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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

札幌の学生4人が利尻登山道整備に飛び入り参加!

2006年08月30日
稚内
 「私たち、すごい貴重な体験してない?」
 こんな声が上がったのは利尻山の登山道侵食が一番深刻な山頂直下の登山道整備現場だった。

 8月26日、晩夏を感じさせる高く青い空の下、札幌から利尻登山に来ていた学生4人組が登山道整備を手伝ってくれたのです。
 この日、現場で作業していたのは環境省稚内自然保護官事務所の職員2名。二人で付近の火山礫を土のう袋に詰め、それを積み重ねて、植生への人の踏み込みと、火山礫の流れ込みを防止するための塀を築く計画でしたが、やはり2人での作業は一人何役もこなさなくてはならず大変です。
 午前11時頃、元気そうに頂上から下山してくる4人組に、ちょっと手伝っていかない?と、職員が声をかけると、「やってみようか」と、飛び入りで作業に参加してくれました。

作業をする若者たち

 それぞれスコップを手にしたり、土のう袋の口を塞ぐために裁縫をしたりと初めての作業に関わらず頑張っていました。
 作業の合間には、登山道が火山礫で覆われて歩きにくくなることの原因や、対策について考えてみることも。利尻山は火山礫の大変崩れやすい地質で、人が歩く登山道は当然侵食されやすいのですが、悪いことに侵食され剥げ落ちた火山礫は登山道を川のようにして下へ下へと押し流されていってしまうのです。こうして上から流れてくる火山礫は周辺のお花畑も覆ってしまい、裸地が拡大する。植生の破壊と、歩きにくい登山道化の同時進行が起きてしまっているのです。

深く侵食された登山道

 おそらく、ほとんどの登山者にとって山頂付近の登山道は「歩きにくい」ことでしょう。
 しかし歩きにくい道を作っているのが登山者自身であるのも事実。「どうしたらいいんだろう?」と、真剣に考える学生たち。この問いに一つの正解は無いのでしょうが、多くの登山者がただ「歩きにくい」という感想だけを持って素通りしてしまうところに、関心を持って想像力を働かすきっかけになったのなら、今回の飛び入り作業は、彼らの将来にとっても、自然と人との関係を考える上でも、大きな意味を持つことになるのではないでしょうか。

 普段、整備をしている私も、ただ作業をするだけではなく、その意味を伝える仕事にももっと力を入れていかなくてはと、若い力に良い刺激を受けることが出来ました。彼らにも今度の経験を周囲の人に伝え、関心の環をつなげていってもらえたら幸いです。

☆★☆手伝ってくれた学生の皆さん、どうもありがとう!!☆★☆