ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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知床国立公園 羅臼

188件の記事があります。

2008年02月21日外来種の分布拡大

知床国立公園 羅臼 佐々木 尚子

2月14日、「セイヨウオオマルハナバチ監視活動」の19年度の集計結果が東京大学保全生態学研究室より発表されました。
それによると、道内の78市町村で計27,778匹が捕獲され、18年度よりも18市町村、6,526匹も確認数が増えています。
なぜセイヨウオオマルハナバチの監視&捕獲をしているのかというと、彼らは、在来マルハナバチの生息地を奪ってしまったり、盗蜜(花に穴を開けて蜜だけ取るため、受粉が行われない)を行ったりして植生に重大な影響を与えてしまう外来種だからです。ハウストマトなどの受粉昆虫として日本にやってきましたが、平成8年、日高で自然巣が発見されて以降、道内各地で生息が確認されています。

昨年10月21日には、近くにハウス農家がない羅臼でも、生息を確認しました。まだ完全に定着していないのか、捕獲数は3匹だけでしたが、着実に分布域を広げているようです。

羅臼川河口の土手で捕獲したセイヨウオオマルハナバチ。
肩とお腹の鮮やかな黄色と、白いお尻が特徴。


セイヨウオオマルハナバチの定着を阻止するためには、春、巣作りをするために飛びまわっている女王バチを捕獲するのが最も効果的です。
たった1匹の捕獲でも、貴重な自然を守る大きな力となります。北海道に春が訪れるのはまだまだ先ですが、今年の春は、咲き誇る花々を眺めながら、ハチたちの観察もしてみてはいかがですか。


アザミの花を訪れる在来マルハナバチ


北海道では、東京大学が行っている監視活動と連携し、平成19年5月に外来生物法に基づく「防除実施計画」を作成し、防除活動を行っています。一般住民の方が参加できる「セイヨウオオマルハナバチバスターズ」の募集も行っていますので、外来種問題に関心のある方、草花の好きな方など、ぜひ参加してみてください。防除活動への参加方法やマルハナバチの見分け方など、詳しく知りたい方は、下記ホームページをご覧ください。

北海道庁セイヨウオオマルハナバチのページ
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/alien/seiyo/seiyo_top

東京大学保全生態学研究室
http://www.coneco.es.a.u-tokyo.ac.jp/seiyou/index070807.htm

セイヨウオオマルハナバチを捕まえたら?
東京大学保全生態学研究室に送っていただきたいのですが、セイヨウオオマルハナバチは、特定外来生物に指定されているため、飼育・生きたままの移動・運搬が禁止されています。捕まえたハチは、中性洗剤などの殺虫剤入り密閉容器(ペットボトルなど)に入れるなどして殺処分し、取り扱いには十分注意してください。

送付先
〒113-8657
東京都文京区弥生1-1-1
東京大学 農学生命科学研究科 保全生態学研究室
担当:菊池 玲奈宛

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2008年02月12日根室海峡の流氷と動物たち

知床国立公園 羅臼 石名坂 豪

 知床半島と国後島との間に広がる細長い海は、「根室海峡」と呼ばれています。羅臼町が面するこの根室海峡にも、1月末から本格的に流氷が流入してきました。

写真1. 羅臼の海岸線から見た流氷(2月5日撮影. 対岸は北方領土の国後島)

 根室海峡に来る流氷は、斜里町のウトロなどに接岸した後、少し遅れて知床岬先端を回り込んできた流氷です。これには、海流の方向が関係しています。
 さて、羅臼町内の「流氷観測初日」はいつだったのでしょうか?東半分が羅臼町である知床岬の先端部では、1月23日に根室海峡へ流入する流氷帯を見かけました(エゾシカ密度操作実験の業務参加中)。定住人口のいる場所からとなると、1月28日に道道終点である相泊の裏山(標高約250m)から、幅広の流氷帯を観音岩方向に見ました(巡視中)。そして羅臼の中心市街から流氷帯が見えたのは、高台からだと2月1日が最初、海岸線の低いところからだと2月5日が初日になるようです。特に2月5日以降は、羅臼漁港よりも南側(標津町寄り)の海岸からも、沖合に広がる流氷帯が見えています(2/12時点)。羅臼漁港よりも北側(知床岬先端寄り)の相泊やサシルイ岬付近であれば、ほぼ接岸しているのが2月5日に観察されました。

写真2. 知床岬先端部の流氷帯. 左側の根室海峡に流入し始めている(1月23日撮影)

 流氷は、知床が世界遺産として認定されるに至った重要な要素であり、知床に生息する動物たちの生態に大きな影響を与えています。以下、勤務日以外の休日に走り回って集めた観察記録も含めて、大型動物各種の今冬の動向と、流氷との関係について、あれこれ書いてみたいと思います。

 まずはオオワシとオジロワシ。羅臼自然保護官事務所が11月30日から週1回ペースで実施している海岸線ワシ調査(羅臼町の海岸線の一部:約40 kmの区間を調査)では、1月22日に確認個体数が急激に増えました。流氷のウトロ接岸が1月21日、根室海峡への流入開始が前述したように1月23日ですから、流氷と共に移動してきて、新たに羅臼へ飛来したワシたちがいるのかもしれません。実際、1月23日に知床岬先端から流氷帯をこじ開けて脱出したときには、船から見える範囲の流氷上だけで、とまっているワシたちを15羽以上確認しました。

写真3. 流氷にとまるオオワシ成鳥(2月5日撮影)

 トドは、11月18日に数頭規模の群れを初確認し、それ以降は沿岸の休息場所でほぼ毎日、ゆったりと遊泳するメス成獣主体の群れを陸から観察できていました。このようにトドが昼の間ずっと滞泳・休息している特定の休息場所(上陸はしない)は、知床の海獣ハンター達から長年「付き場」と呼ばれ、近年は羅臼漁港よりも標津寄りの沿岸に数ヵ所点在しています。トドが最も多かった12月には、各付き場にいた複数群を合計すると約100頭が確認されていました。しかし流氷帯が羅臼市街地に接近してきた2月4日を最後に、大きな群れを付き場で見かけることはなくなりました。現在は、「ごく少数を場所不定で時々見かける」というような、流氷期の例年どおりのパターンになっています。

写真4. トドの群れ. 付き場の1つにて撮影(1月19日)

 ゴマフアザラシは、12月23日に標津寄りの沿岸で1頭確認したのを皮切りに、海岸線から時々見かけていました。1月19日以降は、羅臼市街地から近い礼文町地区にある暗礁で、プカプカのんびり立ち泳ぎをするアザラシたちを毎日観察できるようになり、2月4日には同所で20頭以上を確認しました。しかし2/8の昼休みと2/10に同所へ行ってみたところ、1頭も発見できませんでした(他の場所では1頭見ましたが)。2月5日に有害駆除が実施された影響も多少あるかもしれませんが、みんな沖合の流氷帯の方へ移動してしまったのでしょう。
 なにはともあれ2月下旬になれば、流氷の上に乗るゴマフアザラシを観光船からたくさん観察できるようになるはずです。アザラシの出産期である3月末-4月上旬まで羅臼沖に流氷帯が残っていてくれれば、ゴマフアザラシやクラカケアザラシの真っ白な赤ちゃんとの出会いも、期待できるかもしれません。

写真5. 立ち泳ぎしてノドをこちらに見せているゴマフアザラシ(1月19日撮影)

 シャチは、1月23日に知床岬からの帰路、観音岩沖で親子連れ3頭と遭遇しました。今後3月まで流氷勢力が強いまま維持されると、シャチの餌となるアザラシ類の数が羅臼沖に増えてくると予想されます。そうなれば、沖合でシャチと遭遇する機会も増えるかもしれません。

写真6. 横一線に並んで浮上したシャチの家族群. 左から子、メス、オスの順に背ビレが並んでいる(1月23日、観音岩沖にて撮影. 背景は国後島)

写真7. 船に自ら接近、下をくぐってから急浮上した子シャチ
(1月23日に若松自然保護官が撮影したビデオ映像よりキャプチャ)

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2007年11月22日「知床の四季」を見に来ませんか?

知床国立公園 羅臼 佐々木 尚子

現在、羅臼ビジターセンター特別展示室では、斜里町在住の写真家赤坂勝美さんの写真展を開催しています。
知床横断道路(国道334号線)が冬期全面通行止めとなってから、めっきり冬の装いになった知床半島は、吹雪く日も出てきました。そんな外の寒さを忘れ、ゆっくりとくつろぐことができるような空間を目指し、やわらかな日差しを浴びて咲く高山植物の写真をたくさん展示しました。


青空の下に咲くチシマノキンバイソウやエゾノツガザクラなどを見ていると夏にタイムスリップしたようです!もちろんこの他にも、美しく色づいた紅葉や雪化粧した山々と様々な表情の知床を見ることができます。
あなたも、ゆっくりと流れる時の中で、知床の四季を眺める贅沢な時間を過ごしてみてはいかがですか?


写真展は、12月16日(日)まで開催しています。
2006年のフォトコンテストで特別賞を受賞した「縦走路の秋」をはじめ、17作品を展示していますので、ぜひお越しください!
詳しくは羅臼ビジターセンターHPをご覧ください。
http://rausu-vc.jp/

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2007年11月12日家庭ゴミの不法投棄

知床国立公園 羅臼 石名坂 豪

 11月8日(木)の夕方、羅臼町役場の方から「羅臼温泉の源泉のところに家庭ゴミを不法投棄された」との情報が入りました。国立公園区域内でもあったので、早速状況確認と回収の手伝いに出向きました。

 現地に到着すると、モウモウと上がる水蒸気のそばに町役場の車が2台駐まっており、役場の建設水道課と環境管理課の担当者が集まっていました。大きなゴミ袋で4袋分のゴミが捨てられたようで、既に3袋が回収され、軽トラの荷台に載っていました。町指定ではない半透明のゴミ袋がカラスにつつかれて破れ、残飯や使用済みの紙オムツが穴からこぼれていました・・・・

 残り1袋は川の対岸に流され、カラスにやられて中身が散乱していました。他の人は長靴を履いていなかったため、私が川を渡って回収しに行きました。

 こちらもやはり残飯や汚れた食品の容器、使用済み紙オムツでいっぱい。紙オムツが水を吸ってかなりの重量になり、運ぶのに一苦労でした。今回は幸い発見が早かったため、残飯についたのはカラスだけでした。でも、一晩放置したらヒグマがついていたかもしれません。

 幼児用紙オムツのようだったので、これらを捨てたのはおそらく地元の若い世代でしょう。町指定の有料ゴミ袋を買うのをけちって、まさに「ゴミを山に投げた(北海道方言では捨てることを投げると言う)」といったところでしょうか。年配の人ならともかく、若い世代だとするとちょっとショックです。環境教育の浸透がまだまだ手ぬるい証拠でしょうか?

 国立公園区域の内外を問わず、ゴミの不法投棄はよく目につきます。釣り人や観光客(含、長期キャンパー)が原因の場合もありますが、「これ捨てたのは明らかに地元民でしょう」という場合も多々あります。町外からの来訪者はもちろん、地元の方にも、羅臼の自然や美観にもっと関心や大切にしようという心を持っていただきたいものです。地元の方々全員とは言いませんが、どうも自然があることが当たり前すぎて、それに対する甘えがあるような気がしてなりません。油断は禁物ですよ~

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2007年10月26日露天風呂の珍客

知床国立公園 羅臼 佐々木 尚子

「露天風呂で暴れている動物がいる!」と、事務所のすぐ近くにあるホテルから朝一で電話がありました。大掛かりな捕獲を覚悟して飛び出していった石名坂ARがホテルに着くと、小さな瓶を手渡されました。「暴れていた動物」はすでに捕まえられて、空気穴が開けられた瓶に入れられていたのです。
瓶の中でうごめく動物の正体は、小さなコウモリでした。
体の特徴から大人のモモジロコウモリであることが判明。夜行性なので、夕方まで保護することにしました。


個体識別用のリングが付けられた翼
コウモリの翼の膜は奥が透けてしまうほど薄い


コウモリというとたいていの人が吸血コウモリを想像しますが、日本にいるコウモリは昆虫や果実などを食べているので、いきなり飛びつかれてガブリッ!なんてことはありません。このモモジロコウモリも、川や湖で蚊などの昆虫を食べています。
ホテルの裏側を流れる川で餌を探していたのでしょうが、冷え込みの厳しくなってきたこの季節は、暖かい露天風呂が絶好の休憩場所だったのでしょう。


軍手の中から様子をうかがうモモジロコウモリ


日も落ち、辺りが真っ暗になってきた頃、モモジロコウモリを放しに外へ出ると、周りの木の枝が揺れるほどの風が吹いていました。モモジロコウモリの体重はわずか8g。1円玉8枚分の重さしかありません。この強風の中飛んでいけるのかな・・・と不安になりながらゆっくり手を離すと、風などものともせず元気に飛び去っていきました。

鮮やかだった山々の紅葉も色あせ始め、冬眠間近のモモジロコウモリが活動できるのも残りわずか。まもなく知床半島に厳しい冬がやってきます。

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2007年10月17日冬がやってくる

知床国立公園 羅臼 石名坂 豪

 10月15日(月)。この日は早朝出発して羅臼岳登山道を羅臼温泉登山口から山頂まで巡視・・・・する予定でした。しかし山の天候悪化が予想されたため、前日夜の時点で中止という判断が下されました。また14日夕方に下山してきた登山者が、ゴールの登山口間近で親子グマに帰り道をふさがれて携帯で通報。町役場や知床財団のクマ対策担当者だけでなく、警察も出動したちょっとした騒ぎになったことも理由の一つです。羅臼岳登山道にクマが現れること自体はまったく驚くに値しない出来事ですが、騒ぎになった翌朝に、わかっていて行くのもちょっとね・・・といった感じです。

 そのようなわけで、羅臼岳に行かなかった代わりに、羅臼湖など管内3ヵ所の入山カウンターの保守点検とデータ回収に出かけました。羅臼湖入口付近では道路脇に雪が積もっており、先週きれいだった紅葉はすっかりくすんでいました。


道路脇の雪

くすんできた紅葉。足下にはやはり雪


 知床峠付近では冷たい強風が吹き、みぞれが時折降り、羅臼岳方向は黒い雲の中。おそらく山頂付近では雪がたくさん降っていたことでしょう。行かなくて良かった!(苦笑)。

 自宅ではハロゲンヒーターだとつらくなり、とうとう灯油ストーブを使い始めてしまいました。
 短い秋が終わり、知床半島は冬に突入しようとしています。

※ 国道334号「知床横断道路」は、夜間交通規制が10/24開始と報道されています。しかし既に悪天候などで路面凍結の恐れが出てきたため、日によって「夜間通行止め」や「終日通行止め」が始まっています。知床半島の羅臼-ウトロ間を走行する予定の方は、交通情報にご注意ください。

既に10/16までに・・・・・
 夜間通行止め:10/12, 10/14, 10/15
 終日通行止め:10/13

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2007年10月16日木階段作りに初挑戦

知床国立公園 羅臼 佐々木 尚子

10月10日、羅臼湖の二の沼近くの急斜面で木階段作りが行われました。今回の維持補修活動は根室支庁主催で行われ、環境省、林野庁、根室支庁、羅臼町、知床財団、知床ガイド協議会、羅臼山岳会から26名が参加しました。
目的は「木階段作り」なので、当然材料である木材、さらにスコップやカナヅチなどの道具類も運ばなければなりません・・・。30段分の木材と道具を分担して運ぶことになりました。予定では2、3回往復するはずだったのですが、力自慢?の参加者が多かったのか1回で運びきることができました。


木材運搬中


二の沼付近の斜面は、水の通り道となっているため削れやすく、以前設置された歩道もほぼ機能していない状態です。雪解け水の流れる6月頃は、まるで小川のようになっていて、「これが歩道なの!?」とビックリしました。


削れて溝になった歩道はかなり滑ります!!


重い木材運びの後は、いよいよ階段作りです。といっても誰も木階段なんて作ったことがないので、お手本として地元の建設会社の方々に頼んで1段作っていただきました。


作業手順を覚える参加者の皆さん。真剣です!


手順を覚えたところで、2、3人のグループに分かれて作業開始です。土の中に隠れていた石に杭打ちを邪魔されたり、段差を埋めるための土嚢運びに悪戦苦闘しながらも、29段の階段を完成させることができました。


横板を固定する根室支庁職員

完成した木階段
段差もなくなり、かなり歩きやすくなりました。


羅臼湖へ向かう皆さんへ
羅臼湖の歩道は、常に水たまりやぬかるみがあるような所です。雨が降った次の日には、グチャグチャの田んぼ状態で、股のところまで泥まみれ・・・という悲惨な状態になることもあります。そして、靴が汚れるからと歩道を外れると、高山植物を踏みつけてしまいます。作業中も泥一つ付いていない靴で歩いている利用者を見かけました。
足下の植物を踏みつけて、周りの景色は楽しむなんて良い気分はしないですよね?自分のためにも、自然のためにも、羅臼湖歩道に入るときは、どんなに天気が良くても長靴を履いていきましょう!


二の沼の紅葉
残念ながら羅臼岳は雲の中・・・

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2007年09月27日秋の訪れ

知床国立公園 羅臼 佐々木 尚子

ここ数日、羅臼の気温は10℃前後まで下がり、朝晩はストーブが恋しくなる季節となってきました。冷え込みの厳しくなった9月26日、羅臼岳では初冠雪を記録しました。知床峠での巡視中は上着を着ていても風が身に凍み、秋を通り越して冬になるのでは!?と思ってしまいました。

山頂付近には冬が訪れようとしていますが、標高200m付近にある熊越の滝周辺では、これから紅葉が始まろうとしています。木々の葉はまだ緑色ですが、オオカメノキやヒロハツリバナの果実は赤く熟しています。



真っ赤に熟した果実が目立つオオカメノキ




ぶら下がってゆらゆらと揺れるヒロハツリバナの星形果実


27日には、熊越の滝のすぐ近くの国道からヒグマを目撃しました。ヒグマは、川沿いを滝の方へ向かって歩いていたため、1日巡視がずれていたら遭遇していたかもしれません・・・。

この季節、ヒグマは冬支度に夢中になっています。
遊歩道や林道の近くにも、クマの大好きな果実や木の実がたくさんありますので、鈴などを使用して人間の接近を知らせながら歩いたり、クマスプレーを携帯するなど、クマ対策をして入山するようにしてください。

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2007年09月21日入山カウンター (登山者カウンター)

知床国立公園 羅臼 石名坂 豪

 知床国立公園内の各登山口や主要歩道の入口には、利用者の動向を把握するための「入山カウンター」と称する機械が設置されており、羅臼町側では計5台が稼働しています。

 外観はこんな感じです。


 この機械には赤外線センサーがついており、その前を人が通過すると、進行方向、日付、時刻などを記録するようになっています。

 入山カウンターのデータ回収や機械本体の保守・点検は、知床AR(羅臼・ウトロ)の多様な業務の一つです。回収してきたデータは自然保護官事務所のパソコンで読み取り、エクセル上でカチカチと20段階くらい作業をおこなうと、集計表ができあがります。こうして作られた集計表が、知床国立公園の「利用適正化検討会議」などで配布される資料の基となり、国立公園であり世界自然遺産でもある“知床”の現状分析や、今後の方向性に関する議論に活用されています。

 前を通過する人々を毎日黙々と数え続ける入山カウンター。時々へそを曲げることもありますが、おおむねよく働いてくれています。彼らは雪が本格的に降り始める頃までの期間、国立公園内各地の登山道や歩道の入口に立ち続けます。

 さて折角なので、入山カウンターのデータからわかったことの具体例を1つ。
 日本百名山の1つである羅臼岳には登山口が2つありますが、そのうち「羅臼温泉登山口」からの入山者が「岩尾別登山口」のそれより相当少ないことは、以前から感覚的に知られていました。それがカウンターデータから、岩尾別側の15分の1程度しか入山者がいなかったことが判明しました(2006年データ)。登山ルートを覆い隠す大規模な雪渓が真夏まで残り、標高差1600m弱を5-7時間かけて登る厳しいルートが、上級者以外には敬遠されていることをよく物語っている数字でしょう。

 ちなみに羅臼温泉から羅臼岳山頂までを往復するなら、所要10-12時間はみておかないと危険です。

羅臼岳登山道(羅臼温泉ルート)の終盤に待ち受ける「屏風岩」の急登。
今年の7月1日、山開きの日に撮影。

屏風岩を越えた先にも難関あり。「お花畑」の分岐点付近で、正規ルートを完全に覆い尽くす広大な雪渓(7/1撮影)。ルートをよく知っているか、地図読みができる人以外は迷いやすく、今夏も遭難しかけた人がいました。
8月に雪が減った後ならば、コースを教える誘導ロープが雪渓上に張られます(環境省→羅臼山岳会の委託事業)。しかしあたり一面が雪に覆われ、看板も完全に埋もれている7月は、そのような手段でのルート表示は困難です。

登山道の真ん中に落ちていたヒグマの山盛りウンコ。クマも登山道を利用しています。
でもクマはティッシュを山に捨てていかない分、人間よりはマナーが良い?

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2007年09月14日来館者の声

知床国立公園 羅臼 佐々木 尚子

今年5月に開館したばかりの羅臼ビジターセンターの来館者数は、8月13日までで19,312人となり、まもなく2万人を超えようとしています!旧ビジターセンターの2006年度の来館者数8,760人は7月中旬にぬりかえ、現在も着々と来館者数を増やしています。
こんなにたくさんの方が訪れている羅臼ビジターセンターで、来館者は何を感じたのか?そして、知床の自然についてどれだけ理解して帰られているのか?それを知るために、8月12日、羅臼自然保護官事務所で受け入れた4名の夏期実習生に頼んで「来館者の声」を聞いてもらいました。
12日の来館者数は326人。その内125人の方から貴重なご意見をお聞かせいただきました。

館内で一番印象に残ったのは?と言う質問では・・・

第3位!「さわれる展示」12%(17人) 
中でも特に箱の中に入っているものを当てる「何だろうBOX」や着ぐるみが人気のようです。



手を入れるのにちょっとドキドキ。何が入っているか当てられるかな?


第2位!!「映像」17%(23人)
知床の四季の移ろいとそこで生活する動物たちの姿を写したハイビジョン映像「知床・羅臼の四季」(約30分)を150インチの大画面で見ることができます。

そして堂々の第1位は!「剥製類」47%(65人)
いくつかある剥製の中でも、泳いでいるようなかたちで展示されているトドやカラフトマスを食べるヒグマの剥製が良い!と言う方が多数いらっしゃいました。




まるで泳いでいるようなトドの剥製



カラフトマスにかぶりつくヒグマの剥製。迫力満点です!


そして、羅臼ビジターセンターを利用した感想は?と言う質問には、「羅臼の奥深さがよく伝わった」、「知床の大自然を大切にする心を持つきっかけとなった」など知床の自然を理解し、大切にしたいという嬉しい反応がたくさんあった反面、「エゾシカやキタキツネなど他の動物の剥製をもっと置いてほしい」、「植物に関する展示がもっとあっても良いのでは?」などのご意見もいただきました。
これらの貴重なご意見は、たくさんの方が知床・羅臼の自然を理解し、また来たい!と思っていただけるようなビジターセンターにしていくため、役立てていきたいと思います。

あなたも迫力あるトドやヒグマに会いに羅臼ビジターセンターを訪れてみてはいかがでしょうか?そして今後のビジターセンターのためにも貴重なご意見・ご感想をお聞かせください!

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