北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。
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アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、利尻礼文サロベツ、知床、阿寒摩周、釧路湿原、大雪山、支笏洞爺国立公園があります。
写真上が普段の道、写真下が雨の日の様子。まさに登山道が川になっているのがよく分かります。さらなる豪雨になると右側の青いラインまで水が走ってしまい、次第に登山道の崩壊が始まっていきます。※写真提供 北海道山岳整備
元々ここは落差工(ステップ&プール)によって水の勢いを弱めるための施工箇所なのですが、大雨の時は想定以上の量の水が流れてしまったため、道の両脇の浸食が始まってくると同時に組んだ石も崩壊しやすくなるという事例です。
これ以上の浸食を止める為にはどうするか・・・・。
その原因は水量の多さにあるのですから、それを抑えればいいのですよね。であれば、施工箇所の上流で水を登山道外に逃がしてやるという方法があります。
この施工はいわゆる「導流水制工」と呼ばれるもので、分かりやすく言うと「水切り」です。
「水切り」というとどのようなものを思い描くでしょうか?
土を削って水を流す道を作るというのも立派な水切りですね。が、簡単に土砂が詰まってしまうことが多く、頻繁にメンテナンスを行う必要があります。
下の写真を見て下さい。これまでに施工された近自然登山道工法での導流水制工の一例です。※こちらも北海道山岳整備からの写真提供
写真上は石を組んで作った導流水制工。写真下は現場に残っている木を利用しながら石を組んだもの。青色の線が水の流れのイメージです。このようなものを何カ所かに作り、少しずつ水を登山道外に排出するのが狙いです。うまく機能すればこれらは基本的にメンテナンスを必要としません。
施工にあたっての資材は全て現地にあるものを使っています。この後、木や石に苔が生えてくればこの箇所を工事したと気付く方もいなくなるでしょう。
現場の景観に馴染ませるというのはこの事です。
そして今回参加者で施工したものは。
写真上の赤○部分に導流水制工を一基作りました。写真下は皆さんで力を合わせて作ったもの。初めて石を使った作業をした方もいたかと思いますが、パズルをやり始めると大人も子供もやめられなくなるのと同じで、石を組み始めると止まらなくなる方がほとんどでした。
試行錯誤を繰り返して作ったこの導流水制工。さてさて、矢印のイメージ通りうまく機能してくれるでしょうか?はたまた現場の景観に馴染んでいくのでしょうか?
現在様々な形で行われている近自然登山道工法ですが、まだ完成された形になっているわけではありません。定期的にこれまで施工された箇所の検証会などを行い、成功例や失敗例などを踏まえ、今後大雪山にふさわしい登山道を作っていく事が我々に課せられた使命と言えるでしょう。