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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

石楠花色に白縹 - 阿寒湖の冬朱 -

2026年02月28日
阿寒湖 熊野直紀

ハクサンシャクナゲ


露草を溶かしたような雪景の中
阿寒湖の島々の状況を巡り視る
 
白縹に染まりゆく視界の流れに
ぴんと眼を留めた鮮烈な果実痕
 
それにしても画になる佇まいで
今際の冬に立ち遭えた朱の配色
 
厳かにすっと立ち並ぶ枝の先に
生の重量感と浮遊感が共存する
 
ツツジの仲間に心揺られたのは
初めてな気がして新鮮な心地で
 
花咲く夏季に愛でられる君でも
冬姿にこそ私は惚れ惚れします
 
【 冬の‐ハクサンシャクナゲ - 】
Rhododendron brachycarpum


シャクナゲさんは変わっている。
そもそも常緑の広葉樹なのだから、
寒冷地ではなく暖温帯で、
照葉樹として溶け込んで生活していそうな印象で眺めてしまう 。
 
そんな風貌をしていながらも、
並はずれた低温への耐性を備えている例外さんの類で、
-20℃以下でも、もっと遥かに凍れても生き抜く性質を持ち合わせており、
亜寒帯に分類される北海道はもちろん、本州等の亜高山帯や森林限界にも分布している仲間たちだ。
 
冬仕立ての鋭利な姿は氷の景色によく馴染んでいて、
常緑針葉樹の格好に雰囲気が近づくからだろうか、
環境の中で生物が見せる機能美についても考えてしまう。
 
樹木にとって、
厳冬地で大きな葉を維持するのは容易な選択肢ではないはずで、
葉を筒状に丸め込むのは外界への露出面積最小化のため、と生態学の側からは理解される。
 
冬の環境を乗り切るための、
太陽光の直射と雪の反射への対応であって、
乾燥と寒風への対応であって、
蒸散と水分消失への対応の結果、
なのだろう。
 
それに葉をよく眺めていると、
実際条件が厳しかったことが偲ばれる場所では、
時に古傷が露わになるように損傷して茶けた痕を目にすることがある。
 
水分を引上げようにも土壌すら凍っているわけであるし、
気孔をぴちっと閉じたにしても、クチクラ層が厚く発達していたにしても、
そうは言っても生理的にはきっと易しくはないのだ。
 
キンと束ねた切っ先のような冬葉に触れてみると、
ぎゅっと締まった生命の形を一片ひとひらから感じられて、
 
気が付けば同じように、
自身の強張っていた頬や指先へと意識が向かいつつ、
湖上を駆けてくる冷気を大きく吸い込めば、
全身に溜まっていた澱が気道から芯まで洗われる気がして、
順に体が凛としていく。
 
心地よい。

眼の前に並んだ 霜纏う燕尾 の 葉相に、
ボクは どこか異国の波止場に 迷い込んだような 朧気の中、
見上げた森と、声のその先では、
オオハクチョウ が 青すぎる空 を シベリア の方へ渡って行った。
 
来たる冬に、
それぞれまた会える環境であり続けたい。
 
今から冬が待ち遠しい。
 
阿寒湖事務所 熊野