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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

一つ積んでは道のため、二つ積んでは穴のため

2015年11月11日
ウトロ 高橋 優太

 三寒四温ならぬ三寒一温ぐらいのペースで冬に向かって一足飛びな感があります、知床国立公園・ウトロの高橋です。知床の山々も稜線に白く雪がつき、スキー板へワックスをかける手に力がこもる季節になって参りました。

 

 そんなわけで先日、夏山納めも兼ねまして、羅臼岳・銀冷水に設置されている携帯トイレブースの冬じまいに行ってきたのですが......


登山道に開いた穴

 

 おお、なんということか、登山道に大きな穴が!!!!!深いところでは大人の腹から胸の高さほどもあります。10月上旬に歩いた時はこんな穴は無かったので、中旬に襲った暴風雨の影響でしょうか。穴の底は大きな岩が転がりまるでポットホール、穴の周りは砂混じりの軟弱な土壌で触れただけでボロボロと崩れる有様。これでは春先に大量の雪解け水が流れたらどこまで大穴が広がることか......。

 

補修作業参加者

  

登山口に十傑が集う

 

 ということで急遽、登山道の補修をおこなうことに決定!

 地元の山岳関係者の方々に協力をお願いすると、林野庁や山岳ガイドの皆さんが快諾してくださり、その数総勢10名!雪が積もり始め、日も短くなってきた中で作業期間は1日のみ。

 厳しい条件ではありますが、「背負子」を背負うと気合いが入ります。

 

 「背負子」――それは歩荷(ボッカ)の代名詞。今回の登山道補修は、「石を運んで穴に詰める」という単純にして明快なソリューションです。オレ達の夏山はまだまだ納まらんぞ―――ッッ!!!!!

 

土嚢袋に石材を詰める

 

夏山を納めたくなる寒々しさ

 

 

 作業はまず土嚢袋に石を詰めるところから始まります。登山道上には雨で流されてきた浮石がゴロゴロしているため、これらを集めて再利用します。雪を被って濡れた土石は冷え冷えとして、薄い作業手袋一枚しか持ってこなかったことが悔やまれます。

 

背負子で石を運搬する

 

背負子が火を噴く

 

 次に袋詰めの石を背負い、埋める穴まで運びます。欲張って沢山背負おうとしたら、重すぎてまったく立ち上がれません。うーんなるほど、さすが石だ!!!雄叫びをあげても気合いを入れても3袋背負うのが限界です。

 

土嚢袋を穴に敷き詰めていく

 

石の土嚢で埋めていく

 

 さて穴まで石を運んだら、いざ施工!穴の中に石入り土嚢を積み、固め、間に石や砂利を入れて水平にならして、さらに積みます。本格的な石組み工ができれば一番良いのですが、技術と経験と時間が必要になってしまう......よって今回はあくまで春先の雪解け水対策に絞った応急補修、とにかく水に負けないよう物量作戦で穴を塞ぎます。

 

施工前 / 施工後の比較

 

か、完成した......(施工前→施工後)

 

 さらに雨水を登山道外へ逃がす排水路も掘り直して、よし!これだけやれば雪解け水がザブザブ流れても大丈夫!かどうかは約7ヶ月後、来年の春に分かります。果たして登山道、穴、土嚢の運命や如何に!!!

 

参加者みんなで記念写真

 

冠雪した羅臼岳をバックにお疲れ様でした

 

 今月11月4日にはカムイワッカへのゲートが閉鎖となり、続く9日には知床峠へ続く知床横断道路が、そして25日には知床五湖が冬期閉園になります。秋が深まり冬の足音が近づくにつれ一抹の寂しさを感じつつ......厳冬期・白銀の知床がすぐそこまでやって来ていると思うと、つい顔がニヤけてしまう今日この頃です。