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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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大雪山国立公園 東川

170件の記事があります。

2012年06月29日パークボランティア作業(続き)

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 前回のAR日記でお知らせしたにパークボランティアよる登山道整備作業(旭岳)は悪天候のため予定の作業を終えることが出来なかったため、未作業部分の作業を改めて6月27日に行いました。平日にもかかわらず参加して下さったパークボランティア会員の方には深く感謝いたします。
 この日は悪天だった前回(6月17日)から一変、朝から快晴の一日。旭岳山頂からは360度、西は暑寒別岳、東は阿寒方面まで望むことが出来ました。
気温も日が高くなるにつれ一気に上昇、いよいよ夏山シーズン本番です。


ロープ張り作業の様子。距離にして1㎞程度ですが、作業を行いながらではこの1kmが非常に長く感じられます。また足元も不安定なため、作業には非常に時間も要します。※バックの山は北海道第2の高峰「北鎮岳」(標高2,244M)

 夏の日差しが照り付ける中、長時間に渡る作業大変お疲れ様でした。7月にはPVによるササ刈り行事も予定しています。
 
 
 そして裾合平も含めた旭岳周辺の現在の状況です。


旭岳山頂(裏旭側)では現在キバナシャクナゲが見事でした。今週末には満開を迎えそうです。トムラウシ山(写真中央付近)をバックに咲き誇るキバナシャクナゲ。


①:裾合平方面の雪渓の範囲は徐々に狭くなってきており、木道なども段々と現れてきていますが油断は禁物。視界不良時は夏道の入り口(ピンクテープ等あり)を見落とさないように。
②:白鳥の雪渓はまだ若干太め。
③:この時期の裾合平方面は雪解け水でドロドロの箇所が多いので、防水性の高い登山靴にスパッツ、もしくは長靴が必需品です。
④:姿見園地周辺ではチングルマ、エゾノツガザクラが増えてきていました。これからいよいよ高山植物の最盛期に入ります。


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2012年06月20日夏山シーズン幕開け(今年の雪解け状況は?)

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 長かった積雪期も終わり、6月の中旬になると十勝岳・旭岳ともに山開き行事が行われ、いよいよ大雪でも夏山シーズンを迎えます。また一般の登山者の方からも残雪の状況の問い合わせなども増えてくるのもこの時期です。
 豪雪に悩まされた今冬、さぞ雪解けも遅くなるのでは?と心配していた今シーズンでしたが、4月下旬から急速に雪解けが進み、現在の残雪は例年並みかもしくは若干少なめのようです。


当然のことながら高山植物の開花も早く、旭岳姿見の池周辺でもすでにエゾコザクラが見頃となってきていました。

 下の写真は先週末(6/16、17)のパークボランティアによる登山道整備行事に同行した際のものを2年前の写真と比較してみたものです。10日の差があるためイマイチ良い比較とはならないかもしれませんが。
※記録的に残雪が遅くまで残った昨年(平成23年)とは比較にならないため、あえて2年前の写真と比較してみました。


まずはお馴染み、旭岳姿見の池。2年前に比べて10日も早い今年の様子ですが、池の周りの積雪や水面の現われ方を見る限りは今年の方がすでに雪解けが進んでいる、そのような印象を受けました。


こちらは十勝岳方面、カミホロ避難小屋前の大雪渓。こちらも2年前に比べて10日早い今年の写真ですが、すでにほぼ同じ残雪の状態。という事は、今年の雪解けは2年前より10日ほど早いという事になるでしょうか?

 雪解けが早いとはいってもまだまだ広い雪渓は多く残っています。登山の前には積雪状況や登山道の様子などの情報収集を行う事は言うまでもないでしょう。
 今年もこのAR日記で残雪状況も含めて出来るだけ多くの情報を提供していきたいと考えております。


パークボランティア作業風景。雨風の強い箇所ではこまめに道標のペイント作業を行っています。(十勝岳山頂)

 
 最後に今年の裏旭野営指定地ゴミ回収報告です。
雨風ともに強い中パークボランティアの皆様、本当に有難うございました。
急ぎ足での作業でしたが、この日回収出来たものだけでもビニール袋4袋程になりました。

毎年の事ですが、過去に埋められたゴミがまあいろいろと出てきます。缶詰の缶やビニール、古い新聞紙などなど・・・。土の中から出てきたものを地道に少しずつ回収していくほかにありません。


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2012年05月25日四季折々天人峡羽衣の滝

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 「天女が羽衣を翻して舞うような滝」と大正時代の文人、大町桂月が名付けたといわれ、落差が270mで北海道一の落差を誇る天人峡羽衣の滝は旭岳と並んで東川町の大きな見どころの一つです。
 ちなみに層雲峡側の見どころでもあり、同じ大雪山にある滝として比較されがちな「銀河流星の滝」の落差は104mだそうです。羽衣の滝は実にこの2倍以上の落差を誇るのですね。

 その羽衣の滝も季節によってさまざまな顔を見せてくれますが、さてさて皆さんはどの時期の姿が好きでしょうか?見る角度や季節によっていろいろな顔を見せてくれますが、やはりどこから見ても「素晴らしい」ですね。


まずは一番賑わう秋の紅葉時期。ちょっと視点を変えて滝を上から見下ろしてみました。(天人峡滝見台より)この時期は大雨の後を除けば水量も若干少ないことが多いです。


こちらは6月の雪解け時期。まさにこれからみられる姿です。
鮮やかな新緑の中にゴォーゴォーと水の音が聞こえてきそうですね。この時期は特に水量が多く、迫力のある羽衣の滝です。


11月、初雪のころの羽衣の滝。
厳冬期は遊歩道が閉鎖されるため見ることはできませんので雪と滝を見られるのはこの時期くらいでしょうか?ちょっとした水墨画の世界ですね。

 毎年行っている関係者による現地確認及び清掃作業は今年度、5月24日(木)に行われ、無事遊歩道は開通となりました。行政担当者に加え、作業に協力していただいたひがしかわ観光協会、天人峡温泉街の皆様、大変お疲れ様でした。

雪崩の多発地帯では雪と一緒に大量の石や枯れ枝なども落ちてきます。これらの除去作業を行います。

 緑がまぶしい季節になりました。道もきれいに清掃され、快適に歩くことが出来るようになりましたので、ぜひ羽衣の滝を見に来て下さい。

【注意】4月の下旬位より、天人峡周辺ではヒグマの目撃情報も確認されています。状況によっては遊歩道の閉鎖をすることもありますのでご了承ください。

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2012年05月25日雪解け時期になると行う事

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 5月も中旬を過ぎ、白一色の山肌から黒い山肌が目立つ時期となってきました。
 近年にない豪雪に見舞われた北海道の今年の冬でしたが、山の雪解けも着実に進んでおり、春の訪れを告げる花、ニリンソウやエゾエンゴサク、湿原ではミズバショウやエゾノリュウキンカも目立つようになってきました。


この時期ひときわ目立つ存在の1つ、足元にひっそりと咲くニリンソウ

 雪解けとともに毎年行う事、それは冬の時期に設置しているスノーモビル等の乗入れ規制看板の撤去作業です。この作業を行うと「冬が終わった」という少し寂しい感じがすると同時にこれから訪れる夏山シーズンへの気持ちが切り替わる作業です。

あれだけあった積雪もすっかり無くなり、まさに今は「新緑の季節」という言葉がぴったりと来る時期でしょう。

 国立公園内の乗り入れ規制・禁止区域への車馬等の違法な乗入れを防ぐために毎年啓発活動を行っていますが、残念な事に今シーズンは美瑛町および富良野方面においてスノーモビルと思われる違法乗入れ跡が確認されました。
 夏山と違い、積雪状態になればどこでも入っていくことが出来ます。しかしながらその雪の下にはじっと春を待ちわびている植物が眠っています。また、冬でも冬眠をしないでいる貴重な野生動物たちも多く生息しています。

 これらを守っていくために我々が出来る事は何でしょうか?

 旭岳スキーコースオープンの時にも触れましたが、雪の時期においても夏と同じ自然に配慮しなければならないのは当然の事でしょう。
「植物を傷つけない」
「野生動物を驚かさない」
「ゴミは持ち帰る、雪の下に埋めない」
これらは山に入る人間の最低限我々が守らなければならないマナーであると思います。
 それだけではありません。冬の時期でも静かな山歩きを楽しんでいる人がいます。そのことも忘れないで下さい。

 夏冬問わずに、静かで原始的な風景が大雪山で保たれていく事を望みたいものです。


3月に富良野方面の乗入れ規制区域付近で確認されたスノーモビルの乗入れ跡。(赤枠部分)
環境省では地上からだけでなく、空からも監視を行っています。
このような監視業務がなくなる事が理想なのですが・・・。

 大雪山におけるスノーモビルなどの乗入れ禁止・規制区域についてはこちらで詳しく見ることが出来ます。
http://c-hokkaido.env.go.jp/nature/mat/data/m_1_7/snowmobile.pdf
 また、スノーモビル販売店や山道具販売店などでも同パンフレットは手に入れることが出来ます。


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2012年03月26日【注意喚起!!】~冬山に入る皆様へ~

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 3月も下旬になり気温の上昇と共に、より良い雪を求めて標高の高い旭岳などに足を運ぶスキーヤー、スノーボーダーが増えてきているようです。
 先週末(3/17~18)も悪天候にもかかわらず旭岳ロープウェイの駐車場は満車に近い状態でこのエリアの人気の高さを物語っていました。
 そんな中、大変痛ましい事故が起きてしまいました。旭岳登山に出かけた2名が遭難、その内1名が帰らぬ人となってしまいました。事故に遭われた方やそのご家族には心からご冥福をお祈りいたします。

 ここ数年で一気に冬の利用者が多くなった旭岳。素晴らしい雪質に触れた人ならその魅力に取りつかれてしまうのは当然かもしれません。
 しかしながら、この場所はれっきとした山岳エリア。気象条件も大変厳しく、一歩間違えれば遭難と隣り合わせの場所であることも同時に頭に入れておかなければならないでしょう。利用者の増加と共に段々とスキー場感覚で山岳エリアに踏み込む人達が多くなっているのが大変気になります。

 気温が高くなるこれからの時期は雪崩の発生多発時期でもあります。幸いにもここ数年はこれまで雪崩による事故は起きていないようですが、小規模な雪崩は頻繁に起きているようで地元関係者などからも注意喚起が叫ばれています。

先日、山麓部において毎年恒例の直轄施設の雪下ろしを行いました。
作業中に雪質を調べてみると、写真でもハッキリと分かるように、弱層がいくつか見られ、その上にここ数日で降った雪が30cm程乗っている状態。
もちろん場所の違いはあると思いますが、大雪周辺では3月上旬に一旦気温が上がった後、雪が降り続いているため、どの地域においても要注意ではないかという印象を持ちました。
※ちなみに屋根の雪の高さは180cm程で昨年より30cm以上多く、作業にも非常に時間を要しました。


 旭岳(Aコース外側)において雪崩による死亡事故が起きたのはもう8年も前になり、当時の事故の事も段々忘れ去られようとしているかもしれません。
が、あえてここで警鐘を鳴らしたいと思います。

「雪崩はコースのすぐ脇でも条件次第ではいつでも起こりうる」と。

「みんなが行っているから行ってみよう」という安易な気持ちは即事故につながります。コースを外れての遭難、怪我なども今シーズンは多発しているようで、救急車の出動も非常に多いようです。

旭岳エリアに来られる皆様へお願いしたい事は

①いわゆるこのエリアは一般的な「スキー場」ではありません。植物損傷に問題がないと思われる積雪量の状態(12月~5月上旬)に限って、スキー、スノーボード等の利用が可能な山岳エリアです。
②圧雪車によって作られている4コース(A~Dコース)以外の場所はいわゆる「スキーコース横のオフピステ」ではありません、完全なる「山岳エリア」になります。冬山に入るための装備、知識、経験などが問われる場所です。地図、コンパス、雪崩救助道具(ビーコン、ゾンデ、スコップ)などは必携です。
③他人のトレースを信じ込まないようにしてください。
「先に誰かが行っているから大丈夫」という考えは非常に危険です。トレースの先に待っているものは「集団遭難」かもしれません。
④滑走、歩行の支障になるからといって灌木などを傷つけないようにしてください。その木は雪解けの後に華麗に花を咲かせ、秋には鮮やかに紅葉する木かもしれません。雪の下には貴重な高山植物が春を待ちわびていることを忘れないでください。

 近年、旭岳における冬の利用のあり方が問われています。無謀な登山、無秩序な行動等、一部の利用者によって旭岳全体のイメージが損なわれてしまう事は非常に残念なことです。
 利用者一人一人がルール、マナーを守って頂き、ここを訪れた方々が「また是非旭岳に来たい!」と思ってもらえるような場所になってもらいたいと思います。

 これ以上悲惨な事故が起こらないことを願ってやみません。


冬の時期には滅多にお目にかかれない快晴無風の旭岳。だが一旦猛威を振るい始めた山の神には我々はどう立ち向かった所で勝ち目はないだろう。


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2012年03月14日出会い

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 3月に入り気温の高い日が多くなり、町中では一気雪解けが進んだここ東川です。肌を刺す空気はまだまだ冷たいのですが、季節は確実に冬から春に向かっているのが実感できます。
 が、一歩山に入ればまだまだ雪がたっぷり。比較的天候が安定することの多いこれからの時期がスノーアクティビティを楽しむには良い季節といえるかもしれません。

 朝からスッキリと晴れ渡った3月4日(日)に毎年恒例の東川町との共催で行っている自然観察会が東川在住のネイチャーガイド塩谷秀和氏を迎えて開催されました。
「スノーシューで歩く巨木の森」と題して忠別ダム周辺の森を歩いた今回の自然観察会では、さまざまな出会いのあった1日となりました。

 まず、そのうちの一つ。参加者の皆さん何か必死に観察しています。さてさて皆さん何をそんなに必死に探しているのでしょうか?

その先にあるものは何かというと実はエゾモモンガ(※)の巣なのです。巣の周りには「主(あるじ)」のものと思われる排便の後が・・・。

しばらく観察していると。

日中にもかかわらず素晴らしいタイミングで「主(あるじ)」が巣穴から出てきてくれました。
今回参加の方はエゾモモンガを見るのは初めてという方がほとんどだったようですが、本当にラッキーでした。

 その後、木の上でのんびりとくつろいだ姿を見せてくれた後には見事なモモンガジャンプをご披露してくれ、参加者の皆さんこれ以上ない思い出になったことでしょう。

 そして、もう一つの出会いは

本日の目的でもあった樹齢400~500年と思われるミズナラの巨木とご対面。町内の森をくまなく歩き回っている塩谷講師いわく「東川町内では最も太い木ではないか?」とのことでした。
東川の「生き字引」との出会いと行った所でしょうか。
江戸時代もしくはそれ以前からこの地にあったものだと思うと、とてつもない年月を生き続けているのだと実感できます。

 今回で平成23年度の自然観察講座全3回が全て終了となりました。今年度参加していただいた皆さん、この場を借りて皆様にお礼を申し上げたいと思います。本当に有難うございました。
 次年度の開催日程や場所等は今の所未定ですが、さてさて来年度はどのような「出会い」が待っているのでしょうか? これからも参加される方との出会いを大切にしていきたいと思います。皆さんまた是非お会いしましょう!

※エゾモモンガ(蝦夷小鼯鼠)ネズミ目リス科モモンガ属 
学名Pteromys volans
北海道全域に生息し、体長は15cmほど。夜行性だが、日中も活動することがある。特に発情期である2月下旬から3月にかけては日中でも比較的容易にその姿を見ることが出来るという。
手には滑空するための被膜を持っており、滑空距離は50mにもなるといわれている。

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2011年12月16日旭岳スキーコースオープン

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 ここ数年、雪の少ない12月を迎えていた大雪山。
街中では厄介者と敬遠される雪だが、この地に関しては雪を心待ちにしている人たちが多くいる。その雪質は世界でも有数ともいわれ、世界各地から極上の雪を求めて多くの人々がこの地を訪れる。
 ここには雪は無くてはならない存在だ。

 シベリア大陸からやって来る乾いた季節風は日本海の比較的高い水温によってたっぷり水蒸気を含み湿った風となって北海道に吹き付け、大量の雪を降らせる。そして北海道の屋根、ここ大雪山にたどり着くころにはその水分はほとんど飛ばされ、乾いた雪となって天から舞い降りてくる。同じ北海道でも地域によって雪質が違うのはこのためである。
 それは「雪と」いうよりも「結晶」が落ちてくるというイメージである。

厳冬期の旭岳。猛烈な季節風が吹くことの多いこの地でしばしば見られるシュカブラ。

 そしてようやく今年もその「結晶」が落ちてくる季節となった。

 しかし、ここ大雪山で素晴らしいのは雪だけではない。高山植物が広がる花畑。真っ赤に燃える秋の紅葉。この雪の下にはこれらの貴重な財産が眠っていることも忘れてはいないだろうか?そしてこれらは雪の下で次の開花に向けて準備をしているのだ。植物たちはこの多量な雪によって守られているのである。
 積雪時期となれば当然のことながら登山道というものはなくなり、雪の上をどこでも歩けるようになる。が、雪が少ない所に無理やり踏み込めばこれらの植物に負荷がかかる。スキーなどで滑走すれば場合によっては貴重な樹木などを簡単に折ってしまうこともあるだろう。冬を楽しむにも環境への配慮が必要だ。

 今年も旭岳スキーコースオープンに向けて、関係機関による積雪量の調査が行われた。これは貴重な高山植物を損傷しないために一定の基準値を上回る積雪量にならなければコースオープンとしていないのである。
12月上旬までは雪不足によるオープンの遅れが心配されたが、ここ数日の降雪でようやく基準値を満たすレベルとなったようであった。

積雪量調査風景。
積雪の多い箇所では2m以上。
本日の気温-17度、風速10m。
視界不良とかなり厳しい中での調査であった。

調査の結果、旭岳のスキーコースは12月17日よりオープンが決定となった。
が、クローズしているコースに関してはまだ積雪量が足りない箇所であるため、くれぐれも無理に入り込み、植物の損傷につながるようなことのないようにお願いしたいものである。これからは「自然環境に配慮してやさしく滑る」という認識も必要ではないだろうか?


天女ヶ原湿原周辺から一瞬だけクリアに見えた盤の沢方面。圧雪したコース以外は技術を持った限られた人のための冬山エリア。装備・天候判断などが問われるエリアである。

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2011年09月28日初冠雪と紅葉 ~秋から冬へ~

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 9月も下旬になり大雪の山々からは初冠雪の便りが届く時期となりました。
 日本一早い紅葉と初雪が何かと話題になるここ大雪山ですが、その最高峰旭岳の初冠雪について調べてみると。

・旭岳初冠雪平年値→9月25日
・最も早い記録→9月6日(大正14年)1925年
・最も遅い記録→10月15日(平成16年)2004年  ※旭川地方気象台HPより

 参考までにですが、富士山の初冠雪の平年値は9月30日とのことなので、1500mも富士山より標高の低い旭岳の方が初冠雪が早いというのは大雪山の気象の厳しさを物語っていると言えるでしょう。

 ここ数年は
・平成20年(2008年)→9月24日
・平成21年(2009年)→9月12日
・平成22年(2010年)→9月22日
・平成23年(2011年)→9月22日
しかしながら、初冠雪にはならなくても年によっては8月の下旬でも山頂で雪が舞っていたという話を聞く事があり、この時期になれば寒さ対策の一層の充実が必要になってきます。

そして初冠雪の際のもう一つの楽しみは「雪と紅葉」でしょう。


初冠雪の頃にはナナカマドの葉は落ちてしまっている事が多いのですが、年によっては綺麗なナナカマドの紅葉(写真中央部分)と初冠雪をした旭岳の頂きが拝める事があります。
※平成21年9月12日旭岳姿見園地より撮影したもの。


こちらは今年9月25日(日)の旭岳裾合平の様子。ナナカマドの葉は落ちてしまっているものが多かったのですが、雪化粧した熊ヶ岳(旭岳の隣、登山道はありません)とマット状に広がるチングルマの紅葉(若干色褪せてしまいましたが)が見られました。

 そして、初冠雪の便りが聞こえた頃になると毎年行う事、それは。

6月に張った登山道のロープの撤収作業です。雪の重みでロープが切れるのを防ぐため、毎年積雪前に行う恒例行事です。今年は初冠雪のあった直後の9月24日と25日の両日にパークボランティアの方とともに十勝岳、旭岳周辺の作業を行いました。

 植生の保護や登山道の複線化を防ぐために行っている作業ですが、6月のロープ張り、9月の撤収作業ともに気象条件の厳しい中での作業になります。3ヵ月間だけの為に張るロープですが、作業に参加していただくパークボランティアの方々には頭の下がる思いです。

 非常に労力を必要とするロープ作業ですが、ちょっと考えてみて下さい。
登山者一人一人が「登山道を外れない」という意識が持てばロープを張る必要はなくなるでしょう。それには山を訪れる皆さんのマナー向上が必要です。
「良い写真が撮りたい」「近くで花を見たい」「靴の汚れる泥道は避けて歩きたい」という気持ちはみな同じです。

 自分一人くらいは登山道をはみ出しても構わないのではと思っている方へ

「雪の積もる寒い中、ロープ作業をして山を守ろうとしている人を見てどう思いますか?」
「それでも自分だけは良い写真を撮る為に植物を踏みますか?」
「自分の靴を汚したくないために登山道を外れますか?」

 意識を変えてこれからは自分の事だけでなく、登山道や高山植物の事も考えながら山を歩いてみませんか?

 登山者のマナー向上によって、無駄なロープや鉄杭の無い自然な大雪山の風景が保たれる日が来る日を望みたいものです。

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2011年09月01日登山道で思う事 その2(登山道を維持していくという事)

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 環境省では平成17年から大雪山において直轄整備事業として登山道の整備事業を行って来ました。これらは近自然工法と呼ばれる手法で石組み工や、木柵を使った階段工などと様々な手法で行われました。
 当然のことながら、作ったものにはメンテナンスが必要になります。特に気象条件の厳しいここ大雪ではこれらの箇所の維持管理というものは避けて通れない問題です。
 想定以上の量の雪解け水や集中豪雨による石組みの崩壊やぐらつきなど、今後に向けてこれからは維持管理の手法が問われてくる事でしょう。

 維持管理を行うにはまず、補修技術を学ばなければなりません。それだけではなく、現場において「水の流れ」「豪雨時の水位」「登山者の行動」などを把握し、石組みの高さや位置の修正等を行う事が必要となってきます。


大雪山における石組み作業事例を1つ。こちらは浸食によって木の下部分が裸地なっていた箇所に石組みの階段工を設置しました。この石に苔が生えれば、人工的に作業した箇所と気付く人はいないでしょう(愛山渓での作業箇所)
 段差を均一にしない事で、不自然さを持たせず、歩き易さにも配慮しています。

 今後必要になってくる事は補修作業が出来る後継者を育てていく事で、これらの人たちに技術を伝えていかなければなりません。いずれ石組みが崩れたらそれでオシマイ。そうならないためにも技術伝承は重要なのです。

 先日、旭岳裾合平方面で大雪山での工事に初期のころから携わってきている方を招いて、維持管理業務を委託している関係者と共に登山道の補修技術を学びました。多少の経験のある人、全く初めての人とそれぞれでしたが、一から基本的な技術を学ぶ良い機会になったと思います。


修復作業の様子。
 写真手前が登山道の上手(かみて)側になるのですが、大雨の際などには当初の予想よりも矢印のように石を乗り越えて道を浸食してしまっています。このまま放っておけば、道の両側がさらに削れていく事でしょう。そのためには補修が必要になってきます。


下の写真はまだ完成前なのですが、分かりますか?(同じ場所です)
写真手前の部分は道の両脇にそれぞれ「力石(ちからいし)」と呼ばれるしっかりと固定できる石を埋め込み、水の流れを止めるための施工が施されています。写真では分かりにくいのですが、2つの力石を中央部分の石より高くすることで水を真ん中に誘導すると共に、その下に「水叩き(みずたたき)石」を石畳みのように埋め込む事によって、土が削れるのを防ぐための施工が行われています。

 このような補修技術は一朝一夕で身に付くものではありません。登山道をよく観察するのはもちろんのこと、登山者がどのように歩くのかなどを把握し、色々と試行錯誤しながら現場にあった作業のやり方を模索していく事が重要になって来ます。それには何においても経験が重要という事になるのですが、まずはこのような作業に興味を持ってもらい、実際に現場で携わっていく人間を増やしていく事が今は必要です。登山道を守っていくのは現場に携わっている我々の役目だという思いを持たなければなりません。そしてその技術を受け継いでいかなければならないのです。

 大変な作業だと思う方も多いと思います。が、やっている人間としては実は非常に楽しい作業なのですよ。石がピタッと決まった時の感動はやったものでなければ分からないものがあります。パズルがうまく入った時の感じですかね?

※(注)大雪山の登山道はほとんどが特別地域にあたる為、誰でも石を動かしたりしての作業は出来ません。登山道について何か気付いた点などがあれば、最寄りの自然保護官事務所等へお問い合わせください。



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2011年08月17日旭岳天女ヶ原湿原(自然観察講座)

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 北海道の最高峰でもあり、大雪山の中でも特に人気のある旭岳は夏山シーズンになると多くの登山者で時にはちょっとした「登山渋滞」になることもあります。
 そのごった返す姿見駅から旭岳山頂までとはうって変わって、姿見駅から下の天女ヶ原湿原の登山道はいつものことながら、静かな山歩きが楽しめる所です。
 あまりよく知られていないコースなのですが、途中の天女ヶ原湿原では夏は多くの湿原植物が観察出来て、野鳥観察にも適した場所です。もちろん秋には紅葉観賞にも素晴らしい場所なのです。
 8月10日(水)にもっとここの良さを知ってもらおうと、東川町との共催で自然観察講座を旭岳天女ヶ原湿原で行いました。
参加者のほとんどは地元東川町にお住まいで、旭岳も良く訪れている方でしたが、ゆっくりこの場所を訪れるのは初めてという方がやはり多かったようです。

 この湿原はいわゆる高層湿原と呼ばれるもので、溶岩台地上に堆積した火山灰によって不透水層という水を通しにくい地層となった所にミズゴケ等が侵入して、分解されない死骸が徐々に積み重なり長い年月をかけて湿原が発達してきました。その中でも成長が早い所があれば遅い所があり、成長の遅い所では水がたまって「池塘(ちとう)」と呼ばれる湿原の水たまりが形成され、ミズゴケと水位の関連で循環的に繰り返され、やがては泥炭の厚く堆積した湿原へ発達していくのです。


第1天女ヶ原(1合目)にて休憩中。
前日までの晴天から一転、雨上がりの中の湿原散策となりましたが、このしっとりと濡れた湿原がまたいいんです。
さらに湿原の周りにあるエゾマツ等がここの独特の美しさを引き立たせています。


8月の見どころは何と言ってもタチギボウシでしょうか。今年は開花が若干遅れているようなので、お盆明けでもまだまだ見られそうです。

 しかしこの湿原も乾燥化が進んで笹が進出している事や、登山道を利用する人が少なくなっていくことに比例して登山道の維持管理が後手に回り、歩きにくくなった道はさらに登山者が少なくなるという悪循環について触れ、登山道を適度に利用する事の必要性と登山道の維持管理の重要さなどについて学んでいただいた本日の観察講座でした。

 本日もう一つ、皆さんが興味津々(しんしん)だったのが「コマチグモ」でした。
 コマチグモは笹やヨシ等の葉を巻いて巣穴を作り、北海道にはカバキコマチグモ、ヤマトコマチグモ、アカスジコマチグモの3種類が生息しています。雌は子を巣の中で産卵し、生まれた子供は1回目の脱皮が終わると母グモの体を食べてしまうというなんとも「母性愛」という言葉では表せないような行動をとるのが特徴です。個人的には「子待ちグモ」と解釈していたのですが、どうやら美しい体をしていることから小野小町にあやかり「小町グモ」という意味で名付けられたようです。クモ嫌いの人からしてみれば「美しいクモ」といわれてもあまりピンとこないとは思いますが。


このようにクルクルと葉がちまきのように巻かれているのが特徴。中を開けるとお母さんグモが卵を大事そうに守っています。が、毒性の強いクモもいるので、下手に触らない方が良いようです。

 この日は一日中悪天候の予想だったこともあり、途中出会った人も全くおらず、本当に静かな時間が過ごせました。姿見の池から旭岳山頂を目指すのも楽しいですが、たまにはちょっと思考を変えてここ天女ヶ原湿原を歩いてみませんか?
 ただし、周辺はヒグマの痕跡が頻繁に目撃されている所ですので、早朝や夕方の入山(特に単独行動)は避けた方が良いでしょう。
 また、湿原の破壊は泥炭の踏みつけからも発生しますので、木道を外れて湿原内に立ち入ることのないようにお願いします。

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