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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

ひとつの命から

2010年11月26日
支笏湖
 支笏湖畔を巡視していると、多くのヒメマスが岸に寄っている様子を見ることができました。多くの個体は婚姻色で赤く色づき、ゆっくりと周辺を泳いでいます。ただ岸ならどこにでもいるというわけではなく、ほぼ一箇所に多くのヒメマスが集中しているようでした。
 支笏湖のヒメマスは湖岸でも産卵するといいます。降海型のベニザケも一般的には川を遡上して産卵しますが、湖岸で産卵する場合もあるといいます。その場合重要になるのが湧水の有無です。残留型のヒメマスも同じ条件だとすると、魚たちが固まっていた場所には湧水があったのでしょうか。それとも岸によって準備をしているのでしょうか。
 少し離れた場所で一匹のヒメマスを見つけました。体には白い斑点で覆われ、泳いでいるというよりは浮いているという印象を受けるほど弱っているようでした。その少し先には力尽きた個体がいます。彼らは無事に相手と産卵場所を見つけられたのでしょうか。
 命のバトンを繋いでいくのはどの生物も同じです。そのサイクルを受け入れられる生き物とそうでない生き物。支笏湖に移入されたヒメマスは今や名物となって受け入れられています。一方で地域の生態系を守るために受け入れられない生き物たちもどこかでバトンを繋いでいます。そのことを考えると複雑な気持ちになりました。駆除しなければならない外来生物も、飼い主に捨てられてしまうかわいそうなペットも。これ以上人間の手によって不幸な命が増えないことを切に願いました。



非常に弱っていた個体。手を伸ばしても逃げる力も残っていませんでした。