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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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利尻礼文サロベツ国立公園 稚内

268件の記事があります。

2010年07月13日8時間コース

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 中野 雄介

 歩道の現地調査のため礼文島西海岸の8時間コースを歩いてきました。礼文島の西海岸には車道はありませんが、約30kmの遊歩道が整備されています。スコトン岬から鉄府(てっぷ)を経由して浜中(はまなか)に至るのが4時間コース。4時間コースの途中鉄府から西海岸沿いに道をとって礼文林道に至るのが8時間コースです。
 当日7月8日は礼文島独特の強い北風に加えて時々弱い雨も降るというあいにくの気象条件でした。7月とはいえ雨と強風の気象条件では体感気温はかなり下がります。私はTシャツに半袖シャツ、その上にレインジャケットを着てさらにセーターを持参しました。
 ゴロタ岬付近では風を遮るものがないため、風をまともに受け吹き飛ばされそうになりました。ただ、障害物がない分360°美しい海が望めます。ここでは、エゾカンゾウ、レブンシオガマ、ハマナスなどの花々が美しく咲いていました。



コース屈指のビューポイント澄海(すかい)岬(7.8撮影)

 笹泊(ささどまり)付近では礼文島を代表する花レブンウスユキソウが咲いていました。ただこの周辺からは砂滑りと呼ばれる急な下り坂がアナマ岩まで続きます。足場がかなり悪く何度か足を取られて転びそうになりました。




礼文町の町花にもなっているレブンウスユキソウ(7.8撮影)

 アナマ岩から宇遠内(うえんない)までの海岸線も巨大な岩がゴロゴロ転がっていて歩きづらくかなりの注意を要しました。
 



砂滑りと呼ばれる急な下り坂。足を取られやすいので注意が必要です。(7.8撮影)

 8時間コースを歩く際は雨具や防寒着、さらにしっかりとした靴が必要です。十分な水や食料を持参することも重要です。体力はかなり必要ですが、このコースを歩くと美しい花々や素晴らしい景観に出会えます。皆さん、礼文島にお越しの際は是非歩いてみてください。

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2010年07月12日【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで100日前】

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

***ミズナラ***

 少し前のことになりますが、5月22日『国際生物多様性の日』に豊富町稚咲内で行われた砂丘帯へのミズナラ苗木移植作業についてご紹介します。

ミズナラ(ブナ科コナラ属)は冷温帯を代表する落葉樹で、北海道ではなじみ深い木です。

 サロベツ原野に隣接した海沿いを数列の砂丘が数十キロに渡って伸びる海岸砂丘帯には、主にこのミズナラだけで構成された細長い砂丘林があります。
海側から見て、そのミズナラ林の後ろに「稚咲内」という集落があり、そこには酪農家や漁師の方たちが住んでいます。このミズナラ林のミズナラは樹齢としては数百歳に達するにも関わらず、日本海からの強い北西風によって矮性化し、樹高は数メートルしかありません。枝振りも風の方向に流されて伸びたような特殊な樹形をしています。林の外観から厳しい気候にさらされながらも長らく耐えてきた様子がうかがえます。
この林は、防風林としてなくてはならない存在なのですが、長年暴風雪に耐え続けたことに加え、林内を牛が通行した影響などによって集落南側の林の一部がなくなってしまいました。

 現在、地元のNPOや集落の皆さんが中心となり、環境省や豊富町などの関係機関もお手伝いしながら、皆で対策を話し合い、作業をしながら砂丘林の再生事業を行っています。現在までに砂丘林近くの苗木を探して苗畑に植え、砂丘林跡地に移植されても大丈夫なまでに大きく育てたり、集めたドングリをカミネッコンと呼ばれる再生紙段ボールから作られたポットで育てたりしてきました。忙しい合間を縫って、地元の皆さんが草刈りや苗を植えるための穴掘りもしています。



上:苗畑の稚樹の様子を見守る 下:植林済みの区画の様子(20090827)


 5月22日(土)。
地元NPO、地域の皆さん、関係機関など約50名が集まり、集落内の苗畑やカミネッコンで育てていた地元産ミズナラ苗木を砂丘帯裸地(暴風柵内)へ移植する作業を行いました。集まった人たちは数チームに分かれ、苗畑からの苗の掘りとり・苗の運搬、土の運搬、植えた苗木への印付けといった作業を皆で息を合わせて次々にこなしていきます。とても天気がよい日だったので、肉体労働の後はどっと疲れが出ました。NPOの方が地元の小学校の校庭に用意してくださった焼き肉やおにぎりをもりもり食べて、作業の労をねぎらい合いました。


皆で力を合わせて移植作業(20100522)

 ところで、ミズナラという木は私に「生物多様性」を知るためのひとつのきっかけを与えてくれた木です。学生だった頃、私は、ミズナラを基点につくられる昆虫の群集を研究対象にしていました。分かりやすくいいかえると、ミズナラの木があって、ミズナラの葉を食べる植物食の昆虫(主にチョウやガの幼虫、ハバチやゾウムシも少数含まれる)がいて、その植物食昆虫の幼虫に寄生する昆虫(ヒメバチやコマユバチ、ヤドリバエなど)がいて・・・というようにミズナラから始まる昆虫の食物網やミズナラ上の昆虫の多様性に関することを勉強していました。


研究の過程で、夏の間(6~8月)、調査区のミズナラをくまなく探して採集した植物食昆虫の幼虫数百匹を飼育しました。寄生されていない幼虫は成虫になりますが、寄生されている幼虫からは寄生蜂や寄生バエが出てきます。こうして食物連鎖のつながりを追いながら、種の特定を試みました。全種の特定はできませんでしたが、特定できたものだけでも、植物食昆虫83種、寄生する昆虫56種にのぼりました。


たった一種類の木からこんなに沢山の種のつながりが生まれるなんて!!!

ミズナラにつく数百匹のイモムシ、毛虫と向き合ったことで私はミズナラを取り巻く驚くほど豊かな生物多様性を目の当たりにすることができたのです。

 ミズナラの葉だけではなく、ミズナラのドングリはリスやネズミ、カケスなどの鳥類にも利用されています。そして稚咲内の林のように私たち人間の生活を風雪から守るという役目も果たしています。ミズナラの木はまさに生物多様性を支える役割を担っているといえると思います。


上:ミズナラの若葉と花穂 下:砂丘林ミズナラ葉の裏側にいたカメムシの幼虫(左)とミズナラの潜葉性昆虫(リーフマイナー)が葉の中身を食べ進んだ跡(黒い筋は糞です)

 この未来のミズナラ林には昨年閉校になってしまった地元小学校の子どもたちが『どんぐりーん』という名前をつけています。何十年か後、小さな苗木たちが風雪に負けずに青々と立派に成長したとき、また昔と同じように多くの命を支えてくれることと思います。長い時間がかかる話ですが、未来に思いを馳せながら汗を流した一日でした。

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2010年07月01日花々のリレー

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 短い道北の夏。
 だから、動植物の活動も忙しく進んでいきます。
この短い夏の間に成長したり、繁殖したり、子育てしたり、種をつけたりしなければならない訳ですから、少しもぼんやりなんてしていられないのでしょう。

 サロベツ原生花園の湿原。
前に紹介しましたが、5月下旬から咲き始めたヒメシャクナゲは6月一週から二週にかけて、小さな桃色の鈴を地面に沢山ばらまいたかのように満開になっていました。また、草の中に目を懲らすと白いがく片が5枚ついてお星様のように見えるミツバオウレンの花や、花びらの切れ込みがレース編みの縁のようなタテヤマリンドウの青や白の花が空を見上げていました。




 そして6月12日、13日の週末前後。
イソツツジの早い花が咲き始め、エゾカンゾウのつぼみから鮮やかな黄金色がのぞくようになってきました。イソツツジは枝の先端に小さな白い花が沢山集まって鞠のようです。各々の花からまつげのようにちょんちょんと出ている白い雄しべがこの白い花玉をますます可愛らしく見せているような気がします。

 中旬に入るとそれまで満開だった花々に代わって、別の花々が咲き始めました。20日の日曜日、今度はパンケ沼の木道に行ってみました。先端のさやの部分からゆっくり引き出された折りたたみ傘のようなカキツバタの花びらが、展開の準備が整って、開くのを心待ちにしているようでした。青紫の花をもう開かせた株もあり、しっとりとした雰囲気を漂わせています。
木道沿いの背の高い草の間にヤナギトラノオの黄色い花やホロムイイチゴの白い花も見えます。パンケ沼から幌延ビジターセンターに至る途中の小沼のほとりへ行ってみると、先週まで咲いていたミツガシワに代わって、カキツバタ、コバイケイソウが咲き乱れていました。
特に対岸の縁は満開のコバイケイソウで一面白く見えるほどでした。
コバイケイソウ[小梅けい草]は名前の通り、穂の先に梅の花に似た可愛らしい白い花を沢山つけるのですが、匂いをかいでみるとアンモニアのような臭い匂いがしました。びっくり!


小沼のコバイケイソウ~花盛りは過ぎたが対岸は白く見える~(20100625撮影)


 そして、あっという間に最後の週に入り、カキツバタやコバイケイソウは早くも花の終盤を迎えました。代わって、エゾカンゾウやエゾスカシユリ、エゾノシシウド、オオハナウドが海岸線を彩っています。原生花園ではエゾカンゾウの他、ツルコケモモが見頃を、トキソウも咲き始めています。

 先週満開だった花がもう終盤を迎え、違う種類の花が咲き始める。
まるでリレーをしているように、花から花へと季節がバトンタッチされていきます。今は、エゾカンゾウやスカシユリが鮮やかな花期を走り抜けている季節。次にバトンがタッチされるのは誰でしょうか。次のランナーの登場も楽しみです。


満開のエゾカンゾウと利尻山(20100625撮影)


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2010年06月24日祝!礼文事務室開設

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 中野 雄介

このたび礼文島に稚内自然保護官事務所の礼文事務室が開設することになり、先日16日(水)にその開所式が行われました。事務所は香深の町の台地、桃岩に向かう道の左手、旧法務局礼文出張所の建物になります。式には北海道地方環境事務所の吉井所長の立ち会いの下、礼文町の小野町長さまをはじめ多くの方にご出席いただきました。盛大とまではいかないまでもとてもよい式だったと思います。皆さん、礼文島にお越しの際は是非お立ち寄りください。(※)         



看板立て掛け式



全員で記念撮影

これからこの事務所を拠点に活動していくことになります。ちなみに私、この開所式の記事で早速新聞に載りました。ただ、注目度が高いということは逆にそれだけ責任重大ということでもあり、いまはただ身の引き締まる思いです。



事務所全景:礼文島での拠点になります。
 

最後になりますが、礼文島にお住まいの皆さま、礼文島を愛する皆さま、これからどうぞよろしくお願いします。

※礼文事務所は常駐ではありません。お越しの前には必ず事前連絡をいただきますようお願いします。090-8631-1035

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2010年06月24日最北の島にやってきました。

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 中野 雄介

初めまして。
5月末より礼文島担当のアクティブレンジャーとして着任しました中野雄介といいます。都会育ちですが、アウトドア大好き。そんな私が、今回礼文島の初代アクティブレンジャーとしてこの最北の地にやってくることになりました。

着任早々島を訪れたのですが、実は今までに北海道を訪れたことは2度あるものの、道北は今回が初めてでもちろん礼文島も今回が初めてでした。期待に胸をふくらませながら島を訪れた私を待っていたのは下手をすれば吹き飛ばされてしまいそうな冷たい風でした。早速最北の島の洗礼を浴びた私ですが、島の方々の温かい歓迎に私の心は温まったのでした。そして観光名所である桃岩展望台からみる色とりどりの花々、一面見渡せる大パノラマ、澄み切った海に心を洗われ、これからこの美しい島の景観を守っていく責任の重大さを実感したのでした。
 

礼文島を代表する景勝地桃岩、本当に桃の形をしています。(6/16、桃岩遊歩道にて撮影)

花の浮島と呼ばれる礼文島ですが、実は私はARとして採用されるまで花に関してあまり詳しい方ではありませんでした。しかし、現地のNPOや自然ガイドの方々の丁寧な解説によって徐々に花の見分けがつくようになってきました。現在レブンコザクラ、カラフトハナシノブ、エゾノハクサンイチゲ、レブンキンバイソウなどが競うように咲いています。島を代表する花であるレブンアツモリソウの季節はもう終わりに近いものの、これから先もこれまた島を代表する花であるレブンウスユキソウがもうすぐ開花するなど花の季節は9月まで続きます。礼文島は今がハイシーズン。これから花をはじめ島に関する情報をどんどん発信していくつもりですのでどうぞご期待ください。



エゾノハクサンイチゲの大群落(6/11、桃岩遊歩道にて撮影)


レブンコザクラ(6/2、礼文滝遊歩道にて撮影)

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2010年06月18日夏山シーズン始まりました!!

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 岡田 伸也

今年は雪どけが遅れていましたが、ようやく山頂付近にも夏道が見えてきました!
鴛泊コースの往復なら、軽アイゼンなどを持たずに登れます。


上:鴛泊コース8合目から山頂を見る(撮影6月10日)
下:山頂直下の残雪。下りの際は特に慎重に(撮影6月10日)

花も少しずつ咲き始めていて、9合目より上でエゾノハクサンイチゲやキバナシャクナゲなどが見られます。
長期予報では、北日本は今年も日照時間が短く冷夏になるとのことですが、今のところ6月は暖かく、青空と青い海の向こうに礼文島と北海道本島がよく見えます。
ただし、ここ利尻山は日本の最北端!!山頂の気温は、朝晩や曇りの日は0℃近くに下がります。防寒着をお忘れなく。


上:咲き始めたばかりのエゾノハクサンイチゲ。甘い香りがします(撮影6月10日)
下:山頂付近からの展望。左上に写っているのが礼文島です(撮影6月10日)

もう一方の沓形コースは、9合目から鴛泊コースとの合流点までの急斜面に雪がたっぷり残っています。このペースだと7月中旬頃までは12本爪アイゼンとピッケル必携です。特に、傾斜45度の雪渓をトラバースする“親知らず子知らず”と呼ばれる場所は難所。西斜面で日当たりが悪いため雪が固く、晴天日でもトレッキングシューズでは、キックステップがききません。滑落すると数百メートル下の崖まで一直線ですので安易に踏み込まないで下さい(過去に何度も滑落事故が発生しています)


上:沓形コース上部・親知らず子知らずの様子(撮影6月1日)
下:沓形コースは、鴛泊コースとの合流点付近にも急な雪渓が残っています(撮影6月10日)

なお、6月下旬から7月第1週までは、例年最も混雑する時期です。登山ツアーが集中するのもこの時期で、登山道に長い列ができることも珍しくありません。混雑を避けてスイスイ登りたい人は、下のURLをクリックして「利尻山すいすい登山カレンダー」をチェックしてみましょう♪

(↓)利尻山すいすい登山カレンダーのダウンロード
http://www.env.go.jp/park/rishiri/topics/data/090513a_1.pdf

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2010年06月04日パークボランティア一斉外来種除去作業(サロベツの巻)

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 稚内では、浜勇知園地にてアメリカオニアザミ、ヘラオオバコ、メマツヨイグサの除去を実施しました。参加者はPV会員10名、一般3名、地元NPO3名、そして私、賀勢の計17名でした。浜勇知園地では、ここ数年、地元NPOが主体となってアメリカオニアザミの駆除を行っているので全盛期に比べると大分減ってきています。まだ若い株とはいえ、葉にある鋭い棘状の鋸歯はなかなか立派です。棘に気をつけながら作業を行いました。そして、見落としがないか何回も確認しました。また、歩道脇のメマツヨイグサ、ヘラオオバコの除去も行いました。こちらはどっさり生えていて半分も除去できませんでしたが、来年以降も除去に取り組んでいけたらよいと思っています。外来種除去量はアメリカオニアザミ81本、ヘラオオバコとメマツヨイグサが45リットル袋約3つ分になりました。


:稚内でのアメリカオニアザミ等除去作業(浜勇知園地)、下:幌延でのセイヨウタンポポ等除去作業(パンケ沼園地)

 豊富では、サロベツ川にかかる開運橋のたもとで昨年見つかったオオハンゴンソウ群落の除去作業を行いました。浜勇知園地での作業後だったので継続して参加してくれる方が何人もいました。参加者はPV会員7名、一般4名、地元NPO5名、そして賀勢の計17名でした。豊富町の国立公園内でオオハンゴンソウの除去を実施しているのは一昨年からで、こちらの皆さんはまだまだオオハンゴンソウ除去に慣れていません。簡単なレクチャーの後、除去に取り組んだ皆さんはオオハンゴンソウの手強さにただただ驚くばかり。地面を掴むように食い込んでいるオオハンゴンソウの根のしぶとさに「なんて手強い植物なんだ!」と言い交わしながら皆ふうふういっていました。それでも、一時間半ほどの間、もくもくと除去に打ち込み、肥料袋で30袋分を除去することができました。


豊富でのオオハンゴンソウ除去作業

 そして最後は幌延です。幌延ではパンケ沼園地にてセイヨウタンポポ、シロツメクサを中心に作業を行いました。参加者はPV会員4名、一般5名、千田Rの計10名でした。パンケ沼園地ではノハナショウブが自生している辺りにコウリンタンポポなどの外来種が目立つようになりました。今年は寒くて春が遅れたせいか、コウリンタンポポの若い株はまだ出ていなかったそうですが、外来種が入ってきていることを意識しながら、途中でお茶の時間も交えて皆で気持ちよく作業できたとお聞きしました。コウリンタンポポ、次回は除去できるといいですね。作業の結果、45L入りゴミ袋2袋分の外来植物を除去したとのことです。

 後日、各地区からの報告を受けながら、このような機会を設けられたことをとても嬉しく思いました。利尻礼文サロベツは、海に隔てられていたり、広大であったりするので、パークボランティアの皆さんが一緒に活動しづらいという面がありますが、共通のテーマを持って全体で同じ日に活動したことで、顔は見られなくても一緒に汗を流せたという達成感を持つことができました。「一緒に作業する」ことを大切に今年度もパークボランティア活動のお手伝いをしていきたいと感じた一日でした。
パークボランティアの皆さま、作業お疲れ様でした。


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2010年06月03日パークボランティア一斉外来種除去作業(利尻・礼文の巻)

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

利尻礼文サロベツ国立公園では約50名のパークボランティアが活動しています。
普段は利尻、礼文、稚内、豊富、幌延の5地区に分かれて別々に活動することが多いパークボランティアですが、今年度は利尻、礼文、サロベツの各地区で共通のテーマで一斉に活動する日をつくろう!ということが決められました。そこで、全体で取り組む共通のテーマとして選ばれたのは『外来種除去』です。

 一斉外来種除去の実施日は5月23日(日)。この前日の5月22日は国連が定めた『国際生物多様性の日』です。そして2010年は生物多様性年でもあります。
外来種の侵入。これも生物多様性を脅かす大きな要因のひとつです。
宗谷地方でも特定外来生物のオオハンゴンソウやセイヨウオオマルハナバチなど、在来の生態系に悪影響を及ぼすものの生息が確認され、人間の活動によって持ち込まれた一部の外来生物が繁茂するということが目立つようになっています。利尻礼文サロベツ国立公園パークボランティアの会では、国際生物多様性の日にちなみ、各地区で一斉にこのような取り組みを実施することで、地域の生物多様性や自然環境の保全に対する思いを共有し、より活発で充実した活動につなげたい、と考えました。

これから、各地区で取り組んだ除去作業の様子をご紹介します。

 利尻では、南浜湿原にてオオハンゴンソウ除去作業を実施しました。
参加者はPV会員8名、一般4名、そして岡田AR。計13名でした。
利尻では、何年間にもわたり毎年数回のオオハンゴンソウ除去を実施しているため、どなたもオオハンゴンソウ除去に慣れています。
ただ、今回は利尻礼文サロベツ国立公園の区域で、みんなが思いを一緒にして外来種除去作業をしているということで、疲れたとき、飽きた時に仲間を思い出しながら作業をしていたそうです。
その結果、駆除本数は、2528本と報告を受けました。

 礼文では、桃岩展望台駐車場周辺でセイヨウタンポポ、ムラサキツメクサ、シロツメクサ、カモガヤの除去を実施しました。参加者はPV会員7名、一般5名の計12名でした。桃岩歩道は礼文島内で有数の寒地植物群生地であり、貴重な高山植物が生息していますが、上記の外来植物の侵入は在来の群生地の様相を失わせる要因となりかねません。作業中は、春の暖かい日差しの中、今年初めて確認した自生の花を見つけて楽しみながら作業を行ったとのことです。
ホソバノアマナ、キバナノアマナ、エゾヒメアマナ、アキタブキ、ミヤマスミレ、タカネグンバイ、エゾエンゴサク、コキンバイ、キジムシロ、エゾノハクサンイチゲ、レブンコザクラ、フデリンドウなどの自生の花々が見られたそう。これからの季節が楽しみですね。


上:利尻でのオオハンゴンソウ除去作業(南浜湿原)、下:礼文でのセイヨウタンポポ等除去作業(桃岩展望台周辺)


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2010年06月03日お長~い方と遭遇しました!

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 それは曇っていて肌寒い日。
週末に行う外来種除去の下見で浜勇知園地に外来種の生育状況を確認しに行ったときのことでした。
アメリカオニアザミのロゼットを探しながら木道を歩いていた私は、
木道の板と板と間の隙間からきめ細かく編み込まれた縄が一本、にょろっと出ているのに気づきました。
よく見るとその縄はゆっくり動いています!
それは、気温が低いせいか動きが鈍くなっているヘビでした!
私が近づいて覗き込むと、動きを止め、長~い体のうち頭に近い部分をヒョイとくねらせてこちらを見ました。
赤い目、薄茶色の体。模様は薄くてはっきりしないけれど、シマヘビくんだと思われました。
シマヘビくんはしばらく私の様子をうかがった後、「あまりじろじろ見るなよ」という風に、
くいっと頭の向きを変えて、ゆっくりゆっくり体の残りの部分を板の隙間から引き出し始めました。


浜勇知園地で出会ったシマヘビ(上:こちらの様子をうかがう、下:赤い目と赤い舌)

 体の太さが変わらないのでまだまだ続きがあるのだと思い、どれくらい長いのだろうとドキドキしながら、
体が全部出るまで20分間くらい見守っていました。
最終的に体長は1mくらいあったのではないかと思います。


縄目模様のような鱗が美しい

 観察している間、何度かきめ細かな鱗に包まれたシマヘビくんの体がくねくねとうねり、それはそれは美しいカーブを描いてくれました。
それはヘリコプターに乗って上空から見たサロベツ川の蛇行を思い出させました。
サロベツの大地には大蛇(サロベツ川)がいる!
まさに「蛇行」を実感しました!


シマヘビの動きを見て“蛇行”を実感!(上:くねくねと体をくねらせたシマヘビ、下:ヘリコプターから見たサロベツ川の蛇行)

 体を引き出し終わったシマヘビくんは、木道脇の草むらにゆっくりと消えていきました。
写真も撮らせて貰い、「蛇行」の意味も実感させて貰い、大変有意義な出会いでした。

※黒化型のシマヘビは「カラスヘビ」と呼ばれ、サロベツではしばしば見られます。



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2010年06月03日遅い春

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 今年の春はなかなか暖かくならず、冷たい雨混じりの風が吹く日もありました。
そのためか、原野の草花の生長も例年より遅い気がします。
 しかし、しぶとい寒さに負けない逞しさを持つ最北の植物たちは、
薄茶色の枯れ草の間から活動を始めていました。
 5月下旬。
サロベツ原生花園の木道をゆっくり一巡りしてみると、
ホロムイツツジの花が沢山の白い鈴のように釣り下がり、満開になっているのに気づきました。
遠目には目立たない小さな花には控えめだけど強い印象を受けます。
まだ茎が短いショウジョウバカマの薄紫色の花もところどころに咲いています。
種をつける頃には花を頂いた茎は長くなっています。花は真っ直ぐ空を見上げていました。
 そして、視線をもう少し低くしてみると今度はヒメシャクナゲが蕾をつけていることに気づきます。
ヒメシャクナゲの蕾は大変小さいですが、蕾にギュッと凝縮されたピンク色が鮮やかでとても美しく見えます。


満開のホロムイツツジ(2010/5/21)

 春が訪れ、季節が進んでいることを告げてくれるのは花の開花だけではありません。
原生花園では一番早く、4月の下旬には雄花をつけていたヤチヤナギ(枝先についた花芽は鱗片に覆われており、鱗片が開くと、その間から小さな小さな黄色い花が無数にのぞきます)は、次は葉を広げる準備をしているようです。萌黄色の葉芽が膨らんでいました。
 パッと見ただけでは地味で色合いが乏しく思われがちな湿原にも春はやって来ていました。
その日は寒さに縮こまっていないで、感覚を鋭くして春を探してみようと思った一日でした。
それから十数日経ち、今度はヒメシャクナゲの蕾がほころび始めました。
湿原が次はどんな表情を見せてくれるのか、とても楽しみです。


ヒメシャクナゲ(上:2010/5/21、下:2010/5/31)

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