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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで100日前】 

2010年07月07日
ウトロ
しれとこのシレトコスミレ

 知床にはその名もシレトコスミレという名のスミレが生育しています。どんな植物か簡単に説明すると、択捉島と知床に生育しており、知床の中でも数カ所でしか見ることのできない希少な種。中央部だけ黄色の残る白花は、日本のスミレ属の中で他に例を見ないらしい・・・。6月中旬から7月中旬頃開花。ハイマツ帯の砂礫に生育しています。
 そんなシレトコスミレの調査を7月の始めに、行いました。というのも、2008年に何者かが、スミレを食べてしまったのを確認したためです。何者か・・・。真っ先に浮かんだのは、どんなところでもよく見る、エゾシカ。
本来ならば、スミレには毒があるもの。まわりにはシカが好んで食べそうな、セリ科やイネ科が生えているのに。なぜかそちらには口をつけず、スミレを食べているようです。しかし、食べ方からみて、一頭がちょっとつまんでみただけというような模様。大挙して高山帯に押し寄せ、モリモリとスミレを食べることはなさそうです。変な嗜好があるシカがたまにいるのですね。
シカは、上唇で引き千切るように草を食べます。食べた跡は繊維が残っているのが確認できるので、特定できるのです。しかし、怪しい陰(跡?)が・・・。スパッと切れた様な切り口のシレトコスミレ。そして傍にはウサギ糞が。犯人は・・・誰?
 犯人を突きとめる必要もありますが、この調査の目的は、食べられてしまったシレトコスミレのその後を追うことです。枯れて無くなってしまうのか、それとも数ヶ月後には回復出来るのか定期的に観察を続けます。現段階では、早急な対処は必要ないと思いますが、急激に個体数を減らし始めた時に、素早い対処が出来るよう、データをとりながら見守っていく必要があります。

調査地の様子。風がよく通り、石がガラガラしている。

食べられてしまったスミレ。これからどのように変化していくのだろう。

過酷な環境で可憐に咲くシレトコスミレ