ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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知床国立公園 ウトロ

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2008年07月10日今年も知床国立公園でマイカー規制が始まります。

知床国立公園 ウトロ 小長井 崇大

道道知床公園線の知床五湖~カムイワッカ間は、落石防止工事のため、通年通行止めとなっています。ただし、

7/13(日) ~ 9/20(土)の昼間は

公園を利用する方々のためにシャトルバスを運行します。
なお、カムイワッカから先の区間は、落石の危険があるため、立入禁止となっています。

<シャトルバスの利用に関して注意していただきたいこと>
・カムイワッカへはシャトルバスでしか行くことができません。シャトルバス以外の全ての一般車両、自転車、歩行者は通行できませんのでご注意ください。
・知床五湖駐車場までは車両の乗り入れができますが、大変混雑するため知床五湖駐車場でのシャトルバスへの乗り換えはできません。

<カムイワッカ湯の滝で注意していただきたいこと>
・カムイワッカ湯の滝は滑りやすい川の中を登っていきますので、滑りにくい履き物の準備が必要です。
・カムイワッカの湯は酸性が強く、肌の弱い方は注意が必要です。
・今年度は、安全対策上、「一の滝(道路から約100m、水温約30℃)」までの利用となります。
・カムイワッカ湯の滝は、道道、沢ともに立入禁止の区域が設置されています。
・カムイワッカ湯の滝周辺はヒグマ生息域です。出没時には利用ができなくなる場合がありますのでご注意ください。


いろいろと注意点ばかり書いてしまいましたが、十分気をつけていれば、流れ来る湯の中を歩いて行くのは楽しいことです。暑い日に歩いても、普通の沢と違って涼しくはなりませんが、それもまたよい思い出になるのではないでしょうか。知床にお越しの際は、是非シャトルバスでカムイワッカへの旅を。



1の滝です。天気のいい日には、たくさんの方が水着で湯の中に浸かっています。ちょっと酸っぱい一夏を味わえます。

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2008年06月23日海岸線がにぎやかになってきました

知床国立公園 ウトロ 高橋 知里

 斜里からウトロの海岸線では海鳥たちが岩礁の上で休んでいたり、海上で泳いでいるのを見かけます。一番よく見かけるのは黒い羽の海鳥たちやカモメの仲間たちです。



岩礁で休む海鳥たち

この黒い海鳥、一見同じ種類の海鳥に見えますが、体や顔の色、体の大きさが違っています。
顔が白く体が黒く黒光りしているのはウミウの成鳥、体が茶色でおなかが白っぽいのはウミウの若鳥、ウミウより体が一回り小さく顔も体も真っ黒なのはヒメウです。
以前にも紹介しましたが、ウミウは知床で繁殖しています。6月16日にフレペの滝遊歩道の巡視の際に展望台から断崖部の営巣地を見渡したところ、黒いふわふわの羽毛に包まれたヒナを確認することができました。



オロンコ岩のオオセグロカモメとウミネコ~ウトロ観光船乗り場より

断崖部では大型カモメ類のオオセグロカモメと中型カモメ類のウミネコも繁殖を行っています。
オロンコ岩の営巣地を確認したところ、オオセグロカモメの営巣地の中に昨年は確認されなかったウミネコの巣が4巣ほどありました。どちらのカモメも既にヒナが孵っており、ごま模様の羽毛に包まれたヒナが小さな羽を動かしていました。実はオオセグロカモメはウミネコの天敵で、ヒナや卵を襲って食べてしまうことがあります。敵に囲まれた中で産まれたヒナが無事に育つか見守っていきたいと思います。



ゼンテイカ~オロンコ岩にて

 オロンコ岩の上で咲く花の顔ぶれも変わってきました。6月22日には、ハマナス、センダイハギ、エゾノシシウド、キバナカワラマツバ、オオダイコンソウ、ヒオウギアヤメ、クサフジなどが開花していました。三角岩ではエゾカワラナデシコのピンク色の花が見頃です。海岸線ではエゾスカシユリが咲いているのがちらほら見えだしています。

最果ての知床でも季節が夏へと変わりだしています。


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2008年06月06日オロンコ岩に登ってみませんか?

知床国立公園 ウトロ 高橋 知里

 ウトロの港に横たわる高さ約60m幅約250mの大きな岩、それがオロンコ岩です。



エゾタンポポと三角岩とオオセグロカモメ

オロンコ岩には急な階段がついており、上まで登ることができます。階段を上りきるとオホーツク海、知床連山、ウトロ港の様子が一望できます。岩の側面の断崖では夏の間オオセグロカモメたちが巣を作り、雛を育てます。賑やかな鳴き声と共に巣材を集める姿が見られます。


スズラン

ウトロではなかなか見ることのできない植物たちがこの岩の上の小さな草原でみることができます。知床の低地では増加したエゾシカの好んで食べる植物が減ってしまっていますが、この岩の上にはエゾシカが登ることができないため、かつて知床の海岸に広がっていた海岸植物に出会うことができます。
今回開花を確認できた植物は、白系ではオドリコソウ、マイヅルソウ、オオアマドコロ、エゾシモツケ、黄色系ではゼンテイカ、センダイハギなどがありました。小さなお花畑がとてもきれいです。



オロンコ岩から望む夕日

オホーツク海に沈む夕日と空一面に広がる夕焼けを見渡せる名所でもあります。
ウトロにお越しの際は是非お立ち寄り下さい。

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2008年05月02日エゾヤマザクラが開花しました

知床国立公園 ウトロ 高橋 知里

雪が解け、春の陽気がおとずれると、森の中は木々が芽吹き、森の中が小鳥のさえずりでにぎわうようになってきました。


本日フレペの滝遊歩道へ巡視へ行ったところ、エゾヤマザクラが開花していました。
例年では知床でのサクラの開花はGW開けですが、昨日から気温が高かったせいか、一気に開花した模様です。




林内からジッジッジッジという鳴き声が聞こえてきました。オオジシギです。オーストラリア東南部で越冬し、春に渡来します。繁殖期には飛びながら「ズビャークズビャーク・・・」と鳴き、羽音と共に急降下をする「ディスプレイフライト」と呼ばれる行動が見られます。



フレペの滝断崖部ではウミウが巣作りのために巣材をくわえて巣に運んでいました。繁殖期になり頭とモモのあたりに白い繁殖羽が見られます。


GWに入り、利用者の方も多くなってきました。この時期はバードウォッチングには最適です。フレペの滝遊歩道は林内、草原、断崖部と違う環境での鳥を観察できるコースです。往復2km、徒歩40分程度で散策できます。
新緑の中を歩いてみませんか?

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2008年04月08日車の運転に気をつけて下さい

知床国立公園 ウトロ 高橋 知里

 4月に入っても流氷が漂うウトロの海。今年は例年よりも長い流氷期でしたが、春の陽気で大きな板のような氷から、ばらばらの氷の塊になってきています。




ウトロ港にて

 冬の間は流氷に埋め尽くされ静かだった港ですが、徐々にカモメたちが集まってきたり、漁師さん達が網を直す作業を始めたりと賑やかになってきました。



 
ハクセキレイ

 白と黒のコントラストがきれいなハクセキレイです。海岸の道路沿いでよく見られるようになってきました。ちょこちょこ歩いたり、飛び上がって虫などを食べる習性があるため、道路に飛び出してしまうことがあります。




道路を横断するエゾシカ

 この時期、道路沿いで最も注意しなければならないのはエゾシカです。雪解けの早い道路沿いや川岸などで草を食べたり、休んだりしています。写真のように車を気にせず道路を横断することもしばしば・・・。一頭横断した後にもう一頭続くこともあります。
 また、ヒグマも活動を始めています。ヒグマを見つけても車から降りないようにしてください。

 野生の王国知床ではいつ動物との出会いがあるかわかりません。その出会いが不幸な出会いになってしまわないように私たちの注意も必要です。
知床に車でお越しの際は、少しスピードを緩めて楽しみながら来ていただきたいと思います。

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2008年04月04日ウソ

知床国立公園 ウトロ 小長井 崇大

4月4日フレペの滝歩道の巡視に行きました。歩道は4月1日~2日の大雪で、久々にスノーシュー・スキー無しでは歩けないほど雪が降り積もっていました。
歩道横に設置してある、利用者数を計測するカウンターもほとんど埋まりかけていて、「これはまずい」とスコップでせっせと掘り出していたところ、林の中から「フィーフィー」という声が聞こえてきました。
辺りをしばらく注意していると、歩道沿いのエゾヤマザクラの木の枝に、一羽のウソが飛んできました。
まるまると太ったウソは、しばらくの間サクラの新芽を食べ、届く範囲に芽が無くなると、また次の枝へ移動し、同じように新芽をつついていました。


芽をくわえているところです。


よほどサクラの新芽が好きなのか、ウソは長い時間夢中になって食べていました。そのおかげでゆっくり、じっくり観察することができたのですが、「ちゃんと捕食者を警戒しているのだろうか」、「あんなに食べて芽が無くなってしまうのでは」と、思わず心配してしまうほどの食べっぷりでした。

首を伸ばして芽をつついているところです。結構伸びるものなのだと知りました。

フレペの滝歩道に向かう途中の、国道沿いで発見したハヤブサ。フレペで見たウソも、見つかっていたら餌食になったかもしれませんね。

カウンター前に降り積もった大量の雪を除雪していると、あちらこちらで小鳥たちがさえずっているのが聞こえてきました。様子が春めいてきた小鳥達から、少しだけ春の訪れを感じた巡視でした。

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2008年02月27日知床五湖の冬季利用

知床国立公園 ウトロ 小長井 崇大

道道知床公園線は、例年11月下旬から4月下旬まで、積雪により冬期通行止めとなっており、岩尾別橋ゲートから奥への立入りは原則として認められていませんでした。しかし今年度から、登録されたガイドを引率者とした場合のみ(※1)、特例的に立入りが認められ、すでに岩尾別橋ゲート奥の知床五湖地域の冬季利用が試行されています(事務局:知床斜里町観光協会)。
知床五湖地域の冬季利用には、エコツーリズムの理念に基づく冬季利用のあり方や、ルール作り等の検討を行うことを目的として、今年度から3年間の試行期間が設けられています。
利用の実態を確かめるため、スキーで知床五湖へ巡視に行ってきました(もちろん業務として許可を得ています)。


岩尾別橋ゲートの少し先の道路上です。今回の巡視中に見かけた方は1名(2名のガイドが引率)だけでしたが、道路上や知床五湖周辺にはこのような多数のスキー跡がありました。


晴天に恵まれ、道道沿いから知床連山がきれいに見えました。道道沿いにおいて排泄の跡(※2)や、利用できない範囲(※3)でのスキー跡等は見あたらず、これといった問題もなく巡視を終えることができました。


凍結した1湖の上をスキーで歩いて移動(※4)。冬ならではの楽しみ方の一つです。

凍結した2湖と知床連山が一望できます。カラ類等の小鳥のさえずりも聞こえてきました。

同じく凍結した5湖です。5つ湖の中で最も静かな雰囲気が感じられます。

高架木道展望台から望むオホーツク海です。うっすらと流氷が見えます。


最初にも述べましたが、今回の知床五湖冬季利用は試行の段階です。これからの利用状況の調査や記録に基づき、利用のあり方について議論がなされ、より適正な利用のためのルールが作られていくことと思います。今後恒久的に、冬季利用できるようになるかはまだわかりませんが、行かれる方は事故の無いように十分注意し、冬の知床五湖を楽しんでほしいと思います。

<注意事項>
 
※1 知床五湖園地は冬季の利用は想定されておらず、管理もされていないため、引率指導者(ガイド)付きの利用のみが認められています。また通常人が入らない奥地での利用のため、さまざまな自然環境への影響や安全面でのリスクがあり、立入りにあたってはいくつかのルールが定められています。利用の際はガイドの方の指示に従ってください。

※2 気温が低い冬は、排泄物がバクテリアにより分解されずにそのまま残ります。春先暖かくなった頃、道路周辺が排泄物だらけということにもなりかねません。携帯トイレを御使用ください。

※3 今年度ガイド利用が可能な期間は、2/5~3/22までです。また、岩尾別温泉に至る道路(町道)は雪崩・滑落の危険から、道道知床公園線沿いの100㎡運動地は、植栽木の保護・遭難のリスクの低減等の観点から、利用はできません。


※4 凍結した湖の氷は、時期や日によって厚さが変化します。すでに湖面上にルート跡がある場合も、氷の強度が弱まっている場合がありますので、ガイドの指示に従ってください。

※ ヒグマは2月下旬頃から目覚めます。また食べかけのエゾシカの死体等に雪を被せて近くで見張っていることがあります。近づかないように雪面の状況に注意してください。ヒグマ撃退スプレー等を携帯しているとなお良いと思います。

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2008年02月01日流氷とワシたち

知床国立公園 ウトロ 高橋 知里

流氷が接岸し、オオワシやオジロワシの飛来数が増えてきています。



オオワシ

 1月29日にウトロ自然保護官事務所で行ったワシの調査では、ウトロの海岸線で約300羽のオオワシ・オジロワシを確認することができました。
流氷が訪れる前に行った同調査でのワシの数が約20羽程だったことを考えると、流氷がワシたちの行動に大きな影響を与えていることがわかります。



流氷の塊に乗り餌を狙うワシたち

 調査を行った日は流氷帯が岸から300mから1kmほど離れ、所々に流氷の塊がぷかぷかと浮いている状況で、流氷帯の際や流氷の塊に乗っているたくさんのワシたちが確認できました。

 知床のウトロ側では流氷の接岸直後の時期にオオワシ・オジロワシが最も多く集まります。海上で魚や弱った海鳥などを捕らえて食べるワシたちにとっては、海が一面流氷で埋め尽くされてしまう状態よりも、大小の流氷が緩く漂い、開水面がところどころに開いている方が餌をとりやすい様です。



2月1日の流氷状況(プユニ岬より)

 29日以降、流氷が徐々にウトロの海を埋め尽くしています。このまま離れることなく海岸を覆い尽くすのでしょうか?それとも風向き次第で沖へ流されてしまうのでしょうか?
 今後のワシの動きとともにとても気になるところです。

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2008年01月25日凍る冬のオホーツク海

知床国立公園 ウトロ 小長井 崇大

今月19日、網走市と紋別市で、今年の冬初めて、流氷が陸から肉眼で確認されました。翌日の20日には、ウトロからも沖合に広がる流氷が見られ、21日には薄いハス葉状の氷が海岸に接岸しました。
港の中を埋め尽くす流氷を初めて見たときは、港が凍っているのか何なのかよくわかりませんでしたが、港を出て海を見渡してみると、一面とまではいかないまでも、「これぞ流氷」というような景色が広がっていました。


接岸した流氷。



流氷はオホーツク海北部のシベリア大陸沿岸でできはじめ、その後徐々に凍る範囲が南へと広がっていきます。流氷にはブラインという重い海水が含まれ、このブラインが沈む代わりに、栄養分を多く含む深層の海水がわき上がってきます。海氷の底や内部では、この栄養分やブラインに含まれる栄養を利用してアイス・アルジーと呼ばれる藻類が繁殖し、豊かな生態系の起点となります。
知床は世界で最も低緯度にある「凍る海」で、海氷に特徴づけられる海洋生態系と、陸上の生態系が連続することによって複合生態系を形成しており、そのことが世界遺産に登録された大きな理由の一つです。


沖を漂う流氷。


そのような流氷ですが、このままどんどん押し寄せてくるのかと思いきや、次の日は全く見あたらなかったりして、安定して見られるようになるのはもう少し先のようです。
これから流氷が接岸し始めると、海岸沿いのウトロの気候も内陸型のものに変わり、一層寒さが厳しくなってきます。


ウトロの入口「亀岩」と流氷。

プユニ岬よりの眺望。帯状の流氷が見えます。

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2008年01月04日あけましておめでとうございます

知床国立公園 ウトロ 高橋 知里

フレペの滝遊歩道の巡視に行ってきました。
この日の天気は曇りから雪。
利用者はあまりいないかと思いましたが、巡視中に9名の方に遭遇しました。




フレペの滝です。上部が凍り、櫛の様な形の氷が折り重なって造形美を生みだしています。氷の下ではちろちろと滝が流れています。


断崖をのぞいていると、「グルルォォ!」「グルルォォ!」という唸るような鳴き声が聞こえてきました。ワタリガラスです。ハシブトガラスなどと比べると体に筋肉があり、尾がくさび形に見えます。




帰り道、歩道上でエゾシカの群れに遭遇しました。写真の中に6頭エゾシカがいるのがわかりますか?
雪を掘ってササを食べ、鼻の頭に雪をつけていました。
一見かわいく見えるエゾシカですが、近づきすぎるのは危険です。遊歩道から林の中へ移動してくれるまでしばらく待っていました。

*フレペの滝遊歩道は冬期間も利用可能です。林内で小鳥を見つけたり、動物の足跡を探したり、晴れた日に知床連山を見渡すこともできます。しかし、天候や雪の状態によって遊歩道の状況が変わりますので、歩道から外れるなど危険な行為は行わないように注意してください。



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