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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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知床国立公園 羅臼

188件の記事があります。

2007年09月11日車中泊の問題点

知床国立公園 羅臼 石名坂 豪

9月になってから一般観光客の姿は減りましたが、定年後のセカンドライフを楽しんでおられるキャンピングカーの長期滞在者や、マス釣り客の姿は羅臼町内でまだまだよく見かけます。これらの方々の多くは車中泊です。

キャンプ場に泊まってくれればまだ良いのですが、ゴミ収集をしている羅臼町が徴収している「利用協力金 300円 / 日」の支払いを嫌って(?)、あちこちの駐車場や漁港内などで、車中泊をしている方をよく見かけます。

さらに羅臼町内では、コンビニにゴミ箱がありません。
1枚100円の羅臼町指定「観光客専用ゴミ袋」に入れて取扱店に持ち込む以外、コンビニで買った食べ物から出たゴミであっても、原則として引き取ってもらえません。

たしかに不便だとは思います。しかし、だからといってゴミの不法投棄をしないよう、くれぐれもお願い致します。

昨日も「ヒグマレストラン」(前回投稿参照)から距離80 mの駐車場で、散乱する枝豆や焼き鳥串などの車中泊系ゴミを回収しました・・・

できれば車中泊はやめて、町内の民宿か、せめてキャンプ場に泊まっていただきたいところです。

あなたが車を駐めて、荷物を広げているそこの駐車場!

そこも、「ヒグマレストラン」から200 mしか離れていませんよ! 

昨日そこのヤブにもチェックに入ったら、シカ以外の獣の「ガサガサ、ピタッ。シーン」という音がしましたよ!敢えて近づいて、クマかどうか確認するのはやめておきましたが・・・


ヒグマのレストラン 一例

クマさんの食べ残し

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2007年09月11日ヒグマのレストラン

知床国立公園 羅臼 石名坂 豪

9月10日(月)、天気:雨。
土曜日の台風の影響で、自然保護官事務所近くの沢が増水し、そこにもカラフトマスが遡上していた、との情報を前夜に聞いたため、さっそく現地へ確認に行きました。

するとたしかに、水深が15cmもないような浅く細い沢の中に、カラフトマスが入り込んでいました。

よく見ると、明らかに体に厚みがある大きな魚も、1尾混ざっていました。おお、もうこんな上流まで遡上してたんだなあ。シロザケです。

沢が浅すぎて、完全に背中が水面上に出ていました。

しかしこんな浅い沢に、大きな魚がたくさん入り込んでいるとなると、ヒグマにとって良い漁場になりそうです。この沢は道路の下を土管でくぐって、反対側にいくとヤブの中を流れています。

そこで、大きな声を出し、腰のクマ撃退スプレーのホルダーに手をかけながら、20mほど沢の中を歩いて進むと・・・・

予感的中。

食いちぎられたマスの死体が散乱していました。

周囲のフキをなぎ倒して、「大きな生き物」が座ってマスを食べたように見える場所も、何ヵ所か発見しました。

明瞭な足跡や糞は発見できませんでしたが、キツネやシマフクロウの仕業にしては、マスの食いちぎり方やフキのなぎ倒し方が豪快すぎます。どうやら予想通り、ここのヤブの中はクマさんのレストランになっていたようです。

ヒグマのレストランから道路までの距離は、近いところでは10-15 mくらい。

レストランからは、道路を走る乗用車やバスが見えます。

ヒグマが食べ残したマスと・・・

振り返ると見える、道路を走る観光バス。いやあー、やっぱ近いなあ(苦笑)。

この道路は私も毎日、通勤その他で車を走らせている道です。鈍感な人間が気付かないだけで、ヒグマは人間のすぐ近くでヤブに姿を隠して行動していることを改めて実感しました。さすが知床!ですね。

※ 知床は市街地周辺を含む全域が、ヒグマの生息地です。
危険な餌付けグマを作り出さないよう、いつでも、どこでも、ゴミや食べ物の管理は厳重にお願いします。
駐車場でテント張ってバーベキューして、酔っぱらって残飯が朝までそのまま・・・なんていうのは最低最悪です。

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2007年09月03日知床岬への道のり

知床国立公園 羅臼 佐々木 尚子

8月29日、知床半島の観音岩・ウナキベツ川に設置してあるカウンターデータの回収(このカウンターは知床岬方面の知床岳と知床岬への利用者数を調べる目的で設置してあります。)と巡視を行ってきました。
知床半島の羅臼側は相泊までは車で行けますが、そこから知床岬までの約20kmは道がありません。観音岩・ウナキベツ川は道が無くなる相泊から知床岬方面へ約4km。距離的にはたいしたことないなぁ?と思うかもしれませんが、その道のりはなかなか大変です!

まず、第一の難関は「昆布」です。
羅臼昆布の漁期にあたるこの時期は、海岸線に立ち並ぶ昆布番屋で、昆布干しをしています。昆布はならした石の上に干されているのですが、土がついたり、少しでも形が崩れたり、傷が付くと等級が下がり、値段がかなり下がるとか・・・。昆布干場に極力迷惑がかからないよう、緊張しながら干し場の最も海岸沿いを通りました。

そして、第二の難関は「石浜」です。
番屋を過ぎると、大小様々な大きさの石が海岸線を埋め尽くし、石から石へと飛び移って行かなければなりません。ここを歩くとかなりバランス感覚が鍛えられます(笑)。

最後の難関は「岩壁」です。
観音岩には、ほぼ垂直に近い約20mの岩壁がそびえ立っています。これを超えなければ、先へ進むことはできません。足場を確認しながら慎重に登っていきます。息を切らして岩壁を超えると、ウナキベツ川の清流の音が聞こえてきます。河畔林の木陰はとても涼しく、岩壁越えの緊張感もほぐれていきました。

この先、知床岬まではさらに厳しい難所がいくつも待ちかまえている上、ヒグマとの遭遇など危険度はさらに増しています。知床岬を目指す人は、十分な計画、気力、体力、判断力、そしてかなりの“勇気”が必要かもしれません。



海岸線に続く石浜

観音岩の岩壁
下から見上げるとほぼ垂直

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2007年08月28日カラフトマスの遡上

知床国立公園 羅臼 石名坂 豪

 8月上旬以降、羅臼の河川ではカラフトマスの遡上が始まっています。羅臼市街から相泊までの間にある河川のうち、車を停めやすいところにある7本ほどについて、河口部付近の最新マス遡上状況を巡視時にチェックしてみました。

 残念ながら、河川に入っているマスの数はまだ少ないようで、遡上中のマスを橋の上から確認できた河川は3本だけでした。サケ科魚類専門家のお話では、「今年はカラフトマスの回帰が早い」とのことですが、知床の羅臼側(根室海峡側)において、小さい河川もマスで真っ黒になるのは、まだ少し先なのかもしれません。

なお、川に入ったカラフトマスやシロザケ(鮭)を釣ったり捕まえたりするのは、水産資源保護のための法律や条例(水産資源保護法・北海道内水面漁業調整規則)で禁止されています。昨年、アイドマリ川でカラフトマスのつかみ取りを楽しんでいる観光客の方を見かけましたが・・・密漁行為になりますので、くれぐれもご注意ください!
(詳しく知りたい方は、北海道庁の水産林務部ホームページをご覧ください。)

 川に大量に遡上するカラフトマスやシロザケは、ヒグマやシマフクロウの重要な餌でもあります。彼らのためにも、川に入ったマスやサケは捕らないようにお願いします。河口や海で釣るときにも、数はほどほどに・・・・


河口付近で群れるカラフトマス

カラフトマスの雄

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2007年08月16日早朝おさんぽ観察会

知床国立公園 羅臼 佐々木 尚子

8月14日(火)から、羅臼ビジターセンターで、早朝おさんぽ観察会が始まりました。8月に入ってから、羅臼では珍しく30℃近くまで気温が上がる日もあり、涼しい早朝は観察会にぴったりです。
環境省で受け入れている実習生が来ていたので、学生を連れて参加することにしました。完全な夜型人間の私は、早起きは大の苦手・・・。朝、目覚まし時計と30分格闘し、何とか起き出して観察会へ向かいました。

観察会のコースは、有名な無料露天風呂「熊の湯」の駐車場を出発し、まず、知床横断道路(国道334号線)沿いを熊越の滝遊歩道入り口まで歩きます。そして、遊歩道を散策しながら熊越の滝を目指します。
出発前に、コース周辺で見られる花や鳥などの写真が載っている手作りパネルを配布し、パネルをヒントにみんなで周りを探しながら歩きました。
熊越の滝遊歩道の途中には、温泉が湧いていて、触れるところがあります。湧き出す温泉に、おそるおそる手を入れた参加者が「おっ!ぬるい・・・。」と一言。ボコボコと音をたてて湧き出ているのを見て、かなり熱いと思っていたようです(笑)。


ヨツバヒヨドリ、ミミコウモリ、ウツボグサなどの花やオトシブミの揺りかご、アワフキムシの泡を観察しながら歩くこと約50分、熊越の滝展望台に到着しました。滝のよく見える川の近くまで下りると、勢いよく流れ落ちた水が辺りに漂い、ひんやりとしています。川には、白い花を咲かせたバイカモが流れに漂い、オショロコマの泳ぐ姿も見ることができました。ここでは森の外の暑さも忘れ、ゆったりと過ごすことができます。


観察会は8月19日まで開催されています。皆さん是非参加してみてはいかがですか?きっと爽やかな空気の中で羅臼の自然を感じることができるはずです!

ボコボコと激しく湧き出す温泉

熊越の滝
運が良ければ、カワガラスの採餌風景が見られるかも!?

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2007年08月10日外来種とのたたかい

知床国立公園 羅臼 石名坂 豪

 8月1日(水)。ひさしぶりによく晴れて、羅臼も暑くなりました。昼休みにチェックした海岸線の気温は、22度(笑)。ただ陽射しが強いため、冷たい海から少し離れた羅臼温泉(湯ノ沢)付近の気温は、もう少し高かったはずです。
 そんな暑い中、「熊越の滝」下流付近の河原に出かけました。目的は、河原一面に広がる外来植物の駆除です。ここは知床国立公園の第2種特別地域で、世界遺産区域でもあります。
 さて河原に下りると、強力なトゲと生命力をもつアメリカオニアザミ(セイヨウオニアザミ)をはじめ、フランスギク、セイヨウノコギリソウ、メマツヨイグサなど、外来植物の花畑になっていました。かろうじて頑張っていた在来種は、ヨツバヒヨドリとコウゾリナくらい。この日は3人で計1000株近くのオニアザミを、長い剪定バサミを用いた手作業で駆除しましたが、あと1、2回は同じ場所で作業しないといけなそうです。オニアザミの固いトゲは、ふくらはぎや指に容赦なく刺さってくるためとても痛く、なかなかしんどい作業です。ちなみに、同じ場所でのオニアザミ駆除はもう4年目になります。昨年は私も参加し、かなり頑張って刈り取ったつもりだったのですが、どうやら目立たない1年目の株(ロゼット)を中心に、まだまだ多数の見落としがあったようです。

 オニアザミに限らず、ひとたび侵入・定着を許してしまった外来種を生態系から除去するためには、大変な労力を必要とします。かといって事前レクチャーが不十分なまま多数のボランティア等を動員すると、在来種を間違って刈り取るようなことが起こるかもしれません。

 とはいえ、早くしないと彼らはドンドン種子をつけてしまう。相泊方面のアメリカオニアザミやジギタリスも、早く刈り取りに行かないと・・・シカ道に沿って、どんどん山奥の方へ侵入しているんです。元を断つためには道路沿いも何とかしないと・・・国立公園区域内でも、道路の法面(のりめん)は外来植物の宝庫になってしまっています。

 一方、外来動物では、アメリカミンクが羅臼の河川沿いにたくさん生息しています。ミンクとシマフクロウとの間にエサの競合が起きていないのか、とても気になっています。

 日本人が目覚めるのが遅すぎた感のある外来種問題、あきらめて放置するわけにも行きません。しかし生態系への影響が大きそうな種に駆除対象を絞ったとしても、知床世界遺産エリアからの外来種除去は、先が見えない、はるかに遠い道のりとなりそうです。


写真1. 外来種主体の花畑。アメリカオニアザミ、フランスギク、シロツメクサ、ムラサキツメクサ・・・唯一写っている在来種の花は、ヨツバヒヨドリのみ。

写真2. アメリカオニアザミ(セイヨウオニアザミ)の花。花はキレイですが、トゲがやる気満々です。2年目に開花・結実すると言われています。

写真3. アメリカオニアザミの1年目株(ロゼット)。一丁前にトゲがあります。若いくせに、そのトゲは在来アザミ類のそれよりも痛いように感じます。根ごと引き抜こうとしても途中で切れたりして、なかなか上手に抜けません。そんな根から、来年また復活する?

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2007年06月25日ヒグマが見えるビジターセンター

知床国立公園 羅臼 石名坂 豪

 6月1日(金)の朝、出勤してメールチェックをしていると、なにやら建物(自然保護官事務所が同居している羅臼ビジターセンター)の外からワイワイ言う声が聞こえてきました。となりの事務所に詰めている知床財団スタッフがプロミナ(野鳥観察用望遠鏡)を借りに来たので聞いてみると、「またクマが見えてます」とのこと。
 私も早速館外に出て、いつもの斜面を探してみると・・・いました!
肉眼でもなんとか見える距離、ビジターセンターからの距離約700mの急な斜面(標高250-300m付近)でヒグマが1頭、地面の草をモシャモシャ食べているのが見えました。首周りの金色の毛と、体の黒い毛とのコントラストがきれいな個体でした。
 ちょっと遠くて望遠鏡でもはっきり見えませんでしたが、だいぶ伸びたフキノトウを食べていたようです。時々草を口にくわえたまま、顔を上げる様子が愛嬌満点でした。

 5/24に新築・移転オープンした羅臼ビジターセンターからは、同じ斜面で何回かヒグマを観察できています(観察日:5/25、5/30、6/1、6/21)。移転前には冗談半分で話題にしていた、「ヒグマが見えるビジターセンター」は、どうやら現実になりました。でも、「見える」だけならまだ良いですが、「近くで遭える」、あるいは「周囲をうろつく」ビジターセンターにはならないよう、ヒグマの動向やゴミの管理には、今後も注意していきたいと思います。お客さんや私たち自身の安全のためにも・・・・

<おしらせ>
 知床の自然を紹介する環境省の施設である、「羅臼ビジターセンター」が5月24日に移転オープンしました。是非お越しください。
羅臼ビジターセンターのホームページはコチラ →  http://rausu-vc.jp/


写真1. デジスコで撮影したヒグマ(6/1 羅臼ビジターセンター駐車場より)。望遠鏡で「見る」だけなら、もっとクリアーに見えました

写真2. 羅臼ビジターセンターの駐車場から見た、ヒグマが観察ができる斜面。実は有名な無料露天風呂「熊の湯」の裏山にあたる。中央の黒い点がクマ

おまけ写真:5/30に、6/1とほぼ同じ斜面で観察された親子グマ。当歳(今春生まれ)の子グマ2頭連れ。子グマが急斜面や雪渓でこけてズリ落ちる、ほほえましい姿が遠くから長時間観察できました

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2007年03月27日新ビジターセンターのトド剥製

知床国立公園 羅臼 石名坂 豪

 3月末、展示工事中の新羅臼ビジターセンターにトドの剥製が納品されました。よく見かけるような上陸姿勢の剥製ではなく、水中へ潜っていく時の姿勢をしており、頑丈な鉄の棒に載せられています。メスのトドとしては最大サイズ(死亡時の体重約370kg)だけに、すぐ近くから見上げるとかなり大きく、なかなかの迫力です。正直、完成品が来るまではシャチに比べたら大したことなかろうとタカをくくっていたのですが、これなら新ビジターセンターの目玉展示として、お客さんの目を楽しませてくれるのではないかと期待しています。
 ところでこのトドの剥製、右側面になにやら目立つ傷があります。この傷は剥製加工中についたものではありません。実はこのトド、まだ子どもの時に出生地の無人島で、ロシアやアメリカの研究者に標識を付けられた個体だったのです。標識の文字はどうやら“Б141”(1文字目はベー:ロシア語のB)と読めるようです。標識の位置と文字から、このトドは羅臼から約500 km離れた中部千島のブラット・チルポエフ島(知理保以南島)で、1989年に生まれたことがわかりました。おそらくこの17年間、彼女は知床を含む北海道とロシア海域との間を、何度も往来していたのでしょう。目をつむると、数年前に調査で訪れた千島列島の風景が脳裏によみがえって来ます。皆さんも、新・羅臼ビジターセンターにお越しの際は彼女の巨体を見上げながら、北洋を泳ぎ回るトドの旅路に思いを馳せてみてください。
 ちなみに新ビジターセンターのオープンは、5月下旬の予定です。


納品されたトドの剥製

3月12日に羅臼町沿岸で撮影したトドの群れ

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