侵入を抑制する対策を講じ、植生などの変化を監視するなど、上サロベツ湿原の重要な高層湿原を守り再生する取組を進めています。
このような対策を行ってきた湿原の中に咲く植物たちを写したのがこの写真になります。この光景が目に映ったとき、水滴で艶めいたミズゴケの上をトキソウがまるで踊るように軽やかに飛び跳ね、周りもそのリズムにつられて全体が一つの調和を成している印象を受けました。私にはそんな姿がとても愛おしく、ここで見られるどの花にも負けないくらい輝いて見えました。こういった小さな輝きが無数に散らばっていて、その一つ一つがサロベツの大きな魅力をつくっているのだと感じます。おいでの際にはサロベツにしかない輝きを見つけてみてはいかがでしょうか。