ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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知床国立公園 ウトロ

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2009年04月14日一気に春めいてきました

知床国立公園 ウトロ 高橋 知里

 4月13日のウトロの気温は20度近くにもなり、温かいというよりも少し暑さを感じました。フレペの滝遊歩道では小鳥のさえずりが聞こえ、冬の間は静かだった森の中が賑やかになっていました。



雪の上で餌を探す角が1本しかないエゾシカがいました。もう一本の角はどうしたのでしょう。
エゾシカの角はオスにだけ生え、1年ごとに生え変わります。夏の間は袋角と呼ばれる角が伸び、秋になると皮がむけて枯角という角になります。
角の大きさは栄養状態や年齢によって変わり、大きな角を持つオスジカほど秋の繁殖期にメスに人気があります。シカの角は男らしさの象徴なのです。
厳しい冬を越え春になると、枯角が落ち、新しい角が生えてきます。
このシカの片方の角はもうじき落ちることでしょう。
 
日に日に暖かくなる春の知床では、冬の間眠っていた生きものたちが一気に活動を開始し始めています。
*フレペの滝遊歩道上には残雪があり、大変が踏み抜きやすくなっています。長靴の使用をおすすめします。

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2009年02月23日厳冬期のフレペの滝遊歩道

知床国立公園 ウトロ 高橋 知里

フレペの滝遊歩道は往復2km。林の中を通り抜け、草原を歩いた先に断崖からオホーツク海に流れ込む滝があり、冬場は歩くスキーやスノーシューを履いて散策できるコースとして人気です。アクティブレンジャーは利用状況や危険箇所がないかを確認するために巡視を行っています。
本日の林内の積雪は約120cm。遊歩道脇に設置してある利用者カウンターも雪に埋まってしまっていたため、スコップで掘り出しました。



一方、草原に抜けると積雪は少なくなり、海岸に近いところでは草が見えるほど雪がなくなっていました。強風のため雪が吹き飛ばされてしまったようです。また、草原には約50頭ものたくさんのエゾシカが集まっていました。
この雪の少ない草原は、厳冬期体力の落ちてきたエゾシカたちにとって、雪を少し掘るだけで草を食べられるため大変好都合な場所となっています。



草原の先には切り立った断崖があり、そこからしみ出したフレペの滝の水が青く凍っていました。氷が青く見えるのは滝の水に不純物や気泡が少ないことと、光の色の青い部分だけを反射させる氷の性質によるものだそうです。
滝が流れ落ちた先のオホーツク海には流氷が沖合まで流氷で埋め尽くされ、氷の上にはオジロワシやオオワシが乗っていました。



*フレペの滝散策の前には知床自然センターに立ち寄り、事前に情報を得ることをおすすめします。
*遊歩道を外れることは道迷いや遭難のおそれがあり危険です。決まった道を歩くようにしてください。

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2009年02月04日流氷接岸

知床国立公園 ウトロ 小長井 崇大

 なかなか来なかった今年の流氷ですが、2月3日陸から遠く離れたところに白い帯状の流氷が見え、2月4日朝気付いたときにはもう接岸していました。
 昨年ウトロで最初に陸から流氷が見えたのが1月20日。翌21日には薄氷が接岸しましたので、今年の流氷は昨年に比べ2週間程遅かったことになります。

 流氷は知床での食物連鎖の起点となるものです。流氷に含まれた重い海水が沈む代わりに、栄養に富んだ深層の海水が昇ってきます。この栄養等を利用して、春先植物プランクトンが繁殖し、それを動物プランクトンが、さらにそれをさまざまな稚魚等が捕食し、それらの魚を海棲哺乳類や、海鳥が捕食します。

今回来たのは流氷本体から別れた一部ですが、たとえ本体が来ても風向き一つで次の日には沖に戻されることもあります。
ここ数日は着実に寒さが増してきていて、地元の漁師さんや観光関係の人達も「流氷が来る前の寒さだ」とか、「いや波が高いので、まだ流氷は近くまで来ていないだろう」とか話しながら、待ちに待っていた流氷。今年はどれくらいやってくるのか楽しみです。



岸辺まで押し寄せてきた流氷です。結構大きな氷塊もありました。

プユニ岬からの眺め

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2009年01月09日冬の海鳥たち

知床国立公園 ウトロ 高橋 知里

西高東低の冬型の気圧配置になるとオホーツク海は荒れ狂う海へと姿を変えます。
年末年始は大荒れの日が続き、港の防波堤を高波が越えることもありました。


荒れるオホーツク海 演歌が似合う風景です。

12月頃からウトロの沖で冬の海鳥たちの姿が見られるようになりました。海が荒れる時は漁港の中に入ってくることがあり、比較的近い距離で観察することができます。1月7日にはウミガラス、ハシブトウミガラス、アビ、ヒメウなどが見られ、漁港内で魚を捕らえて食べていたり、首を縮めて眠っていたりしていました。


ハシブトウミガラス 白と黒のコントラストが遠くでもはっきりと目立ち、ペンギンの様です。

さて、冬の使者と言えば流氷ですが、1月7日、紋別沖で初観測されました。気象庁によると沿岸から肉眼で流氷が確認できるようになるのは1月下旬頃になるとのこと。
流氷がウトロの沿岸を埋め尽くすと海鳥たちは居場所が無くなり再び移動して行きます。
1月中、流氷の動きとともに海鳥の数も変化していくでしょう。
ウトロにお越しの際は漁港や海岸から海鳥を観察してみてはいかがでしょうか?

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2008年11月10日オオワシの渡りを確認しました

知床国立公園 ウトロ 高橋 知里

オホーツク海が荒れ狂い、風が冷たく吹く本日、海岸の上空を知床岬方面へ次々と飛ぶワシを確認しました。

オオワシ

 プユニ岬で数を数えてみたところ、12:30~12:50の20分間で約30羽、13:40~14:20の40分間で約60羽を確認しました。その他にウトロ市街の上空を約3分間で50羽ほど目撃したという情報もあり、本日はワシが渡る日だったようです。
この時期、知床に飛来するワシは、オオワシとオジロワシですが、本日はほとんどがオオワシでした。知床半島の断崖にぶつかる風によってできる上昇気流を利用し、滑空していました。


オジロワシの幼鳥
 
オオワシはカムチャッカ半島やオホーツク海北部沿岸などで繁殖し、9月下旬から10月上旬に越冬地への移動をはじめます。サハリンから宗谷岬へと陸づたいに南下し、11月上旬に知床半島を経て、国後島や択捉島に渡り、1月中下旬に再び北海道へと戻って来ます。
一部のワシはサケなどの餌資源が豊富な北海道の河川に留まりますが、多くは初冬期を餌資源の豊富な国後・択捉で過ごし、厳冬期には再び北海道に戻るのです。


プユニ岬から見たウトロ  ワシの渡りが良く見えます。

 ウトロ自然保護官事務所では11月~4月に知床半島に飛来するオオワシ・オジロワシ飛来状況調査を行っています。今後も飛来状況をお伝えして行こうと思います。

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2008年11月07日知床のアライグマ

知床国立公園 ウトロ 小長井 崇大

10月23日に、国立公園内ではありませんが、斜里町では2例目となるアライグマの死体が回収されました。きれいな死体としては初です。テレビアニメなどから人気が出て、一般の家庭でも飼育されるようになったアライグマですが、逃げ出して野性化した個体による生態系への影響が懸念され、現在は特定外来生物に指定されています。

※特定外来生物とは、外来生物法によりもともと日本にいなかった外来生物のうち、生態系などに特に大きな被害を及ぼすものが指定されるもので、指定された動物については『飼育・栽培・保管・運搬・販売・譲渡・輸入』などが原則として禁止されます。また既に定着しているものについては、必要に応じて防除が行われます。

そのため、ここ知床のある斜里町においても国立公園への分布拡大を防止するため、環境省事業により捕獲による防除が開始されています。一般的にアライグマの捕獲には箱ワナを用い、ワナの中にはアライグマをおびき寄せるためのエサ(お菓子やピーナッツクリームなど様々)を入れます。しかし、知床ではそのエサがヒグマを誘引してしまうという問題があります。このため、ヒグマが多く生息する国立公園内やその周辺地域では、まずは自動撮影カメラを置いて、アライグマがカメラで確認されたら、ヒグマを誘引しないようなエサ(マスの切り身など天然のエサ)を入れた箱ワナを設置することとしています。
 また箱ワナに他の動物がかかったときは放逐することとしています(毎日見回っているので、関係ない他の動物がワナの中で死んでしまうことはまずありません)が、例えば特定外来生物に指定されているミンクがかかった場合などは、アライグマと同様にできるかぎり苦痛を与えない方法で殺処分されることになっています。

 知床斜里町では、これまでにもアライグマの目撃情報は何件かありますが、生きた個体の捕獲は未だ無く、2例の死体の発見も国立公園の外側です。しかし、そのままにしておけば生息域を拡げるおそれがあり、決して楽観視はできません。分布を拡げようとしている今が大事なときです。もし知床でアライグマを目撃した際はご一報下さい!


回収されたアライグマの死体です。ダニがたくさん付いていました。標本として保存される予定です。

アライグマとよく間違われる動物としては、タヌキがよく挙げられます。両者を見分けるポイントのうち最もわかりやすいのは、尾に縞があるかどうかでしょう。アライグマは尾に縞模様があるのに対し、タヌキは縞がありません。

タヌキの尾です。縞がありません。

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2008年10月16日もの悲しげなエゾシカの鳴き声が聞こえています

知床国立公園 ウトロ 高橋 知里

秋が深まり、紅葉した葉がはらはらと落ち初めている知床の森。エゾシカたちも明るい茶色の夏毛から暗い焦げ茶色の冬毛に生え替わり、厳しい冬を迎える準備を始めています。



岩尾別の紅葉(10月15日)

10月はエゾシカの繁殖期にあたります。オスの首回りは太く、たてがみや前髪のような毛がのび、夏の間に栄養を蓄えた体はどっしりとして風格があります。
巡視中にひときわ角の大きなエゾシカを見つけました。片角2kg程はありそうです。



繁殖期を迎えたエゾシカのオス

繁殖期に見られる行動には自分の存在をアピールするラッティングコールというものがあります。
数100m先にも届く鳴き声で「ブフィーヨー・・グェー・・・」と聞こえます。この時期、森の中から声は頻繁に聞こえるのですが、鳴いている瞬間はなかなか見られません。
オスジカが上を向き、口を少し開けながら歩き始めたので、もしかして・・・。と思い待ちかまえましたが、そのまま歩いて行きました。どうやら大きな角が重いため、上を向いて歩いていただけのようです。
一見間抜けな感じに見えますが、ぎらぎらと周囲を見回す瞳から、子孫を残すために他のオスと戦う野生動物の気迫を感じました。



上を向いて歩くオスジカ 

*お願い*
・道路脇でエゾシカを観察する際には、交通事故を起こさないように道路脇に車を寄せ、見通しの悪いカーブでは停車しないように注意してください。また、走行中もエゾシカが道路上に急に飛び出してくることもあります。
・この時期のオスジカは気が荒く、安易に近づくと危険です。適度な距離を保って観察しましょう。

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2008年10月07日紅葉が見頃を迎えています

知床国立公園 ウトロ 高橋 知里

9月24日に紅葉の見頃を迎える前に初冠雪が確認された羅臼岳でしたが、9月下旬から一気に紅葉が始まってきています。知床連山は赤茶に染まり、夏の山とは違う姿を見せています。

知床五湖の紅葉
標高の低い森でも日に日に色づきが増してきています。
知床では赤い葉よりもイタヤカエデやダケカンバといった黄色の葉の方が多く、ツタウルシやナナカマドといった鮮やかな赤い葉がアクセントとなっています。トドマツなどの針葉樹の濃い緑も紅葉をいっそう引き立てます。
今見頃を迎えているのは知床峠、これから見頃を迎えるのは知床五湖、岩尾別温泉道路、フレペの滝遊歩道など標高の低い場所です。

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2008年09月04日知床五湖とカイツブリ

知床国立公園 ウトロ 高橋 知里

知床国立公園の中で最も訪れる人の多い知床五湖。高架木道、1-2湖周回路に加えて、8月20日から1-5湖の遊歩道が解放され、森の静かな雰囲気を味わいながら5つの湖を散策できます。



3湖

 湖では、オシドリやキンクロハジロ、カイツブリといった水鳥たちが見られます。カイツブリはハトより少し小さい大きさの水鳥です。知床五湖では夏の間観察することができ、ぴょこんと水の中に潜って小魚や水生昆虫などを食べたり、「ケリリリリリ」と体の割には大きな声で鳴いて観光客の方を驚かしています。
 9月1日の巡視の際、知床五湖の5つめの湖「5湖」で湖の上に草を積み上げて座っているカイツブリを発見しました。



カイツブリ

 このカイツブリは一体何をしているのか調べてみると、どうやら湖の上に木の枝や水草を積み上げて「浮巣」と呼ばれる巣を作り、卵を抱いているのではないかということがわかりました。この時期に卵を抱いているのは遅い気がしますが、一度繁殖に失敗しても再び産卵するらしく、繁殖の時期も2月~10月と長いようです。知床五湖では成鳥の他に今年産まれたヒナも元気に泳ぎ回っていました。繁殖が成功しヒナが無事に育つといいなと思います。観察する際はそっと見守ってあげてください。

 
 注意:知床五湖はヒグマの生息域です。散策する際は鈴などを携帯し、充分注意しましょう。ヒグマの出没状況によっては遊歩道が閉鎖となることがあります。

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2008年08月07日アメリカオニアザミの駆除作業を行いました

知床国立公園 ウトロ 高橋 知里

 フレペの滝展望台付近に生えている外来生物アメリカオニアザミの駆除作業をウトロ森林事務所と合同で行いました。

知床連山が一望できる展望地



遊歩道沿いに生えるアメリカオニアザミ



作業の様子
アメリカオニアザミは茎がとげとげしているため、抜き取るのには革手袋が必要です。抜いたアザミを袋に詰めるのも一苦労。この日は6人で作業を行い、ゴミ袋6袋分のアザミを回収することができました。

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