えりも自然保護官事務所
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2018年03月26日ゼニガタアザラシ観察会2018
えりも自然保護官事務所 近藤武
北海道も暖かくなって、一気に春めいてきましたね。みなさまご無沙汰しております、花粉症が心配のえりも自然保護官事務所の近藤です。先日開催された「親子で考えよう!ゼニガタアザラシ学習観察会(日高振興局主催)」に講師として参加してきましたので、ご報告いたします。
振興局森田課長のご挨拶から始まった観察会。昨年同様、親子約50名の参加となり、風の館のシアタールームは満員御礼でした。続いて郷土資料館中岡館長のお話です。ゼニガタアザラシをはじめとする海獣類の映像を紹介し、形態や行動の違いについての解説でした。アザラシと戯れるダイバー目線の映像は興味深かったです。
その後は環境省の取り組みについて、わたくしからの発表です。ドローンで撮影したゼニガタアザラシの写真や動画の紹介には子供達も興味津々でした。なるべく難しい内容や表現を避けたのですが、うまく伝わったでしょうか?
講演後に会場を移し、実際に岩場に上陸しているアザラシの観察を行いました。当日の天候が心配で「アザラシが上陸していないんじゃないか」と不安でしたが、観察のタイミングでちょうどアザラシ達も上陸してくれました。アザラシを発見した子供達は「すごーい」と興奮ぎみに望遠鏡を覗いてくれたので、天気には感謝ですね。その後、屋外での観察やショートムービーの鑑賞を行い、観察会は無事終了。ご参加のみなさま、お疲れ様でした。
2017年12月15日えりもの山で登山調査
えりも自然保護官事務所 近藤武
日高山脈で昨年度から実施している「登山調査」の報告です。11月中旬の二日間を使い、えりも町の「ルチシ山」と「豊似岳~観音岳」に登りました。札幌事務所の職員2名も一緒です。
初日はルチシ山に登りました。ルチシ山は標高754mと2時間ほどで登れる山です。ルチシ山には登山道がないので、動物たちの踏み跡をたどって山頂を目指さなければなりません。低山ながら侮れないアグレッシブな山です。カラッと晴れた秋晴れの空の下、冷たい風に吹かれながら道なき道を歩きました。冬も間近で木々の葉は落ち、稜線からの眺めはバツグン。お手頃ながら、大満足の登山調査でした。
さて翌日は豊似岳~観音岳です。日高山脈の最南端にドシッと聳え立つ豊似岳を登り、東の稜線をたどって観音岳、さらにその東の豊似湖まで歩き通す計画です。ルチシ山の数倍はハードな行程でしょう。
そして当日の朝をむかえましたが、なんと深夜に積もった雪で稜線は白く輝いているではありませんか。怪しいコンディションが予想されましたが、安全第一で登ってみることにします。しかし積雪量はわずかに10㎝ほど。少々足下がひんやりしますが、歩けばすぐに体は温まりました。そして雪の代わりに我々を苦しめるのは、日高山脈名物の藪漕ぎです。ねじ曲がった強力なハイマツに苦戦しつつ、予定より少し遅れて豊似岳山頂に到着。苦労した分、前日とは違った絶景を堪能できました。
豊似岳でゆっくりしたいところですが、あまり時間はありません。足早に山頂を後にして次の観音岳を目指しましょう。こちらの稜線はササが行く手を遮ります。ハイマツよりは楽ですが、手足をフル活用しなければ突破できません。観音岳を越えるまで長い道のりでした。この写真は、途中で見つけた地図にない池です。
暗くなるぎりぎりに、猿留山道を使って豊似湖に無事に下山しました。ナキウサギの声を聞きながら、長い縦走の旅は終わりです。お疲れ様でした。
2017年10月04日日高山脈・神威岳
えりも自然保護官事務所 近藤武
北海道に短い秋がやってきました。日高山脈の山々も秋色に染れば、白一面に染まるまであっという間です。
さて、幾分前のことになりますが、日高山脈・神威岳へ登山調査に行って来ましたのでご報告いたします。
<p神威岳は日高山脈の中央部に聳える標高1600mの山です。日本300名山の一つに数えられており、毎年多くの登山者が訪れています。その神威岳を知るべく、日高山脈の懐に飛び込んできました。
序盤の徒渉箇所にはピンクテープで誘導された巻き道がついており、簡単には迷いませんが慎重な行動が求められます。徒渉は登山靴よりもゴムやフェルトのついた専用のシューズを使うべきでしょう。調査日はまさに「夏真っ盛り」な天気だったので、沢沿いは涼しくてちょうど良かったですね。あっという間に尾根取り付きに到着しましたが、ここからは山頂への直登斜面がまっています。
直登はあり得ないくらい急で、ササやハイマツの枝に頼りながら全身で登っていきます。8月の暑い日差しの中、大粒の汗が止まりません。特に展望もない我慢の時間が続きますが、ペテカリやソエマツが見えてきたら神威岳はもうすぐそこです。
さて、山頂からはずらっと並ぶ日高山脈をぐるりと見渡すことができました。さらに、十勝平野から流れる滝の様な雲「雲瀑」も観察できました。これぞ絶景、と言った感じですね。
神威岳の登山道は一本しかなく、前半は沢の徒渉、後半は直登斜面と、その山頂には簡単にたどり着けません。事前の準備と当日の好天が必要になります。また2017年8月より、林道の補修のため一般車両通行止めとなっています。詳しくは林野庁ホームページをご覧下さい。神威岳に興味のある方は、来年以降にぜひチャレンジしてみて下さい。
2017年08月16日ドローン・センサス
えりも自然保護官事務所 近藤武
ハイ!突然ですが、問題です。「この中に、ゼニガタアザラシは何頭いるでしょう?」
毎度おなじみ、襟裳岬のゼニガタ君の登場です。岩の上でひなたぼっこをしているところへ、こっそりおジャマしてみました。 背中のゼニ模様や個々の表情もはっきり見えて、予想を超えるビックリでした。(ビックリしているのは、彼らの方かな??)
当事務所では「ドローンによるゼニガタアザラシの個体数調査(ドローン・センサス)」を実施しています。ド ローンのおかげで、遠くの岩場やその裏側もばっちり観測できるようになりました。テクノロジーの進歩は素晴らしいですね~。
さて、正解は「97頭」でした。
「個体数を調べる」と言っても、そう簡単なことではありません。ドローンの整備から始まり、天候や干潮時間のチェック、風 や波のコンディション、フライト後には写真の確認、などなど。正確で信頼できるデータを集めるためには、毎日の地道な積み重ね が重要になります。相手は自然の生き物なので、妥協はできません。ドローン・センサスによって集められたデータは、科学委員会 の議論で生かされます。詳しくは、私の前回の日記をご覧下さい。
※ドローンの離着陸時には危険が伴いますので、操縦者から離れるようご協力をお願いします。
(航空法に基づく許可を 得て飛行しています)
2017年07月28日えりもの漁業とゼニガタアザラシ
えりも自然保護官事務所 近藤武
報告が遅れてしまいましたが、今年の春も乗船調査を行いました。
毎年、5月から7月に実施される春定置網漁では、えりも名物の「トキ(トキシラズ、春鮭、時鮭)」が獲れます。脂がのったトキは、焼き魚やルイベに絶品。しかし、特産品のトキを狙うのは漁師だけではありません。
襟裳岬の岩場で寝そべる「ゼニガタアザラシ」もまた、トキを狙っているのです。町のシンボルでもあるアザラシですが、漁師が仕掛けた定置網に忍び込み、トキを食い散らかして逃げていきます。かつて、ゼニガタアザラシが少なかった頃は、このような被害は目立つものではありませんでした。しかし、生息数の回復に伴い、トキの被害も目に見えて増え、漁師にとって深刻な問題となってしまいました。
環境省では、漁業被害の調査や防除実験、ゼニガタアザラシの個体群管理などの事業を通じ、漁業とゼニガタアザラシの問題解決を図っています。冒頭で紹介した乗船調査も、その一つとして続けられています。
これらの事業は、漁業やアザラシの専門家で組織された「ゼニガタアザラシ科学委員会」での議論を通じて、具体的なアイデアやアドバイスを得ながら進められています。これまで、委員会は札幌で開催されていましたが、今年の6月は、えりも町で開催することができました。
委員会の前には、実際の定置網漁を見学する機会があり、漁師さんの苦労や現場感覚などを、直接体験していただきました。充実した議論のために、こうした工夫は欠かせません。
苦労は絶えませんが、一歩ずつ、漁業とゼニガタアザラシの共存に向けて進んでいるはず。
その日まで、暗中模索の毎日です。
▼環境省の事業や科学委員会の資料は、こちらで公開しております。
2017年07月05日アクティブ・レンジャー写真展-えりも-開催中
えりも自然保護官事務所 近藤武
えりもにも短い夏が訪れました。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
先日、大雪・渡邉ARの日記でも紹介しましたが、アクティブ・レンジャー(AR)写真展についてのお知らせです。写真展は北海道各地で順次開催の予定ですが、現在、えりも町・風の館で開催中(7月1日~23日)です。
開催前日、写真展のセッティングを行っている様子です。作業は一苦労でしたが、創意工夫・試行錯誤の連続で、さながら学校祭の準備のようで楽しかったです。(作業には、町役場の職員さんが駆けつけてくださいました。この場を借りてお礼申し上げます。)
無事作業が終わり、AR12名の渾身の作品が並びました。ぐるりと並ぶ作品に囲まれると圧倒されてしまいそうです。北海道のAR写真展は初めての試みです。不慣れな部分もあるかもしれませんが、我々ARの手作りの写真展が完成しました。えりもにお越しの際には、ぜひお立ち寄りください。
★ご観覧の際には、アンケートへのご協力をお願いしております。アンケートご記入の方には、もれなく、特製のポストカードをプレゼントしております。
えりも・近藤AR
2017年03月29日ゼニガタアザラシ学習観察会 in えりも
えりも自然保護官事務所 近藤武
風が暖かくなり、北海道のえりもにも春がやって来ました。
「何もない春」と歌われて久しいですが、えりもの海にはゼニガタアザラシが住んでいます。
昨週、襟裳岬「風の館」にて、「親子で考えよう!ゼニガタアザラシ学習観察会(主催:北海道日高振興局)」が開催されました。
日高管内から合わせて50名の親子にご参加いただきました。
写真は、講師の中岡さん(えりも町郷土資料館館長)です。
私からは、ゼニガタアザラシがかつて絶滅に瀕したこと、近年では個体数が増えて漁業者との間に新たな問題が現れたこと、現在環境省が進めている対策などについて解説いたしました。
えりも町での、人とゼニガタアザラシの関わりから、共存のために何が必要なのか。
親子で考えていただけましたでしょうか?
その後、岬の先端まで歩きゼニガタアザラシを観察しました。
天候にも恵まれ、春の風が心地よく流れていました。
岬のゼニガタは、まだあまり上陸していませんでしたが、あと一ヶ月ほどで出産期を迎えます。その頃にはゼニガタの子供達(パップと言います)がたくさん見られるようになります。
参加された皆さんも、そうでない方も、ぜひ、ゼニガタアザラシの観察にいらしてください。
2017年02月09日アザラシ通信 冬の襟裳岬より
えりも自然保護官事務所 近藤武
「えりもの冬」......と聞くだけで寒さを感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
えりもはまさに極寒の地。。。。。。かと言うと、実はそんなことはありません。
気象庁のHPで公開されているデータを基に作成した、北海道各地の1月の平均気温(2008-2017年の平均値)です。
えりも岬の1月の平均気温は「-1.9℃」。実は、函館よりも暖かいそうです。
えりもは海が近いからなのか、意外と暖かいのですね。
しかし、えりもの冬をなめてはいけません!!
気象庁HPのデータによれば、2017年1月の「えりも岬の最大瞬間風速」は、「35.5 m/s」だったそうです。
(1月の北海道の観測点の中で最大値でした。天気予報等で用いる用語では、秒速30~40mの風は「何かにつかまっていないと立っていられない。飛来物によって負傷するおそれがある。」として紹介されています。侮れない。)
えりもにお越しの際は、安全運転でよろしくお願いします。
さて、えりも岬のゼニガタアザラシは、この時期に何をしているのでしょうか。
気になったので、えりも岬へ見にゆきました。
(左)昨年の秋のえりも岬 (右)今年の冬のえりも岬
えりも岬の様子です。去年の秋と比べてみました。この時期のえりも岬は、岩は白く凍り付き、波も高く荒々しい姿です。岬の先端は特に風が集まるポイントなのですが、冬になるといっそう厳しい環境になります。
さっそく、望遠鏡で岩場の様子を観察しましたが、アザラシはなかなか見つからず。。。
諦めかけたその時!!
一頭だけですが、アザラシを発見できました。
2mはあろうかという、大きなアザラシです。
(若くて小さな個体は、上陸できないのかもしれませんね)
しかし、荒波にもまれて海に転げ落ちてしまい、別のアザラシと一緒に泳いでいきました。
えりも岬の厳しい海の中でも、アザラシたちは必死に生きているのでした。
おわり。
おまけ。
このアザラシの写真を撮るために開発した装置のご紹介。
「フィールドスコープ」に「デジカメ」を縛り付けて、超望遠カメラに改造。
写真が撮れるのはもちろん、デジカメが勝手にピントを合わせてくれるので使い勝手も良くなっている。
電池切れにはご用心。
2016年12月14日【日高山脈】ペラリ山 ~登山調査報告~
えりも自然保護官事務所 近藤武
こんにちは。えりもの近藤アクティブです。今回のAR日記では、ペラリ山での登山調査についてご報告いたします!8月以降、台風の影響もあって予定通りの調査ができなかったこともあり、ご無沙汰してしまいました。今年の登山調査報告はこれで最後となります。さて、ペラリ山という山をご存じでしょうか?ペラリ山は、日高山脈から西に離れたところにそびえる標高718mの低山です。気軽に登れる山でありながら山頂からは日高山脈を一望できるので、日高地方の隠れた名山と言える山かもしれません。
調査当日。風の弱い穏やかな日でしたが、初冬の凍てつく寒さに顔面が凍り付きそうでした。おそらく、氷点下なのでしょう、水たまりも凍っていましたので、防寒対策万全で望みます。駐車場からはしばらく林道を歩くのですが、体を温めるためのちょうどよいウォーミングアップといったところでしょうか。林道の終わりから登山道が続きます。道は不明瞭ですが、踏み跡をたどりササを漕ぎ分けて進みます。歩き始めて1時間少々で山頂に到達です。
東の方。秋も終わりを迎えた北海道。手前に見えるのはピセナイ山です。遠くに見える日高山脈の主稜線には真っ白な雪を見ることができます。ダケカンバの枝で若干見晴らしは悪いですが、白く輝く初冬の日高山脈に感動です。
西の方。太平洋の青い海がまぶしく乱反射しています。水平線の向こうには、樽前山も見えていました。山も海も楽しめるペラリ山。さすがです。
下山途中。静内御園に広がる牧場の景色を楽しみながらの下山です。ペラリ山は抜群の眺望にお手軽に巡り会える山でした。この景色を楽しむためには、葉をつける前か落葉の後の登山がオススメですね。以上、登山調査報告でした。ではではみなさま、また来年の報告をお楽しみに!
最後に
以上、AR日記の場をお借りして、えりも自然保護官事務所が行った登山調査についてご報告いたしました。ところで、当事務所が行う「調査」は他の事務所で行う「巡視」とは、何が違うのかと疑問を持った方がいらっしゃるかもしれません。そこで、私達が日高山脈で行っている「調査」について、その背景を説明いたします。長文になります。
<自然公園>-----------------------------------------------------------------------------------------------------
国立公園、国定公園および都道府県立自然公園の3種類を併せて「自然公園」と呼び、これらは自然公園法という法律や都道府県の条例に基づいて指定されています。北海道には、6箇所の国立公園、5箇所の国定公園および12箇所の道立自然公園があり、日高山脈は襟裳岬周辺地域とともに「日高山脈襟裳国定公園」に指定されています。
≪北海道の自然公園の区分≫
国立公園 |
国定公園 |
都道府県立自然公園 |
我が国の風景を代表するに 足りる傑出した自然の風景地 |
国立公園に準ずる 優れた自然の風景地 |
優れた自然の風景地 |
・利尻礼文サロベツ ・支笏洞爺 ・釧路湿原 ・知床 ・阿寒 ・大雪山 |
・大沼 ・網走 ・日高山脈襟裳 ・暑寒別天売焼尻 ・ニセコ積丹小樽海岸 |
・野付風蓮 ・松前矢越 ・厚岸 ・檜山 ・朱鞠内 ・天塩岳 ・斜里岳 ・恵山 ・狩場茂津多 ・北オホーツク ・野幌森林公園 ・富良野芦別 |
国立公園や国定公園では、「特別地域」内での樹木の伐採や工作物の建設などの行為が規制されています。これらの規制は、公園の最深部である「特別保護地区」で最も厳しくなっており、人里に近づくにつれて徐々に緩和されます。これらの地種区分は、「公園計画」によって定められています。よく、「国立公園は、国定公園よりもルールが厳しいんじゃないの?」という質問を受けることがありますが、国立公園と国定公園での行為許可の基準は、地種区分によって決まっており、同じ地種区分であれば基準は同じになります(都道府県立自然公園では、各都道府県の条例に従います)。国立公園の公園計画図は、こちら(自然公園財団HP)から確認できます。
<国立・国定公園総点検事業>-----------------------------------------------------------------------------------
平成19~21年度(2007~2009年度)にかけて実施された国立・国定公園総点検事業(環境省)(以下、総点検事業)では、生態系・地形地質の観点で重要な335の地域を抽出し、国立・国定公園の指定状況との相対的な比較(ギャップ分析)を実施しました。最終的には、18の地域が「国立・国定公園の新規指定」や「公園区域拡張」の候補地として選定されました。その後、いくつかの候補地では区域の拡張や新規指定などが行われました。以下に、例を挙げます。
■候補地(地域) |
■選定後の動向(年/月) |
慶良間諸島沿岸海域(沖縄) | 沖縄海岸国定公園の一部を編入し、慶良間諸島国立公園を新規指定 (2014/3) |
由良川及び桂川上中流域(近畿) | 京都丹波高原国定公園を、新規指定 (2016/2) |
西表島及びその沿岸海域(沖縄) | 西表石垣国立公園の、公園区域拡張 (2016/4) |
やんばる(沖縄) | 沖縄海岸国定公園の一部を編入し、やんばる国立公園を新規指定 (2016/9) |
・出典 - 国立・国定公園の公園区域及び公園計画の見直し(環境省)
<日高山脈襟裳国定公園>----------------------------------------------------------------------------------------
総点検事業では日高山脈は以下のように評価され、夕張山地とともに、「日高山脈・夕張山地」として、候補地のひとつに選定されました。総点検事業では、以下のようにあります。
≪日高山脈の評価≫
日高山脈は、日本列島の形成過程を反映して形成された雄大な山脈に加えて、氷河時代に形成された地形など、傑出した地形地質が集中して分布する。これらの地形地質や歴史を反映して、植物や高山蝶等に固有種・遺存種が多数みられる。また、高山から山麓部にかけて広がる自然性が高くまとまりがある国内最大規模の森林は、哺乳類や鳥類等の野生生物の重要な生息環境となっている。これらのことから、現在の国定公園区域と一体性のある傑出性の高い地域である。
-国立・国定公園総点検事業(環境省)
以上のように、日高山脈は特徴的な氷河地形とその豊かな森林生態系が評価され、今後の方向性として「国立公園の新規指定(現在の国定公園を含む)又は国定公園の拡張」を見据えて、「候補地における自然環境や利用状況の調査、保護や公園利用に関する計画の検討、関係者との調整等を行い、具体的な区域の指定」を検討することとなっています。現在、環境省では情報収集を行っている段階であり、その一環として、当事務所では日高中部~南部での「登山調査」を行っています。以上が、当事務所が「巡視」ではなく、「調査」を行っている理由となります。うまく伝わったでしょうか?
今すぐにということはありませんが、日高山脈の将来のありかたについて何らかの結論を出すことが必要です。そのためには、山に親しみ・山の恩恵を受ける全ての方々と共に時間をかけて考えていくことが必要だと私は思います。この日記が、みなさまが日高山脈の将来について考えるための一助になりましたら幸いです。
参考HP
環境省HP
外部リンク
はじめまして!
えりも自然保護官事務所の熊谷文絵です。
これから、えりもでの活動の様子や魅力をお伝えしていきます。
どうぞよろしくお願いします!
みなさん、えりもがどんなところかご存知ですか?
北海道の最南端、風の町、一番知られているのは襟裳岬がテーマとなった有名な歌があることかもしれません。それから、忘れてならないのは❝ゼニガタアザラシの日本最大の繁殖地❞であることです。
岬の先から双眼鏡を覗けば、想像をはるかに超える数のアザラシを見ることができますよ!
このゼニガタアザラシ、観光資源になっているほか「ウインディー」という町のキャラクターになっていたりと、えりも町のシンボルになっています。しかし定置網漁でとれる魚を食い散らかし被害を出してしまう困った一面も持ち合わせています。漁業が重要産業となっているえりもでは深刻な問題です。
では、ゼニガタアザラシがこれからも快適に過ごせ、且つ漁業被害を少なくするにはどうすれよいのでしょうか。。試行錯誤しながら取り組んでいる最大の課題です。
まずはアザラシを知ることから...! 取り組みをご紹介します。
①乗船調査
えりもでは、春(5月上旬~7月上旬)と秋(8月末~11月中旬)に定置網漁が行われています。
ここでの調査内容は、定置網にカメラを取り付け、アザラシが水中でどんな行動をとっているのか映像を録画・確認すること(アザラシの行動に応じて網の形を工夫したりします)や、アザラシの嫌がる音を出す装置を設置しその効果を見ること。
また、獲れた魚をアザラシが食い散らかしていないか、どのくらいの数の被害が出ているかを確認することです。
アザラシによる食害、こうなると出荷できません。。。
②ドローンでのセンサス(アザラシがどのくらいいるかの調査)
襟裳岬の岩礁にどのくらいのアザラシがいるか、ドローンを飛ばし撮影します。岩礁にいたり海に潜っていたりと色々なので、回数を重ねこのエリアにどのくらいの数のアザラシが暮らしているのか把握することは、今後の対策のためにもとっても重要です。
アザラシは船でしか近づけないところで休んでいるので、ドローンが大活躍!
岩の上に細長い白っぽいような茶色っぽいような...これがアザラシ。いっぱい‼
【おまけ】
定置網のない今の時期、アザラシはどんなことを思って過ごしているのでしょうか...こちらはドローンでアザラシを観察!という気でいるけれど、「また見たことないもの飛ばしてる、何してるんだろう?」とアザラシが思っている...かは分かりませんが、観察されているのはこちらの方かもしれません。
ドローンを飛ばすとき、いつも思うのは「今日もお邪魔します、ちょっとだけ見せてね、見るだけだからね~」ということ。つい、私がアザラシ側だったら...などと考えてしまうけれど、取り越し苦労であったらいいなぁ。
少しづつ、アザラシにも人にも。より過ごしやすい環境を目指します!
このように、アクティブ・レンジャーって何?どんなことしてるの?など、北海道内で活動する12名の奮闘ぶりが分かる写真展を開催中です。えりもでの開催は~7月27日。アザラシに詳しくなれる襟裳岬「風の館」が会場です。ぜひお立ち寄りください♪
●アクティブ・レンジャー写真展ご案内↓(北海道地方環境事務所HP)
http://hokkaido.env.go.jp/to_2018/30_3.html