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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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大雪山国立公園 東川

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2011年07月14日登山道で思う事 その1(ゴミ編)

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

雪解けの遅かったここ大雪も7月に入り高山植物があちらこちらで咲き始めています。
雪解けとともに咲き始める高山植物と併せて、残念ながらこの時期現れて来るのが(出来れば現れて欲しくは無いのですが)冬の間に放置されたゴミ、もしくは雪解け水などによって土が削れて出て来る昔埋められたと思われるゴミです。
 毎年雪解け時期に合わせて旭岳の裏旭野営指定地周辺のロープ張りなどを行うのですが、「なんでこんなものが?」と思うものも多々あります。

 一例としては。

①昔のジュースやお酒の缶や瓶(この辺は毎度の事、驚きません)
古いロゴマークなどを見て「懐かしい!」なんて思ってしまうのですが・・・。
昔は「ゴミは埋める」という事が美徳とされていたようです。現在はこのような事をしている方はいないとは思いますが、生ゴミなどの臭いにヒグマが誘発されて来る等の危険性もあり、このような事は決して行わないようお願いしたいものです。

②ティッシュや人間の体の中から廃棄されたもの(これも慣れました)
積雪期に雪を掘って用を足せば、その時は見えなくなりますが、雪解けと同時にそれらは姿を現します。「自分で出したものはゴミも含めてすべて持ち帰る」山での常識ですので、携帯トイレの使用をお願いしたいと思います。

③衣服(結構あります)
グローブや帽子などは忘れていったものと思いますが、下着や靴下など・・・?もういらないと思って、捨てていったのでしょうか?
(大した荷物ではないでしょうから持ち帰ってください)
次に来る人の為に役立つものではありません。

④ぬいぐるみ(何故・・・)
夜、これを抱いていないと眠れない方だったのでしょうか?大事なものを捨てていった?忘れていった?いずれにしても山でぬいぐるみを見るとは思いませんでした。

⑤テント(はっ?)
「もう古いからいらない」と言う事だったのでしょうか?常識以前の問題だと思いました。テントをそこから担ぎ下ろしてくる人間の事を考えてください。

「過去にこの辺りにゴミをいつも埋めてしまっていたからその罪滅ぼしです」という事で、毎年旭岳周辺のゴミ拾いに来られる方とお会いした事があります。昔の過ちを今後繰り返さないように一人一人が気を付けて山が守られていけるようになって欲しいと思います。

本日回収した中にもやっぱりありました、お酒の瓶など。
人間の中から出されたものなどは生々しくてお見せできませんが(ビニール袋の中)、やはりいくつか見つけました(悲)。

 最後に旭岳方面の雪解け状況です。(いずれも7月12日撮影)

【写真左】旭岳8合目付近より(西側斜面)
【写真右】裏旭野営指定地より(東側斜面)
このように同じ山でも表と裏では全く状況の違う所があります、視界不良時や気温の低い時などは要注意です。


おなじみの裾合平の白鳥の雪渓は今年も良い形になりました。ただ、登山道は雪が残っている所がほとんどで、気温が上がる日中は雪がシャーベット状になり、場所によって足首上位まで埋まる所もあり非常に歩きにくい状態。花はまだまだ先のようです。今年の裾合平の花畑は7月下旬から8月上旬くらいでしょうか?

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2011年06月23日パークボランティアが大活躍

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 今年は旭岳では6月18日に安全祈願祭が、十勝岳では19日に山開き登山会が開かれ夏山シーズンとなりました。
 それに合わせて6月18、19日の両日に十勝岳および旭岳方面においてパークボランティアの皆さんとロープ張り作業等を行いました。
 今シーズンは例年以上の残雪です。これからの大雪山で登山計画を立てている方は十分な情報収集が必要かと思われます。雪渓が残るこの時期は毎年道迷い遭難が多発する時期でもあります。十分注意をして楽しい山行にしていただきたいものです。山では行き当たりばったりは通用しません。

 そして毎年の事ですが、作業をしていて悲しくなる事があります。


こちらは旭岳9合目付近での作業の様子。
 通称「ニセ金庫岩」と呼ばれる箇所には道迷い防止だけでなく、はみ出し防止の意味でのロープ張りをしているのですが(写真左)、その先の岩陰には毎年多くの排泄物やティッシュペーパーが・・・。
 自分で持ってきたものは全て持ち帰るという基本的な山でのマナーが守れていない方が未だに多くいるのは悲しい事です。写真右はそれらを拾うボランティアの方。
 このように出来れば拾いたくないものを拾っている人がいるという事を忘れないでいただきたいともいます。

 毎年行うロープ張り作業だけではなく、強風によって倒れた山頂標識の立て直しや、雪渓の急斜面における雪切り作業等、今年は例年以上の作業を行ってくれたボランティアの方々本当にお疲れ様でした。


間宮岳山頂付近は強風の通り道の為、しばしばこのように標識が倒れる事があります。(写真の上2枚)
また、中岳温泉に降りる箇所は残雪期、難所として知られており、ここが下りられずレスキューされたケースも。写真下2枚はステップカットをするボランティアの方。この日も何名か雪渓を右往左往している登山者が見受けられました。
中岳温泉上の雪の状態は、5月下旬から6月上旬くらいの積雪量という印象がありました。

 繰り返しになりますが、このように同じ山でも場所によって積雪状態が全く違うため、くれぐれも最寄りのビジターセンターなどで情報収集をしてからの山行をお勧めします。


まだまだ雪は多いですが、雪解けの早い所から高山植物も咲き始めています。
花畑を満喫できるまではしばらく時間がかかりそうですが、今年も可憐な花畑が我々を迎えてくれる事でしょう。(写真左がミネズオウ、右がキバナシャクナゲ)

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2011年05月31日季節変われば

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

5月も下旬に入りスノーモビル等の乗入れ規制看板の取り外しを行う季節となりました。
国立公園の乗り入れ禁止・規制区域におけるスノーモビル等の違法乗入れについては毎年陸と空から違法乗入れ車両やモビル痕などを調査しています。今シーズンの違法乗り入れなどは確認できず、継続した乗り入れ規制啓発活動による効果ではないか思われます。

毎年この時期に乗入れ規制看板の撤去作業を行う際にいつも感じることは、冬に見慣れた場所でもすっかり雪の無くなったこの時期に同じ場所に行ってみると全く景色が変わるという事です。雪が多く積もる時期とは間違いなく目線の高さが変わるわけですね。
一年中雪が降らない地方では葉や草が枯れるなどして木々の色などが変わる事はありますが、同じ場所で全く別の景色が見られるという事は雪国でしか味わえない事だと思います。


これは富良野方面に設置している乗入れ規制看板。雪のあるなしでは景色だけでなくあたりの静寂さや空気の臭い等も変わってきます。

何より山の風景は時期によって全く違う顔を見せてくれます、雪をかぶった山々は夏と比べて一回り大きくなった感じ、同じ場所から見ても山を近く感じられます。


こちらは旭岳の冬と夏。ピンと張りつめた空気が感じられる上の写真に対して、穏やかな夏の空気が感じられる下の写真です。

町では大雪が降ると生活にも影響が出て厄介者とされる雪ですが、見方を変えれば雪国で暮らすという事は夏と冬とで違う風景を楽しめるという事にもなりますね。
夏の山と冬の山とどちらが好きですか?と聞かれれば迷わず「冬!」と言ってしまいますが、どちらもそれぞれ魅力がある大雪山です。


そして今の時期の風物詩は何と言っても水田に映る残雪の大雪山(富良野岳方面)。田植えが終わるとここまではきれいに映る事は無くなるため、期間限定の風景です。

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2011年05月19日今年度は102名です

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

5月は天候不順が続き、気温も低く季節外れの雪が降るなど、大雪山にまだまだたっぷりと雪が残っています。場所によっては雪解けが例年より遅くなりそうなので、今年の夏の山行を考えている方はくれぐれも情報収集をしっかりした上で登山計画を立てて頂きたいと思います。

先日5月14~15日の2日間にわたり上富良野町十勝岳温泉において平成23年度のパークボランティア連絡会総会が行われました。   
この行事は昨年度の活動実績や今年度の予定行事等の報告や情報交換の場として、毎年行われている恒例行事です。

総会の風景、皆さんお久しぶりです。

今年度の会員数は大雪山全体で102名。公園面積も広いが、大雪山はボランティア会員もかなりの人数。この102名の会員の方々がこのような活動を我々と共に行います。


これらの活動に加えて、その他にもウチダザリガニ防除活動・高山蝶パトロール・秋のマイカー規制時における協力等、昨年(平成22年度)の活動参加者日数は870日にも及びました。昨年度、活動に参加していただいた会員の皆様、本当に有難うございました。

会員の方はその他に自然解説等も行ってくれますので「パークボランティア」の腕章をつけた方を山で見かけた際には気軽に声を掛けてください。

翌日は悪天候のため、屋外で予定されていた春山研修も予定のコースの途中までしか行けず残念でしたが、これからの夏山での活動に向けて皆さんそれぞれ少しずつ冬の間衰えた体力を取り戻しましょう(自分も含めて・・・)。


今年度は雪の降る中での記念撮影となりました。
会員の皆様、今年もどうぞよろしくお願いします。




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2011年04月27日(お知らせ)天人峡羽衣の滝遊歩道、通行止め継続しています

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 例年になく雪解けの早かったここ東川町でしたが、まだまだ大雪の山々にはたっぷりと雪が残り、これからの大型連休中は山スキーやスノーシューハイキングなどを考えている方も多いと思います。山麓付近は徐々に雪解けも進んでいますが、まだまだ標高の高い所では冬山という心構えが必要かと思われます。

 さて、登山目的でなくのんびり散策をしながら落差270m(北海道NO.1です!)を誇る羽衣の滝を眺められ、夏~秋は観光客で賑わう天人峡羽衣の滝遊歩道ですが、冬期間は雪崩の多発地帯であり遊歩道を閉鎖している事は以前にもお知らせしたとおりです。
 天人峡地区にも連休中は多くの方が訪れる事から、遊歩道の状況確認を北海道(上川総合振興局)、東川町担当者とともに行ってきました。
例年雪解け時期は落石や落枝などにより危険な状態になっている事が多く、ここ数年は念入りに危険箇所の確認を行った上での散策路の開放としています。


これは昨年(平成22年)の作業の様子ですが、法面から落ちて遊歩道をふさいでいた落枝を関係者で除去している所です。昨年は雪解けも遅かったこともあり、一般開通が出来たのは5月下旬でした。

そしてこちらが現在の様子。(4月25日撮影)
雪崩多発箇所ではすっかり道を雪がふさいでしまっており、通行は非常に危険です。

 雪解けの早い年は連休前に開通できた時もありましたが、今年は残雪も多く、雪が溶けている所も斜面の不安定な状態が解消されるまではこのまま遊歩道の閉鎖を継続する事になりました。

 夏~秋には散策路として気軽に歩けるこの場所ですが、周囲は峡谷となっており大雨の後などはがけ崩れも多発する箇所です。また、雪解け時期はヒグマが遊歩道上でも目撃される事もあります。くれぐれも通行に関しては管理者の指示に従っていただけるようお願いします。


遊歩道入口にはこのようにバリケードなどで通行禁止としています。安全が確保されるまでもうしばらくお待ちください。

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2011年02月25日白金野鳥の森(冬編)

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

空気がまだまだひんやりするここ大雪山周辺ですが、2月も下旬になり降り注ぐ太陽の光に季節の変化が感じられるようになりました。雪解けにはまだ程遠い大雪山ですが、外を歩いていると着実に季節は真冬から少しずつ春に向かっている事を実感できます。

冬って何をしているのですか?という事はよく聞かれます。登山道がはるか雪の下に埋もれているこの時期にはもちろん登山道の巡視などは出来ませんが、施設の管理なども我々の大事な業務です。施設の屋根の雪おろしや、看板なども定期的に巡視を行って確認をしています。

先日、施設の状況確認の為に国指定白金野鳥の森へ入りました。シーズン中はバードウォッチングの方などが多く訪れるここ野鳥の森ですが、白金温泉から先は道路も通行止めになるこの時期に訪れる人は少なく、野鳥たちも警戒心を忘れて彼らのありのままの姿を我々に見せてくれる事があります。冬に見られる野鳥は夏に比べて限られてきますが、シジュウカラ等のカラの仲間、アカゲラ等と、条件の良い日にゆっくり観察していれば結構な種類の野鳥を見る事が出来るでしょう。姿は確認できませんでしたが、この日もひっそりと静まり返った野鳥の森に、クマゲラの声が鳴り響いていました。

今年は例年より積雪は少ないと予想しており、雪おろしも少しは楽かな?と思って行った次第でしたが、さてさてどんなものやら・・・。

着いてみてがっかり・・・、例年通りの積雪でした。これは休憩舎の様子、積雪深を図ったら150cm程でした。気合を入れて頑張ります!


こちらは野鳥観察小屋の作業前の様子。冬の時期でも利用出来るように入口を確保して雪おろしを行います。

静かな森に積もった雪の上をスノーシュー等で歩きながらの野鳥観察も冬ならではの魅力です。遊歩道からしか観察できない夏と違い、この時期はどこからでも観察が出来るメリットがあり、木の葉が落ちている時期は視界も開け、野鳥を見るにもよい条件にもなります。ただし積雪時期は道迷いの危険性もあるため出来れば冬の森を熟知している地元のガイドさん等と歩くのが良いでしょう。


一日の作業を終えて帰る途中、真っ青な空に映える十勝岳連峰(写真上)と森の向こうにゆっくり沈む夕日(写真下)が出迎えてくれました。「一日よく頑張った!」という御褒美のようにも感じました(勝手な自己満足でが・・・)。

最後にお知らせです。

3月13日(日)に東川町との共催で自然観察会を開催します。スノーシューを使って天人峡の峡関壁(きょうかんへき)周辺を散策します。詳細は大雪山国立公園連絡協議会のHPで見る事が出来ます。下記アドレスから東川自然保護官事務所主催の箇所をご覧ください。
http://cgi.eolas-net.ne.jp/eolas-lab/daisetsu/news/view.php?line=5

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2011年02月22日パークボランティア冬期研修会

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

2月19,20日の2日間にわたり天人峡温泉において大雪山パークボランティアの冬期研修会を行いました。同行事はシーズンオフのこの時期、来年度に向けての登山・自然知識の向上、体力維持等の為に毎年恒例で行われている行事です。と同時に我々にとっても勉強の場でもあるのです。

1日目は室内講義、1コマ目は「ヒグマ対応の最新例」というテーマでヒグマの会副会長の山本牧氏による講義が行われました。

「ヒグマとの共存」を目的にこれまで北海道各地を調査して来られた氏の講義は非常に興味深い内容で、1時間30分では短く感じられました。もっと話を聞きたいと思ったのは私だけではないと思います。

講義の中で特に印象に残っている言葉が「ゴミを食べたクマは死んだも同じ」、これには非常に心が痛む思いでした。実はヒグマは我々の身近にも生息している動物であり、人間が安易に捨てたゴミにつられて人間の味を覚えてしまう。そうなったクマはさらに人間に近づいていく事になり、最終的には駆除されてしまう。イコール我々人間側に責任があるのだという事になります。これを氏は「無意識の餌付け」という言葉で表現しておられました。なるほど、食べ物などのゴミを捨てるという事は知らず知らずのうちにヒグマを餌付けしているのだという事になります。飲み干したペットボトルなどもしかり、山でも町でも決してゴミは捨てないという意識を持つ事が大事なのですね。
その他にも犬連れ登山におけるヒグマとのニアミスの危険性や、万が一に出会ってしまった時は・・・等今後の巡視の際に役立つ知識を得られた講義でありました。

2コマ目の講義は「安全登山の為に」との内容で地元在住の山岳ガイド佐久間弘氏による近年の遭難の現状など、大雪山各地を長年にわたって歩き続けている氏から見た大雪における遭難の多い箇所・季節等、我々が普段フィールドにしている場所での話だけに考えさせられる内容であったと思われます。特に遭難は自己の体力過信や無理な行動計画から発生する事が多く、ご自身でも悪天候が予想される際には山行を控えるという事を強調されていました。同じ場所でも天候によって全く違う顔を見せる大雪山に関してはまさにその通りであると思います。併せて地形図とコンパスは必ず持つ、持つだけではなく使いこなせるように普段から勉強をしておく・・・、個人的にももっと勉強しなければと実感しました。

山行前の気象条件を把握するという事で、昨年8月に東川町で起こった豪雨災害時の気象図を用いて、山行前の天気チェックの重要さを説く佐久間講師。ただ、平地の天気予報は山ではあてにならないことも忘れてはならないとのことでした。

2日目は2名の講師にも参加していただき、通称「くるみの沢」周辺においてコンパスの実践練習も兼ねた野外観察講座を行いました。
前日から30cm程の降雪があり若干ラッセルが大変でしたが、観察中には青空ものぞきアカゲラのドラミングをBGMにヒグマの痕跡を探すなどあっという間の2時間でした。


これはトドマツに着いたヒグマの爪痕の様子を解説している所。近くにあるコクワを目当てに木を登っていたようです。

今回の行事で今年度の活動はほぼ終わりですが、会員の方には体力を維持していただき来年度のパークボランティア活動に臨んでいただきたいと思います。しばらくお会いする事が無くなりますが、皆様どうぞお体にお気を付けてお過ごしください。また5月にお会いしましょう。

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2011年02月02日「冬の大雪の魅力を探そう!」エコツーリズム行事開催

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

1月25日の火曜日、旭岳温泉周辺において東川自然保護官事務所主催のエコツーリズム行事を開催しました。
エコツーリズムとは地域ぐるみで自然環境や歴史・文化などの地域の魅力を訪れる人に伝えることによってその価値や大切さを理解していただき、保全に生かしていくという仕組みです。

まずは旭岳温泉周辺の歴史の話から。
旭岳青少年野営場付近を歩くと廃墟となった建物が目に入ります。ご存知の方もいると思いますが、ここは昔この地に養魚場がありテラピアなどが養殖されていました。これらは各旅館等で一般宿泊者に「アサヒダイ」という名目で提供されて旭岳を訪れた人のみが口にする事が出来たようです。そういえばとある地図に東川町の名物として「テラピア」と書かれているものがあります。その由来はここからきているのですね。
しかしその「アサヒダイ」も時代とともに利用されなくなり、施設の撤去にも費用がかかることから建物だけが残され現在に至っているようです。しかしながらその周辺の池や川にはその当時に放されたテラピアが子孫を残しており、今でもこの周辺では至る所でこれらを見る事が出来ます。


参加者に養魚場などの旭岳温泉の歴史を説明する今日のガイドの一人、鳥羽晃一さん。右後ろの建物が養魚場の建物跡。

そしてこの魚、実は環境省でも「要注意外来生物」として指定している外来種なのです。う-ん、ここでも外来種・・・。過去に人間が放置したツケがここにも見られるというのは何ともやりきれない気分です。本来は暖かい地方の魚ですが、冬でも温泉水が入り込み水温が高く凍らない池がこの周辺には多いため、この時期でも彼らは越冬が容易にできるのですね。今後の課題となる歴史講義でした。

テラピアを見た事がない方の為に写真を一枚。この個体はかなり小さい方ですが、この辺りの大きいものはこの3倍くらいあります。

しかしながら、各旅館で振舞われていたこの「アサヒダイ」。一度は口にしてみたかったような気もします。当時を知る方は今ではどれくらいおられるのでしょうか?


それと併せて今回行われたのは「冬の大雪山・新体験モデルツアー」と題して、新たな冬のプログラムを見つけ出そうという事で、地元ガイドさん達とともに単なるスノーシューツアーだけでなく新たなアクティビティの発掘を目的としたメニューを行いました。
そのひとつが木登り体験。木々が生い茂るここ旭岳温泉の森の中では考えられそうで考えられなかったプログラム。ザイルとハーネスを利用しての木を登っていきます。参加した方々も見ているのと実際やるのとは大違い、コツをつかむまでは皆さんかなり苦戦していたようです。
木の葉が落ちるこの時期は夏と違って上に登れば登るほど視界が開けて周囲の風景が良く見えるというのが今回のプログラムで分かりました。なるほど、冬は冬でそういったメリットもあるのですね。

慣れてくるに従い、少しでも上の方に行きたくなるのは人間の心理なのでしょうかね?

その他にもシラカバの木を利用しての綱渡り等、さまざまな企画を考えてくださったガイドの皆さん、寒い中の準備とともに大変お世話になりました。この場をお借りして改めてお礼をさせて頂きたいと思います。今後自身のツアーなどで実践していけるプログラム等が今回のプログラムから見つけだせて行けると良いですね。

どうしても家に閉じこもりがちなこの北海道の冬の時期ですが、外に出ると楽しめる要素はたくさんあります。冬の遊び方の達人であるガイドさん達と是非新しい冬の魅力を見つけに行ってみてください。

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2010年12月28日冬の天人峡羽衣の滝

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 本格的な厳冬期に入り、大雪山のふもとであるわが町東川町から山を拝めることがめっきり少なくなってきました。気象条件の厳しい大雪山はなかなか冬にその雄姿を我々に見せてくれる事は無く、この時期は改めて自然の厳しさを実感させてくれます。

 ところで「天人峡の羽衣の滝って冬はどんな様子ですか」とよく皆さんから尋ねられます。いったい冬の羽衣の滝はどのようになっているのでしょうか?

 夏から秋にかけて多くの散策者でにぎわう天人峡・羽衣の滝は、忠別川に沿って峡谷となっている非常に急な崖の間に位置しており、冬の積雪期には、この周辺は雪崩の巣窟です。毎年雪解けのころには、雪崩に巻き込まれたと思われるエゾシカの死体を良く見かけます。まさに自然の脅威を見せつけられるここ天人峡です。このため12/27に、遊歩道の管理者である北海道上川総合振興局の担当者とともに、危険防止のため遊歩道の立ち入りを禁止するためのロープ張り作業を行いました。


例年に比べて積雪が少ないとはいえ、今年もすでに大規模な雪崩が発生しており、夏の遊歩道部分を覆い尽くしていました。(12月27日撮影)

 雪の解ける5月までは雪崩の危険があるために羽衣の滝への道は通行止めになります。事故防止のため、皆さんのご理解、ご協力をよろしくお願いします。

遊歩道入口にはロープとバリケードで通行禁止のサインをしています。

大雪山山麓では、羽衣の滝や旭岳の上までは行かなくても、スノーシュー等を使って散策することができます。普段は行けない所も雪が積もればどこだって歩いていける、夏とは違う魅力が冬にはあります。是非とも安全に東川の冬を楽しんで下さい。

 さて、いよいよ2010年も残すところわずかとなりました。2011年も出来るだけ多くの情報をこのアクティブレンジャー日記で伝えていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。



最後に、12月初旬の羽衣の滝の冬景色です。本格的な積雪を迎えた今は、雪崩発生の恐れが高く行くことができませんので、代わりに写真をお届けします。

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2010年12月14日バックカントリーブームと問題点

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

近年のスキー、スノーボードの滑走性能の向上に伴って、スキー場だけではなく整備されていない山を滑る人が年々増えており、大雪山周辺においてもその雪質の良さで年々入込者が増えてバックカントリー銀座になりつつあるようです。
確かに管理されたスキー場を滑るのとは違い、人が入り込まない山の斜面に自分だけのトラックを刻むのは何とも言えない楽しみがあります。
 ただ、大雪山には夏以上に冬は厳しい気象条件が待ち構えています。辺りを静寂が包むエゾマツに囲まれた森、絶えず強風が吹き付ける高山帯と、数少ない晴天の日を除いては常に道迷いや場所によっては雪崩などの危険が待ち構えており、そこに入り込めるのはそれ相当のスキルを持った選ばれし人間だけ。
ですが、人が多く入りこむようになり様々な問題点も最近は増えてきました。


これはスキー等の滑走により傷ついてしまったハイマツなど。風の強い高山帯などでは雪が飛ばされてしまい、高山植物が真冬でもむき出しになっていることもしばしばです。スキーの滑走面も痛いですが、植物はもっと痛いでしょう。ダメージを受けた高山植物は簡単には回復しません。植物の見え隠れしているような所では滑走を自粛していただき、また春スキーの季節においても滑れる斜面までの雪が無くなった時点で、山スキー(もちろんスノーボードも)の利用は控えて頂く。これはバックカントリーのマナーではないでしょうか?

 旭岳スキーコースではスキー、スノーボード滑走に伴う高山植物の損傷防止ために毎年積雪量調査を行った上でコースオープンとしています。一定の積雪量の基準値の取り決めを行っており、それに達するまではスキー等の滑走道具をロープウェイへの持ち込みを控えて頂いています。

測定の基準箇所を設けて、雪崩の際に使うゾンデ棒を使って積雪量を測定します。今年は一度雨が降ってしまい、雪が固くなってしまっている所もあって、なかなかゾンデ棒が刺さらず測定が非常に困難な箇所もありました。

 測定の結果、深い所では積雪は2m近くあり、植生にも影響はないと思われることからスキーコースオープンとなりました。
 ただ、やはりここは寒い!本日は視界も良好でしたが、姿見駅周辺のこの時期の平均気温は-15℃(厳冬期は-25℃)、平均風速10m以上のこの地ではまさに冬山の厳しさを実感する所です。

 バックカントリーと言えばここ旭岳周辺もロープウェイを利用して気軽に深雪を楽しめる事で国内はもちろん、海外からの利用者も年々増えて来ている所です。
 それに併せて、冬山装備を持たないスキーヤー等による安易なケガ、遭難なども後を絶たないのもまた事実です。
「あまり遠くまではいかないから」「みんなが行っている所だから安心」「昔は皆ここを滑っていた」良く聞く言葉です。が、スキーコースを離れ、山に一歩踏み入れればそこは未知の世界、その場所では今まで起こった事のない雪崩も条件次第ではいつ襲ってくるかもしれません。もちろん山の天候は一変します。くれぐれも自分の技術、装備などにあった行動を心掛けることが重要ではないでしょうか?

 ただ危険も隣り合わせですが、冬山には夏山には無い魅力があるのも確かです。夏山以上に自然に優しく、自分には厳しくという気持ちでバックカントリーも楽しみたいものです。

北海道最高峰旭岳をバックにシュプールを刻む。ただ、冬では大雪山がこのような姿を見せてくれる事は稀です。厳しい冬山であることを十分認識の上で行動する事が大切でしょう。

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