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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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知床国立公園 羅臼

188件の記事があります。

2019年08月02日1人の命を救うため

知床国立公園 羅臼 宮奈光一郎

北海道で最も辿り着くのが難しいと思われる岬、知床岬。
到達するには道が一切ない海岸線を天候、潮位、地形、ヒグマ等に細心の注意を払いながら進まなければなりません。

海に面する岩礁地帯を進むトレッカー(2019年8月撮影)

そんな沢山の苦労を重ねつつ、知床岬に足を運ぶ人たち。
決して多くはありませんが、時として自然に飲み込まれてしまうことがあります。

知床岬方面の海岸線にある波止場にて搭載艇に乗り移る救助訓練参加者(2019年7月撮影)

その様な事態が起きた際に迅速な対応を行うため、羅臼海上保安署をはじめとする官公庁、羅臼山岳会等の地元関係団体の方々と共同で捜索救助訓練が実施されました。

波止場周辺からドローンを飛ばし、岩陰に隠れた遭難者役を探す(2019年7月撮影)
搭載艇を使用した人員の移送、ドローンによる救助訓練が行われ、今後関係団体とどのような連携が組めるのか話し合われました。1人の命を救うため、多くの人員、時間、物資等が使われることを身にしみて感じた訓練でした。

知床岬へ近付けば近付くほど、拠点となる人の利用が多い場所から離れ、救助が辿り着くまでの時間は延びます。また岬まで続く石浜、岩礁、複雑な地形等救助を困難にする場所が増えていきます。利用される際はそういった場所であることを認識し、常に引き返すことを1つの選択肢として、状況判断をしていただければと思います。悲しい事故が起こらないために。

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知床岬方面をご利用の際は情報サイト「シレココ」をご確認いただくと共に、ルサフィールドハウスにて情報を収集していただければと思います。

潮が引いた知床岬へ続く広い海岸を青空の下歩んでい行く(2019年6月撮影)

地の果てへ

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2019年04月15日今年も羅臼で花を見る

知床国立公園 羅臼 宮奈光一郎

 日本各地で桜の開花が騒がれ春を感じるこの季節、まだまだ地上の大半を雪が覆う知床・羅臼はようやくフクジュソウが顔を出し始めたかなといったところです。

 花恋しいこの季節、その思いを少しでも和らげることができたらと羅臼ビジターセンターでは4月7日(日)まで知床半島で見られる植物、その花を紹介しておりました。今回は展示中に紹介した花々と、「問いかけ」と題して集めた来観された方々の花に関する思いを幾つかご紹介させていただきます。

1年間知床半島を歩き回って見付けた色彩、形が様々な花たち(2018年4月-10月撮影)               

         左                     右
      コヨウラクツツジ              イトキンポウゲ
      ジムカデ                  エゾモメンヅル
      エゾクロクモソウ              シコタンハコベ
      エゾトリカブト               アケボノシュスラン

 まずはこちら。紹介した植物たちです。海岸から高山帯にいたる多種多様な環境がモザイク状に凝縮されて存在する知床半島。そこで見られる様々な植物、その姿形から知床の多様性、生物の多様性について少しでも味わっていただけたらと思い、1年間知床半島を歩き回って見付けた植物、その花を紹介しました。

展示中に花に関する問いかけに対する来観者の回答(2018年12月-2019年4月)

 ※回答はいただいたものをそのまま記載しています。

 続きまして「問いかけ」とその回答を幾つかご紹介させていただきます。皆さんは同じことを聞かれたらどのようなことを思い浮かべますか。花のみならず生きものを見て自分が何を感じるのか考えてみては如何でしょうか。きっと面白い発見があると思います。

 これから破竹の勢いで季節が移り変わっていく知床。そこで咲き誇る植物、うごめく動物たちを見逃さないように気を引き締めて新たな季節を迎えていきたいと思います。

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2019年02月21日冬山に挑戦

知床国立公園 羅臼 宮奈光一郎

知床・羅臼に暮らす小学生たち。いつでも元気がありあまっている彼らを連れて、羅臼町の裏山「英嶺山」に行ってきました。

雪に覆われた斜面を苦労しながら登る羅臼町の小学生(2019年2月撮影)

普段からスキーやスノボーなどをして雪には慣れている小学生たちですが、自分の足で山に登ることはあまりないようで、苦労しながら山頂まで2時間の距離をゆっくりと進んでいきました。

山頂に立つ羅臼町の小学生たち。目の前は開け根室海峡、流氷、国後島を眼下に望む。(2019年2月撮影)

山頂からは羅臼町中心街、国後島に流氷、知床の山並みを俯瞰することができます。それを見て「きてよかった」と言ってくれました。

山頂から羅臼町の山並みを望む。幾重にも小高い尾根が重なっている。(2019年2月撮影)

羅臼町周辺の山並み。今回は雲がかかっていましたが、知床連山を見ることもできます(写真は山頂から野付半島方面を向いたものです)。

途中にある凍り付いた四ツ倉沼。雪が堆積し周辺も開けているため、遊び場として最適。(2019年2月撮影)

頂上で昼食を取り元気を取り戻した小学生たち。帰りは文字通り笑い転げながら滑り降りていきました。途中凍りついた沼の上で雪合戦やネイチャーゲームを繰り広げ、やっと体力が減ってきたところで下山となりました(写真右手奥の白い鈍頭が英嶺山です)。

四ツ倉沼の上ではしゃぎ回る小学生たち。(2019年2月撮影)

苦労はありましたが全員登頂、怪我もなく無事終了。大変なこともあったと思いますが、参加してくれた一人一人が自分の足でまだ見ぬ場所に於もむくことの面白さを覚えてくれていればと思います。

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 英嶺山(標高521.3m)
  羅臼山岳会によって道が整備されています(夏期)。
  知床未来中学校の裏手より登山口に続く道があります。
  冬期は目立つ目印がありませんのでご注意ください。

 実施したネイチャーゲーム
 「オスは大変 冬のエゾシカハーレムづくり」
  イ)4から5人程度がオス、他はメス。
  ロ)制限時間内にオスはメスを捕まえ、じゃんけんに勝てばメスを獲得する。
  ハ)メスは捕まったら各オスの陣地に移動する。
  二)オスがオスを捕まえることも可。オスがオスを捕まえた場合、

    各陣地のメスの前に移動し、各オス10秒間自分の強さを体で表現する。
  ホ)各陣地のメスは強いと思った方へ移動。
  へ)獲得したメスの数が多いオスが勝ち。
  ※メスは早くても早歩き程度で移動。オスは走ってよい。
  ※オスの数陣地を設ける。陣地は隣接して作成。
  ※オスは連続して同じメスを捕まえてはいけない。

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2018年11月30日知床・羅臼の身近な植物5

知床国立公園 羅臼 宮奈光一郎

冬の冷たさが染みこんだ熊越の滝(2018年11月撮影) 今年は全道的に雪が少ない様子。知床・羅臼も降りはするものの日中には溶けてしまうことが多く、まだ根雪にはなっておりません。しかし、厳冬期らしい寒さが日に日に増しています。(写真は熊越の滝)

雪の少ない水辺で若葉を出すアキタブキ(2018年11月撮影) 広葉樹の葉もすっかり落ちきった林内。ふと水辺を見てみるとこの季節に似合わない新緑の葉が顔を出しておりました。

冬に入ったにも関わらず花を咲かそうとするアキタブキ(2018年11月撮影) こちらは北海道ならどこでも見られるアキタブキ。雪が少なく暖かい日が続いたからでしょうか、雪が積もりにくい水辺や日当たりの良い斜面で幾つも顔を出しておりました。

卵の様な形をしてコケ類の上に顔を出したアキタブキの蕾み(2018年11月撮影) 普段大量に見ているため気にしなくなってしまう植物ですが、この様な時期に姿を見付けると思わず足を止めてしまうものです。

枯れ落ちたアキタブキの葉を朝日が染め上げる(2018年11月撮影) 茎の高さが1m以上、葉の幅も1mを越えることもあるアキタブキ。密生した箇所では足下を覆い隠してしまうため、ヒグマの痕跡が見えにくくなり、ヒグマの良い隠れ家ということもあって周囲を歩くときは多少なりとも緊張感をもちます。

落ち葉の中から次々とアキタブキが目を出している(2018年11月撮影) そんなアキタブキの園が見られるのもおよそ半年後。知床・羅臼に訪れた冬はまだまだこれからです。

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2018年10月23日色鮮やかな世界にもうすぐお別れ

知床国立公園 羅臼 宮奈光一郎

 駆け足で過ぎていく知床の秋。知床半島の最高峰である羅臼岳で10月13日には頂上周辺で冠雪を確認、10月23日には知床横断道路の夜間規制がはじまります。紅葉が日に日に色を増すと共に木々の葉が落ちていき、滑り落ちてくるように麓が色付く時期を迎えました。

紅葉に包まれる知床横断道路(2018年10月) 今年の知床はかなり葉の色付きが良い印象を受けます。もう少しで良い色に・・・というところで葉が雨風に打ち落とされることが知床のあるあるだったと思っておりましたが、そうならない年もあるようです。

紅葉に包まれる横断道路2(2018年10月)

 ただ知床、ことに羅臼では晴れの日は夜から朝にかけて強い風が吹くことが多く、3日と同じ景色を眺めることができません。3日目には葉がかなり落ちていることは当たり前で、1日で様変わりすることもしばしば。

紅葉に包まれる河川(2018年10月)

 紅葉を見て少し気持ちが落ち着くのは良いのですが、のんびり構えているとシャッターチャンスを一瞬で失ってしまい、知床の厳しさ(?)を思い知らされます。

濃い黄色に染まったミズナラ、エゾイタヤ、オガラバナの葉(2018年10月撮影)

 知床の紅葉の印象は黄色。オガラバナやエゾイタヤ、ダケカンバにミズナラと葉が黄色く染まるものが多く生育しているためと思われます。

知床横断道路から垣間見る紅葉に包まれた山麓(2018年10月)

 現在、標高300m程のところで紅葉が終わりかけており、150m程がピークを迎えているといったところでしょうか。もう後1週間も経つと閑散としてしまうのではと思われますので、知床の紅葉をご覧になりたい方は、お早めにお越しください。

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 ルサフィールドハウスのHPで普段は見られない知床の景観を紹介しています。
 こちらも合わせてご覧ください。

 奥沼の紅葉

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2018年09月28日シロに染まるまであと少し

知床国立公園 羅臼 宮奈光一郎

 9月も終わりに近付き麓の木々も日に日に色を濃くしています。読書の秋、食欲の秋と言いますが、日本の北東端に位置する知床ではすでにシロい季節を思わせる寒い日が訪れています。

 およそ半年間シロに覆われる知床。今それに抗うかのように山々が色付き初めております。

眼下に広がる根室海峡を背に橙、紅、黄色の草紅葉に覆われる高山帯のお花畑が眼前に広がる。(2018年9月撮影) 羅臼温泉登山道(羅臼町側から羅臼岳へ向かう登山道)にあるお花畑は草紅葉に覆われておりました。橙色のタカネトウウチソウや濃い赤に染まるチングルマが目立ちます。

ダケカンバが黄色く色付き、山頂を覆う緑色のハイマツとの境目、森林限界の境界線がはっきりと見て取れる。(2018年9月撮影) 三ツ峰(写真左手前のピーク)周辺ではダケカンバが色付いたことで森林限界の境界線を容易に見て取ることができました。

紅く染まったチングルマの絨毯の上にヒョロッとさきの尖った胞子嚢穂を出したタカネヒカゲノカズラ(2018年9月撮影) 足下の紅い絨毯の上にはシラタマノキやコケモモ、チングルマの実がなり、この時期に胞子嚢穂を出すタカネヒカゲノカズラもひょっこりと頭を出しておりました。胞子嚢穂を突くと胞子が飛びだし、冷たい風に乗って拡散していきます。

高さ10mを越える岩壁が立ち並ぶ屏風岩も紅葉に包まれ初めていた。(2018年9月撮影) 羅臼温泉登山道ビュースポットの一つ屏風岩も秋色に染まっておりました。こちらは後1週間ほどでピークを迎えるでしょうか。天気の良い日、紅葉に包まれた屏風岩を青い海に浮かぶ国後島をバックに見る景色は圧巻です。

岩の上に落ちていた食べかけのハイマツの実(2019年9月撮影) 岩の上に転がっていた誰かの落とし物。彩りの季節、その背後にまだ遠くにありながらも存在感を示すシロい季節を私たち以上に感じ取っている生きものたち。必死に生き残るための準備をしているのでしょう。

 知床の秋はとっても短く、後1ヶ月もすれば知床横断道路も閉まりすっかり冬支度が済んでしまいます。本当にアッ・・・と言っている間に終わってしまうので、是非計画的にこの美しい知床を味わいにきてください。

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  ※1標高が高い所では気温が10℃に満たない時間が長くなってきております。
    ご利用の際は防寒対策を忘れないようにご注意ください。

  ※2羅臼温泉登山道は羅臼岳頂上まで登り7時間、下り5時間ほどを要します。
    お勧めの登山道ですが十分計画をした上でのご利用をお願いいたします。

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2018年09月12日ルサカフェ今年もオープン!(9/12 - 9/17)

知床国立公園 羅臼 宮奈光一郎

秋の香りがたちはじめる中、今年もルサフィールドハウスでカフェがオープンしています!

ルサフィールドハウスのカウンターに多数の焼き菓子やコーヒーが並ぶ(2018年9月撮影)

 

今年は連休中もオープン!日替わり限定メニューも用意されています!

お弁当やピザなど日替わりメニューも充実(2018年9月撮影)

 

コーヒーを片手にいつもと違った雰囲気の中、くつろいでみては如何でしょうか。

ルサフィールドハウスで飲食しながらくつろぐ利用者(2018年9月撮影)

是非お立ち寄りください!
詳細はこちら→ルサカフェ

-おまけ-

すでに紅く色付いたナナカマドの葉(2018年9月撮影)色付きはじめたナナカマド

カラフトマスが多数遡上し黒く染まったカモイウンベ川(2018年9月撮影)カラフトマスも多数遡上しています。

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2018年08月08日知床・羅臼の身近な植物4

知床国立公園 羅臼 宮奈光一郎

 あっつい!7月のはじめ雨が多かった羅臼は、最終週に入りいきなり暑くなりました。せっかく涼しいところに来たのにと愚痴を零す方々を見かけるほどです。(そんなことを思ってこの記事を書いていたら急に涼しさが戻ってきました。8月に入り羅臼らしいひんやりとした夏が戻ってきています。最高気温は高くても25℃ほど。もはや秋とも思えてしまう日々が続いております。)

 そんな暑い夏の日にはあまり出会いたくない植物がいます。

青い空の下、濃い緑色の葉をまとわりつけたハイマツの枝とその後ろに広がるハイマツ帯(2018年7月撮影)

 それがこちらの植物、皆さんご存知ハイマツです。トゲがあるとか刺激物を出すといったことはありません。問題はハイマツの周辺は非常に熱がこもるということです。ハイマツ帯の中に入るととにかく暑いのです。まだ風が冷たい季節はいいのですが、今の時期はどうにも避けたい気持ちが出てしまいます。

 そんな夏には避けたいハイマツですが、他の生きものにとっては住み心地の良い環境を提供しているようです。今回はそんなハイマツの下で見られる植物を少しご紹介します。

ハイマツ帯の下で白い小さな丸い花束の様に花をつけるイソツツジ(2018年7月撮影)

 こちらはイソツツジ。幾つもの白い小さな花を玉の様につける植物です。ハイマツに覆われて少し暗くなった林内でひときわ目立つ植物です。

密に伸びたハイマツの根元でピンク色をした三角形の灯籠の様な形をした2対の花をつけるリンネソウ(2018年7月撮影)

 写真左側に薄ピンク色をした二輪の花が目に付くでしょうか。こちらリンネソウです。「リンネ」はラテン語による二名法の発案者とされる、カール・フォン・リンネ(植物学者・瑞)を記念したものだそうです。ハイマツの下に密生して生え小さなお花畑をつくることもあり、一瞬、ハイマツ帯がオアシスに見えます。

茶色い枯れたハイマツの葉が敷き詰められた地面の上で花を咲かせるミヤマフタバラン(2018年8月撮影)

 最後はこちら。ミヤマフタバランです。少し見えにくいと思いますが、写真右手に三角形に近い形の葉っぱが2枚対になってついている植物です。夏のハイマツ下でひっそりと生えているランの一種です。見付けたときは宝物を見付けたような気持ちになります。

ハイマツに囲われてトンネルの様になった尾根筋(2018年7月撮影)

 ハイマツの下に潜ると吹いていた風をほとんど感じなくなります。そのためかハイマツの中はいつも暖かい(暑い)です。気象が変化しやすい山の上ではハイマツが地面を覆うことで比較的安定した環境が生み出され、様々な動植物が生きていけるのではないでしょうか。

 山に登られた時は是非、ハイマツの有るところと無いところの違いを肌で感じてみてください。

※イソツツジはすでに花期を終えていますが、リンネソウ、ミヤマフタバランは今が花期の盛りです。

-おまけ-

淡い茶色がかかった緑色したミヤマフタバランの花(2018年8月撮影)

ミヤマフタバランの花

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2018年07月06日知床・羅臼の身近?な植物1

知床国立公園 羅臼 宮奈光一郎

 7月、知床・羅臼はこの時期天候が落ち着くことが多いのですが、今年は停滞前線が北海道に伸びてきてしまい、毎日雨が降っております。まるで梅雨の様です。そんな天気の悪い日でも山に登ろうとする人を見かけると、シーズンなのだなと思います。
※羅臼岳等を利用される際は、ヒグマに遭遇することも踏まえ、天候判断は厳しく行っていただけたらと思います。

 さて、先月、シーズンを迎える前に知床岬まで現地状況確認のため歩いて行ってまいりました。今回はその途中で出会った植物を一つご紹介します。身近とは言い難いですがご覧ください。

全体的に淡い緑色をしていて白い5つに裂けた花をつけるカマヤリソウ(2018年6月撮影)

 こちら、カマヤリソウです。ビャクダン科カナビキソウ属という何とも聞き慣れないグループに分けられている植物です。海岸の風当たりが強い風衝地で確認されています。(今のところ)羅臼で見るには相泊から10km以上海岸を歩いていかなければなりません。

細長く槍先の様な葉身と2枚の苞葉という独特の印象を受ける葉を付けるカマヤリソウ(2018年6月撮影)

 白く小さな花(花弁はなく、白く見えるのはガクです)をぽつぽつと咲かせ、細長く独特の印象を受ける形をした葉っぱをつけています。毎年現地確認の時期(6月中旬)が開花の時期と重なるため、ここ数年連続で花を見ることができております。

他の植物に囲われ、確認が難しいカマヤリソウ(2018年6月撮影)

 背丈は大きくても20cm程度。他の植物に覆われてしまいそうです。見落としやすいこの植物を毎年見付けるのが現地確認の一つの楽しみになりつつあります。

切り立った岩壁をトラバースする職員。足下には深い溝があり、海水で充ち満ちている。(2018年6月撮影)

 知床岬に向かう道のりは、厳しい行程ではありますが海岸特有の植物を沢山見つけることができます。(個人的には2007年に日本新産種として報告されたチシマコゴメグサを一目見たいところです。)自然が生み出した造形美を背後に見る植物の姿は本当に素晴らしいです。この夏、見に行かれては如何でしょうか。

※知床岬を含む知床半島先端部地区は利用を推進している箇所ではありません。

 そのため、登山道等は一切設置されておりませんのでご注意ください。

※カマヤリソウは礼文島やアポイ岳などでも見ることができます。

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 知床先端部地区をご利用の方はこちらをご覧ください。

  シレココ

   →https://www.env.go.jp/park/shiretoko/guide/sirecoco/

  ルサフィールドハウス

   →http://shiretoko-whc.jp/rfh/

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2018年06月07日知床・羅臼の身近な植物3

知床国立公園 羅臼 宮奈光一郎

 「暑い。」と言ったら東京等にお住まいの方々には怒られるかもしれません。初夏を迎えた知床・羅臼ですが最高気温は連日20℃を下回る程度。ですが、冬の寒さを通り抜けた後ではこれでも十分暑く感じてしまうのです。

 さて、今回ご紹介する身近な植物はこちら。

黄色く細長い花弁を5枚付けた花を裏側から撮影したもの。花の付け根に丸いドーム型の出っ張りが目立つ。(2018年6月撮影)

 これは何の花でしょう。花弁は5枚です。やや湿ったところに生えており、渓谷など山中で見かけることが多いと思われます。(微妙な位置から撮影しておりますが、単にわかりにくくするためではありません。)

馬の蹄の様に丸い葉っぱ。葉の付け根が裏側に湾入している。(2018年6月撮影)
 葉の形はこちら。この植物の名前は葉の形が馬の蹄に似ていることに由来しているそうです。

黄色いスミレ、キバナノコマノツメの花。全体的に細長い印象を受ける。(2018年6月撮影)

 正解はこちら!そう、スミレです!これは黄色い花をつけるキバナノコマノツメ(コマは馬の意)と呼ばれるスミレです!

ミズナラの根元に生えるキバナノコマノツメ(2018年6月撮影)

 本州では亜高山から高山で見られることが多い植物ですが、知床では海抜50mに満たない沢沿いでも見ることができます。緯度が高く、全長が短く河口周辺でも渓流のような沢があるからかもしれません。

 他地方で見た植物が意外なところで見つかるのも知床の面白さ。異なる環境に植物がどのように対応しているのか、探して見るのも面白いのではないでしょうか。



 -おまけ-

「スミレを見分けるポイント」

 1.花の色

 2.葉の形

 3.距(花を裏から見るとある出っ張りで蜜の溜まる部分)の色と形

 4.側弁(花の中間にある左右2枚の花弁)の基部に毛があるかないか

 5.地上茎があるかないか(花が先に付いていて茎に見えるのは花柄)

 6.地上茎につく托葉の切れ込みがあるかないかとその形

 この6つの特徴を押さえれば(大方)スミレを見分けることができます(難しい言葉は調べればすぐに分かります)。あとはあるかないか、形、色を見ればいいだけ。是非、身の回りのスミレが何なのか観察してみてください。

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